出会いなおし 中編~新一編~
夢の絆シリーズ(コナン小説で逆行物 新志小説)の番外となります。時系列的には、瑪瑙石の輝き のずっと後です。
夢の絆 本編 番外編をすべてお読みになってからの方がより理解が深まると存じます。
下記注意書きをお読みになられてから、ご覧下さい。
***注意書き***
本シリーズ作品はRANちゃんには優しくありませんので、ヒロイン派 新蘭派はご遠慮願います。
後、本作品に出てきませんが、服部君にも優しくありませんのでご注意願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
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注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
高校時代に見放した 見放ざるを得なかった私の親友。
それなりの理由はあったけれど、見捨てたのは事実で・・・その事はずっと園子の中で消えない棘の様に刺さっていた。
(だから今 こうやってたまに会うのは贖罪なのかもしれない・・・。懐かしい気持ちや友情が全くないとは言えないけれど。)
だが同時に鈴木財閥の責任者である自分は行動を慎重にする必要がある。
蘭の素行調査もしたし、自分で会って確認もした。今の蘭は普通の・・・というか貧乏なシングルマザーなだけだ。
(結局、パパやママが渋い顔してたパーティーの参加とかは私が原因で当たり前って思っちゃって・・・危機的状況でもあそこまで楽観的というか考えなしな行動だったのは若さもあるにせよ、新一君が能力があり過ぎた 結局何とかしてしまうって言うのもあるのよね。なんて皮肉。)
それに胡座をかいて当たり前と思ってしまった蘭も問題だが、人は環境に左右される生き物。
一気に売れっ子になった芸能人が天狗になるのが分かり易い例で、彼女もそうなってしまったのだろう。
・・・最も彼女は自身の力では何もしていないので全く同じには語れないのだれど。
周りが”特別”なら自分も”特別”と思ってしまったのだろう。
現に今”普通”に囲まれた彼女は、”普通”に暮らしている。
園子と交際が再開しても特に何か便宜を図ってくれと頼むわけでもないし、奢ってくれとも言わない。
元々園子に集る癖はなかったけれど、新一には集る癖があったから警戒していた。が、いい意味で裏切られた。
(蘭は普通の女性なのよね。
言動一つで致命的なミスに繋がりかねない新一君のような探偵、私のような従業員の生活がかかっている経営者とは一線を画する世界で合わないんだわ。)
(それでいくと今回のビルは、どれだけオープンにしていいことなのかしらね?・・・藪蛇な案件じゃなきゃいいけど。)
「ま、とりあえず新一君に聞いてみなきゃ始まらないわね。」
お互い多忙を極める身ゆえに、肝心の彼に会えたのはそれから1ヶ月後のパーティだった。
閉会間際を狙って声を掛ける。
「工藤さん。これからちょっと話せない?志保さん ごめんなさいね。旦那さん借りたいけどいいかしら?」
「いいぜ。・・・志保。」
「分かったわ。園子さん 大丈夫よ。」
先に帰っていてくれとの彼の視線を受け、その意を受けてさらりと立ち去る志保。後ろ姿も美しい。
(相変わらずのコナンと愛みたいな二人ね。いや違うか。この二人がコナンと愛のモデルなんだから、逆ね。)
憧れのカップルとこの二十年以上ずっと称されている鴛鴦夫婦は良い意味で全然変わっていない。
同時に見れば見るほど蘭ではこうはならないだろうなとつい思ってしまう。
それはきっと園子の中に泣いている小さな女の子がいるからだ。無邪気に幼馴染達の恋を応援していた-。
感傷を振り切り、歩き出す。二人で入ったのは個室のある居酒屋。
と言っても密談するわけであるし、今の園子が使用するのだからかなり高級な部類になる。
「で、どうした?」
真実を見抜く慧眼の眼差しが園子を射抜く-。
それに力を貰い、園子は口を開いた。
「なるほどな。」
「・・・新一君、何か知ってる?」
「知っていると言えば知っている 知らないと言えば知らない。」
「どっちよ!?・・・って言ってもどうせほぼほぼ”知って”るんでしょ?」
彼がこういう言い方をする場合は、本人への事実確認こそしてないが得てして殆どの真相を見抜いていることが多いことを経験則から園子はもう知っていた。
「俺が公安から聞いているのは、『毛利蘭を遠ざけて君に近づかせないよう、しかるべき処置をした』だよ。」
「・・・やっぱりそうなのね。」
「ああ。ところで園子。ポアロから入金があったって言ったよな?それ以外の入金はないのか?」
「え?ええ。一応通帳見せて貰ったけど、なかったわよ。」
蘭が不安に囚われないように、園子は念の為と称して、書類や通帳などを二人で確認するという作業を行っていた。
これは二人で何か共通のことをしていると、作業中と思わせ、安心感を与えて暴走しないようにするのが目的。
それと念の為というのも嘘ではない。事実確認は大事だし、客観的な視点は必要だろう。
「・・・そうか。」
「ねえ?それ以外の入金が大事なの?」
「大事というより”あるべきものがない”。」
「あるべきもの??」
「ビルの2Fのテナント料。」
「あっ!」
(そうだ。どうして気付かなかったんだろう。おじさまや蘭が住んでいない元毛利探偵事務所と住居部分だってテナント料あるはずなのに。ずっと前見たとき古着屋だったけ・・・?)
「あそこ、よくテナント入れ替わるんだ。法律事務所、古書店、雑貨屋、古着屋とか行くたびに違ったな。」
「新一君、アメリカ在住なのによく知っているわね。」
「半年おきくらいに日本にくる仕事があってな。コナンの編集者との打合せもあるし。」
「そうなの。それにしても詳しいわね?」
「ああ。来日するたびにポアロ行っててな。あそこのハムサンドと珈琲が好きでな。」
この逆行後の世界では降谷零はいるものの”安室透”は結局存在せず、彼の作るハムサンドが好きだった新一はポアロに寄った際にこんなハムサンド食べたいと「ハムにオリーブオイル塗って、隠し味はマヨネーズに味噌を少しで!パンは蒸してるんですよ。」とマスターにレシピを語ったのが始まりであった。
無くしてしまった”江戸川コナン”の欠片。関係するそれらを少しでも取り戻したくて嫌に詳細に話してしまった記憶がある。
ちなみにちゃっかりしているマスターはメニューに載せる際にあの”名探偵 工藤新一が監修した”との文面を入れた為、夫婦で立ち寄った際に、瞬時に妻の志保に事の次第を見抜かれ 何やってるのと言わんばかりのジト目で見られたのは、ほろ苦い思い出である。
(徹夜した時の妙なテンションの時に”前”のことを語るのは危険だな・・・。)
だが結果的に懐かしい味に再会出来たのだから新一にとっては嬉しいことであった。
そんなこんなで来日する都度、結構な頻度でポアロに行く彼は以前から2Fのテナントの入れ替わりの激しさに首を捻っていたのだが今回の園子の相談で答えが出た。
司法取引。
「ベルツリータワー事件の暴走が原因だな。毛利の逮捕と引き換えに住居を提供したんだろうな。
公安としてはビルを手放させたかっただろうが、園子の話聞いているとおじさんが頷かなかった可能性が浮かぶ。」
「ビルを?」
「ああ俺が公安ならそうする。俺と彼女の接点は学校が同じと家が近いってことだ。遠距離な場所に引っ越しても”自宅”が近くならまた会ってしまう可能性は高い。毛利なら家を掃除に来ただけ とかやりそうだしな。」
「そうね。」
「だがおじさんにとってあのビルは亡父から継いだもの。しかも親子三人で仲良く暮らした想い出もある。手放したくないだろう。」
「急な話ってことで不動産会社に買い取ってもらってもああいうところは相場の5~6割だろうな。しかも築年数結構経っているから取壊しになる可能性が高い。そういう未来が見えたら・・・余計にうんとは言わねえ。」
買い叩かれた挙句、思い出の場所が壊される。それは確かに避けたいだろう。
「ああ…。」
「だから後2年って言うのは・・・その”秘密の契約”が切れるときだろうな。あのベルツリーから三十年、か。」
「そういう ことなのね。」
「これはあくまでも俺の推理だからな。・・・確認してみるか。」
「分かっているわ。本当の詳しいことは分からない。でも大半は当たりと思う。」
(やっぱり公安に確認できるほどの伝手があるのね。)
「おじさんの具合はどうなんだ?」
「今放射線治療しているわ。肺がんで結構範囲は広いわね。でも完治は出来る可能性のある癌よ。」
「そうか…。」
「ただ白血球が少なくなりやすい性質みたい。放射線治療してから、枕元に空気清浄機置かれたり、退院が延びたりしているわ。」
癌だからと言ってずっと入院とは限らない。小五郎は集中的に治療のある時だけ入院している。
「そうか…。園子この件は俺に任せてくれないか?・・・俺はおじさんの為に動く。」
「ありがとう!新一君!」
「園子、礼は言わなくていい。おじさんの為であって、毛利の為じゃあない。いやむしろ、毛利にはつらいことになるかもしれない。」
「え?そ、そんな可能性があるの?」
「ああ、おじさんだけならすぐにでも探偵事務所に戻れる。
でもそうしたら今の住居はどうなる?おじさんの会社の社宅、なんだろう?」
「あっ!・・・蘭とお子さんだけじゃ住めない もしくは格安で済んでいた今までと違い、正規料金を支払うことになる、かもね。」
「その通り。それにすべてを明らかにするというなら、自分のせいで自宅を三十年近くも手放し、挙句に入るはずだった賃貸料を放棄せざるを得なかったことを知るだろう。」
どうする?と視線で問いかけられる。
既にビルが小五郎所有であったと知った以上、時間は掛かっても蘭は真相に辿り着くだろう。
あくまで隠し通すならそれなりの”物語”を作らなければならないが・・・・もうそんなことをして守ってもらわねばならないほど彼女は子供ではない。むしろ小学生を片親で育てる”大人”だ。
そろそろ蘭は知らねばならない。
幼い子供のような道徳観と、それによる誤った正義感が何をもたらしたのかを-。
「・・・いい機会だと思うわ。」
「園子。」
驚いたように、目を瞠る新一に鮮やかに笑んでみせる。
「”鈴木園子”を舐めないでよね。いくら親友だったからって盲目のままじゃないわ。」
「ううん。むしろ、だからこそ、ね。」
大事に想うからこそ、気づいてほしいのだと。
園子はベルツリータワー事件の時のことを思い出しながらそう言葉を紡いだ。
(私をも殺しかけたあの件について・・・蘭が自分で気づいて反省していけるか・・・それに今後の友人付き合いもかかっている。)
いくら負い目があろうとも、あの件で謝罪一つない蘭に対して園子も全く思うことがないわけではない。
再会した時の雰囲気やその後の病気、ビルの話でそういう話の空気にならなかったことは否定しないが・・・本気で謝るなら自ら行動を起こすくらいしていいはず。それがない相変わらず受け身の彼女に内心溜息をついていた。
(これはそれに決着をつけるいいチャンス。この話を振っても蘭が何も言わないなら、態度でいくら反省しようとも、”鈴木園子”は”毛利蘭”を断ち切らなければいけない。)
行動力がなく自省のない人間はいつか甘言に騙されたり、誰かに頼るのが当然となってしまう。
そんな人間と仲良くやっていけるほど、園子の今の立場は甘くない。
「何をするつもりなのか教えて。そうして私がどう動くのが最善なのかも-。」
決意を胸に秘めたまま名探偵を見つめる財閥の主の横顔はとても美しいものであった-。
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後書
読んで頂きありがとうございますm(__)m
中編は思いの他早くお届け出来ました。
新一編です☆というか園子と新一の回かも??
今回さりげにツボは、安室さんのハムサンド ポアロにて再現です(笑)
シリアスの中に何をエピソード入れているんだがという感じですが、逆行後の新一は安室さんがいないことを残念がり、こうなりましたW
(江戸川コナンがいない→眠りの小五郎もいない→安室さん登場せず 小説に登場させようにも難しいキャラでお蔵入り中 そのうち小説で出てくるかもしれない 編集担当が女性だったらこのネタに食いつくと思う)
多分 新一好きな降谷さんがもっと色々料理していると思います。私にも作って欲しいv( ̄Д ̄)v イエイ
降谷さんのドヤ顔( ・´ー・`)が浮かびます(笑) あ、あれ?新一編なのに語っているのは降谷さんてどういうこと(;'∀')
さていよいよ新一と園子が動き、蘭のもとに真相が暴かれる日が近づいています。彼女はどうするのでしょうか?
コメントや拍手頂けると作者が狂喜乱舞ゥレシ━.:*゚..:。:.━(Pq'v`◎*)━.:*゚:.。:.━ィィして次なる作品のエネルギーにもなりますので、宜しくお願い致します(((o(*゚▽゚*)o)))
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