真実の扉③~探偵の推理~
「「「光の魔人って誰?(どなた?)」」」青子、優花、橘 女性3人の声が被った。
「・・・・。」
「何故其処で俺を見る快斗!」
「いや、だって今日来る時に話しただろ?紅子が新一の事なんて言ってるか。」
「よろしくお願いしますわW光の魔人・・工藤さん。」
「やっぱり俺なのかよ!」
「ドンマイ!」
(新一 工藤さん・・工藤新一?って組織潰したっていう有名な探偵じゃないの!)
優花は空気を壊さないように、胸中のみで驚きの声をあげる。
ひったくり確保から、占いまで自己紹介する暇もない流れだった為、彼の事は黒羽という青年に良く似ているなという認識しかなかったのである。
「今更ですが、工藤新一、探偵です。」
「あら、まあまあ。」
「1つ質問させて頂いてよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ。」
「御婚約者さんは妹さんの事、何て呼んでましたか?」
「え?ええと・・・。確か海人さんはりこちゃんの事は・・確か最初さん付けで段々凛々子ちゃんになっていったかと。」
「やっぱり。橘さん、この指輪はやはり彼が貴女の事を想って注文された物ですよ。それが記されています。」
「え?」
「なんかメッセージとかあったっけ?快斗。」
「いや、青子。さっき見た限りでは、んなもの何処にもなかったぜ?」
「これは、ハワイアンジュエリーなのは、御存じですよね?」
「ええ、プルメリアの花が彫ってございますし。」
「だから名前もそうなんですよ。」
「「「「え?」」」」
「あ、そっか!そういう事か!!」快斗がマジックの種が分かったような顔をした。
「kaiってハワイ語でも海って意味なんです。」
「そうなんだ~!」青子が驚きの声を上げる。
「違う言語なのに同じ音と意味があるって驚きです。え、となるとlikoも?」優花が思わず感想を口にする。
「ええ、likoは萌芽やつぼみを意味します。つまり”若葉”ですね、貴女のお名前ですよね、橘 若葉さん。」
「それではこれは・・。」
「ええ。彼がハワイ語で自分と貴女の名前を彫った婚約指輪 もしくは結婚指輪ですよ。」
「こんな目の前にずっと真実があったのに、私ったら・・!」
彼女は頬を両手で挟み込み、白い顔に赤みが差している。
そして今にも目尻から涙が零れそうであった。
「kaiがローマ字読みでも同じスペルだから紛らわしかったんですね。
無理もありませんよ。まさか妹さんがそんな物残しているなんて思いも寄らないでしょう。」
優しい声音で”それに貴女とずっと一緒にいれると信じていたでしょうから、その内種明かしするつもりだったのかもしれませんね”と名探偵は続けた。
その言葉に遂に堪え切れず、ぽろぽろとと嬉し泣き出した若葉さんから先程とは打って変わって優しい雰囲気が溢れていた。
「けどさ新一、ローマ字読みの可能性はないわけ?いや、俺も二人の占いとハワイ語の解釈合ってるとは思うけど。」
「ちょっと快斗!何を言うのよ!」青子が憤慨してかみつく。
「いや、ケチをつけるつもりはねえんだぜ?ただ少しの疑問も残さねえほうがいいかと思って。」
「だから妹さんの呼び名聞いたんだよ。」お前なら分かってるだろと親友を僅かに睨む。
「なるへそ。」あ、やっぱり?と言った顔をしながら頷く快斗。
「もし彼もりこちゃんと呼んでいたなら、ローマ字の可能性が残る。けどそれはほとんどないと踏んでたけどな。」
「なんで?」
「あの時代にプラチナのリング。彼女の雰囲気、衣服、持ち物を見れば、いわゆる上流階級ってのは分かるよな?」
「あ、うん。それは勿論。」
「そんな家に似合いの男性が、婚約したとはいえ、まだ家族になってねえのにあの愛称はまずないな。小さい頃からの知り合いだが別だけど。」園子の家なんか母親が娘に園子”さん”って言うんだぜ、と名探偵は続けた。
「あ-鈴木財閥そうなんだ。しかもお二人、さっきの話ぶりからするとお見合いで初めて会ったっぽいもんね。しかも昭和前期!シャイな人柄って言ってたし。」
「ああ、それにお前が彼女の占いは百発百中って言ってたし、俺も傍から聞いてて、かなり信憑性あると思ったしな。」
「意外・・。新一が占い信じるなんて。」
「バーロー!快斗が当たり過ぎて怖いって泣きついてきたの、忘れたのかよ!?」
「流石ね。光の魔人。」鮮やかに笑う紅子先輩。
「不思議な方達ね。すべて見ていたかのよう。ええ、海人さんとはお話が出てから初めてお会いしましたわ。
今の若い方達には信じられないでしょうけど、あの時は若い男女が二人きりで会うなんていうのははしたない事だどされていましたから、大抵縁談があってから親しくなるというのが王道でしたの。」
過去に思いを馳せ懐かしむような眼差しをする依頼人。
「何だか全部得心がいきましたわ。」
「ありがとうございました。皆様の御蔭であの世で彼にも妹にも清々しい気分で会えそうですわ。」
そう言って晴れやかな笑顔で何度も頭を下げて帰っていった若葉の指には、あのプラチナリングが綺麗に輝いていたのだった-。
********************************************
(あの時は本当にあっという間に”真実の扉”を開いてしまって、凄かったわ。)
御蔭で助かったと優花は思う。
依頼人は先輩の占いにかなり賛同してくれていたが、あの指輪だけがネックだったのだ。
占いというものは、信じてもらえなければ意味がない。
通常ならばあそこまで占えば、後は「確かめます!」「行動します!」と本人が切り出し、どう動いたらいいかの助言へと移る。
と言うより学祭の他の客は全員その流れで”これから、どうするか?”が命題になった。
(けど、若葉さんだけはそれが出来ない。関係者のお二人がもう亡くなっているんだもの。)
その当時まで優花は”真実を白日の下に晒す事が本当に良いことか?”と疑問を持っていた。
実は彼女の母親は、父親に別に好きな女性が出来、家出した事実に耐えられず、心を食い破られてしまった過去を持つ。
財産家の祖父が一人娘を溺愛し何でも叶えてきた為、それが未来永劫続くと信じ、とても心の弱い女性であった。
ちなみに彼女の容貌は母親に生き写しである。容姿が端麗だった事も母の弱さに繋がったらしいと母方の縁戚から聞いた。
そんな母の様子を身近で見ていた優花は心理学へ興味を持ったのだった。
(けど勉強すればするほど、人間って言うのは案外しぶとく状況に順応する力を持っていた。
むしろ嘘の情報を教えられたり、何もせずに待つ方がストレス度合いが多いわね。蘭さんみたいに。)
それが、数々の心理実験結果本を読んだ優花の結論だった。
(きっと母が特別弱かったのね。心変わりなんて世の中にいっぱいあるのに、それに耐えきれず、まだ少女時代の記憶の中で生きているんだもの。)
彼女が7歳の頃、ついに限界が訪れ以来ずっと精神病院にいる母を想う-。
あの時から辛いだけの事実なら知らないでもいいのではと云う懸念が頭から離れなかった。
(でも工藤新一さんの御蔭で真実を告げる勇気が沸いてきたわ。ありがとう。)
「蘭さんにも伝えられたし。」
(彼女、自分に都合の良い方に捉えがちな所が母を彷彿とさせて心配だったけど・・、杞憂に終わって良かった。)
誰でも自身に利点のある方へ考えがちだし、自分だけは特別だと思いたがるのも理解出来る。優花だってそうだからだ。
だがそんな中でも現実に直面し、転んでも、足踏みしても、間違えても這い上がる力が人間にあると信じられたのは、あの日の出来事の御蔭だ。
告げた真実に喜びの涙を見たからである。
「そろそろ店じまいしようっと。」
そして帰り道に気まぐれに、いつかの紅子先輩の言葉を復唱して、優花は一人でくすくす笑った。
「真実の扉、光の魔人によって今開かれん。」
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後書 64,000hitリクエスト企画 真実の扉 解決編です。
夢様長々とお待たせ致しました~><
皆様、解けましたでしょうか~)^o^(
感想、拍手等頂けたらとても嬉しいです(^v^)
「・・・・。」
「何故其処で俺を見る快斗!」
「いや、だって今日来る時に話しただろ?紅子が新一の事なんて言ってるか。」
「よろしくお願いしますわW光の魔人・・工藤さん。」
「やっぱり俺なのかよ!」
「ドンマイ!」
(新一 工藤さん・・工藤新一?って組織潰したっていう有名な探偵じゃないの!)
優花は空気を壊さないように、胸中のみで驚きの声をあげる。
ひったくり確保から、占いまで自己紹介する暇もない流れだった為、彼の事は黒羽という青年に良く似ているなという認識しかなかったのである。
「今更ですが、工藤新一、探偵です。」
「あら、まあまあ。」
「1つ質問させて頂いてよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ。」
「御婚約者さんは妹さんの事、何て呼んでましたか?」
「え?ええと・・・。確か海人さんはりこちゃんの事は・・確か最初さん付けで段々凛々子ちゃんになっていったかと。」
「やっぱり。橘さん、この指輪はやはり彼が貴女の事を想って注文された物ですよ。それが記されています。」
「え?」
「なんかメッセージとかあったっけ?快斗。」
「いや、青子。さっき見た限りでは、んなもの何処にもなかったぜ?」
「これは、ハワイアンジュエリーなのは、御存じですよね?」
「ええ、プルメリアの花が彫ってございますし。」
「だから名前もそうなんですよ。」
「「「「え?」」」」
「あ、そっか!そういう事か!!」快斗がマジックの種が分かったような顔をした。
「kaiってハワイ語でも海って意味なんです。」
「そうなんだ~!」青子が驚きの声を上げる。
「違う言語なのに同じ音と意味があるって驚きです。え、となるとlikoも?」優花が思わず感想を口にする。
「ええ、likoは萌芽やつぼみを意味します。つまり”若葉”ですね、貴女のお名前ですよね、橘 若葉さん。」
「それではこれは・・。」
「ええ。彼がハワイ語で自分と貴女の名前を彫った婚約指輪 もしくは結婚指輪ですよ。」
「こんな目の前にずっと真実があったのに、私ったら・・!」
彼女は頬を両手で挟み込み、白い顔に赤みが差している。
そして今にも目尻から涙が零れそうであった。
「kaiがローマ字読みでも同じスペルだから紛らわしかったんですね。
無理もありませんよ。まさか妹さんがそんな物残しているなんて思いも寄らないでしょう。」
優しい声音で”それに貴女とずっと一緒にいれると信じていたでしょうから、その内種明かしするつもりだったのかもしれませんね”と名探偵は続けた。
その言葉に遂に堪え切れず、ぽろぽろとと嬉し泣き出した若葉さんから先程とは打って変わって優しい雰囲気が溢れていた。
「けどさ新一、ローマ字読みの可能性はないわけ?いや、俺も二人の占いとハワイ語の解釈合ってるとは思うけど。」
「ちょっと快斗!何を言うのよ!」青子が憤慨してかみつく。
「いや、ケチをつけるつもりはねえんだぜ?ただ少しの疑問も残さねえほうがいいかと思って。」
「だから妹さんの呼び名聞いたんだよ。」お前なら分かってるだろと親友を僅かに睨む。
「なるへそ。」あ、やっぱり?と言った顔をしながら頷く快斗。
「もし彼もりこちゃんと呼んでいたなら、ローマ字の可能性が残る。けどそれはほとんどないと踏んでたけどな。」
「なんで?」
「あの時代にプラチナのリング。彼女の雰囲気、衣服、持ち物を見れば、いわゆる上流階級ってのは分かるよな?」
「あ、うん。それは勿論。」
「そんな家に似合いの男性が、婚約したとはいえ、まだ家族になってねえのにあの愛称はまずないな。小さい頃からの知り合いだが別だけど。」園子の家なんか母親が娘に園子”さん”って言うんだぜ、と名探偵は続けた。
「あ-鈴木財閥そうなんだ。しかもお二人、さっきの話ぶりからするとお見合いで初めて会ったっぽいもんね。しかも昭和前期!シャイな人柄って言ってたし。」
「ああ、それにお前が彼女の占いは百発百中って言ってたし、俺も傍から聞いてて、かなり信憑性あると思ったしな。」
「意外・・。新一が占い信じるなんて。」
「バーロー!快斗が当たり過ぎて怖いって泣きついてきたの、忘れたのかよ!?」
「流石ね。光の魔人。」鮮やかに笑う紅子先輩。
「不思議な方達ね。すべて見ていたかのよう。ええ、海人さんとはお話が出てから初めてお会いしましたわ。
今の若い方達には信じられないでしょうけど、あの時は若い男女が二人きりで会うなんていうのははしたない事だどされていましたから、大抵縁談があってから親しくなるというのが王道でしたの。」
過去に思いを馳せ懐かしむような眼差しをする依頼人。
「何だか全部得心がいきましたわ。」
「ありがとうございました。皆様の御蔭であの世で彼にも妹にも清々しい気分で会えそうですわ。」
そう言って晴れやかな笑顔で何度も頭を下げて帰っていった若葉の指には、あのプラチナリングが綺麗に輝いていたのだった-。
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(あの時は本当にあっという間に”真実の扉”を開いてしまって、凄かったわ。)
御蔭で助かったと優花は思う。
依頼人は先輩の占いにかなり賛同してくれていたが、あの指輪だけがネックだったのだ。
占いというものは、信じてもらえなければ意味がない。
通常ならばあそこまで占えば、後は「確かめます!」「行動します!」と本人が切り出し、どう動いたらいいかの助言へと移る。
と言うより学祭の他の客は全員その流れで”これから、どうするか?”が命題になった。
(けど、若葉さんだけはそれが出来ない。関係者のお二人がもう亡くなっているんだもの。)
その当時まで優花は”真実を白日の下に晒す事が本当に良いことか?”と疑問を持っていた。
実は彼女の母親は、父親に別に好きな女性が出来、家出した事実に耐えられず、心を食い破られてしまった過去を持つ。
財産家の祖父が一人娘を溺愛し何でも叶えてきた為、それが未来永劫続くと信じ、とても心の弱い女性であった。
ちなみに彼女の容貌は母親に生き写しである。容姿が端麗だった事も母の弱さに繋がったらしいと母方の縁戚から聞いた。
そんな母の様子を身近で見ていた優花は心理学へ興味を持ったのだった。
(けど勉強すればするほど、人間って言うのは案外しぶとく状況に順応する力を持っていた。
むしろ嘘の情報を教えられたり、何もせずに待つ方がストレス度合いが多いわね。蘭さんみたいに。)
それが、数々の心理実験結果本を読んだ優花の結論だった。
(きっと母が特別弱かったのね。心変わりなんて世の中にいっぱいあるのに、それに耐えきれず、まだ少女時代の記憶の中で生きているんだもの。)
彼女が7歳の頃、ついに限界が訪れ以来ずっと精神病院にいる母を想う-。
あの時から辛いだけの事実なら知らないでもいいのではと云う懸念が頭から離れなかった。
(でも工藤新一さんの御蔭で真実を告げる勇気が沸いてきたわ。ありがとう。)
「蘭さんにも伝えられたし。」
(彼女、自分に都合の良い方に捉えがちな所が母を彷彿とさせて心配だったけど・・、杞憂に終わって良かった。)
誰でも自身に利点のある方へ考えがちだし、自分だけは特別だと思いたがるのも理解出来る。優花だってそうだからだ。
だがそんな中でも現実に直面し、転んでも、足踏みしても、間違えても這い上がる力が人間にあると信じられたのは、あの日の出来事の御蔭だ。
告げた真実に喜びの涙を見たからである。
「そろそろ店じまいしようっと。」
そして帰り道に気まぐれに、いつかの紅子先輩の言葉を復唱して、優花は一人でくすくす笑った。
「真実の扉、光の魔人によって今開かれん。」
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後書 64,000hitリクエスト企画 真実の扉 解決編です。
夢様長々とお待たせ致しました~><
皆様、解けましたでしょうか~)^o^(
感想、拍手等頂けたらとても嬉しいです(^v^)