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結婚式 舞台裏その2(清x秀)

「ぐすっ、秀麗~どうして予では駄目なのだ~、ひくっ」
同じ頃、王宮の片隅ではこの国の王様が自棄酒を煽っていた。
原因は皆様ご存知の失恋である。
厳密に言えば、今でも振られまくってきたが、想い人:紅秀麗の本日の結婚によりそれが決定的になったからである。
(やはりただ失恋するのと、他の男のものになるのでは衝撃が違うねえ)
近くで側近の藍楸瑛が冷静に現状分析する。
しかも何故か決まってから、すぐの入籍、1ヶ月後の婚礼など名門同士の結婚にしては、展開が早過ぎる。
(主上も心の整理できないんでしょうね~)
しかし既に相当できあがってしまっている。
(止めた方がいいかな)
「な、納得できないのだ~。なんで予の妃にはなってくれないのにだ!ヒック」
「主上、そろそろ御酒辞められた方が…」
「うるさいのだ~。予はお、贈り物だってたくさんしたしっ」
(ああ、藁人形とか巨大氷とか曼珠沙華とか贈ってましたね。あの時は笑わさせて頂きましたよ)
「恋文だって!うぃ~」
(ああ、『今日は雨が降って、池の鯉が元気だった』とかいう一行恋文出してましたね。あれじゃ日記ですよ)
「なのにっ!ひっく」
(だから振られたんですよ)
劉輝が彼女にした事をこうして並べてみると全戦全敗である。

「どうしていきなり結婚するのだ~しかもあの陸清雅と!うわ~しゅ~れ~」
確かにそれは謎である。
彼は誰にでも優しい秀麗が唯一『大嫌い』と公言していた相手なのである。
(そこの所は私も知りたい)
「うわ~ん〓予は諦めきれないのだ~最後の賭けに出るのだ~」
(妙な事言い出したな)
「何されるつもりで?」
「予の熱い想いを秀麗に告げに行くっ!」
「…………」
「溢れるばかりのこの愛を秀麗に分かってもらうのだ~ひっく」
そう言って走ろうとする王を慌てて止める。
「待って下さい!!それは散々やりまくったじゃないですか!」
「…知りたいのだ~」
「は?」
「予と彼では何が違う?何が足りないのだ?それを聞かなくては、諦めきれないのだ~ううっ」
遂に泣きじゃくり始める。
(完膚なきまでに失恋させておくほうが今後の為にいいかも)
既に妹・十三姫が王の妃になることが内定している。
容赦なく失恋した方が、王の今後の為にはいいかもしれない。
底の底まで落ちたら、後は這い上がるだけである。

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後書

なかなか劉輝が秀麗の元に行かなくて話が進みません(笑)
しかも清x秀と銘うってあるのに本人達より周りの出番ばかり(あわわ)
続きます!!

結婚式 舞台裏その1(清x秀)

本日、紅秀麗が陸清雅に嫁ぐ日である。つまり結婚式の日である。
天敵同士の彼らが結婚するのは、周りを驚かせた。
本人同士が「売り言葉に買い言葉」と称した馴れそめ話を聞きたいが、それはまた別の話である。

素晴らしい晴天であり、婚礼の日に相応しい事この上なしである。
但し、局地的に嵐(姪馬鹿叔父)や雨(失恋王様)があり、舞台裏はなかなかに大変なのであった。
舞台裏で活躍する筆頭が紅玖琅。新婦の叔父でご存じ、紅三兄弟の最後の良心、常識人である。
彼は非常に忙しかった。


「玖琅叔父様、あの黎深叔父様はきて下さらないのでしょうか?」
「い、いや何故だね?」
「このような時ならおいで頂けるかと。結婚式にも来て下さらないなんて、私本当に嫌われているんですね」
悲しそうに俯く花嫁姿の姪。
「う、いやそんな事ないぞ。」
彼の言葉は事実である。
一瞬遠い眼ををして、玖琅は過去の出来事を振り返る。

赤子の時は、構い過ぎて泣かす。
(その後あやすのは彼の仕事 はっきり言って兄には黙って琵琶弾いていて欲しかった。)
幼子の時は、可愛い姪の一言で蜜柑を品種改良した。
(職人と莫大な資金調達の遣り繰りも、彼の仕事になり帳簿と睨めっこする羽目になった。) 
長じては、姪への縁談を潰しまくり。
(嫁ぎ遅れたらどうするんですか、と抗議したら「私が貰う」とあっさり言われて脱力。)
今度の結婚に至っては、新郎・陸清雅にありとあらゆる手をもって暗殺しようとした
(婚礼の支度で忙しく、これは止めれなかった 
百合義姉上と絳攸が必死こいて阻止してくれて
いた。後で二人には、何か差し入れしよう。)

・・・ぶっちゃけ、嫌われているどころか、好かれまくりである。溺愛、盲愛である。
しかしこのような内情知らない姪は、結婚式にも出席してもらえないのかと、肩を落としている。
かと言って真実を話すわけにもいかず、彼は進退極っていた。

「秀麗、支度はできたかい?」
「父様。」
「邵兄上!」長兄の登場に思わず(助かった)と声を掛ける。
「玖琅、婚礼の支度やら何やら任せっきりで悪いね。」にこにこ長兄が笑う。
・・・・そう。新婦の父であるはずの邵可は何もしておらず、衣装、道具の準備、儀式の手配などすべて彼が仕切っていた。
それの原因は一重に、紅邵可の不器用さにある。
妙齢の娘がいるにも係わらず、婚礼衣装や持参する品々を用意してない駄目っぷりや結納で出した茶のまずさに
『邵兄上、貴方は一人娘が可愛くないんですかー!もう私が支度しますから、何もなさらなくて結構です!
むしろしないで下さい!』
次兄ほどではないが、姪が可愛い彼がそう叫んだ為である。

が、現在の状況では、長兄が役に立つ。(というより邵兄上しかできない。)
「邵兄上。秀麗が黎兄上が出席されないのを気にしているんですよ。」(何とか取り繕って下さい。)
「おや。そうなのかい。」(さて何と言ったものやら)
「だって父様、結納にも結婚式にも欠席なんて、嫌われているとしか思えないわ・。」
((ありえない!))長兄と末弟の心が一緒になった瞬間である。
「秀麗。それはないよ。」
「でも、父様」
「あのね、あの子はね、ちょっと人見知りで恥しがり屋なんだよ」
(あっさり嘘おっしゃってー!)
あの唯我独尊の兄にそんな殊勝なとこあるわけない。
(嘘じゃないよ。秀麗に対しては、だけどね)
確かに溺愛しまくってる姪に対してだけは、邵可の言い分は一理ある。
(一理ありますが、日頃の怜悧冷徹ぶりを知っている身としては、心が受付けられませんっ!)
「・・列席者の様子を見てきます。」
そして、紅玖琅は、自分にできる仕事に戻っていった。




散華(劉→秀x?)

満開の桜の下、一目で恋に落ちた。
「王」という名の幽霊だった劉輝を見てくれた秀麗に。
優しさを暖かさをくれた彼女に。
その彼女が今日嫁ぐ。
自分ではない男の元に。

「主上、こんなところで何やってるんですか?政務は?」
「花見なのだ」
側近がちっとも仕事を進まない王を嗜めるも
理由を分かっているのか、それ以上忠告してこない。
「一刻でお戻り下さい。」
その代わり告げられたのは、「花見」の時間制限。
「・・・分かった。」


彼女と初めて出合った桜の元へ歩く。
見上げるとすでに盛りを過ぎた桜はかなり、散り始めていた。
『桜、折っちゃったの!?』
『もうぽろぽろこぼして子供みたいな人ね』
想い出すのは、秀麗が貴妃として後宮にいてくれた夢のような時間。
鮮やかに蘇る確かにあった日々。
突如嵐のような感情が湧き出た。
『…っ……っ!』
唇を噛み締めるが、抑えきれない鳴咽が漏れる。
それを皮切りに彼の両目から涙が溢れ出す。

愛してる
愛してる
愛してる   押さえつけても 沈めようと湧き上がってくるこの想い
愛されたい
愛されたい  余の妻になって欲しい
共に人生を歩んで欲しい
尽きせぬ欲求

振られても振られても求婚し続けた日々。
切なくて、でも失恋すらも、紫劉輝として在れる時。
王ではなく「ただの男」としての大切な刹那。
但し、王として紅家の権力を求め、紅家長姫を欲っした時点で、もうその権利をなくしてしまった。
秀麗がよく語ってくれた薔薇姫の話の人間の男になりたかった。
ただ彼女自身の心のみを欲っし、愛情のみでもってその心を得た人間の男。
だが、彼女の持つ血統の力を頼りした時点で劉輝は、
薔薇姫の持つ不思議な能力をあてにし監禁した強欲な主になった。
・・・なってしまった。
だからもう彼女の婚姻に異を唱える権利などない。

なのに、心の底からの願いはその理屈に是と言わない。
彼女の心が、欲しいと叫ぶ。
自業自得だと分かっていながら、叶わぬ思いに身をこがした。
切り捨てるほども叶わぬほど魂と同化した恋が、彼の心を切り裂いた。
慣れているはずだった。
自分の願いが叶わぬことなど。
幼い頃の願いは、「母上に愛されたい」。
微笑みかけて欲しい。
優しい言葉、眼差し、温もりをかけられたい。
「お前など産まなければ良かった!」
・・・遂に叶うことはなかったけれど。

それを代わりに彼女は叶えてくれた。
だからもう十分だ。
そう思い込もうとした。あがいた。努力した。
けれど魂が違うと叫ぶ。切なくて苦しい。


・・・もう少し「人間の男」として彼女に接し続けていたら。
誠意を尽くしていたら願いは叶っただろうか。
独り劉輝は苦しげに顔を歪めたかと思うと頭を振る。
答えは否。
本当はもう分かっている。
余は秀麗がいなくては生きていけないが彼女は違う。
彼の聡明さは容赦なく真実を暴く。
彼女に愛されている、好かれているとは思う。
ただそれは絶対、唯一無二の存在に向ける愛情ではない。
その他大勢に向ける好意に過ぎない。
誰にでも優しい彼女。
それを偽善と言う人もいるだろう。
だが違う。ただ単に彼女の愛情の器が大きいだけなのだ。
好意の立ち位置が絶対に違う。

それを自覚して余計胸の切なさが増した。
自分はこんなにも秀麗を愛しているのに、
彼女はそうではない。
その理不尽さにまた涙が零れる。
理不尽だと思うことさえ、不条理だと理解しながら。


突然、ざあっと強風が桜にふきつける。
残り少ない桜の花びらが、舞い落ちる。


『…それでも』
『それでも余は』
『余は秀麗そなたを愛してる』



とうに散った生涯ただ一つの華(恋)を胸に秘めて、生涯を生きる



*****************************
4月にやろうと日記で書いた彩雲国物語の二次小説がやっとUPです☆
最初、劉輝と秀麗の王道を応援していた私ですが、
物語が進むにつれ李姫→清秀になってきています。
そして劉輝は、つくづく切ない片思いが似合う(→何気にひどい)なあと思って
一気に書いてしまいました。
原作でも彼が切ない思いすればするほど萌えます☆
ただ原作で最終手段を選んだのだけはちょっと許せませんが、これが逆に
秀麗を諦める決定打になったと思います。
で上記のような作品になるのです。
(1巻の最後からいっても秀麗ちゃんには、出世街道歩いて歴史に名を刻んでいてもらわないとね。
そして更に言うなら、子供を産んで欲しいな。)

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ご訪問ありがとうございます(≧▽≦) 名古屋OLが歴史・節約・日頃・二次小説のことを書き綴っています。 コメント大歓迎★ ですが、宣伝や本文に何も関係ないもの もしくは激しく不愉快、コピペ等、そういった類は、私の判断により 誠に勝手ながら削除の方向です。楽しく語りたいです♪ 二次創作小説もありますが、このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。

雪月花桜

Author:雪月花桜
タイトル通り名古屋OLがブログしてます。
歴史を元にした小説なんかも大好きでそれらについても語ったり、一次小説なんかも書いてますす。好きな漫画(コナンやCLAMP etc)&小説(彩雲国物語)の二次小説をupしておりますし、OLなりの節約・日々の徒然をHappyに語っています。

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