結婚式舞台裏 おまけ--幕間--

「それにしてもお二人ともなんか疲れたような顔してて、大丈夫かしら。いえ黄尚書は仮面で顔色分からないけど雰囲気的に・・。」
心配そうな花嫁姿の秀麗を横目で見ながら、理由に当たりをつけていた清雅は、疲労もあり珍しく何も考えずに即答した。
「お前の叔父何とかならないのかよ。」
「玖琅叔父様がどうかした?叔父様に限ってお二人に迷惑掛けるわけないし。」
首を捻る秀麗。
(そっちの叔父じゃねえよ!!しかし本当に知らないんだな。)
「叔父様といえば、黎深叔父様、遂に列席して下さらなかったわ・・。私やっぱり嫌われているのかしら。それとも無関心なのかしら」
「お嬢さん、そんな気にしなくていいんじゃない?だって絳攸さんは出席してくれてたんじゃん。」
「そうだぜ。姫さん。あと奥方の百合姫さんだっけ?も来てたじゃないか。」
「ええ・・。」
控室に来ていた蘇芳と燕青が代わる代わる慰めるが、当の本人は浮かぬ顔。
「馬鹿め。」
「馬鹿って何よ!」
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪い?ああ、俺が養ってやるから、お前官吏辞めろ。」
叔父の異常な愛に気付かぬ鈍感な彼女に、少々の鬱憤晴らしに、一番嫌がることを冗談半分、本気半分で告げる。
「何よ!結婚した後でも続けていいって言ったくせに!この嘘つき~!!」秀麗が喚く。
こんこん 扉が叩く音がした。
「姫様。次の衣装にお召し替え遊ばせ」
式当日一番忙しい花嫁は、侍女に連れられていった。
本人(秀麗)がいなくなった途端、清雅が顔をしかめながら吐き捨てた。
「あんな気味悪いくらい蕩けそうな笑顔してる男が嫌ってるわけないだろう!更に言うなら、無関心なわけあるか!!」
「どういうことデスカ~?」
「何?姫さん嫌われてるんじゃないのか!?・・っていうかもしや、何かされた?」
「ああ。されたとも!されまくったさ!!」
清雅は結婚が決まってからの色々な、イロイロな事を脳裏に浮かべた
殺し屋は来る、毒矢は飛んでくる、毒酒も送られる。その他些少なことから命に関わるありとあらゆる事をされたのだ。
さすがに清雅も対応が大変だった。故に挙式を終えた今、どっと疲れが出た。
「あらゆる殺し屋やら毒酒やら、罠やら不幸の手紙やらがわんさかな!!どれだけ溺愛すれば気が済むんだか。」
殺害されそうになった打ち明け話に二人とも冷や汗が流れる。
「・・セーガ君。よく無事で。つーかどうやって生き延びたのか聞いてもい~い?」
「凄まじいな。よっぽど姫さんを嫁に出したくないとみたな。あれ?じゃあ好かれてるって事か。」
「紅州みかん知ってるか?」
「ああ、紅州の特産品でしょ~?甘くて小さくて種無し。高級品の蜜柑。」
「あれを開発したのが、秀麗の為だと言ったら、その溺愛ぶりが分かるか。」
「・・・・は?」さすがの剛毅な燕青も咄嗟に言葉が出てこない。
「ジョーダン・・じゃないんだ?」蘇芳が笑い飛ばそうとして失敗する。
州を代表する特産品となれば、
開発研究の為の土地代、建設費、人件費、研究費、特許の取得、その後本格的に畑を開墾する費用などなど、
天文学的な金額が費やされてるはずだ。
決して姪の為だけに消費されていい金額ではない。
だがそんな常識通用しないのが紅黎深。
「秀麗が昔体弱かったのを知っているか?」
「「ああ、うん聞いたことある」」
「それでも食べることができたのが蜜柑だったらしい。」
「「・・ってそれだけの為に!?」」驚愕の声をあげる燕青と蘇芳。
紅黎深がこの場にいたら、「それだけとは何だ!!秀麗の笑顔の為ならいくら払っても安い買い物だ!」とか言ったに違いない。
「あ。それで甘くて小さくて種なしになったわけね。」納得したように脱力した声を出す蘇芳。
((・・・姫さん(お嬢さん)の為に紅家潰しそうだ。))
「じゃあさ~その事お嬢さんに教えてあげれば」
誤解も解けるんじゃないの?と続けて言おうとした蘇芳はギロリと清雅に睨まれた。
「・・言うなって事デスカ。でも何で?」
「あんな姪馬鹿と親戚付き合いしたくない。だから名乗らなくていい。むしろ名乗るな!
 一生幽霊親族のままでいやがれーっ!!!」清雅の魂の叫びだった。
「「・・・・」」

花嫁に続き花婿も部屋を出ていった控室には、浪燕青と榛蘇芳が残された。
「昔さ~悠舜に友人の話を聞いたことあるんだ。」
「何?いきなり?藪から棒に。」
「なんか比類なき名家の坊っちゃんで兄上とその娘御と奥方と息子だけ大事。後はぺんぺん草。
仕事はさぼりまくりな癖に 本気出せば、1日で終わるとか何とか言ってたんだけど・・。」
本気を出せば、一年分の仕事も三日で終わる天才・紅黎深の噂を榛蘇芳は知っていた。
「それは間違いないでショ~。」
「姫さんのもう一人の叔父か。」
「デショ。」
「溺愛ぶりが凄まじいな。なのに何故姫さんは会ったことないと思ってるんだ?」
「そこは突かない方がいい気する俺。」
小市民の知恵。君子危うきには近寄らず。
実は、邵可を追い出して紅家当主におさまった鬼畜叔父と秀麗に嫌われることを恐れているだけ
なのだがそんな事二人に分かるわけがない。
それにこの理由ほとんど被害妄想に近い。
「気になる。」
「辞めておこうよ~。」
 
同時刻、別の部屋でこの被害妄想に巻き込まれている青年がいたりした。
養い親が黎深であることを誰もが疑う、性格も仕事も真面目でまっすぐな青年、李絳攸である。
「黎深様。いい加減名乗りましょうよ。」
「煩い!!父様追いだして当主になったんですって叔父様、最低!なんて秀麗に言われた日には、
私は生きてはいけん!」
「現在邵可様が現当主だから、その心配はないじゃないですか!」
「過去は変えられん!それもこれも玖琅が兄上追い出して私を紅家当主の座なんぞに就けるから!!
そのくせ自分はちゃっかり厳しくて、でも頼れる叔父様像創りおって!
何て図々しい!あいつ本当に私と同じ兄上の弟か!!」
・・・こうして夜は更けていく・・。
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前作で終わりとか言いながらちゃっかりおまけ編でした。
舞台裏4と5の間の話ということで、「幕間」!
いや~黎深様の愛の暴走好きです。絳攸とのやりとりも大好きです。
どうやって止めたらいいか分からず、強引に短くしました^^;
あ、もちろん秀麗への溺愛ぶりにうなる御史台組も書いてて楽しいx2*^^*
しかし蘇芳と燕青の喋り方が分からず 微妙になりました・・^^;
楽しんで頂けたら嬉しいです☆

鳶に油揚げをさらわれる

彩雲国物語 国王執務室-。
やっと休憩をとれた国王:劉輝の安息の時は短かった。

霄太師が現れた為だ。
いきなり目の前に山程の巻物を積まれた。
そうして、くそ爺もとい霄太師は言い放った。
「いくらでもお選び下され。」
霄太師が来た時点で嫌な予感がしていたが、その予感がますます高まった。
そんな王の予感に気づかぬのか、飄々とした様子で、巻物を広げる。
着飾った女性の絵姿と、その人物の名前、家柄、趣味、等々が書き連ねてある。
ずばり王の妃候補の姫達の目録であった。
「こんなもの要らぬっ!」

未だ秀麗を諦めきれない劉輝は切って捨てた。
王としての義務で十三姫を妃にする事は内定したものの、彼の想い人は未だ独身だ。
「そう仰らずに。主上も一人寝は淋しいでしょう。
 古今東西失恋した男には新しい女子を、と相場は決まっておりまする。」
「余は振られてなどおらぬ!!」
こと初恋の君に関しては非常に気が長く、諦めが悪い劉輝である。
桜が咲くまでの約束が政変によりなし崩しになった為、未だ初恋にしがみついていた。
本当に根性だけは、人一倍ある劉輝である。
「おやおや。ま~だ~現実を見ようとなされんのですかな。
 贈り物しても、文を送っても反応なし。直接会って、求婚しても求婚しても断れる有様。
 これで何処が振られてないと?これで失恋してないなら、世の中から失恋男はいなくなりますな。」
ぐさりっ!容赦のない攻撃によろめく王。
おーほっほ、と高笑いをする、霄太師。圧倒的優勢疑いもなし。
「しゅ、秀麗は今だって余に優しいのだ!」
「秀麗殿は誰にでも優しいですじゃ。」
何とか言い返すも、秒速で「お前だけではない」とすっぱり否定された。
「ううう。」目はうるうるし、既に半ば泣き出しそうになっている。
「ほ~ら~。もういい加減認めなされ。しつこい男は嫌われますぞ。」
「余はしつこくなどしておらぬ!!」
「まだご自覚がない?困ったものですじゃ。諦めの悪い男も嫌われますぞ。」
「諦めたらそこで終わりではないか!」
諦められるわけがない。
「女子は秀麗殿だけではありませぬ。この姫はどうですかな?」
巻物を広げながら薦める霄太師。
「要らぬと言ってるだろう!!余は振られてなどいない!!いないったらいないのだ~」
うわーんっと泣き出した劉輝を見ても、霄太師はわざとらしく溜め息を吐く。
「万年失恋男であるのに、まだしぶとく振り返ってくれると思い続ける事ができる根拠は何ですのじゃ?」
さらりとヒドイ事を言うこの国の大師である。
「し。刺繍入りの手巾をくれたし、美味しい饅頭をつくってくれたし、二胡だって聴かせてくれた!!そうだ!余は振られてなどおらぬ!!もっと真心込めればきっと!!」
「それは主上が秀麗殿を好きなきっかけや理由であって、万が一にも秀麗殿が主上を好きになってくれる
理由ではありませんな。」
またしてもばっさりと切り返し攻撃された。
「そ、そんな事ないのだ。桜の下で会った秀麗は、頬を染めて余を見上げそして・・。」
遠くを見つめ夢みるように、乙女思考に突入する王。腕まで胸の前で組んでいる。
「妄想はやめなされ。」
ぴしゃりと王の妄想もとい夢語りを止めさせる。
「・・・まあ、今日のところはいいですじゃ。この書面に署名・捺印して頂ければ。」
珍しくあっさり引き、別の書簡を取り出した。
「何だ?・・・結婚式の招待状?何でこんなのに余の署名・捺印が必要なのだ?」
確かにそれは結婚式の招待状だった。
「おや。間違えてしもうた。」
わざとらしく言うくそ爺。その眼が確信犯的な輝きを放っている。
「もう年じゃないのか。年寄りは年寄りらしく引っ込んでろ。」
それに全く気付かず、追い払う口実ができたと嬉々としている王。
「そうですのう。では老体に鞭打って秀麗殿のお祝いしますじゃ。」
そう言って退出しようとする。
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!!しゅ、秀、秀麗の、い、祝い?」
「秀麗殿の結婚式なら当たり前ですじゃ。」
からーんと劉輝の手から筆がすべり落ちた。
眼にも止まらぬ速さでその書簡を取り上げる。
書簡の最後に差出人が書いてあるはずだ。

”私どもの婚礼に参加いただければ嬉しく存じます。”
”陸清雅 紅秀麗”

「う、嘘なのだ~っっ!!!!」執務室に劉輝の涙混じりの悲鳴がなり響いた。
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後書

素敵な小説を書いている新城要さんのサイトへ行った時にコメント欄に書き込みした
「不憫王様が結婚の知らせ受け取った時の魂抜ける話」です。
いきなりこの話が下りてきました(笑)
主上は可哀想なほど萌えます よって私の小説はこんなのばっかり。
劉秀派の人から抗議の声が聞こえてきそうな^^;
でもすごく楽しいんですよね
本当は側近二人も会話にいれたかったのですが長くなりそうでいれませんでした。
そして結婚式の話に続くのでした(笑)
お楽しみ頂けたら幸いです\(^o^)/



結婚式舞台裏その5(次なる縁談へ)

陸清雅と紅秀麗の婚礼は無事終わり、花嫁は陸家へ輿で、持参する調度品や
衣装とともに、運ばれていった。
これで本日の予定は終了である。
娘を見送ったばかりの紅邵可が少し寂しげな、けれど穏やかな表情で下の弟にねぎらいの言葉を掛ける。
「玖琅、お疲れ様。婚儀が無事終わったのは君のおかげだよ。」
「邵兄上。秀麗は私の姪。当然の事をしただけです。ただ・・。」
「なんだい?何か問題でも?黎深のことなら、百合姫と絳攸殿が面倒を見ているよ。」
「黎兄上の事ではありません。・・そうですね。やはり早急に絳攸との縁談まとめておけば良かったですね。」
 若干顔をしかめながら言う。
「おや、今更な事を言うね。君らしくもない・・清雅君は気にいらないかい?」
「いえ。前王のせいで零落したとはいえ、陸家は旧紫門家の1つ。そして無能な前当主ならともかく彼なら必ず
家を建て直すでしょう。王家の一族であり有能な官吏でもある。そして年齢的にも釣り合ってる。
紅家の姫の嫁ぎ先としては悪くない。
嫁にされたが最後官吏を辞めなければいけない王や何の力にもなれない、ただの平民よりずっといい」
「じゃあ何故そんな顔をしてるんだい?」
「陸家の当主では、婿にできないからですよ。その1点が残念です。」
「ああ。」心得たように頷く
「私は秀麗かその夫を当主に据えたかったのです。当主代理と補佐に伯邑を」
以前言っていた話だ。紅家の跡継ぎ。直系の少ない紅家の問題。
絳攸と秀麗の結婚はそれをすべて解決するものだった。
秀麗は紅家に残り、黎深の養い子である李絳攸もまた紅家の人になることができる。
そして有能な二人には紅家の権力、紅家には優秀な当主を戴くことができる。

そうでなければ秀麗が別の男を婿に取るという手段もあったのだ。
紅家当主候補に相応しい血筋と実力のも持ち主であればそれはたやすい事だった。
だが秀麗は別の男に嫁いだ。
こうなると途は二つだ。
前当主で現当主の弟である黎深の養い子 李絳攸か。
同じく現当主の弟である玖琅の息子 紅伯邑か。
絳攸は冗官から這い上がり今また刑部侍郎の地位を得ていた。そして王の側近。
実力は文句なし。ただ血のつながりがないという点を除いて。
伯邑は逆だ。血のつながりなら文句ない。
けれどもまだ仕事の点では、絳攸には及びつかない。


玖琅にとって絳攸は可愛い甥だった。
あの性格ひねくりまがりのどこがどう間違ったのは分からない兄の元で、よくぞここまでまっすぐに優秀に育ったと感心すらしていた。
(百合義姉上!よく頑張りました!!)
心密かに義理の姉に拍手を送っていた。
そんな甥と息子の次期当主争いなど見たくはない。
二人とも当主の地位にさほど執着していない。むしろ伯邑は絳攸の事を兄のように慕っている。
だが当主争いに巻き込まれたら、周りがあらぬ事を吹き込む。
仲が良いとはいっても始終会えるわけではないから、その隙を狙われたら、特に若い伯邑は讒言を信じてしまう
危険がある。
だから今の内に何か手をー。

こんこん。
気付けば、扉を軽く叩く音がしていた。
「どうぞ?」
入ってきたのは百合姫だった。
「難しい顔してるね。どうしたの、玖琅。」
「絳攸殿の縁談の話だよ。」のほほんと邵可が返す。
「ええ!!絳攸に縁談がきてるのっ?どんな子?可愛い?」
「邵兄上!そうじゃないでしょうが。」
「いや、そうなるよ。だって君は伯邑君が当主向きではない、補佐向きの人間だって言っただろう。」
そうしたら絳攸殿を次期当主にと考える。
出自が確かでない彼に足りない身分を、「紅家の姫」を娶ることで補わなければならない。
すると再び紅家の中から、彼に相応しい姫を探さなければならないのだ。

途中からのこれだけの会話で百合姫は話の概要を悟った。
「私も秀麗ちゃんがお嫁さんに来てくれたら嬉しかったな~。」
「全くです。秀麗ならあの黎兄上を舅に持っても平気でした。」
「そうだよね。秀麗ちゃん以外あんなわがまま大魔王の舅なんか無理だよ。」
二人ともに話しながら気づいた。
そうだ。絳攸の女嫌いよりも何よりも高く厚い壁があったのだ。
(秀麗以外に誰が黎兄上を舅に持てるんですか!)
かつて自分が言った言葉が蘇る。
・・・本当にどうするのだ!!
蒼褪める百合姫と目が合う。
「こ、根本的な問題が・・・・このままだと絳攸に嫁の来手がありません!!」
「・・・ど、どうしよう。」
「・・奇跡が二度起きたなら三度目も起こして見せましょう! 
 人間死ぬ気になれば何でもできます!!諦めてはいけません!」
「奇跡が二度って何?」首を傾げる百合姫。
「薔義姉上と百合義姉上の事ですが?」
「は?私と義姉上?」
「妻がどうかしたかい?」
「糸が切れた凧のような邵兄上を捉まえて、妻になり一箇所に留めて下さった上
秀麗を産んでくれた。奇跡一度目です。気づいたらどこぞ放浪してた邵兄上をあんなに御せる女性がいるとは!」
「・・・・」
糸が切れた凧と評された邵可は思わず無言になってしまった。
切ないが弟に嘘ばかりつき、信用をなくしたのは自分。
評価がまっとうな為、何も言えなくなってしまった。
「なるほどね。で私って?」
「あの黎兄上の嫁になれる可能性があるのは百合義姉上しかいないと思っておりました!
 他の女性なら3日で逃げ出す・・失礼3日ももちませんね・・1日でしょうか。
 ですから後は黎兄上がその気になるかということだったんです。
 資金準備しておいた甲斐がありました。奇跡二度目です。」
「酷い仕打ちだよね。今でもよーく覚えてるよ。」
後ろめたい二人は慌ててあさっての方向を向いた。
「お。お茶淹れようか」
「「要りません!」」二人の声が重なる。
邵可の地獄茶のまずさは身に沁みて知っている。
玖琅は素早く茶器を取り上げ、素早く自分で準備し始めた。
「私がやります。邵兄上はお座り下さい。お菓子も用意他致します。」
相変わらず器用で心遣いができる弟である。
「というわけで奇跡三度目を目指し、今から準備しなければいけません。
 総動員して嫁探し用の名簿を作成して、後は見合いですね。」
話しながらも、お茶を淹れる手は素早く動いている。
瞬く間に二人分のお茶と菓子を用意すると、
「では早速仕事に取り掛かりますので、失礼します。
お二人はどうぞゆるりとなさってください。」
そして彼は次なる仕事:大魔王 紅黎深を舅にもっても平気な女傑もとい、甥;絳攸の嫁さがしに奔走することに
なるのであった。

結婚式舞台裏 その4(嵐の中心で愛を叫ぶ)

嵐の中心は静かなものだと、俗に言う。
それは本日結婚式が進行中の貴陽紅本家でも同じだった。
ただし嵐が通常天候という人知が及ばぬところで発生するのに反して、こちらは人の手によるものだったりする。
姪を限りなく愛し(愛し過ぎという意見多数)、陰から見守ること十数年(いい加減名乗れという意見多数)
その姪が嫁ぐ相手が相応しいかどうか試験(という名の暗殺者だったり、毒酒だったりした)していた。
賢明なる読者の皆様にはもうお分かりだろうが、その叔父の名は、紅黎深。
本日の式もあらゆる妨害騒動を起こし、弟である紅玖琅はそれを秀麗には気づかれぬよう秘密裏に処理しながら、
遂に最終奥義:二人の兄 紅邵可を引っ張りだした。
そして鶴の一声で、この列席者控室に放り込まれた次第である。
当然のことながら、控室には、彼の妨害を止めることができる数少ない人物達がいた。

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「いい加減諦め・・認めてあげたらいかがですか?」穏やかな声で悠舜がそう黎深に問いかける。
「全くだ。まあ叔父だと名乗れてもいない、叔父とも思えない行動とってるお前の許しがいるとは思えんが。」
その声に応えるより先に、別の声が重なった。ものすごい美声である。
通常の人間であれば、失神するほどの声だが、誰も倒れない。
この控室にはそんな可愛げのある通常の神経の持ち主はいなかった。

「いくら悠舜の言うこととはいえ、これは譲れんぞ!!
何が悲しくて、可愛い可愛い可愛い姪をあんな陰険男にくれてやらねばならんのだ!
しかも鳳珠!私が秀麗の叔父と思えないだと!!
秀麗は兄上の娘なのだぞ!間違いなく私と血が繋がってる私の最愛の姪だ!
しかも私の行動が叔父とは思えないだと!こんなに日陰から見守ってる
心優しくて繊細な叔父など彩雲国中どこを探してもおるまい!」
怜悧冷徹冷酷非情と言われた噂などどこかへ飛んでいきそうな剣幕である。
否、背後にはどろんどろんと暗雲が渦巻き、その瞳に殺気に満ちた光を宿していた様子は
噂通り大魔王だった。
そして放たれた言葉は突っ込みどころ満載だった。
凡人であれば我が身可愛さに、その言葉を心の中のみで叫ぶものだが、やはり
悠舜と鳳珠は悪夢の国試を及第した者だった。
「お前の何処が心優しくて繊細なんだ。お前が優しいと言うなら世の中法律いらんぞ。
善人だらけでな。しかもお前の神経の何処が繊細なんだ?図太過ぎて周りが倒れているだろうが」
ぴしゃりと冷静に入る容赦のない突っ込み。
「もういい加減、日向から見守ってあげませんか?」
「確かに日陰すぎだな。全く私と悠舜が幼い秀麗を追いかけ回すお前に、
どれだけ振り回されたことか。彼女が成人してもこれか。」
「あの時の秀麗殿はとても可愛らしかったですね。懐かしい。」
「秀麗が可愛いのは当たり前だ!というか今でも可愛い!!」
「ああ、あの幼子が花嫁か。月日が経つのは早いな。」

その言葉を聞いた途端、黎深の両手に握られた扇は、ばっきっんっと折られた。
ちなみに部屋には同じように折られた扇が70本ほど散らばっていた。
(それだけしか折ってないなら良しとしましょうか)さらりと流す悠舜はやっぱり悪夢国試組、状元及第者だった。
自らを黎深と比べて平凡と評した彼だが、世の中の本当に平凡な人から見れば十分規格外だった。
ぶるぶると手を震わせている友人をしみじみと眺め、卓に頬杖をついた鳳珠は呆れた声をだした。呆れた声でも麗しいのは、彩雲国広しといえど、彼だけかもしれない。
「いい加減祝福してやれ。」
「できるか~!!私の秀麗が嫁に行くなどど!!
 秀麗にはこの国一番の男でないと相応しくない!
 兄上の義理の息子になるんだから!・・息子 真っ赤な他人が兄上の息子・・
そんな馬鹿な・・むしろ私がなりたい・・というかそんな男許さん!!!」
遂に支離滅裂な事言い始めた姪馬鹿もとい、叔父馬鹿。親馬鹿という言葉が存在するのだから、この場合、叔父馬鹿の方が適切と言えるかもしれない。
まるで愛娘を嫁に出したくない父親の図である。
実の父が飄々としているのに反して、名乗りもできない叔父がこれである。
悠舜と鳳珠の間に無言で会話が成り立った。
(「駄目だな」「駄目ですね」)
何言っても無駄、という結論に一秒で達した二人は作戦変更した。
無理だった説得から酔わせて寝かせる手段である。
「まあ飲め。」
「そうですよ。さすが紅家。これなんか極上のお酒ですよ。」


この後、作戦通り酔った黎深はもう妨害しなかった。
その意味では作戦成功である。だが・・
「私と秀麗の思い出156話、終わり。いい!何て良い話なんだ!・・では声援に応えまして、次は聞くも涙、語るも涙のお話。
あれは兄上と私と秀麗が・・。」
酒に強い黎深は、なかなか眠らずえんえんと「この国一番の素晴らしい兄上と同じく、この国一番の可愛い姪との思い出」を語り始めたのである。
(「これは何時になったら終わるんだ!!いい加減うんざりだ!」)
(「・・・疲れましたね・・・」)
(「叔父と認識されていないのに何故こんなに思い出話がある!何処まであいつの妄想なんだ!」)
(「邵可様曰く、7割妄想 2割9分現実を脚色、1分、真実とか」)
(「・・・だんだんあいつが哀れに思えてきた・・。」)
この後、何とか黎深を寝かせて、結婚式に列席した二人は花嫁から「体調お悪いのですか?」と気遣われるほど精神的疲労していた。
嵐の中心もとい原因である秀麗は、決してその被害にあうことはなく、周りが甚大な被害にあったのであった。

結婚式 舞台裏その3(清x秀)

そんなこんなで、この彩雲国の王、紫劉輝とその側近、藍楸瑛は貴陽紅本家の前へ来ていた。
が、今では秀麗は紅家当主の一人娘。
その屋敷の使用人や警備は尋常ではない。
人気がなく広いがぼろかった以前の屋敷なら、いくらでも忍び込み・・もとい訪問できたのだが、
これでは無理である。
「主上、やはり諦めましょう。」
「いやなのだ~」
瞳をうるうるさせて、首を振る王ははっきりいって捨て犬の風情である。
拾った犬は最後まで面倒みましょう、などどいう標語まで見えそうで、楸瑛は軽く眩暈がした。
(どうしたものか~)

「そんなところで何されてるんですか?」
「「静蘭!!」」
二人の声は重なるが、その声の感情は見事に正反対であった。
(兄上~。兄上なら秀麗に会わせてくれる)喜色の王。
(うわ~。この忙しい時に何で厄介事持ってきたって風情の黒いオーラが見える)内心、恐怖の楸瑛。
事情を聞き終えた静蘭は楸瑛にだけ聞こえるよう話掛けてきた。
(何で止めないんです!!この役立たずが!)
(・・・・いや、止めたんだよ?でも無理でね)
(うるさい!!大体常識で考えなさい。式当日、花嫁が一人きりになる場なんてほとんどあるわけないでしょうがっ)
確かに。あったとしても、過去の男・・ではないが、身内でもない男性と二人きりになんてどんな醜聞になることか。
秀麗を溺愛しまくってる、紅家が許すわけなかった。
(でもね。主上が哀れでね。で、最後に徹底的に失恋したら却ってすっきりするんじゃないかと。)
別に今さら王との仲を取り持てと言っているわけではない事を暗に伝える。
(・・・一理ありますね)
彼とて愛する弟の事は気に掛っていた。
かと言って王と臣下の花嫁を会わせるわけにはいかない。
彼女は一時は、皇后候補に挙がった姫だから尚更だった。
そして秀麗お嬢様も静蘭にとっては大事なのである。
「・・・仕方ありませんね。」
静蘭は少し考え事していたかと思うと、何やら地味な衣2人分を彼らに手渡した。
「これは今日の婚礼の臨時作業者用の作業着です。これに着替えて行ってらっしゃい。」
「静蘭~。ありがとうなのだ~。」
泣きだしそうに喜ぶ王。背後に尻尾が見えるのは幻影か。
「但し、お嬢様の迷惑が掛らないように!他の列席者の方に会わないように注意して下さい。」
「うん。うん。」
「それとこの作業着を着たものの作業は後一刻程で終わります。
 鐘が三つなった時点で撤収ですので、その時には速やかに帰って下さい。」
「それは、秀麗殿に会えなくても、って事かな。」
「当然です。」
そんな~と泣き喚く劉輝に絶対零度の微笑みで「時間なくなりますよ?」と静蘭は言い放った。
「会えるかどうかは貴方がた次第です。では私は他の仕事がありますので、これで。」
これが彼の最大限の譲歩だろう。

貴族の屋敷の造りはどこも似たりよったりである。
劉輝も楸瑛も慣れ親しんだ空間である為、さほど時間は掛らず花嫁の控え室の窓下にいた。
二人して窓をのぞく。
そこには、薄紅色を基調とした、更に濃くなっていく紅色を重ね着した絢爛な衣装を
身に纏った秀麗がいた。
衣装に施された金糸、銀糸の刺繍がより彼女を艶やかに見せている。
(・・・これは驚いたな)
さすがの楸瑛も驚いていると、何やら声がする。
「秀麗・・何て可憐な・・・私が嫁にもらいたい・・・
叔父さんです・・・君のことを誰よりも思って・・・素敵で優しい紅黎深・・。」
ぎょっとして周りを見渡すと・・出た。
そこには紅黎深が木の上にいて、愛しの姪をストーカーしていた。
感想と欲望と自己紹介がごちゃ混ぜであることを呟いている。
慌てて、黎深の目の届かない近くの茂みにに王を連れて避難。
「楸瑛~っ。何故遠ざかるのだ。あとちょっとで秀麗の元なのに!・・綺麗なのだ、あのまま余の嫁に!」
(声落として下さい。黎深殿に見つかってしまうでしょう)
(何?黎深がいるのか?どこにってあんな所に!びっくりなのだ)
(騒ぎになってはまずいです。立ち去るまで待ちまちょう)
(うう。秀麗~)
彼はなかなか立ち去らなかったが、侍女が何やら伝言を携えてくると慌てて母屋の一画へ
走り去った。

やっと会えると思った劉輝が顔を輝かせて窓辺に走りより、声を掛けようとしたその刹那。
「おい、秀麗」
「何よ清雅」
新郎の陸清雅が突如として控室を訪れた。
(ここぞという時に見事に邪魔が入るね)へこむ劉輝を横目で見ながらの感想である。
「へえ。結構似合うじゃないか。」
「・・・。ありがとう。意外ね。ちゃんと誉めてくれるなんて。」
「俺は紳士だせ。」
「寝言は布団の中で言いなさいよ。」
「ほう。今夜から聞かせてやるよ。」
にやりと笑む清雅。
「い、要らないわよっ!・・・で、何の用なの?」
「害虫駆除」
「は?何で今日の主役のあんたがそんな事するの?やめなさいよ
 婚礼衣装汚したらどうするの?代えなんてないのよ?
 そもそも一昨日から皆が掃除してくれてるんだから、虫なんていないと思うけど」
「いるんだよな。しつこいのが」秀麗には聞こえないよう小さい声でそう呟くと窓辺に歩み寄る。
そして高速で腕を振り上げた。
ばびゅんっ!!
固い石が彼ら目掛けて飛んできた。
何とか避けれたのは二人とも幼少の頃より培った武芸による動体視力と運動神経のおかげである。
「ちっ!逃がしたか。」
((うわー。害虫って我々の事か))
「え?本当に虫いたの?」
「・・ああ。」(さて次はどんな手でいくか)
実は決しては表には出さないが、かなり独占欲が強く嫉妬深い清雅にとって、自分のものと決めた
相手に手出しする相手に対する気遣いなど皆無である。
秀麗が激鈍く、また男女問わず人気者だから余計である。
如何に効果的に、追い払うかをその切れすぎる頭脳で考え中である。
物理的攻撃が難しいのなら・・・。
(誰のものか見せつけ、精神的打撃を与える、かな)



つかつかと秀麗の元により隣に腰掛ける。
そしてその腹部に手をあてる。
「?どうしたの 清雅?」
「まだ動かないな。」
「くすくす この間も言ったでしょ。2ヶ月、あ、今3月かな でもまだ全然人の形じゃないって。」
「そうか。・・名前はどうする」
「気が早いわね。」

(って結婚式がこんなに早かった理由って秀麗殿が妊娠していたからかー!?)
まさかの出来ちゃった婚に楸瑛は驚愕した。
(いやしかし、あの慎重な清雅君が冒険したね~)
紅家三兄弟に溺愛されまくってる彼女を妊娠させたとなると・・・恐ろしい。
特に姪馬鹿とか世界の中心で愛を叫んでる叔父とか、愛の空回りしてる人とか(全部同一人物)
(よく生きのびたよね)
違う観点から清雅に賞賛を送る、王の側近である。
(じゃなくて、今の会話聞いて、主上はっと うわー夢の世界いっちゃたな)
王の様子を伺った楸瑛は、そこに壁に向かって一人言を呟き続ける劉輝を見た。
どう見てもあっちの世界へいってしまっている。

その時ごーん ごーん ごーん と鐘が鳴った。
「さ、主上帰りましょう」
「・・・・・。」
全然動かない王を引きずって楸瑛は何とか帰城した。
王の失恋を決定的にさせるという目的は達成したが、
達成しすぎてその後、10日大雨の王の晩酌に付き合う羽目になった・・。


*****************************************************************************
後書

やっと劉輝 大雨編終了~ 結局彼と秀麗は会えずじまい
あれ 可笑しいな?? 当初の予定では会う予定だったのに。
私が書く王サマはどこまでも不憫のよう。ごめんよ!劉輝!
して清雅がやっと登場☆わーい。
ですが、王との対決??は彼の圧勝でした。
御史台や姪馬鹿叔父相手に奮闘している彼からすれば、
天然王サマは全然相手にならず(笑)

楽しんで頂ければ幸いです。
コメント頂けるともっと嬉しいです*^^*


















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30代OLが歴史・節約・日頃・二次小説のことを書き綴っています。 コメント大歓迎★ ですが、宣伝や本文に何も関係ないもの もしくは激しく不愉快、コピペ等、そういった類は、私の判断により 誠に勝手ながら削除の方向です。楽しく語りたいです♪ 二次創作小説もありますが、このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。

Author:雪月花桜
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歴史を元にした小説なんかも大好きでそれらについても語ったり、短編なんか書いてみたいです。
現在それ以外でもコナン・CLAMP・彩雲国、天河などの二次小説をupしておりますし、OLなりの節約・日々の徒然を語っています。

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