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秘められた言の葉

3月14日ホワイトデイの当日、小鳩は卒業したばかりの高校の友人2人とファミレスでランチをしていた。
「ねね小鳩ちゃん、それ初めて見るネックレスね~。新しいし」と言ったのは理知的な顔立ちの早苗。
「あ、はい!藤本さ・・じゃなくて清和さんがくれたんです。今朝あの、ホワイトデイだからって。」
「うわーいいな、高そうね シルバー?プラチナ?付いてる石はダイヤ?」
宝石の価値を気にしているのはかなり派手な怜奈。
「さあ?小鳩良く分からないです。」
小鳩にとっては貴金属が何とか付いてる宝石が何かという事はあまり重要ではなかった。
重要なのは、夫となった清和さんがくれたという事。
それだけで彼女にとっては宝物になった。
「しかし、結婚したって聞いた時はびっくりしたけど、ラブラブで何よりだね~。」
「そうそう。もう驚いたし!」
「は、はい。すみません。」
「いや、別に責めてるわけじゃないし。」
ややこしいから、卒業までは黙っておいた方がいい-という清和の助言通り、小鳩は何も言わず卒業式直後に
友人達に打ち明けたのだった。
その時の驚き具合といったら、かなりのものだった。
「「ちょっと見せて~。」」
「あ、はい。」
外して二人に見せる。
「これ鳩だね。」
「あ、本当だ。」
そのネックレスは小さい鳩のモチーフ。目にダイヤモンド、そして羽の端に緑、紫、赤の宝石が付いてる
デザインだった。
「そっか小鳩ちゃんの名前にちなんであるのね~旦那様やるう~。」
「ええ!?そうなんですか!?可愛い鳥さんだとばかり!?」
顔真っ赤にして驚く小鳩。
((気づいてなかったの))
二人して呆れる。小鳩はこういうことに鈍い。
「愛されてるわねえ~。」
「うん、うん」
その後ひとしきり、新婚生活はどうだと冷やかされて楽しい時間は過ぎていった。

「じゃあ、小鳩行きますね。楽しかった~また!!」
嬉しそうに微笑みながら大きく腕を振って小鳩だけ店を後にした。
最初から昼だけという約束だったので、早苗も怜奈も笑顔で見送る。
そして彼女の姿が完全に見えなくなった頃。
後ろの席に声を掛けた。
「という訳だから諦めたら?木内君」
「うん。もう無理じゃない?」
「るせっ!」
そこに居たのは高校時代のクラスメイト・木内。酷く打ちひしがれた顔をしている。
彼はずっと小鳩が好きで卒業式に告白しようと思っていたのである。
しかしまさかの「結婚しました」発言によって出鼻をくじかれていた。
いきなり過ぎて、諦められなかった。
彼女自身が後見人みたいな事を言っていたので、藤本の事はただの兄代わりだと思っていたのだ。
同じく急な話過ぎて、お人好しな小鳩を心配している二人に頼み、本当に彼女は結婚して幸せなのか、
騙されてないのかをそれとなく確認してもらったのだ。
もしも、不幸せなら、自分にもまだチャンスがあるとも思った。
「そりゃ、10以上も年の離れた人と高校卒業した途端、結婚なんて
遺産目当てじゃないかって心配したけど、全然違うみたいだし。」
「だよね~。何より小鳩っちが幸せそうだし。」
「・・分かんねえだろ、まだ」
「だってあんな高価なネックレスがチョコのお返しだよ?大事にされてるじゃん!」
「ただ金があるだけかもしれないだろ!」ふてくされてく木内。
「それだけじゃないわよ。」と一人感心したような早苗。
「え?何?早苗他にも何か気付いたの?」
「あれね、アンティークジュエリーよ、きっと。・・やるわね。」
「何だ??それ?」
「え?何それ?」
「あのね、鳩は小さくて小鳩ちゃん自身を示してるでしょ!?」
「うん。そうだね」
「だから後は宝石なの。」
「「?」」
早苗は傍らのナプキンを取り出し、ボールペンで何やら書きだした。
Diamond
Emerald
Amethyst
Ruby

「これ、さっきのネックレスについてた宝石だよね。」
「うん。これのね、頭文字を繋げてみて。」
「「頭文字??」」
「そう、つまりDiamondはD、EmeraldはE、AmethystはA,RubyはR」
「あ~!!DEARになるよ。」
「そうそれにモチーフ併せるとね」
「えええ~!」

Dear 小鳩
~愛する小鳩へ~
宝石に秘められた言の葉。

「しかも、小鳩ちゃん自身には何にも言ってないところが、また。」

夜の水族館 ~リクエスト小説~

彼が来ない。

今日は藤本さんとの初デートの日。
昨日から、うきうきわくわくして仕方なくて、何度も服を選んだ。
頑張ってお洒落もした。
よく遅刻する自覚もある小鳩だが、デートにしては少し遅い14時待ち合わせというのもあって、時間通りに来たのだ。
なのに肝心の彼が来ない。

約束の時間から30分過ぎた頃、小鳩はさすがに不安になってきていた。
「どうしたんでしょう・・?」
うっかりの小鳩自身ならともかく真面目で几帳面な彼が事前に連絡もなしに遅刻など考えられない。
「急ぎのお仕事、でしょうか・・?」
いや緊急な案件であっても彼は連絡をくれる人だ。
電話しても留守電サービスに繋がるばかり。
メールして連絡を待つことにした。
待ち合わせの公園のベンチに腰掛けて項垂れる。
(…藤本さんに何かあったとかじゃないですよね?)
(事故とか…。)
(小鳩、とても楽しみにしてきたんですけどね…。)
彼への心配と楽しみにしてきた事が無しになりそうな落胆感が混ぜ合わせになって、ひどく
泣きたくなる。
2時間経っても連絡がつかず、でも彼が来るかもしれないという思いから
帰ることもできず、夕方の公園で遂に、小鳩の眼からぽろぽろと涙が溢れ出た。
(どうしましょう…。)

その時携帯電話が鳴った。
表示された着信は藤本清和。思わず反射的に電話に出ていた。
「…は、はい!もしもし、小鳩です!!」
「お前何やってるんだ!?」
「え、約束通り公園にいます。藤本さんこそ・・」
どうして約束通り来てくれないのか、問いかけようとしたのだが、彼の声に遮られる。
「明日だろう!?」
「え?」
「出掛けるのは明日の22日だろうが!」
「だって来週の日曜日って・・!」
慌ててスケジュール帳を捲りながら答えると、22日は確かに日曜日。
しかし手元のスケジュール帳には21日の欄にデートの記載。
・・・どうやら書き間違えたらしい。そしてその曜日間違いにも気付かなかった。
「今日が土曜日だろう?ったく」呆れた様な藤本の声が響く。
「そ、そのようです・・。とほほ」
「で、お前まだ公園にいるのか?」
「は、はい。すいません。」
「よく待ってたな。」ほんの少し藤本の声が優しくなった、様な気がした。
「はい。もしかして藤本さんが遅れてくるかも、って思って。」
「お前じゃあるまいし。」
「うっ。」御尤もな突っ込みに唸るしかない。
「…それで涙声なのか」
その小さな小さな呟きは、彼女の耳には届かなかった。
「え?」
「いや、何でもない。…じゃあドジなお前の為に、これから遊びに行くか。」
「あの、でもお仕事は…!?」
「今終わった。明日行くはずだった水族館前に17時までに来られるな?」
今16時過ぎ。水族館はここから電車で30分のところにある。
駅までの歩きの時間を考えても小鳩は行ける。
「は、はい!行けます!!」
「あの、でも水族館もう閉まってしまうんじゃ・・!」
約束している水族館に小鳩は小学校の遠足で行ったことがあった。
閉館時間は17時だったはず。

「ああ、大丈夫だ。今あそこの水族館、夜間営業してるから」
「え?そうなんですか?藤本さんよくご存知ですね。」
「まあな。じゃあ、俺もこれから向かうから。」
明るくなった彼女の声に安堵しながら、電話を切る。
再会してからこっち色んなドジを見続けてきたが、今回「日にち間違い」という項目が新たに加わった。
(しかし、外出前に聞いた話が意外なところで役に立ったな。)
昼休みにアシスタント事務の女性数人が話していた、最近流行の夜間営業。
会社帰りの社会人やカップルなど大人をターゲットにした、美術館や水族館でのナイト営業。
通常の入場料より少し安めな料金設定があったり、夜ならではの催しをしたりして客を取り込もうという
施設側の集客アイディアらしい。
その話の中に明日行く予定だった水族館の名前もあったので、記憶に残っていた。
(確か夜ならではの生態を見るという名目で懐中電灯片手に回るとか言ってたな・・。)

「ナイト☆アクアリウムへようこそ!!」
結局17時過ぎに無事合流した二人。
その際にお約束の二人のやり取りがあったのは言うまでもなかったりする。
ナイト☆アクアリウムという名前で、催されているのは
水槽照明はもちろん、魚名板から観覧通路の明かりまで消えて、文字どおり真っ暗な水族館。
その中を観客は入口で1人に1本ずつ渡されるLED懐中電灯を片手に、自分自身で水槽を探しながら観覧する
という方法だ。
夜の魚の生態も見られるし、昼と違う雰囲気も新鮮だ。
スリルを味わえるという点でもなかなか良い。
がそこは、小鳩。
「藤本さん藤本さん!あそこのお魚さん光ってます~♪ っきゃあ!?」
「おい、大丈夫か!?」
「ひゃ、はい。ありがとうございます~。」
そう明るい昼間でさえ、何もない所で躓く彼女がそんな暗さの中、ドジしないわけなかったのである。
「・・・何度やるんだ?」
かれこれ10回以上は転びそうになる彼女をすんでのところで助け起こしてる気がする。
「今度は気をつけます!!」
「その台詞も何度目だ?」
「うう・・藤本さんはいじわるです~!」
「きりがないな。」
そう言うなり藤本は小鳩の肩を寄せた。
あまり人前で手を繋いだり接触するのを苦手としている彼の珍しい行動に、彼女は眼を丸くする。
「・・・・今日は特別だからな。」
わざとぶっきらぼうに言う藤本の横顔が少し赤いのは気のせいだろうか。
彼らしい言い草と優しさに、小鳩は嬉しくてたまらなくなってしまった。
頬が緩むのを抑えられない。
「はい!!」
そう言いながら小鳩は自分から藤本に寄り添っていった。
(小鳩、幸せです!)
******************************************************************************************************
2周年企画リクエスト小説
ツンデレラ様の「藤こばで初デートor初デートの約束に至るまで」です。

ツンデレラ様へ
本当にお待たせいたしました~。><
どうぞ、楽しんで下さいませw
お気に召したら、お持ち帰りして頂いてOKです*^^*
何でしたら、この続き書いて頂いても・・・!!(←図々しいから)

初詣の願いと祈り

「おい、もう出掛けるぞ。」
身支度を整えた藤本が小鳩に声を掛ける。
本日は元旦。
二人が夫婦になってから初めての「初詣」になる。
「あ、はい!っきゃあ!」
「おい 危ない!!・・・ったく、マフラーちゃんと巻いとけ。」
例によって自分の長いマフラーで躓きすっ転びそうになる彼女を
慣れた仕草でフォローする藤本である。
そんな恒例のやりとりを正月から交わしながら、近所の神社へやってきた。
近辺では大きい部類に属するこの神社は、さすがに正月の午前中は混んでいる。
体の小さい彼女は人混みに圧倒されそうになる
けれど、はぐれない様に、何とか藤本に必死でついていくが段々きつくなってきた。
そうしたら彼は無言で腕を引っ張ってくれた。
「・・・危ないからな。」
普段は照れて人前で触れてくれない彼が示す、この優しさに自然に笑顔になる。
「はい!!」ぱあと花が咲くように笑う小鳩を見て、藤本もつられて微笑んだ。

賽銭を投げ、パンパンと手を合わせ、願い事を頭に思い浮かべる。
しかし脳裏によぎったのは去年の元旦の事だった。
去年の元旦もこの神社に参拝した。
藤本さんの前で少しでも綺麗になりたくて、振袖を着たがよく躓くし、歩き方がよく分からなくて
階段の多いこの神社で足を痛めてしまった。
結局藤本が背負ってくれての帰宅になってしまった。
(今年こそ藤本さんの迷惑にならないようにしなければ・・!)
そこでつらつら思いだしながら、はてと思う。
(そう言えばあの時は何をお願いしたのでしょうか?)
あの時は確か・・。

『藤本さんのお嫁さんになれますように』


(そうでした。小鳩の願いは叶ったんです。)
神様 神様 ありがとうございます。
小鳩の願い 世界で一番好きな人のお嫁さんになること。
そして彼の傍にずっといることは叶いました。
ありがとうございます。


そして願いが叶ったと自覚したと同時に仮初めの肉体と記憶で奮闘していた時の事を思い出していた。
「いおりょぎさん・・。」
事情をすべて把握し、ずっと彼女の心配をしてくれていた彼にこの幸せを伝えたい。

神様 神様
今年のお願いは・・
『いおりょぎさんに会えますように』

叶った願いに感謝を これからの願いに祈りを捧げる-。

聖なる夜の誓い

12月25日のクリスマス当日は、家族や恋人と過ごすのが一般的なクリスチャン。
その為、クリスマス礼拝もその当日より前の日曜日だったり、当日におこなっても夕方の早い時間に終わる事が多い。
都会に程近いのに、素朴で温かい雰囲気が残る教会。
藤本が一時身を寄せたその教会も、夕方にはクリスマス礼拝が終わる。
仕事で忙しい藤本は、ミサが終わる頃になってようやく待ち合わせ場所に着いた。
教会の最寄の駅近くの喫茶店である。
「悪い!遅くなった。」
「いいえ!お仕事お疲れ様です!!」
「じゃあ行くか。・・しかしもうミサ終わってるかもしれないな。」
「でも行きたいです!神父様やフレデリカさんにもお会いしたいです!」
「そうか。」
「はい!!」
満面の笑みで応える小鳩を見て、藤本も自然と笑顔になった。
もしも間に合わなくてもいい。二人に顔を見せに行こう。
ポインセチア#8207;

「キヨカズ!コバトさん!いらっしゃい!」
シスターフレデリカがとても嬉しそうに出迎えてくれた。
それだけで何だか温かい。
「でも残念ね。丁度今ミサやキャンドルサービスが終わったのよ。」
見ると人はほとんど居らず、蝋燭の明かりが煌々と教会を彩っていた。
「うわ~素敵です!!」
蝋燭で照らされた昔ながらのレンガ造りの教会は、それだけで荘厳な雰囲気である。
「・・昔と変わりませんね。」
「そうね。」
ふふと微笑んでお茶を勧めてくれるフレデリカの好意に甘えて、礼拝堂の隣の個室で
神父様を加え、4人で紅茶を頂き、しばし談笑する。
話の流れで、「入籍した」と告げると二人はとても驚いた顔をしたが、すぐ祝福してくれた。
「そうか。おめでとう。清和、小鳩さん」穏やかに笑む神父。
「まあ。おめでとう」瞳に涙を浮かべて喜ぶフレデリカ。
「「ありがとうございます。」」
「式はどうするの?」
「いえ、まだそこまでは考えていません。俺もこいつも身内がいませんから、やれという親戚もいませんし」
「え?小鳩さんも?」
二人は小鳩が教会に来た際、清和の話しかしていなかったので、
彼女もまた天涯孤独の身の上である事を知らなかった。
孤児院の子供達と遊ぶ明るく元気な様子からも、そんな身の上が想像できなかったのもある。
「あ、はい。両親は大分前に、そして2年前にお祖父様も亡くなってしまっているので・・。」
俯き、哀しそうに言う小鳩。
そんな彼女を初めて見たフレデリカは、少し慌てて言っていた。
「あ、ごめんなさい。立ち入った事を聞いてしまって。ではこの教会でどうかしら?」
「「え?」」
神父も頷いてこちらを見ている。
「結構人気あるのよ。この教会。交通の便が程よくて、隠れ家的でしょう?
 小人数でやるタイプの若い人達にはぴったりらしくて。」
「そうなんですか?」
「ええ。」
困惑気味の藤本と期待に顔を輝かせる小鳩。
そんな二人の前に、教会の予定表を取り出す、シスター。
「キヨカズ、貴方の仕事の都合と合う日はあるかしら?」
手帳と照らし合せてみるものの、結構人気という言葉通りで、
仕事が空いてる日は、既に別の挙式予定があったりする。
なかなか合わない。また教会のイベント日で潰れる日もあるから尚更だった。
「・・・難しいですね。」
向こう半年の予定表を辿っていって、眉間に皺が寄ってきた藤本を見て、小鳩が慌てて言った。
「あ、あの無理しないで下さい。藤本さん、それでなくてもお仕事忙しいのに!!」
「しかし・・。」
「小鳩は藤本さんの側に居られたら、それだけで幸せです!!」
結婚式への憧れはあるだろうに、純粋に夫を思う健気な新妻の言い分に、部屋の雰囲気が変わった。

「お前そういう事臆面もなく言うな。」清和は照れて横を向く。その顔が赤い。
シスターは「あらあら。ご馳走様。キヨカズは幸せね。」とにこにこしている。
神父はほくほくと穏やかにでも嬉しそうに頷いていたかと思ったら、突然言った。

「では今日はどうかね?」

「「「今日?」」」
さすがに驚いて、3人同時に聞き返す。
「そうだよ。さすがにクリスマス礼拝の日は挙式の予定はない。それにね」
茶目っ気たっぷりに片目を瞑りながら神父は続ける。
「照明も花も今なら用意しなくてもあるんだよ。・・クリスマス仕様だがね。」
確かにまだ片付けていない蝋燭、クリスマス用のポインセチアが教会を華やかに彩っている。
「でも衣装とか・・。」
「衣装やアクセサリーならあるわよ。」すかさずシスターが言う。
「そうなんですか!?」
「ええ。貸し衣装を常備してあるの。ただ数があまりないから気に入るのがあるといいんだけど。」
「どうかね?友人に祝ってもらうのは披露宴という形でもできるし、挙式だけでもしておくというのは?」
「でもこんな急にいいんですか?」不安そうに問う小鳩。
「勿論大歓迎ですよ。小鳩さん、こうでもしないと清和はずっと仕事でなかなか式挙げれませんよ。」
さすが神父様。痛い所をズバリと突いてくる。
期待と心配を見事に半々に顔に表しながら、自分を見上げる小鳩を見ながら思った。
「・・・やるか?」
「いいんですか?」
「ああ。今日はもう仕事ないしな。お前さえ良ければ」
「はい!!嬉しいです!小鳩、やりたいです!!」彼女がひまわりのように笑った。
クリスマス2


1時間後、厳かなそれでいて温もりを感じる光の中で、式が始まった。
時が止まったような不思議な雰囲気に花嫁が入場してくる。
真っ白なシンプルなAラインのウェディングドレスが小鳩にとてもよく似合っていた。
とても可愛いと思うと同時にシスターに化粧してもらった彼女は普段とはずっと雰囲気が違った。
隣に並んだときの横顔が、はっとするほど綺麗で心臓が波打つ。
小鳩は小鳩で初めて見る白いタキシードの姿の藤本の姿に、もう胸がどきどきしてしょうがなかった。
(藤本さん、かっこ良過ぎです~~っ。)
自分の心臓の音がいやに大きく響き、隣にいる彼に聞こえたらどうしようと思う。

式は簡易式ながら滞りなく進み、神父の言葉が紡がれる。
*****************************************
汝【藤本清和】は、この女【花戸小鳩】を妻とし
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、共に歩み、
他の者に依らず、死が二人を分かつまで、
愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、
神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?
*****************************************
『藤本さんは私の一番大切な人です。これまでもこれからも』
契約により自身の命が消えてしまうというのに、自分の側に居る事を選んだ彼女の姿が蘇る。
ひどい事ばかり言っていた自分の側にいるのが、幸せだと言い穏やかに微笑んだ彼女。
どれだけの覚悟で自分を「大事」だと言ってくれたのか。
それを考えると胸がつまる。
「・・・誓います。」
再会してから2年、ずっと側に居た。
目を瞑れば、笑った顔、泣いた顔、怒った顔、困った顔、色んな表情の彼女が容易に脳裏に浮かぶ。
最早、小鳩の居ない人生など考えられない。


同じ誓いの言葉が花嫁にも向けられる。
『いくな・・!!』
消えようとした刹那、必死に駆けてくれた彼の姿が蘇る。
いつもそう。言葉は悪くても結局、行動は優しいものばかり。
最初はその不器用な優しさに気付かなかったけれど。
『何年も待たせやがって。大遅刻だな』
ずっと探してくれていた。待っていてくれた。
他でもない自分をー。
その言葉が私にとってどれだけ幸せなものだったか、きっと貴方は知らないでしょう。
それから2年、ずっと側に居てくれた。
春も夏も秋も冬も、ずっと一緒に。どの季節も鮮やかに楽しくて。
でも幸せなのは、いつも振り向いて手を差し伸べてくれる藤本さんが居たから。
「誓います!」
この人とずっとずっと一緒にいたい。

「死が二人を分かつまで」 ―いいえ わたしたちの愛が続く限り―
―生まれ変わっても、きっと私はまた貴方に恋をする―。
白ピンクポインセチア#8207;

**************************************
<後書>
こばと二次小説第二弾です!
クリスマスイブにプロポーズ→クリスマスに挙式と何と言うスピード婚(笑
でも藤本さんは勢いないとこういう事やらない人なので、勢い付けさせました(爆


読んで下さった方へ 感謝を込めてw
Wishing you all the timeless joy of Christmas
Wishing you love and laughter
 ...and wishing you were here with me...
just because I love you so
May you enjoy the special moments of the Christmas Season!

クリスマスの喜びが永遠に続き
愛と笑いがあなたを包んでくれますように
・・・あなたがここにいてくれたらいいのに・・・
だってあなたのことが大好きだから
クリスマスの季節の特別にステキな瞬間を楽しんでくださいね!

白く輝く世界

10/26の日記で感想を書いたCLAMPさんの「こばと。」ですが、日記の予想通り(笑)
遂に書いてしまいました^^;
CLAMPさんの「こばと。」アニメ二次小説ですw
最近日参しているアニメ「こばと。」の二次小説が素敵な
ツンデレラ様のサイト「行きたい場所」でコメントリレー(笑)してたら出来てしまった作品ですww
らぶらぶな藤こばが読みたい方是非↓
http://hujikoba.blog135.fc2.com/

<MYこばと二次小説設定>
アニメの園児が中学生になってることから6~8年後の再会という事で・・。
藤本清和・・当時20歳、8年後で28歳      お話中30歳
花戸小鳩・・生まれ変わりの為、再会時16歳 お話中18歳

CLAMPさんだと16歳での結婚もありかな~(CCさくら 撫子さんとか)と思うんですが、
再会してすぐっていうのは恋愛スキル0なお二人には厳しいかなっていうのと
少し現実的に考えて、高校生と恋愛したら卒業までは待つだろう!という私的常識に照らし合わせた結果
このお話中、上記の年齢設定にしてあります。
ちなみにこの話に出てくる教会は、ツンデレラ様作品の「空の向こう」という作品から
藤本さんが一時身を寄せた孤児院が教会裏手にあるという設定で、拝借してます 感謝*^^*
*******************************************************************************************

<白く輝く世界>
降りしきる雪が嫌いだった。
忌まわしい記憶を甦らせて心を苛む。
自分の心が凍ってしまった残酷なあの日を思い出す。
*******************************************************************************************

再会してすぐに小鳩と婚約して同居した。
莫大な遺産を残された一人だけの孫娘。
ただでさえドジっ娘気質満載の小鳩が、財産狙いの輩に狙われたりしないよう心配でならなかったからだ。
というより1人暮らしの娘の危険性は他にも色々あって、弁護士として色んな事例を知っていた藤本は、その心配もあった。
過去に彼女が桜の花びらになって消えた時のように、何もできないのは御免だという気持ちもある。
赤の他人、しかも異性が一緒に住むのはそれなりの理由がいる。
早すぎるかもと思ったが、それゆえの婚約だった。
しかし婚約して2年。もうすぐ高校も卒業だし、そろそろいいだろうと思って求婚をしたら・・泣かれた。

「ふ、藤本さん・・!!」後は言葉にならないで大きな瞳から涙が溢れる。
藤本は正直、焦った。
「・・早すぎたか?だったら・・」
「違います!全然違います!!」
「は?」
「じゃあ、小鳩は藤本さんと家族になれるんですね。」
「・・まあそうだな」
「藤本さん、何処も行きませんよね。いいえ。何処か行くにしても小鳩も一緒に連れてって下さい!!」
「・・何の事だ?」
必死に何かを繋ぎ止めるように言う小鳩。
何だか相互の意思疎通がなってないような気がしてならない。
「だって藤本さん。ずっと上の空で・・!!」
それは単に何時プロポーズしようか考えていた、というよりタイミングを計っていたのである。
「しかも何だか外国の難しい書類ばかり見ていて」
仕事の移民関係の書類である。煩雑な手続きが多くて睨めっこ状態になっていた。
「藤本さん何処か行っちゃうって・・!!」
しかし小鳩は大真面目にすがりついてくる。
「俺は何処にも行かない。小鳩の側にいる。」
引き寄せて彼女を抱きしめると、安心したのか再会した時のように、盛大に泣かれた。

「・・何でそんな事思った?」
泣き止む頃を見計らって、彼女に声を掛ける。
「実は・・」
例によって分かりにくい彼女の話を要約すると、クラスメイトの木内という男子生徒に
一緒に住んでる藤本の事を聞かれたらしい。
そこで彼女らしく正直に相続の弁護士であること、昔からの知己であること、
自分の事を心配して、婚約して一緒に暮らしている事などを話した。
「そしたら後数ヶ月で卒業だから、もうすぐその彼ともさよならだねって・・!」
「おい 俺は別に心配だけで側にいるわけじゃないぞ。」
心外そうに告げる。と言うより好きでもない奴にここまでしない。
「・・ちゃんと好きだといっただろう?こばと。」
どうやら自分としてはきちんと意思表示をしたつもりだったのだが、小鳩には
伝わっていなかったは言い過ぎにせよ、足りなかったらしい。

溜息を吐きたい気持ちをおさえながら、藤本は紙を取り出した。
「藤本さん。これ・・。」
「婚姻届。後はお前の署名を入れるだけだ。」
驚きで目を見張る小鳩を見つめながら、首のチェーンに掛けた指輪を取り出す。
「手を出せ。」
「え?」と言いながら右手を出す小鳩。
「違う。左手。」
「あ、え、はい」
すっとはまる指輪。
「・・これは母親が俺に残した物だ。」
意識が回復して、役所の人に貴重品や身の回りの品を手渡された中にそれはあった。
たった一言「貴方の大事な人に渡しなさい。」とだけ書かれたメモと共にあった指輪。
何度も捨てようとした。自分を捨てた母親の物など要らないと。
けれど結局捨てきれず持っていた。机の奥へ隠していた。母親への思慕と同じように。
そして小鳩の記憶を思い出した時に、机から取り出していた。
もし今度会えたなら、間違えない。大事にしよう。
彼女にいつ会えても渡せるようチェーンに引っ掛けた。
「そんな大事な物、駄目です!!」
「いいから、貰ってくれ。本当は婚約した時に渡そうと思ったんだが・・。校則に引っかかるかもと思ってな。」
「でも・・。いいんですか?」
「ああ、貰ってくれると嬉しい。」
「はい!小鳩大事にします!!」
今度は彼女は本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。

その日の内に、婚姻届を市役所へ持っていた。
役所の人の「おめでとうございます。」という言葉がお決まりとは分かっていても嬉しい。
「あ、でも藤本さん今日で良かったんですか?」
「何故だ?」
「だって今日・・。」と言いながら小鳩にしては珍しく口ごもる。
そう本日は12月24日。クリスマスイブなのである。
入籍日が母に置いていかれた日、なんて辛くないのだろうか。
「・・・気にするな。」あの頃と同じ台詞。でもずっと柔らかい表情。
「でも・・。」まだ気遣しげな彼女を見て、藤本も腹をくくった。
言わなければ伝わらないこともある。
本心を曝け出す事。
愛情を示す事。
そういうのが不得手な藤本だが、今回の誤解もそれが原因でないとは言えない。
「というか、だからこの日にしたんだ。」
「・・・え?」
「前テレビで見たんだがな。記憶とは上書きできるんだそうだ。」
「記憶の上書き??」
「ああ、場所や日付なんかのジャンル別で辛い記憶は人に記憶されている。
だがその場所や日に別の幸せな記憶を乗せるとな、幸せな記憶になるんだそうだ。」
勿論思い出すのも辛い戦争や災害時の記憶とかもあるから一概にも言えないがな、と苦笑している藤本さんの顔が涙でぼやけてくる。
(藤本さんはお母さんに置いてかれた辛い過去を、私との結婚で幸せにできるくらいに強く思って下さって・・??)
嬉しい。
嬉しくて、嬉しくてまた泣いてしまった。
「・・全く泣き虫だな、お前は」
そんな言葉さえ嬉しくて、嬉しくて小鳩はずっと藤本の側で幸せを感じていた。
******************************************************************************************

不思議だった。
あの日のように雪が降っているのに、空気は冷たいのに心は温かい。
舞い落ちる白い雪が、過去の痛みを少しずつ覆いつくしてくれる気さえする。
その白い輝きが優しく世界を彩っていた。

ホワイトガーデンクリスマス#8207;
プロフィール
ご訪問ありがとうございます(≧▽≦) 名古屋OLが歴史・節約・日頃・二次小説のことを書き綴っています。 コメント大歓迎★ ですが、宣伝や本文に何も関係ないもの もしくは激しく不愉快、コピペ等、そういった類は、私の判断により 誠に勝手ながら削除の方向です。楽しく語りたいです♪ 二次創作小説もありますが、このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。

雪月花桜

Author:雪月花桜
タイトル通り名古屋OLがブログしてます。
歴史を元にした小説なんかも大好きでそれらについても語ったり、一次小説なんかも書いてますす。好きな漫画(コナンやCLAMP etc)&小説(彩雲国物語)の二次小説をupしておりますし、OLなりの節約・日々の徒然をHappyに語っています。

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