結婚式 舞台裏その3(清x秀)
そんなこんなで、この彩雲国の王、紫劉輝とその側近、藍楸瑛は貴陽紅本家の前へ来ていた。
が、今では秀麗は紅家当主の一人娘。
その屋敷の使用人や警備は尋常ではない。
人気がなく広いがぼろかった以前の屋敷なら、いくらでも忍び込み・・もとい訪問できたのだが、
これでは無理である。
「主上、やはり諦めましょう。」
「いやなのだ~」
瞳をうるうるさせて、首を振る王ははっきりいって捨て犬の風情である。
拾った犬は最後まで面倒みましょう、などどいう標語まで見えそうで、楸瑛は軽く眩暈がした。
(どうしたものか~)
「そんなところで何されてるんですか?」
「「静蘭!!」」
二人の声は重なるが、その声の感情は見事に正反対であった。
(兄上~。兄上なら秀麗に会わせてくれる)喜色の王。
(うわ~。この忙しい時に何で厄介事持ってきたって風情の黒いオーラが見える)内心、恐怖の楸瑛。
事情を聞き終えた静蘭は楸瑛にだけ聞こえるよう話掛けてきた。
(何で止めないんです!!この役立たずが!)
(・・・・いや、止めたんだよ?でも無理でね)
(うるさい!!大体常識で考えなさい。式当日、花嫁が一人きりになる場なんてほとんどあるわけないでしょうがっ)
確かに。あったとしても、過去の男・・ではないが、身内でもない男性と二人きりになんてどんな醜聞になることか。
秀麗を溺愛しまくってる、紅家が許すわけなかった。
(でもね。主上が哀れでね。で、最後に徹底的に失恋したら却ってすっきりするんじゃないかと。)
別に今さら王との仲を取り持てと言っているわけではない事を暗に伝える。
(・・・一理ありますね)
彼とて愛する弟の事は気に掛っていた。
かと言って王と臣下の花嫁を会わせるわけにはいかない。
彼女は一時は、皇后候補に挙がった姫だから尚更だった。
そして秀麗お嬢様も静蘭にとっては大事なのである。
「・・・仕方ありませんね。」
静蘭は少し考え事していたかと思うと、何やら地味な衣2人分を彼らに手渡した。
「これは今日の婚礼の臨時作業者用の作業着です。これに着替えて行ってらっしゃい。」
「静蘭~。ありがとうなのだ~。」
泣きだしそうに喜ぶ王。背後に尻尾が見えるのは幻影か。
「但し、お嬢様の迷惑が掛らないように!他の列席者の方に会わないように注意して下さい。」
「うん。うん。」
「それとこの作業着を着たものの作業は後一刻程で終わります。
鐘が三つなった時点で撤収ですので、その時には速やかに帰って下さい。」
「それは、秀麗殿に会えなくても、って事かな。」
「当然です。」
そんな~と泣き喚く劉輝に絶対零度の微笑みで「時間なくなりますよ?」と静蘭は言い放った。
「会えるかどうかは貴方がた次第です。では私は他の仕事がありますので、これで。」
これが彼の最大限の譲歩だろう。
貴族の屋敷の造りはどこも似たりよったりである。
劉輝も楸瑛も慣れ親しんだ空間である為、さほど時間は掛らず花嫁の控え室の窓下にいた。
二人して窓をのぞく。
そこには、薄紅色を基調とした、更に濃くなっていく紅色を重ね着した絢爛な衣装を
身に纏った秀麗がいた。
衣装に施された金糸、銀糸の刺繍がより彼女を艶やかに見せている。
(・・・これは驚いたな)
さすがの楸瑛も驚いていると、何やら声がする。
「秀麗・・何て可憐な・・・私が嫁にもらいたい・・・
叔父さんです・・・君のことを誰よりも思って・・・素敵で優しい紅黎深・・。」
ぎょっとして周りを見渡すと・・出た。
そこには紅黎深が木の上にいて、愛しの姪をストーカーしていた。
感想と欲望と自己紹介がごちゃ混ぜであることを呟いている。
慌てて、黎深の目の届かない近くの茂みにに王を連れて避難。
「楸瑛~っ。何故遠ざかるのだ。あとちょっとで秀麗の元なのに!・・綺麗なのだ、あのまま余の嫁に!」
(声落として下さい。黎深殿に見つかってしまうでしょう)
(何?黎深がいるのか?どこにってあんな所に!びっくりなのだ)
(騒ぎになってはまずいです。立ち去るまで待ちまちょう)
(うう。秀麗~)
彼はなかなか立ち去らなかったが、侍女が何やら伝言を携えてくると慌てて母屋の一画へ
走り去った。
やっと会えると思った劉輝が顔を輝かせて窓辺に走りより、声を掛けようとしたその刹那。
「おい、秀麗」
「何よ清雅」
新郎の陸清雅が突如として控室を訪れた。
(ここぞという時に見事に邪魔が入るね)へこむ劉輝を横目で見ながらの感想である。
「へえ。結構似合うじゃないか。」
「・・・。ありがとう。意外ね。ちゃんと誉めてくれるなんて。」
「俺は紳士だせ。」
「寝言は布団の中で言いなさいよ。」
「ほう。今夜から聞かせてやるよ。」
にやりと笑む清雅。
「い、要らないわよっ!・・・で、何の用なの?」
「害虫駆除」
「は?何で今日の主役のあんたがそんな事するの?やめなさいよ
婚礼衣装汚したらどうするの?代えなんてないのよ?
そもそも一昨日から皆が掃除してくれてるんだから、虫なんていないと思うけど」
「いるんだよな。しつこいのが」秀麗には聞こえないよう小さい声でそう呟くと窓辺に歩み寄る。
そして高速で腕を振り上げた。
ばびゅんっ!!
固い石が彼ら目掛けて飛んできた。
何とか避けれたのは二人とも幼少の頃より培った武芸による動体視力と運動神経のおかげである。
「ちっ!逃がしたか。」
((うわー。害虫って我々の事か))
「え?本当に虫いたの?」
「・・ああ。」(さて次はどんな手でいくか)
実は決しては表には出さないが、かなり独占欲が強く嫉妬深い清雅にとって、自分のものと決めた
相手に手出しする相手に対する気遣いなど皆無である。
秀麗が激鈍く、また男女問わず人気者だから余計である。
如何に効果的に、追い払うかをその切れすぎる頭脳で考え中である。
物理的攻撃が難しいのなら・・・。
(誰のものか見せつけ、精神的打撃を与える、かな)
つかつかと秀麗の元により隣に腰掛ける。
そしてその腹部に手をあてる。
「?どうしたの 清雅?」
「まだ動かないな。」
「くすくす この間も言ったでしょ。2ヶ月、あ、今3月かな でもまだ全然人の形じゃないって。」
「そうか。・・名前はどうする」
「気が早いわね。」
(って結婚式がこんなに早かった理由って秀麗殿が妊娠していたからかー!?)
まさかの出来ちゃった婚に楸瑛は驚愕した。
(いやしかし、あの慎重な清雅君が冒険したね~)
紅家三兄弟に溺愛されまくってる彼女を妊娠させたとなると・・・恐ろしい。
特に姪馬鹿とか世界の中心で愛を叫んでる叔父とか、愛の空回りしてる人とか(全部同一人物)
(よく生きのびたよね)
違う観点から清雅に賞賛を送る、王の側近である。
(じゃなくて、今の会話聞いて、主上はっと うわー夢の世界いっちゃたな)
王の様子を伺った楸瑛は、そこに壁に向かって一人言を呟き続ける劉輝を見た。
どう見てもあっちの世界へいってしまっている。
その時ごーん ごーん ごーん と鐘が鳴った。
「さ、主上帰りましょう」
「・・・・・。」
全然動かない王を引きずって楸瑛は何とか帰城した。
王の失恋を決定的にさせるという目的は達成したが、
達成しすぎてその後、10日大雨の王の晩酌に付き合う羽目になった・・。
*****************************************************************************
後書
やっと劉輝 大雨編終了~ 結局彼と秀麗は会えずじまい
あれ 可笑しいな?? 当初の予定では会う予定だったのに。
私が書く王サマはどこまでも不憫のよう。ごめんよ!劉輝!
して清雅がやっと登場☆わーい。
ですが、王との対決??は彼の圧勝でした。
御史台や姪馬鹿叔父相手に奮闘している彼からすれば、
天然王サマは全然相手にならず(笑)
楽しんで頂ければ幸いです。
コメント頂けるともっと嬉しいです*^^*
が、今では秀麗は紅家当主の一人娘。
その屋敷の使用人や警備は尋常ではない。
人気がなく広いがぼろかった以前の屋敷なら、いくらでも忍び込み・・もとい訪問できたのだが、
これでは無理である。
「主上、やはり諦めましょう。」
「いやなのだ~」
瞳をうるうるさせて、首を振る王ははっきりいって捨て犬の風情である。
拾った犬は最後まで面倒みましょう、などどいう標語まで見えそうで、楸瑛は軽く眩暈がした。
(どうしたものか~)
「そんなところで何されてるんですか?」
「「静蘭!!」」
二人の声は重なるが、その声の感情は見事に正反対であった。
(兄上~。兄上なら秀麗に会わせてくれる)喜色の王。
(うわ~。この忙しい時に何で厄介事持ってきたって風情の黒いオーラが見える)内心、恐怖の楸瑛。
事情を聞き終えた静蘭は楸瑛にだけ聞こえるよう話掛けてきた。
(何で止めないんです!!この役立たずが!)
(・・・・いや、止めたんだよ?でも無理でね)
(うるさい!!大体常識で考えなさい。式当日、花嫁が一人きりになる場なんてほとんどあるわけないでしょうがっ)
確かに。あったとしても、過去の男・・ではないが、身内でもない男性と二人きりになんてどんな醜聞になることか。
秀麗を溺愛しまくってる、紅家が許すわけなかった。
(でもね。主上が哀れでね。で、最後に徹底的に失恋したら却ってすっきりするんじゃないかと。)
別に今さら王との仲を取り持てと言っているわけではない事を暗に伝える。
(・・・一理ありますね)
彼とて愛する弟の事は気に掛っていた。
かと言って王と臣下の花嫁を会わせるわけにはいかない。
彼女は一時は、皇后候補に挙がった姫だから尚更だった。
そして秀麗お嬢様も静蘭にとっては大事なのである。
「・・・仕方ありませんね。」
静蘭は少し考え事していたかと思うと、何やら地味な衣2人分を彼らに手渡した。
「これは今日の婚礼の臨時作業者用の作業着です。これに着替えて行ってらっしゃい。」
「静蘭~。ありがとうなのだ~。」
泣きだしそうに喜ぶ王。背後に尻尾が見えるのは幻影か。
「但し、お嬢様の迷惑が掛らないように!他の列席者の方に会わないように注意して下さい。」
「うん。うん。」
「それとこの作業着を着たものの作業は後一刻程で終わります。
鐘が三つなった時点で撤収ですので、その時には速やかに帰って下さい。」
「それは、秀麗殿に会えなくても、って事かな。」
「当然です。」
そんな~と泣き喚く劉輝に絶対零度の微笑みで「時間なくなりますよ?」と静蘭は言い放った。
「会えるかどうかは貴方がた次第です。では私は他の仕事がありますので、これで。」
これが彼の最大限の譲歩だろう。
貴族の屋敷の造りはどこも似たりよったりである。
劉輝も楸瑛も慣れ親しんだ空間である為、さほど時間は掛らず花嫁の控え室の窓下にいた。
二人して窓をのぞく。
そこには、薄紅色を基調とした、更に濃くなっていく紅色を重ね着した絢爛な衣装を
身に纏った秀麗がいた。
衣装に施された金糸、銀糸の刺繍がより彼女を艶やかに見せている。
(・・・これは驚いたな)
さすがの楸瑛も驚いていると、何やら声がする。
「秀麗・・何て可憐な・・・私が嫁にもらいたい・・・
叔父さんです・・・君のことを誰よりも思って・・・素敵で優しい紅黎深・・。」
ぎょっとして周りを見渡すと・・出た。
そこには紅黎深が木の上にいて、愛しの姪をストーカーしていた。
感想と欲望と自己紹介がごちゃ混ぜであることを呟いている。
慌てて、黎深の目の届かない近くの茂みにに王を連れて避難。
「楸瑛~っ。何故遠ざかるのだ。あとちょっとで秀麗の元なのに!・・綺麗なのだ、あのまま余の嫁に!」
(声落として下さい。黎深殿に見つかってしまうでしょう)
(何?黎深がいるのか?どこにってあんな所に!びっくりなのだ)
(騒ぎになってはまずいです。立ち去るまで待ちまちょう)
(うう。秀麗~)
彼はなかなか立ち去らなかったが、侍女が何やら伝言を携えてくると慌てて母屋の一画へ
走り去った。
やっと会えると思った劉輝が顔を輝かせて窓辺に走りより、声を掛けようとしたその刹那。
「おい、秀麗」
「何よ清雅」
新郎の陸清雅が突如として控室を訪れた。
(ここぞという時に見事に邪魔が入るね)へこむ劉輝を横目で見ながらの感想である。
「へえ。結構似合うじゃないか。」
「・・・。ありがとう。意外ね。ちゃんと誉めてくれるなんて。」
「俺は紳士だせ。」
「寝言は布団の中で言いなさいよ。」
「ほう。今夜から聞かせてやるよ。」
にやりと笑む清雅。
「い、要らないわよっ!・・・で、何の用なの?」
「害虫駆除」
「は?何で今日の主役のあんたがそんな事するの?やめなさいよ
婚礼衣装汚したらどうするの?代えなんてないのよ?
そもそも一昨日から皆が掃除してくれてるんだから、虫なんていないと思うけど」
「いるんだよな。しつこいのが」秀麗には聞こえないよう小さい声でそう呟くと窓辺に歩み寄る。
そして高速で腕を振り上げた。
ばびゅんっ!!
固い石が彼ら目掛けて飛んできた。
何とか避けれたのは二人とも幼少の頃より培った武芸による動体視力と運動神経のおかげである。
「ちっ!逃がしたか。」
((うわー。害虫って我々の事か))
「え?本当に虫いたの?」
「・・ああ。」(さて次はどんな手でいくか)
実は決しては表には出さないが、かなり独占欲が強く嫉妬深い清雅にとって、自分のものと決めた
相手に手出しする相手に対する気遣いなど皆無である。
秀麗が激鈍く、また男女問わず人気者だから余計である。
如何に効果的に、追い払うかをその切れすぎる頭脳で考え中である。
物理的攻撃が難しいのなら・・・。
(誰のものか見せつけ、精神的打撃を与える、かな)
つかつかと秀麗の元により隣に腰掛ける。
そしてその腹部に手をあてる。
「?どうしたの 清雅?」
「まだ動かないな。」
「くすくす この間も言ったでしょ。2ヶ月、あ、今3月かな でもまだ全然人の形じゃないって。」
「そうか。・・名前はどうする」
「気が早いわね。」
(って結婚式がこんなに早かった理由って秀麗殿が妊娠していたからかー!?)
まさかの出来ちゃった婚に楸瑛は驚愕した。
(いやしかし、あの慎重な清雅君が冒険したね~)
紅家三兄弟に溺愛されまくってる彼女を妊娠させたとなると・・・恐ろしい。
特に姪馬鹿とか世界の中心で愛を叫んでる叔父とか、愛の空回りしてる人とか(全部同一人物)
(よく生きのびたよね)
違う観点から清雅に賞賛を送る、王の側近である。
(じゃなくて、今の会話聞いて、主上はっと うわー夢の世界いっちゃたな)
王の様子を伺った楸瑛は、そこに壁に向かって一人言を呟き続ける劉輝を見た。
どう見てもあっちの世界へいってしまっている。
その時ごーん ごーん ごーん と鐘が鳴った。
「さ、主上帰りましょう」
「・・・・・。」
全然動かない王を引きずって楸瑛は何とか帰城した。
王の失恋を決定的にさせるという目的は達成したが、
達成しすぎてその後、10日大雨の王の晩酌に付き合う羽目になった・・。
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後書
やっと劉輝 大雨編終了~ 結局彼と秀麗は会えずじまい
あれ 可笑しいな?? 当初の予定では会う予定だったのに。
私が書く王サマはどこまでも不憫のよう。ごめんよ!劉輝!
して清雅がやっと登場☆わーい。
ですが、王との対決??は彼の圧勝でした。
御史台や姪馬鹿叔父相手に奮闘している彼からすれば、
天然王サマは全然相手にならず(笑)
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