別れと出会い~東都大名物ツインズ 誕生秘話~
2015.11.09 15:54|一滴の水 派生小説|
4月1日 00:30 杯戸シティホテル屋上
夜空を背景に月明かりの下、お互いが偽りの姿で会った想い出の場所。
お互い約束をしていたわけではなかった。
けれど、怪盗キッドが本懐を遂げて引退ショーをした時、感じたのは一抹の淋しさ。
自身も本来の姿に戻った事も相まって、コナンとして心おきなく出来た奴との対決ももうないと悟った新一は、思わず同日同時刻にそこにいた。
「1年・・か。」
コナンとして過ごしたこの1年本当に色んな事があった、と若干遠い目になりながら彼は思う。
最初は小さい体になったせいで今まで当たり前に出来ていた事、させてもらえた事が出来なくなり歯痒さを感じたし、自尊心も傷ついた。
けれど文字通り目線が変わる事で得られるものもあり、様々な経験をした。少年探偵団と過ごす日々もなかなか楽しかった。
そしてコナンでなければ、きっと出会えなかったであろう灰原、否今は宮野志保となった掛け替えないのない相棒兼恋人とそして・・。
「ようこそ、怪盗キッド、最後の舞台へ。」
振り向けば、其処にもう1人のコナンでなければ対決しなかったであろう、白い衣装を纏ったキッドが立っていた。
「おう。って最後の舞台はもうやったろ?」
「あれは、あれ。これはこれ、ですよ。」
「は?引退したんじゃねえのかよ?」
「あれは警察諸君や世間の為のものですよ。そして今夜は、たった一人、私の名探偵”江戸川コナン”の為のショーです!!」
「・・コナンはもういねえぞ?」
「いらっしゃるじゃありませんか、眼の前に。」
「・・俺は工藤新一だ。」そう断言しながら、何かに耐えるような表情をする探偵に怪盗は語り掛ける。
「ですけれどもね・・
”昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。” ご存じですか?」
「・・・星とたんぽぽ・・金子みすず、か。」
「さすが、博識な名探偵。」
「ばーろー。有名な作品じゃねえか。で?」
「同じですよ。名探偵はいなくなっても名探偵の中から消えてなくなるわけではない。」
工藤新一の中に江戸川コナンはいる、見えなくなっただけだと言ってくれた気がした。
「成程な、相変わらず気障だねえ。」礼を言う代わりにそんな憎まれ口を返していた。
「んじゃ、黒羽快斗にも怪盗キッドが残るな。」
「何だ、驚いた顔をして。お前の正体は分かってた。
俺と素顔が似ていて且つ、高度な奇術が可能、そしてキッドが出来る頭脳・体力っつたら、もうすぐに答え出たぜ?」
「それでこそ、名探偵。・・流石魔女に天使の外見と悪魔の狡猾さを持つ”光の魔人”と謳われた方。」
後半は現実主義の探偵には聞こえないように呟いた。
「俺が唯一の観客か。」
「ええ。リクエストは?」
「そりゃあ、勿論。」
「「花火!!」」
二人同時にそう言って笑い合った途端、夜空を彩る花火が始まった。
音が出ない様工夫されているらしく、花火特有のあの音が聞こえない。
そして今日が本当に最後になる”怪盗キッド”とキッドキラーと称された”江戸川コナン”の為のショーは一人きりの観客の為に
目を瞠る程のかつてないマジックを繰り出し、華やかに鮮やかに退場した。
そして翌日の東都大学。
入学前の説明を聞きに訪れた教室で、新一は思いがけない人物と会っていた。
「工藤君、彼が君と同じく飛び入学した黒羽君だ。今年の理工学部では二人きりの合格者だよ。」
よく似てるな~仲良くな、と言い置いて冊子を取りに教師が出て行った途端、彼はにぱっと笑うと
「”初めまして”俺、黒羽快斗ってんだ。よろしくな!」と花吹雪を降らせた。
「”初めまして”工藤新一です。よろしく。」
お互いに正体を知っていての軽快なやりとりが妙に可笑しい。
「・・ところでよ、先生来る前に片づけろよ?」
「あ、箒何処だろう?え?何で掃除道具入れがないわけ、この教室。」
「高校までは大抵生徒が教室掃除するけど、此処は大学だから、掃除の業者がやるんだろ。」
専門業者が掃除するのに、道具が教室にあるわけないだろと突っ込むと
「マジでかよ~!!あ~どうしよ~。」
「・・・流石に職員室なら掃除道具くらい、常備か予備であるんじゃね?」
こいつ本当にあの確保不能な気障なキッドかよ、と思いながら頭抱えてる彼に助け舟を出してやる。
「な、成程!!流石、名探偵、サンキュ!!」一瞬にして姿が消えていたかと思ったら、早速掃除してたりする。
「無駄に早え。」
(何だろう、この能力がある癖に、全力で無駄使いしてそうな男はよ。)
そう思ったら何だか笑えて笑えて仕方がなかった。
「プっあははは!!」
「ちょ、何で笑ってるのさ。工藤!」
「だってよ。マジックしてたかと思ったら掃除道具持ってマッハの動きってアハハ!!」
ツボにハマってしまい笑いがなかなか止まらない。
「ひどいよ、工藤。」器用に花吹雪で、のの字書いてる黒羽の姿にまたしても爆笑しそうになるが、それをやると盛大に拗ねられそうだ。
懸命に笑いを抑え込み「悪かったってばよ。その代わりっちゃ何だけど工藤じゃなくて”新一”でいいぜ!」
「え?マジで?」
「おう、タメだからな。」
「んじゃ俺の事は快斗って呼んで!!」
黒羽が知る由もないが、新一が自分から名前の呼び捨てを許した本当に数少ない例であった。
(蘭でさえ、蘭がそう呼ぶって押してきたからだったよな。何かウマが合いそうだな。)
エイプリルフール:嘘が付いても許される日が終わり、出会ったのは、友人になれそうな陽気に笑う同級生。
(月下の奇術師とは反対に太陽が合いそうな奴だ。)
そして入学式から組織を潰した国民的英雄であると、メディアのみならず校内でも騒がれる新一に
如何に目立たないかを師事する快斗の姿があったりした。
「新一~!!もっと目立たないように!周りに溶け込んで!!」
「やってるだろうがよ!!」
(駄目だあ~如何に安い服着せても、何故か決まっちゃうし。地味な格好させたら容姿の端麗さが際立つ。俺と同じ顔のはずなのに何故!)
そして何より・・。
「その芸能人オーラを抑えて!!新一。」
「そんなものはない!!何言ってやがるんだ、快斗!!・・それよりも此処からどうやって騒がれずに抜け出すかだ。」
「うん。分かってる!分かってますとも!分かってるに決まってるデショ!だから、必死なんですけどね・・!!」
4月下旬に落ち着いた時には気付いたら、似通った容姿と仲の良さから”東都大名物ツインズ”と呼ばれていたのであった。
***************************************************
後書 一滴の水 番外編 44,800hit 紅玉様リクエスト
「快斗君と新一君の大学での出会いからつるむまで」の話 でした。
ええと、月光の下で”怪盗キッド”とキッドキラーこと”江戸川コナン”と出会いと別れ(ある意味消滅?)があり
エイプリルフールが終わったら陽光の下で、お互いの本当の姿”黒羽快斗”と”工藤新一”で出会うって感じになりました。
出会いはともかくつるむまでは少し短くなりましたが、な何とかリクエストクリア出来ましたかね?出来ましたよね?(笑)
ちなみにツインズですが基本、黒羽がボケ、工藤が突っ込みだが、工藤自身の事になると途端に逆転するというのが
2人を良く知る理工学部の一部ではもっぱらの噂(どーでもいい裏事情)
書く前は欠片も予定のなかった 金子みすずの詩ネタ。
作品内の詩の全容はこの通り☆彡
*********************
星とたんぽぽ
青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきにだァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
*********************
ちなみに私はこちら↓の詩も好きです。
わたしと小鳥とすずと
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面(じべた)をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのように
たくさんのうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい
*********************
各々が別々で、でもそれに優劣は無いことを、素晴らしいのだということを綺麗に素敵に表現していると思うのです。
SMAPの「世界に一つだけの花」と相通じるものを感じます。
”みんなちがって、みんないい。”
あ、あれ?(^^ゞコナン小説なのに金子みずずの話になってる(爆
えっと 一滴の水 本編 蘭編で3月下旬報道が下火になったってありましたけど、本人がいない中での過熱報道が
治まっただけであり、本人が帰国して初めて公の場に立ったので入学式はそれはおそろしい事になりました(笑)という事情があることだけ明記しておきます。
夜空を背景に月明かりの下、お互いが偽りの姿で会った想い出の場所。
お互い約束をしていたわけではなかった。
けれど、怪盗キッドが本懐を遂げて引退ショーをした時、感じたのは一抹の淋しさ。
自身も本来の姿に戻った事も相まって、コナンとして心おきなく出来た奴との対決ももうないと悟った新一は、思わず同日同時刻にそこにいた。
「1年・・か。」
コナンとして過ごしたこの1年本当に色んな事があった、と若干遠い目になりながら彼は思う。
最初は小さい体になったせいで今まで当たり前に出来ていた事、させてもらえた事が出来なくなり歯痒さを感じたし、自尊心も傷ついた。
けれど文字通り目線が変わる事で得られるものもあり、様々な経験をした。少年探偵団と過ごす日々もなかなか楽しかった。
そしてコナンでなければ、きっと出会えなかったであろう灰原、否今は宮野志保となった掛け替えないのない相棒兼恋人とそして・・。
「ようこそ、怪盗キッド、最後の舞台へ。」
振り向けば、其処にもう1人のコナンでなければ対決しなかったであろう、白い衣装を纏ったキッドが立っていた。
「おう。って最後の舞台はもうやったろ?」
「あれは、あれ。これはこれ、ですよ。」
「は?引退したんじゃねえのかよ?」
「あれは警察諸君や世間の為のものですよ。そして今夜は、たった一人、私の名探偵”江戸川コナン”の為のショーです!!」
「・・コナンはもういねえぞ?」
「いらっしゃるじゃありませんか、眼の前に。」
「・・俺は工藤新一だ。」そう断言しながら、何かに耐えるような表情をする探偵に怪盗は語り掛ける。
「ですけれどもね・・
”昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。” ご存じですか?」
「・・・星とたんぽぽ・・金子みすず、か。」
「さすが、博識な名探偵。」
「ばーろー。有名な作品じゃねえか。で?」
「同じですよ。名探偵はいなくなっても名探偵の中から消えてなくなるわけではない。」
工藤新一の中に江戸川コナンはいる、見えなくなっただけだと言ってくれた気がした。
「成程な、相変わらず気障だねえ。」礼を言う代わりにそんな憎まれ口を返していた。
「んじゃ、黒羽快斗にも怪盗キッドが残るな。」
「何だ、驚いた顔をして。お前の正体は分かってた。
俺と素顔が似ていて且つ、高度な奇術が可能、そしてキッドが出来る頭脳・体力っつたら、もうすぐに答え出たぜ?」
「それでこそ、名探偵。・・流石魔女に天使の外見と悪魔の狡猾さを持つ”光の魔人”と謳われた方。」
後半は現実主義の探偵には聞こえないように呟いた。
「俺が唯一の観客か。」
「ええ。リクエストは?」
「そりゃあ、勿論。」
「「花火!!」」
二人同時にそう言って笑い合った途端、夜空を彩る花火が始まった。
音が出ない様工夫されているらしく、花火特有のあの音が聞こえない。
そして今日が本当に最後になる”怪盗キッド”とキッドキラーと称された”江戸川コナン”の為のショーは一人きりの観客の為に
目を瞠る程のかつてないマジックを繰り出し、華やかに鮮やかに退場した。
そして翌日の東都大学。
入学前の説明を聞きに訪れた教室で、新一は思いがけない人物と会っていた。
「工藤君、彼が君と同じく飛び入学した黒羽君だ。今年の理工学部では二人きりの合格者だよ。」
よく似てるな~仲良くな、と言い置いて冊子を取りに教師が出て行った途端、彼はにぱっと笑うと
「”初めまして”俺、黒羽快斗ってんだ。よろしくな!」と花吹雪を降らせた。
「”初めまして”工藤新一です。よろしく。」
お互いに正体を知っていての軽快なやりとりが妙に可笑しい。
「・・ところでよ、先生来る前に片づけろよ?」
「あ、箒何処だろう?え?何で掃除道具入れがないわけ、この教室。」
「高校までは大抵生徒が教室掃除するけど、此処は大学だから、掃除の業者がやるんだろ。」
専門業者が掃除するのに、道具が教室にあるわけないだろと突っ込むと
「マジでかよ~!!あ~どうしよ~。」
「・・・流石に職員室なら掃除道具くらい、常備か予備であるんじゃね?」
こいつ本当にあの確保不能な気障なキッドかよ、と思いながら頭抱えてる彼に助け舟を出してやる。
「な、成程!!流石、名探偵、サンキュ!!」一瞬にして姿が消えていたかと思ったら、早速掃除してたりする。
「無駄に早え。」
(何だろう、この能力がある癖に、全力で無駄使いしてそうな男はよ。)
そう思ったら何だか笑えて笑えて仕方がなかった。
「プっあははは!!」
「ちょ、何で笑ってるのさ。工藤!」
「だってよ。マジックしてたかと思ったら掃除道具持ってマッハの動きってアハハ!!」
ツボにハマってしまい笑いがなかなか止まらない。
「ひどいよ、工藤。」器用に花吹雪で、のの字書いてる黒羽の姿にまたしても爆笑しそうになるが、それをやると盛大に拗ねられそうだ。
懸命に笑いを抑え込み「悪かったってばよ。その代わりっちゃ何だけど工藤じゃなくて”新一”でいいぜ!」
「え?マジで?」
「おう、タメだからな。」
「んじゃ俺の事は快斗って呼んで!!」
黒羽が知る由もないが、新一が自分から名前の呼び捨てを許した本当に数少ない例であった。
(蘭でさえ、蘭がそう呼ぶって押してきたからだったよな。何かウマが合いそうだな。)
エイプリルフール:嘘が付いても許される日が終わり、出会ったのは、友人になれそうな陽気に笑う同級生。
(月下の奇術師とは反対に太陽が合いそうな奴だ。)
そして入学式から組織を潰した国民的英雄であると、メディアのみならず校内でも騒がれる新一に
如何に目立たないかを師事する快斗の姿があったりした。
「新一~!!もっと目立たないように!周りに溶け込んで!!」
「やってるだろうがよ!!」
(駄目だあ~如何に安い服着せても、何故か決まっちゃうし。地味な格好させたら容姿の端麗さが際立つ。俺と同じ顔のはずなのに何故!)
そして何より・・。
「その芸能人オーラを抑えて!!新一。」
「そんなものはない!!何言ってやがるんだ、快斗!!・・それよりも此処からどうやって騒がれずに抜け出すかだ。」
「うん。分かってる!分かってますとも!分かってるに決まってるデショ!だから、必死なんですけどね・・!!」
4月下旬に落ち着いた時には気付いたら、似通った容姿と仲の良さから”東都大名物ツインズ”と呼ばれていたのであった。
***************************************************
後書 一滴の水 番外編 44,800hit 紅玉様リクエスト
「快斗君と新一君の大学での出会いからつるむまで」の話 でした。
ええと、月光の下で”怪盗キッド”とキッドキラーこと”江戸川コナン”と出会いと別れ(ある意味消滅?)があり
エイプリルフールが終わったら陽光の下で、お互いの本当の姿”黒羽快斗”と”工藤新一”で出会うって感じになりました。
出会いはともかくつるむまでは少し短くなりましたが、な何とかリクエストクリア出来ましたかね?出来ましたよね?(笑)
ちなみにツインズですが基本、黒羽がボケ、工藤が突っ込みだが、工藤自身の事になると途端に逆転するというのが
2人を良く知る理工学部の一部ではもっぱらの噂(どーでもいい裏事情)
書く前は欠片も予定のなかった 金子みすずの詩ネタ。
作品内の詩の全容はこの通り☆彡
*********************
星とたんぽぽ
青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきにだァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
*********************
ちなみに私はこちら↓の詩も好きです。
わたしと小鳥とすずと
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面(じべた)をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのように
たくさんのうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい
*********************
各々が別々で、でもそれに優劣は無いことを、素晴らしいのだということを綺麗に素敵に表現していると思うのです。
SMAPの「世界に一つだけの花」と相通じるものを感じます。
”みんなちがって、みんないい。”
あ、あれ?(^^ゞコナン小説なのに金子みずずの話になってる(爆
えっと 一滴の水 本編 蘭編で3月下旬報道が下火になったってありましたけど、本人がいない中での過熱報道が
治まっただけであり、本人が帰国して初めて公の場に立ったので入学式はそれはおそろしい事になりました(笑)という事情があることだけ明記しておきます。