太陽の女神 月の巫女姫④

皇女が伊勢の地へ下向して来てから早数ヶ月経った。
大伯はすっかりこの土地の生活に慣れていた。
(最近では、祈りの最中に風がそよぐのをより感じる。小鳥の微かな囀りさえも近くで聞こえる。)
清浄な土地でのお務めは、彼女の感覚をより鋭く、精神を透明にしていた。
「風に湿り気を感じる-。明日は雨ですね。この祭事は屋内での準備をなさい。」
「承りました。」
伊勢は気候も良いし、近くの海の景色は美しくて、食べ物も美味しい。
元々自然や静寂を好む彼女にとって嬉しい事だった。
そんな風に平和に日常が過ぎていった或る日の事、転機が訪れる-。

夏に晴天が続き、神宮の周りを囲む木立の陰を彼女は珍しく伴も連れず一人でそぞろ歩きしていた。
(日光で木の葉が、緑が色鮮やかで美しいこと。・・大津は元気かしら・・。)
気が抜けると心はどうしても最愛の弟へ向う。
そうして都の方角へ視線を見遣った際、其処に一人の女性を視界に入れて眼を疑った。
(さっきまであそこには誰もいなかったはず・・。近づいてくる人の気配もなかったわ。)
しかもこの祈り場の周辺は見知らぬ者が入れないように警備されているはずだ。
大伯とて全ての舎人や下働きの者の顔を全て覚えているわけではない。だが・・・。
(こんなに美しい人、一目見たら忘れるわけないわ。)
かの女性は都で数多くの美女を見てきた皇女をして忘れられない程の容姿の持ち主だったのである。
鳥の濡場色の豊かな黒髪、透明でありながら健康さをうかがわせる頬、整った顔立ちに似合う紅い唇。
(華やかで明るくて・・まるで太陽のよう・・。何処の姫君かしら?)
大伯がそう考えたのには訳がある。
まず謎の女性は容貌もさることながら、その衣装の質。
皇族として生まれ育った彼女の眼からしても極上の部類に入る。
おまけに雰囲気が明らかに人に傅くものではない。むしろ反対のそれだ。
雷光のような眼差しに産まれながらにして皇族の姫君として敬られて育った彼女が呑まれそうになった。
以上の事から皇女は、地元の有力豪族の姫君なのでは、と考察したのである。
この時代、後の世と違って、天皇の名は絶大ではない。
形式上は頭を下げていても、実際に治めているのはその土地の有力豪族であり
その氏族の方が、実地では遥かに力を持っている事などよくある事だった。
おもむろに謎の美女は近づいてきて、にこっと微笑んだ。
笑顔もやはりぱっと周りを明るくするような陽気なもので、印象が美女から美少女に変わり幼くなった。
それにより大伯の緊張が一気に解けた。

「初めまして。私は照(てる)。貴女が都から赴任してきたって云う大伯皇女ね?」
「ええ。初めまして。そうです。」

これが後に10年以上の付き合いになる彼女達の最初の出会いであった。

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後書 実に5年以上ぶりの更新です(・。・;
ま、待ってる方大変にお待たせ致しました
照と会った大伯皇女の運命の続きを書いていきたいを思っています。

コメント

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そこまでお待たせしません!

夢様

こんにちは!
久しぶりの斎宮シリーズ物にコメント頂いてありがとうございます!
楽しみにして頂けて、本当に嬉しいです。
そう、大伯皇女と大津皇子姉弟は生母:大田皇女が生きていたら全然違いますよね。
仰ると通り、生母が皇后になり、彼女は初代斎宮はに選ばれず、大津皇子は天皇になれた筈。
照と係わりどうなるとを見守って下さいませ)^o^(。
<まさか次回は又5年後じゃないですよね。
ガフゥッ!!まさかのいきなりのカウンターパンチ(笑)\(-o-)/
でも御尤もで言い返せない<m(__)m>
そ、そこまでお待たせしません!一気に書けたらいいな(希望)と思っております。
いつも感想ありがとうございます。それではw
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30代OLが歴史・節約・日頃・二次小説のことを書き綴っています。 コメント大歓迎★ ですが、宣伝や本文に何も関係ないもの もしくは激しく不愉快、コピペ等、そういった類は、私の判断により 誠に勝手ながら削除の方向です。楽しく語りたいです♪ 二次創作小説もありますが、このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。

雪月花桜

Author:雪月花桜
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現在それ以外でも二次小説をupしておりますし、OLなりの節約・日々の徒然を語っています。

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