夢の絆⑦~工藤新一の羽化~
夢の絆シリーズ コナン小説で逆行物 新志となります。
よって下記注意書きをお読みになられてから、ご覧下さい。
***注意書き***
本シリーズ作品はヒロインあまり出ませんが彼女には優しくありませんので、RANちゃんファンはご遠慮願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
**************
注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
よって下記注意書きをお読みになられてから、ご覧下さい。
***注意書き***
本シリーズ作品はヒロインあまり出ませんが彼女には優しくありませんので、RANちゃんファンはご遠慮願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
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注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
「有希子にも話すよ だって後で知ったら怖いからねぇ」
女性に 特に妻に秘密を隠すのは至難の技だよと鶴の一声で、結局新一は母親の有希子にも”逆行”の事を話すことになった-。
ちなみに昨夜 優作から聞いたと言ったので、父と話す時よりかは緊張しなくて済んだ。
有希子は眼の前の愛息子からの話が信じられなかった。
昨夜夫から聞いているから嘘だと言う気はないし、そういう意味で信用出来ないのではないだが、その内容がである。
信じたくないと言った方がより正しいだろうか。
息子のお嫁さんにと考えていた程気に入っていた蘭が、その大事な息子の告白に返事をしてない、というのだ。
しかも何かある度に空手を使っていたと言う。
有希子の中で彼女は、いつも家庭的で明るく礼儀正しい、笑顔が似合う娘さん、だった。
ちなみに逆行前の恋愛話をする羽目になったのは、今好きなのは志保だから、今までの様に蘭を贔屓して招待したりするのを止めてくれと言われたからである。
新一は必要最低限の話で済まそうと思っていたのだが、有希子がそれで納得するわけはなく、蘭との逆行前の恋愛模様、現在の勘違いさせない為に距離を置いている事、救出予定の相棒兼恋人の志保との馴れ初めやら洗いざらい話す事になっていた。
(そんな…!蘭ちゃんがそんな誠意がない上に暴力を振るう子だったなんて・・・・・!)
その信じられない想いを汲み取ったのか、新一は逆行前のコナン時代の具体的な話をし出した。
「そうだな~英理おばさんを泣かせてる不倫相手と勘違いして、獣医さんを攻撃しようとした事もあったな。
あれは確か俺って言うかコナンが間一髪で止めた。せっかく親切に時間外に相談に乗ってくれてたのにさ…。間一髪だった。」
大きな溜息を付きながら話す息子が心配で、その瞳を覗き込んでいた。
「後は…そうそう。バスで痴漢と勘違いして、世良に空手技を仕掛けた事もあったな。
あ、世良ってのはこれから転校してくる女子高校生な。」
「・・・・・何で蘭ちゃんは女子高校生を痴漢と思うわけ?」
「世良は髪がショートで背格好もスレンダー 洋服も男性みたいだったんだ。
制服ならともかく私服だと一見すると男子にしか見えない。」
「そう。」
「世良がさ、蘭に負けない截拳道の遣い手だったから大事にならなかったけどさ。あれは心得のない人だったら怪我してたぜ。」
痴漢冤罪の上、怪我とか相手が気の毒過ぎる。世良が相手だったのは双方共に本当に幸運だった。
(いや、あそこで蘭にはきちんと理解して貰った方が良かったかもな。やっちゃえとすぐ囃し立てる浅慮さを発揮してた園子にも)
武道嗜む者はむやみやたらとそれを使ってはならない その本当の意味を-。
「中華料理店でもあったな。食事券が使えないって言ってる店員さんが、騒がれたら困るからか、場所を移すように言ったんだ。
したら蘭の奴、威圧されたと思ったのか、首元に寸止めの蹴りを放ったんだよ
説明して貰うまで帰らないんだからとか言ってたけ。
あれは確か…食事券には日曜と祝日は使用できません と明記してあったってオチだった。」
新一は逆行前の事を眼を細め、何とか思い出しながら続ける。
正直、逆行直前の組織戦と”今回”の組織壊滅の為の水面下での情報収集、何より宮野姉妹救出作戦、で彼の脳の記憶容量は限界に近く、さっと思い出せない。
「「・・・・・」」
もう絶句するしかない工藤夫妻である。
「俺自身もよく空手振るわれてたな 例のコナンになるきっかけになった遊園地に行く約束の時とかおっちゃんと一緒に美術館に強引に連れて行かれた時は、近くのロッカー蹴っ飛ばしてたっけ。」
それは脅迫ではないか。
「「何だって?(何ですって?)」」
大事な息子がまさか身近の幼馴染にずっと空手攻撃に晒されていたと知って愕然とする。
有希子はもう小さい頃からよく知っているはずの彼女の思わぬ面を知らされ、手がぶるぶると震えるのを抑えるのに必死だった。
実は夫妻がロスに移住してから、蘭の空手が急速に上達し、且つ新一への依存が重くなっていたので、全然知らなかったのである。
「以前はさ、困ったなって思ってたけど、相手が俺と多分おっちゃんだけだったから、そこまで深刻に捉えなかった。
蘭が好きだったし、あとは慣れかな。俺避けるのは得意だし。」
「蘭自身もじゃれ合いのつもりだったんだろうってな。」
「でも今は思うんだ。もしも俺が体調悪かったらどうするんだ?それ以外でも何かあって避けれなければ大怪我だ。
蘭の空手にはそれだけの力がある。ただの女子高校生が腹立ちまぎれにビンタするのとは訳が違う。
それに慣れて他の人にも躊躇なく空手を振るうようになったら…って言うかさっきの話が正にそれだな。
力で解決する… ただの暴力だってな。俺が止めるべきだった。」
深い悔恨に沈む息子の様子を見た瞬間、有希子に逆行の事を認めさせた。
息子が苦いものを飲み込んだような大人びた表情でそれでも前を向いていたからだ。
(これは一体、誰----?!いえ 分かっている新ちゃんだわ。)
(ああ新一は気づかない内にこんなにも大人の階段を上ってしまったのね。)
勿体ないと思う。
10代しか出来ない無茶や無鉄砲さは男も女も一緒だ。
それらは二度とない青春の貴重なキラキラした心の宝石なのに。
『信じられないような話だが、新一は新一。私たちの大事な息子だ。』
『一気に大人になってしまった新一を見て淋しい思いをするだろう。だが決して否定はしないで欲しい。』
逆行話をし終えた後に夫が放った昨夜の言葉が脳裏を過る-。
(こういう事、だったのね。)
他にも”こっち”でももう終わったけど、こんな事件もあったなって続ける息子の話に更に空いた口が塞がらなくなった。
「俺に助けを求め、連絡を取りたいばっかりにある女子高生が、俺の彼女を騙って毛利探偵事務所に来たことがあるんだ。
したら蘭、俺が事件って嘘ついて彼女と付き合ってるって思い込んでさ。
嫉妬剥き出しですごい形相。般若の面ってああいうの言うんだろうな。一応7歳のコナンにすら怒鳴る有様。
結局、依頼人と被害者宅の様子から誘拐って気付いて、犯人の目星も付けてそこに3人で乗り込んだ。したらさあ」
疲れたように此処で大きな溜息を付く新一に、今度はどんなエピソードがあるのかと戦々恐々とする。
「したら、どうだったんだい?新一。」
「犯人は彼女の顔見知りだから素知らぬ振りで尋ねたけど、マンションのドアにチェーン掛けてたんだ。
そしたら俺がそこに逃げ込んだと思い込んだ蘭が何と空手でドアを蹴破った。」
「「!?」」驚く二人。
「ドアの下敷きになっちまってた犯人の事心配して「生きてるか」って声掛けたくらい。
で、彼女が誘拐された少年を必死で探してる横で、蘭はこっちが引くくらいの鬼の形相で俺の事探してるんだよ。
ちなみに言っとくけどその時まだ告白もしてない只の幼馴染の関係の時。ありえないだろう。」
(蘭ちゃんは付き合ってもいない新ちゃんへの独占欲と嫉妬心でいっぱいだった事ね。確かに無いわ。)
そんなに息子が好きなら何故、告白した時に返事をしないという酷い事が出来るのだろう?
告白の返事をしないくせに束縛したがる-。
それはただの執着、ではないだろうか。
(新ちゃんを大事にしているんじゃなかったのね。)
有希子の中で、蘭への失望が高まっていく。
「ま、今回は”新一”がいたからフツーに解決したけどな。
蘭が嫉妬丸出しで彼女について聞いてきたけど『関係ないだろ?』で終わり。」
「ちなみに今回はどうやってドアを蹴破ったんだい?」可笑しそうな顔で優作が問う。
「あのよ。何でも空手で解決しようとする蘭と一緒にしないでくれよ、父さん。
望遠鏡使って遠目で誘拐された少年がいるの確認してから、チェーンを外さないと受け取れない大きな段ボール持って、宅配業者装って、ドアとチェーン開けさせて其処を彼女が突破しただけだよ。」
快斗がいたらもっと楽だったが、出会う前だから仕方ない。
「なるほどね。」
「犯人も、ちょっと困らせてやろうくらいの気持ちだったし、誘拐された本人がゲームしてて知り合いの家で遊んでたって認識だった。危害は加えられてなかったんだ。
少年の兄が犯人の親友で接触事故で犯人が怪我しちまってたのが動機だった。
それを故意にやったと思い込んで恨んでいたんだ。
ただ突き詰めていくと、誤解が元だから、訴えたくないって言ってたんで其れで話は解決。」
特急で帰ってきたもう一人の被害者 英雄の言を受入れ帰ろうとした新一だったが御礼に是非食事でもと誘われ
雨降って地固まるみたいな友情を目の前で繰り広げられたのは余談である。
「もしかして、このチケットはそれで?」
目敏くリビングテーブルに置いてある封筒に気付く父親の慧眼に内心しまったと思いつつ、誤魔化しても仕方ないと開き直る。
「父さん鋭いな。うん。すっげえイイ席!」
「だろうねえ。多分関係者席じゃないかな。」
「あ、やっぱり?」
「正直、蘭がいなくて助かった。遠ざけておいて正解だった。
空手で器物破損されるのも危ないが、守秘義務に甘いトコあるから園子ならいいかとか言って話しかねない。
園子も結構噂好きだしさ。相手 有名人だから、そんな事されたらあっという間に広がってしまう。」
続ける息子の言で親友の娘は最早そんなに信用されていないのだと有希子は思い知る。
「分かっていると思うけど、父さんも母さんもこれ絶対秘密だぜ?」
「え?新ちゃん?これだけの話じゃ何処の誰だか分からないわよ。」
今までの話に場所に繋がる固有名詞はなかった。被害者も加害者も関係者の名前すら出てきていない。
御礼のあのサッカーのチケットと犯行原因の”接触事故”からしてサッカー選手かもしくは関係者、その家族くらいが可能性が高いがそれでもまだ推測の域を出ない。
「ああ、分かっている、新一。」
だが夫は全て理解している顔で深く頷いた。
父親と息子だからか、同じ探偵同士だからか、離れて暮らすまでよく見ていた二人だけで理解している世界-。
「貴方?」
「有希子。確かに具体的な名前は伏せているが、これだけ手掛かりがあれば真相に辿りつくのは案外簡単だよ。」
普通の人ならこれだけでは具体的な人物は浮かばない。
だが鋭い人やチケットの出所を突き止める事が可能なサッカー選手に近い 詳しい人なら、誘拐犯の真相に辿り着く可能性がないわけではない。
そして両親はその伝手がある人達であり、特に父親は、”鋭い人”に該当するのだ。
だから念の為に、口止めをする。
「依頼人の”大事にしたくない”って希望があったから、本当は話すつもりなかったんだけど、逆行前の事を説明するのに一番分かり易いかなって思って。」
「父さんと母さんなら大丈夫だって信じている。」
「ええ。分かったわ。言わない。」
息子の信頼が嬉しくて、反射的に頷く。
(逆行前の事を話すついでに話さざるを得なくなっただけで本来なら話すべき事ではない。って新ちゃん思っていたのね。)
その様子にどんどん息子が本当の”名探偵””大人”になろうとしている- 遠くなっていく気がして有希子は思わず新一を抱きしめていた。
「か、母さん?」
「新ちゃん お願いよ。そんなに急いで大人にならないで。」
「俺はまだ子供だよ。」
穏やかに笑う息子の姿。
だが安心できなかった。
(皮肉だわ。)
優秀だった息子は昔から早く大人になりたがっていたが、その様こそが逆に子供っぽさを見せ、有希子を安心させていたのに。
自身を子供だと認めた今はもう孵化 否、羽化しかかる 美しい蝶を見ているようだ。
目を離したら最後、羽ばたいていってしまう-。
(お願いよ。まだ私の”新ちゃん”でいて。)
その日々がもう残り少ないのを肌で感じるからこそ、有希子は祈らずにいられなかった。
*******************
後書 お待たせいたしました。夢の絆 続きでございます。
有希子さん編が終わりません/(^o^)\ナンテコッタイ
よって2話にし且つ 題名も当初は「工藤有希子の~」から『工藤新一の羽化』にしました。
題名に一人登場人物付ける ルール守りたくて!(どーでもいい 裏話( ´艸`))
一滴の水 蘭編⑥でもありましたが、どうしてこう蘭ちゃん絡みになると、話が無駄に長くなるのか-!??( ノД`)
おそるべし公式ヒロインの影響力!!!!!(ノll゚Д゚llヽ)
次話で終わりますように(こらこら 作者💦)
実は新一君は臥竜のイメージもあってもそちらのエピも考えているのですが、この段階では
母親視点という事も相まって 蝶でございます。
CLAMPの『XXXHOLiC』(ホリック)で謎の美女店主 侑子さんの花押且つ象徴で何度も出てきて『蝶は変わる前兆』で
綺麗な雰囲気が好きで~(((o(*゚▽゚*)o)))
あんな雰囲気だと思って読んで下さい(笑 いきなり超有名作品登場)
PS:いいなと思ったら、コメントや拍手頂けると作者が狂喜乱舞ゥレシ━.:*゚..:。:.━(Pq'v`◎*)━.:*゚:.。:.━ィィして次なる作品のエネルギーにもなりますので、宜しくお願い致します(((o(*゚▽゚*)o)))
女性に 特に妻に秘密を隠すのは至難の技だよと鶴の一声で、結局新一は母親の有希子にも”逆行”の事を話すことになった-。
ちなみに昨夜 優作から聞いたと言ったので、父と話す時よりかは緊張しなくて済んだ。
有希子は眼の前の愛息子からの話が信じられなかった。
昨夜夫から聞いているから嘘だと言う気はないし、そういう意味で信用出来ないのではないだが、その内容がである。
信じたくないと言った方がより正しいだろうか。
息子のお嫁さんにと考えていた程気に入っていた蘭が、その大事な息子の告白に返事をしてない、というのだ。
しかも何かある度に空手を使っていたと言う。
有希子の中で彼女は、いつも家庭的で明るく礼儀正しい、笑顔が似合う娘さん、だった。
ちなみに逆行前の恋愛話をする羽目になったのは、今好きなのは志保だから、今までの様に蘭を贔屓して招待したりするのを止めてくれと言われたからである。
新一は必要最低限の話で済まそうと思っていたのだが、有希子がそれで納得するわけはなく、蘭との逆行前の恋愛模様、現在の勘違いさせない為に距離を置いている事、救出予定の相棒兼恋人の志保との馴れ初めやら洗いざらい話す事になっていた。
(そんな…!蘭ちゃんがそんな誠意がない上に暴力を振るう子だったなんて・・・・・!)
その信じられない想いを汲み取ったのか、新一は逆行前のコナン時代の具体的な話をし出した。
「そうだな~英理おばさんを泣かせてる不倫相手と勘違いして、獣医さんを攻撃しようとした事もあったな。
あれは確か俺って言うかコナンが間一髪で止めた。せっかく親切に時間外に相談に乗ってくれてたのにさ…。間一髪だった。」
大きな溜息を付きながら話す息子が心配で、その瞳を覗き込んでいた。
「後は…そうそう。バスで痴漢と勘違いして、世良に空手技を仕掛けた事もあったな。
あ、世良ってのはこれから転校してくる女子高校生な。」
「・・・・・何で蘭ちゃんは女子高校生を痴漢と思うわけ?」
「世良は髪がショートで背格好もスレンダー 洋服も男性みたいだったんだ。
制服ならともかく私服だと一見すると男子にしか見えない。」
「そう。」
「世良がさ、蘭に負けない截拳道の遣い手だったから大事にならなかったけどさ。あれは心得のない人だったら怪我してたぜ。」
痴漢冤罪の上、怪我とか相手が気の毒過ぎる。世良が相手だったのは双方共に本当に幸運だった。
(いや、あそこで蘭にはきちんと理解して貰った方が良かったかもな。やっちゃえとすぐ囃し立てる浅慮さを発揮してた園子にも)
武道嗜む者はむやみやたらとそれを使ってはならない その本当の意味を-。
「中華料理店でもあったな。食事券が使えないって言ってる店員さんが、騒がれたら困るからか、場所を移すように言ったんだ。
したら蘭の奴、威圧されたと思ったのか、首元に寸止めの蹴りを放ったんだよ
説明して貰うまで帰らないんだからとか言ってたけ。
あれは確か…食事券には日曜と祝日は使用できません と明記してあったってオチだった。」
新一は逆行前の事を眼を細め、何とか思い出しながら続ける。
正直、逆行直前の組織戦と”今回”の組織壊滅の為の水面下での情報収集、何より宮野姉妹救出作戦、で彼の脳の記憶容量は限界に近く、さっと思い出せない。
「「・・・・・」」
もう絶句するしかない工藤夫妻である。
「俺自身もよく空手振るわれてたな 例のコナンになるきっかけになった遊園地に行く約束の時とかおっちゃんと一緒に美術館に強引に連れて行かれた時は、近くのロッカー蹴っ飛ばしてたっけ。」
それは脅迫ではないか。
「「何だって?(何ですって?)」」
大事な息子がまさか身近の幼馴染にずっと空手攻撃に晒されていたと知って愕然とする。
有希子はもう小さい頃からよく知っているはずの彼女の思わぬ面を知らされ、手がぶるぶると震えるのを抑えるのに必死だった。
実は夫妻がロスに移住してから、蘭の空手が急速に上達し、且つ新一への依存が重くなっていたので、全然知らなかったのである。
「以前はさ、困ったなって思ってたけど、相手が俺と多分おっちゃんだけだったから、そこまで深刻に捉えなかった。
蘭が好きだったし、あとは慣れかな。俺避けるのは得意だし。」
「蘭自身もじゃれ合いのつもりだったんだろうってな。」
「でも今は思うんだ。もしも俺が体調悪かったらどうするんだ?それ以外でも何かあって避けれなければ大怪我だ。
蘭の空手にはそれだけの力がある。ただの女子高校生が腹立ちまぎれにビンタするのとは訳が違う。
それに慣れて他の人にも躊躇なく空手を振るうようになったら…って言うかさっきの話が正にそれだな。
力で解決する… ただの暴力だってな。俺が止めるべきだった。」
深い悔恨に沈む息子の様子を見た瞬間、有希子に逆行の事を認めさせた。
息子が苦いものを飲み込んだような大人びた表情でそれでも前を向いていたからだ。
(これは一体、誰----?!いえ 分かっている新ちゃんだわ。)
(ああ新一は気づかない内にこんなにも大人の階段を上ってしまったのね。)
勿体ないと思う。
10代しか出来ない無茶や無鉄砲さは男も女も一緒だ。
それらは二度とない青春の貴重なキラキラした心の宝石なのに。
『信じられないような話だが、新一は新一。私たちの大事な息子だ。』
『一気に大人になってしまった新一を見て淋しい思いをするだろう。だが決して否定はしないで欲しい。』
逆行話をし終えた後に夫が放った昨夜の言葉が脳裏を過る-。
(こういう事、だったのね。)
他にも”こっち”でももう終わったけど、こんな事件もあったなって続ける息子の話に更に空いた口が塞がらなくなった。
「俺に助けを求め、連絡を取りたいばっかりにある女子高生が、俺の彼女を騙って毛利探偵事務所に来たことがあるんだ。
したら蘭、俺が事件って嘘ついて彼女と付き合ってるって思い込んでさ。
嫉妬剥き出しですごい形相。般若の面ってああいうの言うんだろうな。一応7歳のコナンにすら怒鳴る有様。
結局、依頼人と被害者宅の様子から誘拐って気付いて、犯人の目星も付けてそこに3人で乗り込んだ。したらさあ」
疲れたように此処で大きな溜息を付く新一に、今度はどんなエピソードがあるのかと戦々恐々とする。
「したら、どうだったんだい?新一。」
「犯人は彼女の顔見知りだから素知らぬ振りで尋ねたけど、マンションのドアにチェーン掛けてたんだ。
そしたら俺がそこに逃げ込んだと思い込んだ蘭が何と空手でドアを蹴破った。」
「「!?」」驚く二人。
「ドアの下敷きになっちまってた犯人の事心配して「生きてるか」って声掛けたくらい。
で、彼女が誘拐された少年を必死で探してる横で、蘭はこっちが引くくらいの鬼の形相で俺の事探してるんだよ。
ちなみに言っとくけどその時まだ告白もしてない只の幼馴染の関係の時。ありえないだろう。」
(蘭ちゃんは付き合ってもいない新ちゃんへの独占欲と嫉妬心でいっぱいだった事ね。確かに無いわ。)
そんなに息子が好きなら何故、告白した時に返事をしないという酷い事が出来るのだろう?
告白の返事をしないくせに束縛したがる-。
それはただの執着、ではないだろうか。
(新ちゃんを大事にしているんじゃなかったのね。)
有希子の中で、蘭への失望が高まっていく。
「ま、今回は”新一”がいたからフツーに解決したけどな。
蘭が嫉妬丸出しで彼女について聞いてきたけど『関係ないだろ?』で終わり。」
「ちなみに今回はどうやってドアを蹴破ったんだい?」可笑しそうな顔で優作が問う。
「あのよ。何でも空手で解決しようとする蘭と一緒にしないでくれよ、父さん。
望遠鏡使って遠目で誘拐された少年がいるの確認してから、チェーンを外さないと受け取れない大きな段ボール持って、宅配業者装って、ドアとチェーン開けさせて其処を彼女が突破しただけだよ。」
快斗がいたらもっと楽だったが、出会う前だから仕方ない。
「なるほどね。」
「犯人も、ちょっと困らせてやろうくらいの気持ちだったし、誘拐された本人がゲームしてて知り合いの家で遊んでたって認識だった。危害は加えられてなかったんだ。
少年の兄が犯人の親友で接触事故で犯人が怪我しちまってたのが動機だった。
それを故意にやったと思い込んで恨んでいたんだ。
ただ突き詰めていくと、誤解が元だから、訴えたくないって言ってたんで其れで話は解決。」
特急で帰ってきたもう一人の被害者 英雄の言を受入れ帰ろうとした新一だったが御礼に是非食事でもと誘われ
雨降って地固まるみたいな友情を目の前で繰り広げられたのは余談である。
「もしかして、このチケットはそれで?」
目敏くリビングテーブルに置いてある封筒に気付く父親の慧眼に内心しまったと思いつつ、誤魔化しても仕方ないと開き直る。
「父さん鋭いな。うん。すっげえイイ席!」
「だろうねえ。多分関係者席じゃないかな。」
「あ、やっぱり?」
「正直、蘭がいなくて助かった。遠ざけておいて正解だった。
空手で器物破損されるのも危ないが、守秘義務に甘いトコあるから園子ならいいかとか言って話しかねない。
園子も結構噂好きだしさ。相手 有名人だから、そんな事されたらあっという間に広がってしまう。」
続ける息子の言で親友の娘は最早そんなに信用されていないのだと有希子は思い知る。
「分かっていると思うけど、父さんも母さんもこれ絶対秘密だぜ?」
「え?新ちゃん?これだけの話じゃ何処の誰だか分からないわよ。」
今までの話に場所に繋がる固有名詞はなかった。被害者も加害者も関係者の名前すら出てきていない。
御礼のあのサッカーのチケットと犯行原因の”接触事故”からしてサッカー選手かもしくは関係者、その家族くらいが可能性が高いがそれでもまだ推測の域を出ない。
「ああ、分かっている、新一。」
だが夫は全て理解している顔で深く頷いた。
父親と息子だからか、同じ探偵同士だからか、離れて暮らすまでよく見ていた二人だけで理解している世界-。
「貴方?」
「有希子。確かに具体的な名前は伏せているが、これだけ手掛かりがあれば真相に辿りつくのは案外簡単だよ。」
普通の人ならこれだけでは具体的な人物は浮かばない。
だが鋭い人やチケットの出所を突き止める事が可能なサッカー選手に近い 詳しい人なら、誘拐犯の真相に辿り着く可能性がないわけではない。
そして両親はその伝手がある人達であり、特に父親は、”鋭い人”に該当するのだ。
だから念の為に、口止めをする。
「依頼人の”大事にしたくない”って希望があったから、本当は話すつもりなかったんだけど、逆行前の事を説明するのに一番分かり易いかなって思って。」
「父さんと母さんなら大丈夫だって信じている。」
「ええ。分かったわ。言わない。」
息子の信頼が嬉しくて、反射的に頷く。
(逆行前の事を話すついでに話さざるを得なくなっただけで本来なら話すべき事ではない。って新ちゃん思っていたのね。)
その様子にどんどん息子が本当の”名探偵””大人”になろうとしている- 遠くなっていく気がして有希子は思わず新一を抱きしめていた。
「か、母さん?」
「新ちゃん お願いよ。そんなに急いで大人にならないで。」
「俺はまだ子供だよ。」
穏やかに笑う息子の姿。
だが安心できなかった。
(皮肉だわ。)
優秀だった息子は昔から早く大人になりたがっていたが、その様こそが逆に子供っぽさを見せ、有希子を安心させていたのに。
自身を子供だと認めた今はもう孵化 否、羽化しかかる 美しい蝶を見ているようだ。
目を離したら最後、羽ばたいていってしまう-。
(お願いよ。まだ私の”新ちゃん”でいて。)
その日々がもう残り少ないのを肌で感じるからこそ、有希子は祈らずにいられなかった。
*******************
後書 お待たせいたしました。夢の絆 続きでございます。
有希子さん編が終わりません/(^o^)\ナンテコッタイ
よって2話にし且つ 題名も当初は「工藤有希子の~」から『工藤新一の羽化』にしました。
題名に一人登場人物付ける ルール守りたくて!(どーでもいい 裏話( ´艸`))
一滴の水 蘭編⑥でもありましたが、どうしてこう蘭ちゃん絡みになると、話が無駄に長くなるのか-!??( ノД`)
おそるべし公式ヒロインの影響力!!!!!(ノll゚Д゚llヽ)
次話で終わりますように(こらこら 作者💦)
実は新一君は臥竜のイメージもあってもそちらのエピも考えているのですが、この段階では
母親視点という事も相まって 蝶でございます。
CLAMPの『XXXHOLiC』(ホリック)で謎の美女店主 侑子さんの花押且つ象徴で何度も出てきて『蝶は変わる前兆』で
綺麗な雰囲気が好きで~(((o(*゚▽゚*)o)))
あんな雰囲気だと思って読んで下さい
PS:いいなと思ったら、コメントや拍手頂けると作者が狂喜乱舞ゥレシ━.:*゚..:。:.━(Pq'v`◎*)━.:*゚:.。:.━ィィして次なる作品のエネルギーにもなりますので、宜しくお願い致します(((o(*゚▽゚*)o)))
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