鳶に油揚げをさらわれる
彩雲国物語 国王執務室-。
やっと休憩をとれた国王:劉輝の安息の時は短かった。
霄太師が現れた為だ。
いきなり目の前に山程の巻物を積まれた。
そうして、くそ爺もとい霄太師は言い放った。
「いくらでもお選び下され。」
霄太師が来た時点で嫌な予感がしていたが、その予感がますます高まった。
そんな王の予感に気づかぬのか、飄々とした様子で、巻物を広げる。
着飾った女性の絵姿と、その人物の名前、家柄、趣味、等々が書き連ねてある。
ずばり王の妃候補の姫達の目録であった。
「こんなもの要らぬっ!」
未だ秀麗を諦めきれない劉輝は切って捨てた。
王としての義務で十三姫を妃にする事は内定したものの、彼の想い人は未だ独身だ。
「そう仰らずに。主上も一人寝は淋しいでしょう。
古今東西失恋した男には新しい女子を、と相場は決まっておりまする。」
「余は振られてなどおらぬ!!」
こと初恋の君に関しては非常に気が長く、諦めが悪い劉輝である。
桜が咲くまでの約束が政変によりなし崩しになった為、未だ初恋にしがみついていた。
本当に根性だけは、人一倍ある劉輝である。
「おやおや。ま~だ~現実を見ようとなされんのですかな。
贈り物しても、文を送っても反応なし。直接会って、求婚しても求婚しても断れる有様。
これで何処が振られてないと?これで失恋してないなら、世の中から失恋男はいなくなりますな。」
ぐさりっ!容赦のない攻撃によろめく王。
おーほっほ、と高笑いをする、霄太師。圧倒的優勢疑いもなし。
「しゅ、秀麗は今だって余に優しいのだ!」
「秀麗殿は誰にでも優しいですじゃ。」
何とか言い返すも、秒速で「お前だけではない」とすっぱり否定された。
「ううう。」目はうるうるし、既に半ば泣き出しそうになっている。
「ほ~ら~。もういい加減認めなされ。しつこい男は嫌われますぞ。」
「余はしつこくなどしておらぬ!!」
「まだご自覚がない?困ったものですじゃ。諦めの悪い男も嫌われますぞ。」
「諦めたらそこで終わりではないか!」
諦められるわけがない。
「女子は秀麗殿だけではありませぬ。この姫はどうですかな?」
巻物を広げながら薦める霄太師。
「要らぬと言ってるだろう!!余は振られてなどいない!!いないったらいないのだ~」
うわーんっと泣き出した劉輝を見ても、霄太師はわざとらしく溜め息を吐く。
「万年失恋男であるのに、まだしぶとく振り返ってくれると思い続ける事ができる根拠は何ですのじゃ?」
さらりとヒドイ事を言うこの国の大師である。
「し。刺繍入りの手巾をくれたし、美味しい饅頭をつくってくれたし、二胡だって聴かせてくれた!!そうだ!余は振られてなどおらぬ!!もっと真心込めればきっと!!」
「それは主上が秀麗殿を好きなきっかけや理由であって、万が一にも秀麗殿が主上を好きになってくれる
理由ではありませんな。」
またしてもばっさりと切り返し攻撃された。
「そ、そんな事ないのだ。桜の下で会った秀麗は、頬を染めて余を見上げそして・・。」
遠くを見つめ夢みるように、乙女思考に突入する王。腕まで胸の前で組んでいる。
「妄想はやめなされ。」
ぴしゃりと王の妄想もとい夢語りを止めさせる。
「・・・まあ、今日のところはいいですじゃ。この書面に署名・捺印して頂ければ。」
珍しくあっさり引き、別の書簡を取り出した。
「何だ?・・・結婚式の招待状?何でこんなのに余の署名・捺印が必要なのだ?」
確かにそれは結婚式の招待状だった。
「おや。間違えてしもうた。」
わざとらしく言うくそ爺。その眼が確信犯的な輝きを放っている。
「もう年じゃないのか。年寄りは年寄りらしく引っ込んでろ。」
それに全く気付かず、追い払う口実ができたと嬉々としている王。
「そうですのう。では老体に鞭打って秀麗殿のお祝いしますじゃ。」
そう言って退出しようとする。
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!!しゅ、秀、秀麗の、い、祝い?」
「秀麗殿の結婚式なら当たり前ですじゃ。」
からーんと劉輝の手から筆がすべり落ちた。
眼にも止まらぬ速さでその書簡を取り上げる。
書簡の最後に差出人が書いてあるはずだ。
”私どもの婚礼に参加いただければ嬉しく存じます。”
”陸清雅 紅秀麗”
「う、嘘なのだ~っっ!!!!」執務室に劉輝の涙混じりの悲鳴がなり響いた。
********************************************************
後書
素敵な小説を書いている新城要さんのサイトへ行った時にコメント欄に書き込みした
「不憫王様が結婚の知らせ受け取った時の魂抜ける話」です。
いきなりこの話が下りてきました(笑)
主上は可哀想なほど萌えます よって私の小説はこんなのばっかり。
劉秀派の人から抗議の声が聞こえてきそうな^^;
でもすごく楽しいんですよね
本当は側近二人も会話にいれたかったのですが長くなりそうでいれませんでした。
そして結婚式の話に続くのでした(笑)
お楽しみ頂けたら幸いです\(^o^)/
やっと休憩をとれた国王:劉輝の安息の時は短かった。
霄太師が現れた為だ。
いきなり目の前に山程の巻物を積まれた。
そうして、くそ爺もとい霄太師は言い放った。
「いくらでもお選び下され。」
霄太師が来た時点で嫌な予感がしていたが、その予感がますます高まった。
そんな王の予感に気づかぬのか、飄々とした様子で、巻物を広げる。
着飾った女性の絵姿と、その人物の名前、家柄、趣味、等々が書き連ねてある。
ずばり王の妃候補の姫達の目録であった。
「こんなもの要らぬっ!」
未だ秀麗を諦めきれない劉輝は切って捨てた。
王としての義務で十三姫を妃にする事は内定したものの、彼の想い人は未だ独身だ。
「そう仰らずに。主上も一人寝は淋しいでしょう。
古今東西失恋した男には新しい女子を、と相場は決まっておりまする。」
「余は振られてなどおらぬ!!」
こと初恋の君に関しては非常に気が長く、諦めが悪い劉輝である。
桜が咲くまでの約束が政変によりなし崩しになった為、未だ初恋にしがみついていた。
本当に根性だけは、人一倍ある劉輝である。
「おやおや。ま~だ~現実を見ようとなされんのですかな。
贈り物しても、文を送っても反応なし。直接会って、求婚しても求婚しても断れる有様。
これで何処が振られてないと?これで失恋してないなら、世の中から失恋男はいなくなりますな。」
ぐさりっ!容赦のない攻撃によろめく王。
おーほっほ、と高笑いをする、霄太師。圧倒的優勢疑いもなし。
「しゅ、秀麗は今だって余に優しいのだ!」
「秀麗殿は誰にでも優しいですじゃ。」
何とか言い返すも、秒速で「お前だけではない」とすっぱり否定された。
「ううう。」目はうるうるし、既に半ば泣き出しそうになっている。
「ほ~ら~。もういい加減認めなされ。しつこい男は嫌われますぞ。」
「余はしつこくなどしておらぬ!!」
「まだご自覚がない?困ったものですじゃ。諦めの悪い男も嫌われますぞ。」
「諦めたらそこで終わりではないか!」
諦められるわけがない。
「女子は秀麗殿だけではありませぬ。この姫はどうですかな?」
巻物を広げながら薦める霄太師。
「要らぬと言ってるだろう!!余は振られてなどいない!!いないったらいないのだ~」
うわーんっと泣き出した劉輝を見ても、霄太師はわざとらしく溜め息を吐く。
「万年失恋男であるのに、まだしぶとく振り返ってくれると思い続ける事ができる根拠は何ですのじゃ?」
さらりとヒドイ事を言うこの国の大師である。
「し。刺繍入りの手巾をくれたし、美味しい饅頭をつくってくれたし、二胡だって聴かせてくれた!!そうだ!余は振られてなどおらぬ!!もっと真心込めればきっと!!」
「それは主上が秀麗殿を好きなきっかけや理由であって、万が一にも秀麗殿が主上を好きになってくれる
理由ではありませんな。」
またしてもばっさりと切り返し攻撃された。
「そ、そんな事ないのだ。桜の下で会った秀麗は、頬を染めて余を見上げそして・・。」
遠くを見つめ夢みるように、乙女思考に突入する王。腕まで胸の前で組んでいる。
「妄想はやめなされ。」
ぴしゃりと王の妄想もとい夢語りを止めさせる。
「・・・まあ、今日のところはいいですじゃ。この書面に署名・捺印して頂ければ。」
珍しくあっさり引き、別の書簡を取り出した。
「何だ?・・・結婚式の招待状?何でこんなのに余の署名・捺印が必要なのだ?」
確かにそれは結婚式の招待状だった。
「おや。間違えてしもうた。」
わざとらしく言うくそ爺。その眼が確信犯的な輝きを放っている。
「もう年じゃないのか。年寄りは年寄りらしく引っ込んでろ。」
それに全く気付かず、追い払う口実ができたと嬉々としている王。
「そうですのう。では老体に鞭打って秀麗殿のお祝いしますじゃ。」
そう言って退出しようとする。
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!!しゅ、秀、秀麗の、い、祝い?」
「秀麗殿の結婚式なら当たり前ですじゃ。」
からーんと劉輝の手から筆がすべり落ちた。
眼にも止まらぬ速さでその書簡を取り上げる。
書簡の最後に差出人が書いてあるはずだ。
”私どもの婚礼に参加いただければ嬉しく存じます。”
”陸清雅 紅秀麗”
「う、嘘なのだ~っっ!!!!」執務室に劉輝の涙混じりの悲鳴がなり響いた。
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後書
素敵な小説を書いている新城要さんのサイトへ行った時にコメント欄に書き込みした
「不憫王様が結婚の知らせ受け取った時の魂抜ける話」です。
いきなりこの話が下りてきました(笑)
主上は可哀想なほど萌えます よって私の小説はこんなのばっかり。
劉秀派の人から抗議の声が聞こえてきそうな^^;
でもすごく楽しいんですよね
本当は側近二人も会話にいれたかったのですが長くなりそうでいれませんでした。
そして結婚式の話に続くのでした(笑)
お楽しみ頂けたら幸いです\(^o^)/
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