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太陽の女神 月の巫女姫⑩~約束~

弟:大津の死-。
その報せは大伯皇女を奈落の底に堕とし、長らく寝込む事になった。
(嘘!嘘よ!!)
心が悲鳴を上げる-。
続く凶報は妃であった山辺皇女の後追い自殺であり、それが大津の死が揺るぎないものであると突き付けられたのであった。
そしてその伏せていた間に、身内に不幸があったとして彼女の斎王の任は解かれて帰京する事が決まっていた。

「照!私戻りたくない!!だって大津はいないのに戻って何になると言うの!」
「それならずっといたこの伊勢に居たい!風と森と海の国が好き!照とも離れたくない!」
いつもは物静かな親友が泣き縋る様に前に照は途方に暮れていた。
(大伯の願いを叶えたい-。でも対価が釣り合わない。)
大津を助ける為に、彼女は豊かな髪と霊能力を差し出した。
その願いは本人による拒絶という思わぬ結果になってしまった。
(対価を払ったけれど願いを叶える事が出来なかった。ならその分、別の願いを叶えてあげたい。例えば伊勢に留まりたいという-。)
けれど、と理を知る神としての彼女は即座に足りないと判断を下してしまった。
(せめて大津皇子本人からの拒絶でなく、間に合わなかったとかなら願いを”変える”という手段も遣えたものを…!)
だが本人の拒絶という例外が起り、叶えられなかった分の願いを聞くにしても、本当に僅かしか叶えられない。対価が残っていない。
(そしてもう大伯には差し出せるモノがない。これ以上となったら”彼女の幸せ全て”か”命”になってしまう…!)
目を瞑り照は考える。自分で出来る限りの事を-。

「大伯、まだ少しだけ貴女の願いを叶えてあげられる。ただ伊勢に置いてあげられる程でない。皇后はすぐにでも貴女を戻そうとしている。」
「そんな…!」
「だから私が代わりに一緒に行くわ。」
「え?」
「私と居たいのでしょう?」
「でも貴女が此処に居なかったら…!」
「いいのよ。元々私は宮廷にいたのだから。それに”天照大御神”なら同時に二箇所いるのだって可能よ?」
「あ…!!」
「それでいい?と言うかそれが精一杯なのよ。」
「ええ!!ありがとう!!照!」

それからの彼女の歌は、万葉集に4首残しているがそれは全て最愛の弟:大津への想いであった。

神風の伊勢の国にもあらましを なにしか来けむ君もあらなくに
見まく欲(ほ)りわがする君もあらなくに なにしか来けむ馬疲るるに
うつそみの人にあるわれや明日よりは 二上山を弟背(いろせ)とわが見む
磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど 見すべき君がありといはなくに

退下・帰京途上で詠んだ歌として2首、大津皇子を二上山に移葬したときの歌2首である。

そして十数後の元号が変わった或る日、彼女は死の床にいた。
「照、ありがとう。今まで側に居てくれて…。」
「何を言うの。楽しかったわ。とても。」
あれから照は新しい侍女という名目でずっと側に居てくれた。
それがとても嬉しかった。
一人では耐えられなかったあろう”孤独”。
それを照は救い上げてくれた。
「ねえ照。一つお願いがあるの…。」
「なあに?」
「あのね…。もしも もしもこれから先の斎王で私みたいに全てを投げうってでもという願いがあったら…いいえ…なくても斎王とは都を離れ孤独なもの…。その…その姫たちのね、味方になってあげて欲しいの。差し出せるものがこれくらいしかないのだけれど。」
そう言って白髪の大伯が差し出したのは、亡き父からの形見分けの見事な細工の櫛であった。
「そんなのいいわよ。対価は本人から頂くもの…それくらい私の大伯の仲よ。私の生きている限り手を差し伸べてあげるわ。
但しその手を取るかどうかはその姫次第ね。」
「ふふ…照らしい。でもそれでいいわ。ありがとう。ねえ照 生きている限りって照はどのくらい生きるの?」
「さあ?それはあなた方次第ね。」
「え?」
「私たちは人間の心によって成り立っている。だからね信じなくなったら、必要とされなくなったらそれが”死”なのよ。」
「そうなの…。」
「ええ。喉渇いてない?何か飲む?」
「大伯?…大津の元に逝ったのね。」
一陣の風が吹き抜けた。

大宝元年12月27日 大伯皇女 薨去。
歴史書には簡単にそう記される事になる。

そして此処から斎王と姫神との秘かな交流が続いていくことは史書には記されない事であった。
********
後書き

やっと終わりました(;・∀・)
この天照大御神と歴代斎王との交流が初代斎王の大伯皇女との”約束”と”友情”であるという事を最初に書いた方がいいかなと思い本作品が出来ました。
今思えば、初代を後にしても良かったなとか思います(;'∀')
なぜか歴代斎王(短編が幾つか)を助けてくれる華やか姫 実は昔------的に持って行っても良かったな~って(;^_^A
何はともあれ一区切りつきまして、ほっとしています。

楽しんで頂けたら幸いです(*- -)(*_ _)ペコリ
コメントや拍手頂けたらもっと嬉しいですヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪

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30代OLが歴史・節約・日頃・二次小説のことを書き綴っています。 コメント大歓迎★ ですが、宣伝や本文に何も関係ないもの もしくは激しく不愉快、コピペ等、そういった類は、私の判断により 誠に勝手ながら削除の方向です。楽しく語りたいです♪ 二次創作小説もありますが、このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。

雪月花桜

Author:雪月花桜
タイトル通り歴史大好きな女がブログしてます。
歴史を元にした小説なんかも大好きでそれらについても語ったり、短編なんか書いてみたいです。
現在それ以外でも二次小説をupしておりますし、OLなりの節約・日々の徒然を語っています。

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