結婚式舞台裏 おまけ--幕間--
「それにしてもお二人ともなんか疲れたような顔してて、大丈夫かしら。いえ黄尚書は仮面で顔色分からないけど雰囲気的に・・。」
心配そうな花嫁姿の秀麗を横目で見ながら、理由に当たりをつけていた清雅は、疲労もあり珍しく何も考えずに即答した。
「お前の叔父何とかならないのかよ。」
「玖琅叔父様がどうかした?叔父様に限ってお二人に迷惑掛けるわけないし。」
首を捻る秀麗。
(そっちの叔父じゃねえよ!!しかし本当に知らないんだな。)
「叔父様といえば、黎深叔父様、遂に列席して下さらなかったわ・・。私やっぱり嫌われているのかしら。それとも無関心なのかしら」
「お嬢さん、そんな気にしなくていいんじゃない?だって絳攸さんは出席してくれてたんじゃん。」
「そうだぜ。姫さん。あと奥方の百合姫さんだっけ?も来てたじゃないか。」
「ええ・・。」
控室に来ていた蘇芳と燕青が代わる代わる慰めるが、当の本人は浮かぬ顔。
「馬鹿め。」
「馬鹿って何よ!」
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪い?ああ、俺が養ってやるから、お前官吏辞めろ。」
叔父の異常な愛に気付かぬ鈍感な彼女に、少々の鬱憤晴らしに、一番嫌がることを冗談半分、本気半分で告げる。
「何よ!結婚した後でも続けていいって言ったくせに!この嘘つき~!!」秀麗が喚く。
こんこん 扉が叩く音がした。
「姫様。次の衣装にお召し替え遊ばせ」
式当日一番忙しい花嫁は、侍女に連れられていった。
本人(秀麗)がいなくなった途端、清雅が顔をしかめながら吐き捨てた。
「あんな気味悪いくらい蕩けそうな笑顔してる男が嫌ってるわけないだろう!更に言うなら、無関心なわけあるか!!」
「どういうことデスカ~?」
「何?姫さん嫌われてるんじゃないのか!?・・っていうかもしや、何かされた?」
「ああ。されたとも!されまくったさ!!」
清雅は結婚が決まってからの色々な、イロイロな事を脳裏に浮かべた
殺し屋は来る、毒矢は飛んでくる、毒酒も送られる。その他些少なことから命に関わるありとあらゆる事をされたのだ。
さすがに清雅も対応が大変だった。故に挙式を終えた今、どっと疲れが出た。
「あらゆる殺し屋やら毒酒やら、罠やら不幸の手紙やらがわんさかな!!どれだけ溺愛すれば気が済むんだか。」
殺害されそうになった打ち明け話に二人とも冷や汗が流れる。
「・・セーガ君。よく無事で。つーかどうやって生き延びたのか聞いてもい~い?」
「凄まじいな。よっぽど姫さんを嫁に出したくないとみたな。あれ?じゃあ好かれてるって事か。」
「紅州みかん知ってるか?」
「ああ、紅州の特産品でしょ~?甘くて小さくて種無し。高級品の蜜柑。」
「あれを開発したのが、秀麗の為だと言ったら、その溺愛ぶりが分かるか。」
「・・・・は?」さすがの剛毅な燕青も咄嗟に言葉が出てこない。
「ジョーダン・・じゃないんだ?」蘇芳が笑い飛ばそうとして失敗する。
州を代表する特産品となれば、
開発研究の為の土地代、建設費、人件費、研究費、特許の取得、その後本格的に畑を開墾する費用などなど、
天文学的な金額が費やされてるはずだ。
決して姪の為だけに消費されていい金額ではない。
だがそんな常識通用しないのが紅黎深。
「秀麗が昔体弱かったのを知っているか?」
「「ああ、うん聞いたことある」」
「それでも食べることができたのが蜜柑だったらしい。」
「「・・ってそれだけの為に!?」」驚愕の声をあげる燕青と蘇芳。
紅黎深がこの場にいたら、「それだけとは何だ!!秀麗の笑顔の為ならいくら払っても安い買い物だ!」とか言ったに違いない。
「あ。それで甘くて小さくて種なしになったわけね。」納得したように脱力した声を出す蘇芳。
((・・・姫さん(お嬢さん)の為に紅家潰しそうだ。))
「じゃあさ~その事お嬢さんに教えてあげれば」
誤解も解けるんじゃないの?と続けて言おうとした蘇芳はギロリと清雅に睨まれた。
「・・言うなって事デスカ。でも何で?」
「あんな姪馬鹿と親戚付き合いしたくない。だから名乗らなくていい。むしろ名乗るな!
一生幽霊親族のままでいやがれーっ!!!」清雅の魂の叫びだった。
「「・・・・」」
花嫁に続き花婿も部屋を出ていった控室には、浪燕青と榛蘇芳が残された。
「昔さ~悠舜に友人の話を聞いたことあるんだ。」
「何?いきなり?藪から棒に。」
「なんか比類なき名家の坊っちゃんで兄上とその娘御と奥方と息子だけ大事。後はぺんぺん草。
仕事はさぼりまくりな癖に 本気出せば、1日で終わるとか何とか言ってたんだけど・・。」
本気を出せば、一年分の仕事も三日で終わる天才・紅黎深の噂を榛蘇芳は知っていた。
「それは間違いないでショ~。」
「姫さんのもう一人の叔父か。」
「デショ。」
「溺愛ぶりが凄まじいな。なのに何故姫さんは会ったことないと思ってるんだ?」
「そこは突かない方がいい気する俺。」
小市民の知恵。君子危うきには近寄らず。
実は、邵可を追い出して紅家当主におさまった鬼畜叔父と秀麗に嫌われることを恐れているだけ
なのだがそんな事二人に分かるわけがない。
それにこの理由ほとんど被害妄想に近い。
「気になる。」
「辞めておこうよ~。」
同時刻、別の部屋でこの被害妄想に巻き込まれている青年がいたりした。
養い親が黎深であることを誰もが疑う、性格も仕事も真面目でまっすぐな青年、李絳攸である。
「黎深様。いい加減名乗りましょうよ。」
「煩い!!父様追いだして当主になったんですって叔父様、最低!なんて秀麗に言われた日には、
私は生きてはいけん!」
「現在邵可様が現当主だから、その心配はないじゃないですか!」
「過去は変えられん!それもこれも玖琅が兄上追い出して私を紅家当主の座なんぞに就けるから!!
そのくせ自分はちゃっかり厳しくて、でも頼れる叔父様像創りおって!
何て図々しい!あいつ本当に私と同じ兄上の弟か!!」
・・・こうして夜は更けていく・・。
***************************************************************************************************
前作で終わりとか言いながらちゃっかりおまけ編でした。
舞台裏4と5の間の話ということで、「幕間」!
いや~黎深様の愛の暴走好きです。絳攸とのやりとりも大好きです。
どうやって止めたらいいか分からず、強引に短くしました^^;
あ、もちろん秀麗への溺愛ぶりにうなる御史台組も書いてて楽しいx2*^^*
しかし蘇芳と燕青の喋り方が分からず 微妙になりました・・^^;
楽しんで頂けたら嬉しいです☆
心配そうな花嫁姿の秀麗を横目で見ながら、理由に当たりをつけていた清雅は、疲労もあり珍しく何も考えずに即答した。
「お前の叔父何とかならないのかよ。」
「玖琅叔父様がどうかした?叔父様に限ってお二人に迷惑掛けるわけないし。」
首を捻る秀麗。
(そっちの叔父じゃねえよ!!しかし本当に知らないんだな。)
「叔父様といえば、黎深叔父様、遂に列席して下さらなかったわ・・。私やっぱり嫌われているのかしら。それとも無関心なのかしら」
「お嬢さん、そんな気にしなくていいんじゃない?だって絳攸さんは出席してくれてたんじゃん。」
「そうだぜ。姫さん。あと奥方の百合姫さんだっけ?も来てたじゃないか。」
「ええ・・。」
控室に来ていた蘇芳と燕青が代わる代わる慰めるが、当の本人は浮かぬ顔。
「馬鹿め。」
「馬鹿って何よ!」
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪い?ああ、俺が養ってやるから、お前官吏辞めろ。」
叔父の異常な愛に気付かぬ鈍感な彼女に、少々の鬱憤晴らしに、一番嫌がることを冗談半分、本気半分で告げる。
「何よ!結婚した後でも続けていいって言ったくせに!この嘘つき~!!」秀麗が喚く。
こんこん 扉が叩く音がした。
「姫様。次の衣装にお召し替え遊ばせ」
式当日一番忙しい花嫁は、侍女に連れられていった。
本人(秀麗)がいなくなった途端、清雅が顔をしかめながら吐き捨てた。
「あんな気味悪いくらい蕩けそうな笑顔してる男が嫌ってるわけないだろう!更に言うなら、無関心なわけあるか!!」
「どういうことデスカ~?」
「何?姫さん嫌われてるんじゃないのか!?・・っていうかもしや、何かされた?」
「ああ。されたとも!されまくったさ!!」
清雅は結婚が決まってからの色々な、イロイロな事を脳裏に浮かべた
殺し屋は来る、毒矢は飛んでくる、毒酒も送られる。その他些少なことから命に関わるありとあらゆる事をされたのだ。
さすがに清雅も対応が大変だった。故に挙式を終えた今、どっと疲れが出た。
「あらゆる殺し屋やら毒酒やら、罠やら不幸の手紙やらがわんさかな!!どれだけ溺愛すれば気が済むんだか。」
殺害されそうになった打ち明け話に二人とも冷や汗が流れる。
「・・セーガ君。よく無事で。つーかどうやって生き延びたのか聞いてもい~い?」
「凄まじいな。よっぽど姫さんを嫁に出したくないとみたな。あれ?じゃあ好かれてるって事か。」
「紅州みかん知ってるか?」
「ああ、紅州の特産品でしょ~?甘くて小さくて種無し。高級品の蜜柑。」
「あれを開発したのが、秀麗の為だと言ったら、その溺愛ぶりが分かるか。」
「・・・・は?」さすがの剛毅な燕青も咄嗟に言葉が出てこない。
「ジョーダン・・じゃないんだ?」蘇芳が笑い飛ばそうとして失敗する。
州を代表する特産品となれば、
開発研究の為の土地代、建設費、人件費、研究費、特許の取得、その後本格的に畑を開墾する費用などなど、
天文学的な金額が費やされてるはずだ。
決して姪の為だけに消費されていい金額ではない。
だがそんな常識通用しないのが紅黎深。
「秀麗が昔体弱かったのを知っているか?」
「「ああ、うん聞いたことある」」
「それでも食べることができたのが蜜柑だったらしい。」
「「・・ってそれだけの為に!?」」驚愕の声をあげる燕青と蘇芳。
紅黎深がこの場にいたら、「それだけとは何だ!!秀麗の笑顔の為ならいくら払っても安い買い物だ!」とか言ったに違いない。
「あ。それで甘くて小さくて種なしになったわけね。」納得したように脱力した声を出す蘇芳。
((・・・姫さん(お嬢さん)の為に紅家潰しそうだ。))
「じゃあさ~その事お嬢さんに教えてあげれば」
誤解も解けるんじゃないの?と続けて言おうとした蘇芳はギロリと清雅に睨まれた。
「・・言うなって事デスカ。でも何で?」
「あんな姪馬鹿と親戚付き合いしたくない。だから名乗らなくていい。むしろ名乗るな!
一生幽霊親族のままでいやがれーっ!!!」清雅の魂の叫びだった。
「「・・・・」」
花嫁に続き花婿も部屋を出ていった控室には、浪燕青と榛蘇芳が残された。
「昔さ~悠舜に友人の話を聞いたことあるんだ。」
「何?いきなり?藪から棒に。」
「なんか比類なき名家の坊っちゃんで兄上とその娘御と奥方と息子だけ大事。後はぺんぺん草。
仕事はさぼりまくりな癖に 本気出せば、1日で終わるとか何とか言ってたんだけど・・。」
本気を出せば、一年分の仕事も三日で終わる天才・紅黎深の噂を榛蘇芳は知っていた。
「それは間違いないでショ~。」
「姫さんのもう一人の叔父か。」
「デショ。」
「溺愛ぶりが凄まじいな。なのに何故姫さんは会ったことないと思ってるんだ?」
「そこは突かない方がいい気する俺。」
小市民の知恵。君子危うきには近寄らず。
実は、邵可を追い出して紅家当主におさまった鬼畜叔父と秀麗に嫌われることを恐れているだけ
なのだがそんな事二人に分かるわけがない。
それにこの理由ほとんど被害妄想に近い。
「気になる。」
「辞めておこうよ~。」
同時刻、別の部屋でこの被害妄想に巻き込まれている青年がいたりした。
養い親が黎深であることを誰もが疑う、性格も仕事も真面目でまっすぐな青年、李絳攸である。
「黎深様。いい加減名乗りましょうよ。」
「煩い!!父様追いだして当主になったんですって叔父様、最低!なんて秀麗に言われた日には、
私は生きてはいけん!」
「現在邵可様が現当主だから、その心配はないじゃないですか!」
「過去は変えられん!それもこれも玖琅が兄上追い出して私を紅家当主の座なんぞに就けるから!!
そのくせ自分はちゃっかり厳しくて、でも頼れる叔父様像創りおって!
何て図々しい!あいつ本当に私と同じ兄上の弟か!!」
・・・こうして夜は更けていく・・。
***************************************************************************************************
前作で終わりとか言いながらちゃっかりおまけ編でした。
舞台裏4と5の間の話ということで、「幕間」!
いや~黎深様の愛の暴走好きです。絳攸とのやりとりも大好きです。
どうやって止めたらいいか分からず、強引に短くしました^^;
あ、もちろん秀麗への溺愛ぶりにうなる御史台組も書いてて楽しいx2*^^*
しかし蘇芳と燕青の喋り方が分からず 微妙になりました・・^^;
楽しんで頂けたら嬉しいです☆
- 関連記事
-
- 結婚式舞台裏 おまけ--幕間--
- 鳶に油揚げをさらわれる
- 結婚式舞台裏その5(次なる縁談へ)