そうして幸せに暮らしました~後編~
予定より2日程早いupになりましたバレンタイン小説(終わり際のみ)です(*´∀`*)
原作の告白放置のまま時が過ぎたら・・・という感じです。
単独でもお楽しみ頂けますが、『茨姫は棘だらけの寝台で』『異次元イルミネーション』『チョコレートの行き先』『自らの蔦と棘で絡め取られて』『呪いが解けたその時には』『おとぎ話のその後とは』『裸足で歩み続ける茨道』を読んでからの方がより理解しやすいと存じます。
作品は、カテゴリ欄のコナン二次小説 ”原作 その後”にございます。
この記事の右上の”原作 その後”をクリックしても飛べます。
***注意書き***
本シリーズ作品はRANちゃん 毛利一家に優しくありませんので、ヒロインファンはご遠慮願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
*************
注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
御伽話の中にある”その後ずっと幸せに暮らしました”を保つ為には、待つだけ、与えられるだけでなく、自身も歩み寄る努力が必要である。
そのことを私は分かっていなかった。それどころか求めてばかりいた。
今は”分かっていなかったこと”を分かっている。
『推理オタクなんだから』
『私が心配しているのを見て笑ってたんでしょ!』
『本当に事件なの?』
放った言葉は戻らないし、取り消せない。
逆に声にしなかった告白の返事と初恋に縋りついた行動。
気付けば、どんなに言葉を重ねても、謝罪が届かない立場になっていた-。
***************************************
園子と再会した時に聞いた今の新一の立ち位置。
世界的に有名な警察組織間の調整役。
(そんな凄い人になっちゃったんだ。遠い…。)
そんな彼に会うもしくは付き合うにはそれなりの人物でなければならず、蘭はそれに弾かれたのだと。
「正直、新一君は蘭には怒ってないと思うよ。高3の当時だって怒るというより困ってたって感じだった。」
親友だから正直に言うと前置きしてから続けた園子の言葉。
「ただねえ。周りが凄いのよね~FBIと公安とかインターポールとかもう例の組織壊滅時にどんだけってくらい人脈築いたの!って思った。
その人らのセコムぶりが凄いのよね。蘭と会うなら俺連れてけ、僕を連れてけと凄い。それを新一君が押さえてるって感じ。」
「理論派の彼らと感情派の蘭は相性が悪そうだから、会わない方がいいと思う、私も。」
園子の話振りから、心象が最悪な蘭と彼らを会わせない為に新一が心を配っているのが伺える。
(相変わらず優しいね、新一。でも淋しいよ。…その資格がもう私にないとしても。)
その話から垣間見えるのは彼の気遣い。
けれど同時に今側にいる彼らを説得してまで会おうとは思わない蘭への関心の薄さ。
潜伏期間中に連絡をくれていた彼はもういなくなってしまっていた。
「で、新一君から蘭へ伝言。」
「え?嘘。」
喉をごくりとし覚悟を決める。
「”私は今、夢が叶い探偵として活動して日々が充実しています。毛利さんも、どうか幸せに”。」
「し、しんいち…。」
求めていた許しは得られなかった。直接会うのも叶わなかった。お金も返せない。
傍から見たら絶縁したままだ。けれども。
(でもこれ、実質上の”許し”だよね。)
熱いものがこみ上げてくる。
気がつけば、蘭の大きな瞳から涙が滴っていた。
「あやつも相変わらず気障だよね~。」
わざと明るく言う親友の気遣いを感じる。
(私 敬語…。遠くなっちゃった。)
新一は親しくなればなるほど、言葉が崩れる。
逆に言えば敬語というのは精神的距離を置かれているということが、かつての幼馴染だった蘭には身に染みた。
(でもこれで一区切り。ありがとう新一。)
(いつか いつか会えた時には面と向かってごめんなさいって言おう。そして胸を張って会えるようにボランティアは続けよう。)
話題を変えてお互いの近況報告をする。
「私は今子供が中学生。もうすぐ受験で…どこにするか悩んでる。」
「そうなんだ~。でも旦那さん、京極さんじゃないのには驚いたよ。」
園子の夫として報道されたのはどこかの財閥の三男だった。
「ああ。大学生の時に別れたから。私と結婚するには入り婿になってしかも、経営に携わって貰わなきゃいけないでしょ!?
付き合うだけなら、好きって気持ちだけでいいけど、結婚になるとね。」
さばさばと話す園子。
「別にお互い納得済みなの。京極さんにとって空手は絶対必要だから、辞めろって言えなくて。
新一君にとっての推理みたいなものよね。」
「そう、なんだ。」
ミーハーだった親友が自分より遥かに現実を見ているのに心中驚く。
そして同時に推理オタクと貶した自分の浅慮さを感じ、俯く。
(園子も凄いなぁ。そうだよね。アメリカの新しいテーマパークの責任者だっけ。)
一人で置いて行かれた気分が蘭を襲った。
「蘭は?結婚を考えてる人はいないの?」
「うん。ううん、いたけどダメになっちゃった。」
「そっかぁ残念だね。」
旅館の若旦那である順一との後、交際した男性がいなかったわけではない。
最初は順調だが、何故か駄目になる。
「君は誰にでも優しいけど、僕にだけは辛辣になった。」
最後に別れた恋人から告げられた一言。
それで分かった。
好きになればなるほど、貶してしまう癖。
身内感覚で彼なら分かってくれると甘えてしまう言動。
(お母さん譲りのそれが世間一般では愛情表現と受け取られない-。)
少々ならそういうのもある。ウチのかみさんが大したことない、とか。
だが蘭は好きになればなるほど、親しくなればなるほど加速してしまうのだった。
やっと気付いたけれど、幼少期からの悪癖は気を抜くと出てきてしまうとポツリポツリと蘭は語った。
「それで…新一だけじゃなくて…お父さんにも酷いことしたって分かるの!お父さんにも会って謝りたい。」
「蘭…。」
「あのね、蘭が本気で謝りたいなら信用出来る探偵社、紹介しようか?」
鈴木財閥で探してあげると言い出しそうなのを堪え、提案する。
(手を出してはならない。財閥の力を使ってはいけない。私が出来るのは、していいのは、ほんの少しの手助け。)
「園子…!ありがとう。」
「いいのよ。私達親友でしょ。」
笑い合う二人はかつての学生の頃のようであった。
手掛かりが少なく調査に掛かったのは約10ヶ月。貯めたお金の一部を探偵社への支払いに遣った。
毛利探偵事務所のビルが火事で焼け落ちた後、土地を処分し、各地を転々とした後、沖縄で暮らしているらしい。
(地元の女性と事実婚してて、近く籍を入れる予定、か。)
英理の自業自得と分かっているがそれでも父が母以外の人とそういう関係というのは娘としては、本能的に抵抗があった。
何より嫌だったのが、女性の連れ子と本当の親子のように遊んでいる写真。いかにも仲良し家族といった感じである。
そこは私の場所よ!と叫びたい気持ちを必死に抑える。
(お父さん、お父さん!!)
会いたいという気持ちが膨れ上がる。けれど別の家庭を築き幸せにしている父の元に、いきなり娘ですと会いに行ってもいいものかどうか-。
そういう配慮が出来るくらいには蘭は大人になっていた。
(優花さんとのカウンセリングは終わったから、自分で考えなくちゃ。)
園子との再会を目途に彼女とのカウンセリングは完了という形を取った。と言うより優花より終了と言い渡された。
理由は自分で考える術が身についたこと、そしてこれ以上カウンセリングを続けると今度はカウンセラーに依存する可能性が大きいということであり、蘭は悲しかったが納得せざるを得なかった。
”大丈夫。またどうしても困ったら相談に乗りますよ。友人として”
女神のような微笑みが脳裏に過った-。
その際に英理が優花にカウンセリングを依頼した時の話を明かされ、本当の親子になれた気がしたのは別に紙幅を費やして語りたい話である。
(年賀状を出すには時期が過ぎちゃった。あ、バレンタインがもうすぐ来る…!そうだ。チョコ贈ろう。)
父の新しい家庭に罅を入れてしまうかもしれないから、いきなり直接会うのは憚られる。
(郵送で…お父さんの都合聞いた方がいいよね。)
「最後…高校3年生のお父さんにあげた最後のバレンタイン 最悪だったよね。やり直したい。」
諦め切れない新一相手にチョコレートのホールケーキをつくったけれど、結局渡せず、大量の失敗作と共にこれでもかと食べさせた。
甘い物がそれ程得意ではない父には本当に悪い事をした。
当時の自分に会えるなら説教したいくらいだ。
「小さめで甘さ控えめのガトーショコラとか…珈琲とか紅茶とかの詰め合わせがいいかな。」
(それともバウムクーヘンとか、抹茶チョコレートも美味しそう!)
色々迷った挙句、蘭が用意したのは、昔家族3人で暮らしていたころの乗用車をモチーフにした手作りのチョコクッキーと市販の珈琲の詰め合わせ。
それらに謝罪と感謝と会いたい気持ちを綴った手紙を入れる。
(どうか気持ちが届きますように…!)
(ちょっとくらい夢見たっていいよね。バレンタインだもん。)
甘いチョコレートに自らの希望を託す。
「美味しい。」余ったチョコレートは口の中で溶けていった。

バレンタイン数日後に小五郎から蘭に手紙が届き、”父”と”娘”としての関係が再び紡がれることになる-。
***************************************
そうして幸せに暮らしました めでたしめでたし で終わる童話と違い、現実には続きがある。
失敗もするし、哀しい目にも遭う。
けれど立ち直ることは出来るし、その中には喜びも笑いもある。
それが人生を歩む、ということ-。
********************
後書 原作その後シリーズ 一応完結です。
書ききれないネタ(英理が優花にカウンセリングを依頼した時の話とか ホワイトデーネタとか諸々)がありますので、今後、番外編とか書くかもしれませんがこれでメインは一区切りです。
新一との再会 和解?シーンも考えましたし、最後、蘭ちゃんの結婚式にするつもりでしたが、再会・結婚式が童話っぽく思えてしまい童話から脱し、リアルさを追求した結果こう相成りました。
実は小五郎さんの状況も最後まで迷いました。英理さんとの再婚は無理でも独身で可能性は残そうか 家族としてやり直せる可能性は残そうかそれともう 新しい家庭を築いているにするか うーん(゜レ゜)と数日悩んだものです。
結局こちらも童話らしくなく…と考えたら…こうなりました。
白黒つけられることばっかりじゃない。そんな中でも現実を生きていくを感じ取って頂けたら嬉しいです。
2/10にUPした18歳時のバレンタイン小説『チョコレートの行き先』と対にする為にちょっと頑張りましたv( ̄Д ̄)v イエイ
予定より2日程早いupになりました(*´∀`*)
此処までお読みに頂き、ありがとうございました。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
感想コメントや拍手頂けたらもっと嬉しいですヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
- 関連記事
-
- 舞台裏で嗤う
- そうして幸せに暮らしました~後編~
- チョコレートの行き先