舞台裏で嗤う
原作の告白放置のまま時が過ぎたら・・・という感じの原作その後シリーズ 番外編です。
単独でもお楽しみ頂けますが、『茨姫は棘だらけの寝台で』『異次元イルミネーション』『チョコレートの行き先』『自らの蔦と棘で絡め取られて』『呪いが解けたその時には』を読んでからの方がより理解しやすいと存じます。
『呪いが解けたその時には』の舞台裏になります。
作品は、カテゴリ欄のコナン二次小説 ”原作 その後”にございます。
この記事の右上の”原作 その後”をクリックしても飛べます。
***注意書き***
本シリーズ作品はRANちゃん 毛利一家に優しくありませんので、ヒロインファンはご遠慮願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
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注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
「猶予の時間切れ…。1年間もストーカーした挙句、白い衣装で結婚式に乗り込んでくるとかやるだけありますね。」
未だに彼を諦めきれないとは…と呟いた。
(別に諦めきれないだけならかまわない。想うだけなら自由だ。だが彼女はいつ何時暴走しかねない考えの足りない女だ。)
結婚式後に娘に幻想を見ている妃英理にも工藤氏を通じて警告してもらった。
彼女なりに娘に自覚を促したようだが、生来の思い込みの激しさはなかなか直らない。
占いで一人悲劇ヒロインごっこをしている と報告書が上がってくる。
そうこうしているうちに、組織の壊滅の関与に工藤新一がいたことがマスコミにリークされてしまう。
(また悲劇面されてはかなわない…。新一君を守る為に先手打つか。)
『黒の組織壊滅!立役者に日本警察の救世主:工藤新一!』
『潜伏期間中の真実!!」
『鬼気迫る命の遣り取り』
『各界の大物 軒並み逮捕の裏側』
テレビを見ながら、降谷零は冷然と微笑んだ。
「さあ、ツケ払いの時ですよ。」
江戸川コナンのお蔭で”偽りの名探偵”になれた毛利小五郎。
工藤新一に娘の精神的なお守を任せていることにも気づかず、法曹界で驕る”無敗の弁護士”。
「新一君が気に病むから元凶には手出ししませんよ。…感謝してほしいですね。」
脳裏に「俺が蘭に待っててほしいと言ったから。」と負い目を感じた若き本物の名探偵の困った顔が浮かんだ。
(それで済む段階を超えているよ。大体待っていたのは彼女だけじゃなかろうに。)
彼女を下手にテレビに出して被害者面されるのも、コナンやベルモットに関する話で組織に繋がる何か-思わぬ事を話されても困るという事情もある。彼女は意外に目敏い面もある。
(外面だけはいいからな。視聴者もあの涙目に騙されかねないし。何せあのベルモットすら一時”天使”なんて呼んでたくらいだ。僕からしたら堕天使だがな。)
そこからは組織で”情報屋”として潜り込んだ彼の独壇場だった。
(大衆を100%味方につける必要はない。少数派も絶対いるし…。重要なのは報道を通じて毛利蘭が空手で迷惑をかけ、泣き落としする女だと認知させることだ。)
更に言うなら新一が蘭の精神的支柱を担っていた イコール 毛利夫妻がその任を果たしていないという報道もされればいい。
それらを裏付ける事実が想定以上に出るわ出るわで半目で降谷は週刊誌を捲っていた。
「我が子と同い年の子にどれだけ負担掛ければ気が済むんだが。いくら新一君が聡明で優しいとはいえ限度がある。
気づいていないというのが更に罪深い。無知は罪だな、風見。」
「降谷さんが出るほどの案件ではありません。…コーヒーどうぞ。」
「ああ、ありがとう。書類はそこに置いてくれ。」
頃合いを見計らい、『眠りの小五郎と法曹界のクイーンの娘』が死闘から帰ってきた新一を1年以上ストーカーし、両親が慰謝料と賠償で500万払い、謝罪したという情報も流す。
(どうせあの女は「私、ストーカーなんてしてない!」「酷い!」とか今ごろバイト先で喚いているだろうがな。)
報道後の視聴者の反応はどうしても批判派と擁護派に別れる。
”英雄”に対し何て女と批判される一方で『思わせぶりな行動でもしたのでは?』という擁護論も出た。
「案の定だな。…例の映像をTV局へ。」
そして次の日、顔こそ隠してあるものの空手を放った映像が流れ、あっさりと『どんな事情があるにせよ、暴力はよくない』となった。
慰謝料が高額過ぎないか、元々お金持ちなのにこんなに取る必要あったのか?という観点からの切り口。
「亡くなった人間国宝のものであると記者に流せ。」
貴重な伝統文化作品が失われたと毛利蘭への批難が更に高まることになる。
「いい加減幕引きしましょうか。組織関連の情報はもっと重要なものもある。」
何を極秘にし、何を報道させるか またどこまでリークされてしまったかの確認等、やることは山ほどある。
はっきり言って付き纏い女だけに時間を割いていられない。
「工藤先生、DV被害の会への寄付の件で記者会見お願いします。」
「分かったよ。これで新一達が新婚旅行から帰るまでには、落ち着くかね?」
「そうさせます。」
「頼んだよ、降谷君。」
新婚旅行で組織壊滅で協力した国を訪問し大歓迎されて、帰国予定日がどんどん延びているのもこの際都合が良い。
『DV被害に遭われる方の避難シェルターの数が足りないと聞いております。是非お役立て頂きたい。』
この会見で工藤新一及び工藤一家を悪く言う世論はほぼなくなり、むしろ絶賛の域であった。
反対に毛利夫妻は謝罪と慰謝料を払うという最低限の事をしていたお蔭で、徹底的な制裁こそ免れたものの、やはり保護者としての資質を問われる事になった。
中でも英理は別居のきっかけが激マズ料理という最大級に下らないモノであり”育児放棄””母親失格”のそしりを受ける事になった。両事務所は閑古鳥が鳴く事になる。
(当然だな。)
そして蘭に関する報道は元々組織殲滅の添え物程度だったのでコレで幕を閉じ、別の逮捕されたセレブについて移っていったのだった。
「これで終わり…。後はご自由にどうぞ。」
「ただし一家揃って、新一君に縋るのはもう辞めて頂きたいものだね。」
”毛利家は娘だけではなく揃って英雄:工藤新一に集り続けた寄生虫一家”という大衆受けしそうな週刊誌の題名をちらりと見た後
嫣然と降谷零は舞台裏で嗤う-。
ベルモットが見たらバーボンがいると思ったことだろう。
(まあこれからが大変だがな。両親はほぼ無収入。
今まで新一君と鈴木財閥令嬢のバックアップがあったからこそ叶った贅沢や精神的優位がなくなったことを突き付けられるだろう。いやそれはもう分かっているはずだがな。)
それだけではない。
かっとなるとすぐ空手を使う悪癖。いつ誰が録画していても可笑しくない。
今はSNSというものもある。拡散して散々叩かれるだろう。
英雄 工藤新一の足を引っ張った幼馴染という名の”ストーカー女 毛利蘭”というだけで誹謗中傷を浴びたり、嫌がらせをされたりするだろう時にその悪癖がまた出たら…。
負のスパイラルだ。
(だが知ったことではない。)
これ以上こちらからは何もするつもりはないから、地味に誠実に日々を送れば、穏やかに暮らせるはずだ。
(”先生”頑張って下さいね。…それでは さようなら。)
「さて次の仕事だ。…この実業家の逮捕をマスコミに流せ。」
「はっ。」
母親が家出したというのは確かに同情の余地はある。
だが逆に言えばそれだけだ。しかも行方が分からないではなく、たまに会っていて母親負担で食事をしたり、買い物までしている。
その他の面で言えば、バイトもせず私立高校に通え、空手までやらせてもらっているし、父親も側にいる。友人もいた。
上を見ればきりがないが、むしろ恵まれた方ではないではないだろうか。
孤独な生い立ちの降谷からすればどうしてあそこまで悲劇のヒロインとして自分に酔えるか理解しがたい。
(あの環境で悲劇面出来るのなら、孤児とかどうなるんだか。)
(まあ幸せを感じるアンテナというのは人それぞれだからな。…)
真心として何を与えるか。
何を愛情として受け取るか。
そしてどんな形の幸せならば心が満たされるのか。
それは人によって違う。
(例えどんなに愛情を傾けようと、どんなに真心を込めようとも、そこがずれていては報われることはない。救われることはない。)
簡単に言えば需要と供給の不一致。
蘭の新一へのそれは「もっと もっと!」と際限のない欲に見えた。子供が親に求める無償の愛。
(あれは・・・求めてる相手が違うだろう。おそらく本当の相手は妃英理 母親だ。)
だがいい子の仮面をかぶり続けた彼女は気付かない。つまるところ、彼女はまだ精神的に幼いままなのだ。
「だから彼女と上手くいかなったのは君のせいじゃないよ。新一君。志保さんとお幸せに。」
新婚旅行で世界一周している工藤若夫妻に心からの幸せを祈る-。
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後書 原作その後シリーズ 『呪いが解けたその時には』の報道の裏話です。約1か月ぶりの小説upです(´∀`*)ウフフ
バーボン降臨…!><の巻です( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
最初に『呪いが解けたその時には』を書きながら、この舞台裏案が浮かんだ時には、優作氏や赤井さんも参戦して最強3人組…!
萌える…!とかって妄想してくふくふしていたのですが書き始めたら降谷さんにもっていかれました(笑)
かろうじてタッグを組んだ優作氏がちらり バーボン強し…!
実際、毛利一家だけなら、情報を武器にした公安の彼だけでなんとかなっちゃうだろうな という現実的な判断もあります。
最後の心の語りですが…昔 好きな推理小説シリーズで孤児達を引取り我が子と分け隔てなく育てるという過去が元で事件が起きるというパターンがいくつかありました。
実子の自分を特別に扱ってほしい(被害者となった娘視点)として、癇癪や我儘を起こしてたのが遠因で限りなく事故に近いが殺される。
亡き牧師の夫に従いつつも本当はその分のお金を使えばもっといい家に住めた等不服を言った牧師夫人は我が子を大事にしただけと話した犯人でした。
この二つは別の話なのですが、根底に流れるものが似ていると思います。
平等に愛するというのは素晴らしいことなのですが、それと同時に我が子を特別に想う 親に特別に想われたいのもまた人間。
愛情には色んな形があり、正解はないということ。
そしていくら愛情を示しても、それが子供の欲しい愛情の形ではないと救われないこともある ということ。(これが言いたかった!)
身内にこのギャップに苦しんでいる子がいます。
私は彼女は一番愛情やお金を注がれていたと思うのですが…彼女自身はそう思えないみたいで…難しいですね。
此処までお読みに頂き、ありがとうございました。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
感想コメントや拍手頂けたらもっと嬉しいですヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
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