高校時代・悲劇のヒロインごっこの始まり~『夢見る少女の長い夢①』~万里様ご提供
万里様より頂いた作品です。
珍しく?新哀です。
遅れてきた誕生月プレゼントかバレンタインチョコかと思いました(´∀`*)ウフフ
***注意書き***
ヒロインには優しくありません。厳しめですので、ranちゃん派の方は此処で周り右願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情 不満等は対応致しかねます。
尚、他人様の作品であるという事で無断転載や引用、誹謗中傷は御止め願います。
また同じ理由で予告なく、掲載を取り下げるやもしれない事予め通知致します。
**************
万里様からの注意書き:
このお話は、蘭厳しめの新哀です。
蘭がかなりピエロな役割なので、ご了承の上ご覧下さい。
最後に管理人からの再確認です。
注意書き読まれましたね??厳しめです。ヒロインファン 新蘭派はリターン下さい。
それでもOK 大丈夫という方のみ どうぞw
ではスタート↓
高校の修学旅行で、蘭は晴れて新一と恋人同士となった。
(これであとは新一が帰ってくるのを待つだけだわ♪)
ハッピーエンドは目前、と蘭は浮かれていた。
しかし、順風満帆と思われていた蘭の運命は急転直下した。
「蘭、大変だ!英理が…」
「え…?」
コナンが親元に帰っていき、しばらく経った頃だった。
英理が突然の病に倒れたのだ。
寝耳に水の事態に、毛利一家は騒然。
英理は幸い命は助かったものの、衰弱が激しく療養を余儀なくされた。当然、弁護士の仕事も無期限休業。
妻の病に、小五郎はこれまでの意地も吹き飛び、素直に心配し献身的に看護した。
英理も意地を張るのはやめ、素直に愛情を受け止め、家に戻ることに。
ここまでは、蘭にとって望んだ展開。
問題はその先だった。
「えっ、引っ越し!?」
英理の静養のため、空気の良い田舎に一家で引っ越すことになったのだ。
行き先は蘭の祖父母(英理の両親)が住んでいる、東都からは遥か遠く離れた小さな街。
そこは元々祖父母の故郷で、小五郎と英理が結婚した後、祖父母は東都から帰郷していたのだ。
田舎とはいえそこそこ賑わった街だが、飛行機を使わなければ東都には出てこれない。
(そんな、やっと新一と恋人同士になれたのに、また離ればなれなんて…!)
蘭はこの引っ越しに猛反発したが、小五郎の決意は固かった。
「何で!?私、転校なんて嫌だよ!ここで家族三人で暮らせばいいじゃない!」
「英理の療養のためだ。ここで家族三人暮らしじゃ、英理を看病する人間がいない。
田舎に行けば、お義父さんお義母さんが面倒みてくれる。近くに病院もある。」
「なら、私が一人でここに残る。もう高校生だし、家事は得意だし…」
「医療費と学費に加えて、お前の一人暮らしの費用までとなっちゃ、流石にウチも火の車だ。
帝丹は学費高いんだぞ。このビルも売りに出すんだし。
そもそも、息子ならともかく、高校生の娘の一人暮らしなんて、危なくて認められん。」
「っ、じゃ、じゃあ私、高校辞めてお母さんの面倒看る!だから皆でここに残ろうよ」
「バカ、お前にそんな苦労させられるか。お前はまだ若いんだぞ?
将来どうする気だ?」
「それは、新一が、ゴニョゴニョ」
「…はあ(深いため息)
蘭。お前まさか、『いざってときには新一のお嫁さんになればいいや』なんて考えてねーだろーな?」
「えっ(*´∀`*)ドキッ」
「お前なあ。もうすぐ高三だぞ?いつまでも夢見る少女みたいなこと言ってんなよ。」
「何よそれ!?私達は、その、付き合って、ゴニョゴニョ…」
「お前と新一は、せいぜい彼氏彼女止まりだろ?夫婦どころか婚約者でもない男に、何をどこまで期待するつもりだ?」
「べっ、別に今すぐ結婚しようなんて思ってないもん!
ただ、将来はそうなるなら、とりあえず、今は婚約だけしておいても、って、思って…」
気恥ずかしそうにモゴモゴと話す娘に、小五郎はため息をつく。
(そもそも新一に婚約を断られる、っつう発想はねえのかよ…)
小五郎とて娘は世界一可愛いし、新一にくれてやるのは惜しいと思っている。
しかしそれは、二人が自立した大人になり、新一が蘭との結婚を決意したときの話だ。
まだ遊びたい盛りの未成年のうちから、こちらの勝手な事情で結婚を迫られるなど、同じ男として新一に同情してしまう。
いくら好きな女相手だとしても、こんな寄生する気満々な逆プロポーズでは百年の恋も冷めるだろう。
男にとって結婚は重い覚悟のいる決断なのだ。
「確かに、将来のことなら、考える時間はたっぷりある。
けどな。俺達家族は、今すぐ決断が必要なんだ。
そして、これは俺達家族の問題だ。
幼馴染みとはいえ赤の他人の新一を巻き込んで良いことじゃない。」
「赤の他人なんて…!私と新一は、」
「幼馴染みも恋人も赤の他人だ。
まあ、婚約でもしてれば法的権利もあるし無関係って訳じゃねえが、まだ高校生の新一に、将来結婚するかしないかの決断を今すぐ迫るのは酷だぞ。いくら好きな女相手でも重すぎる。
俺が新一の親ならそんな面倒な事情抱えた恋人と婚約なんざ絶対に許さん。
しかもいきなり遠距離恋愛なんぞ、まだ若いんだから、どっちかの気が変わってもおかしくねえ。
婚約なんて早まった判断、親として賛成できねえよ。」
「だから大丈夫だってば!
有希子さんならきっと賛成してくれる。
何なら、『蘭ちゃんはうちで預かります』って言ってくれるかもしれないじゃない。」
「は?」
絶句する小五郎。思わず、蘭をまじまじと見返すが、蘭は至って無邪気に笑っている。
「うちだって、コナン君を預かってたじゃない。私と新一は恋人なんだから、大丈夫に決まってるわよ!」
娘が本気で言っていると分かり、その幼稚さ浅はかさに小五郎は目眩がした。
(駄目だこいつ…まるで分かってねえ。)
確かに毛利家は赤の他人のコナンの面倒をみていた。
しかし、それはコナンの親が十分すぎるほどの養育費を小五郎に渡していたから出来たことだ。
今の毛利家にそんな余裕は到底ない。
加えて、コナンは男の子だがまだ小学生一年生であった。年頃の娘を同年代の男のいる家に預けるのとはまるで事情が違う。
世間は後者を同棲と噂する。
(こいつ、そこまで考えてんのか…?
…いや、絶対わかってねえな。これまでのママゴトの延長くらいに思ってやがる。
ったく、ここまでくると、同じ男として新一が気の毒だぜ。)
親に恥じらいもなくこんな提案をする時点で、蘭と新一は深い仲ではあり得ない。
蘭の幼稚すぎる恋愛観と世間知らずぶりに眩暈がするが、それを蘭に理解させるのは相当骨が折れるだろう。
取りあえずは説得しやすい理由として、小五郎は金銭面での問題点をあげることにした。
「だから、金はどうすんだって。他人の家に世話になるったって、家賃やら生活費やら、いくらになると思ってんだ。
そうなると、帝丹には通えないし、大学も私立は無理だぞ。
東都で国立大っつったら、お前偏差値足りるのか?」
「え?
だって、新一の家だよ?
私が住めば、家の管理になるし。
有希子さんなら『新一のお世話してくれればそれでいいわ』って言ってくれるんじゃない?
それに学費だって、有希子さんにお願いすれば貸してくれかもしれないよ。
将来私が新一のお嫁さんになれば、返す必要なんてないかもしれないし。」
「…………」
(こいつ、本気で言ってやがる…!)
あまりの言い種に、小五郎は再び絶句する。
蘭の言っていることは、あまりにも恥知らずで非常識だった。
借金で首をくくる寸前でもなく、妻の実家に移住すれば十分生活していけるのだ。
娘の我が儘を通したいがために友人に借金するなどもってのほか、厚顔無恥もいいところである。
(お前は一体、誰の娘のつもりなんだ!?)
小五郎はなんとか気を取り直しそう説得するが、蘭は納得せずに食い下がる。
最終的に、「もういい!お父さんの分からず屋!」
と部屋に引き込もってしまった。
(新一、助けてよ、新一…!)
例え新一がいたとしても、親が決めたこととなれば、まだ高校生の子供にすぎない二人になす術はない。
そんな事も分からずに、蘭は「新一ならなんとかしてくれる」と一方的に期待を募らせていた。
※
翌日の午後、小五郎が英理の見舞いに訪れると、担当の看護師から話があると別室に呼ばれた。
看護師の説明を聞き、小五郎は絶句した。
午前中に、蘭が英理の所へ来たという。
看護師は快く蘭を母の元へ案内した。
そして数十分後、病室を訪れると。
青い顔でぐったりと横たわる英理。側では、娘の蘭が延々と母親を責め立てていた。
英理は素人目で見ても分かるほどに衰弱しており、看護師は慌てて蘭を引き剥がし、主治医を呼んだ。
後で話を聞くと、なんでも、父親が蘭の意思を無視して転校させようとしているため、母親を説得しに来たのだと言う。
「英理さんはこのまま治療を続ければ確実に治ります。しかし、それは心身ともに安静にしていられることが絶対の条件です。
人は想像以上に、精神的ストレスが身体に影響します。
現に、娘さんに責め立てられて、英理さんは安定していたはずの体調が著しく悪化しました。
治療にはご家族の協力が必要不可欠です。
どうか、ご家族でよく話し合って下さい。」
看護師から話を聞いた小五郎は、英理の元へ飛んでいった。
前回来たときよりも身体に繋がれた管を増やし、「蘭…ごめんなさい…」とうわ言のように呟き続ける英理の姿。
小五郎に気がつくと、青い顔をしたまま弱々しく話し出す。
「私が悪かったのよ…。これまで、蘭を貴方に任せきりにして、仕事にかまけていた。バチが当たったの…」
いつもは強気の英理が、涙で言葉を詰まらせている。
「最初は普通に話してたの。
蘭が、新一君を待たなきゃいけない、だから転校はしたくない、って。
蘭の転校はわたしの病気のせいだから、『お母さんのために迷惑かけてごめんなさい』っていったわ。
しばらくそうして蘭を慰めていたんだけど、そしたら蘭が、『じゃあ、お母さんからちゃんとお父さんを説得しておいてね。』って…。」
「私は、家族での移住は決まったことだから、それは無理だって言ったの。
説得しようとしたんだけど、蘭はだんだんヒートアップしてきて…」
『酷いよお母さん!これまでも好き勝手生きてきて、今度はわたしの人生を邪魔する気なの!?』
『お母さんなんてずっと家にいなかったのに!今まで側に居てくれたのは新一なのに!
そんなお母さんのために新一を捨てろっていうの!?』
『なんで病気になんかなったのよ!?どこまで私に迷惑かけるつもりよ!?もういい加減にしてよ!』
『謝るなら引っ越しをやめてよ!それか、有希子さんに私が工藤家で暮らせるように言って!』
『酷いよ…酷いよお母さん…お母さんは、私を不幸にしてばかり…酷い…酷いよ…こんなお母さんいらなかった…有希子さんみたいなお母さんが欲しかったよぉ…』
英理は病に加えて心労ですっかりまいってしまい、うわ言のように娘に謝り続けている。
そんな妻を見ながら、小五郎はある決意を固めていた。
※
蘭は自宅で新一に電話をしていた。
自分の引っ越しを、新一なら止めてくれるはずだと信じて。
だが、新一は『そっちの家庭の事情に俺が口出す権利は…』と煮え切らない態度。
(私たち付き合ってるんでしょ!?何でそんなに他人事なのよ!?)
蘭は感情的に電話に向かって怒鳴り散らす。
「今すぐ婚約して!それか、私が新一の家に住めるように、有希子さんに頼んでよ!
私のこと好きなんでしょ!?だったら――っ、えっ!?」
突然携帯を取り上げられ、蘭は驚く。
見上げると、小五郎がいつの間にか帰って来ていた。
険しい顔で蘭を睨み付ける小五郎に、蘭は驚き竦み上がる。
「新一か。蘭がすまない。」
小五郎はそのまま、新一に電話で話しかける。
「…ああ、…ああ。…いや、大丈夫だ。これはうちの家族の問題なんだ。お前を巻き込むつもりは全くねえよ、安心しな。
だが、父親として、これだけは頼みたい。
後生だから、どうか蘭とは別れてくれ。」
「!?なっ、お父さん!?勝手に何を、」
「お前は黙ってろ!」
「っ、」ビクッ
父親の尋常でない迫力に、流石の蘭も黙りこんだ。
「…聞いての通りだ。蘭はお前に依存しすぎて、このままじゃお前と共倒れだ。
俺たちが蘭をきちんと育てられねえばかりに、お前に迷惑をかけて、本当にすまねえ。」
(やだ…お父さん、何を言ってるの!?新一と別れる?やだよ、そんなの!
新一だって、嫌だって言ってくれるよね…?)
「……うん。……分かった。……ホントに、すまねえな。…ああ。蘭のことは心配すんな。」
(え!?何?なによそれ…?まさか新一、お父さんの言いなりになってるの?まって、待ってよ!)
「……え?……そうか。なら、代わってくれ。
………もしもし、有希ちゃんか?」
(!有希子さん!
有希子さんなら、きっと何とかしてくれる…!)
「……ああ、……ああ。………そうか。そっちも大変なんだな。……いや、こっちは大丈夫だ、何とかして見せるさ。
……分かった、英理には伝えとく。………ああ、そっちも気を付けてな。
………………うん。蘭のことは、もう心配すんな。うちの家族の問題なんだ、こっちでなんとかするさ。本当に、迷惑かけてすまねえ。」
「、?!
お父さん!代わって!」
「おい、蘭!やめろ!」
「もしもし!有希子さんですか!?」
「はなせ!このバカ!!」
携帯を引ったくろうとする蘭と、遠ざけようとする小五郎。
そんな二人に携帯から有希子が呼び掛ける。
『小五郎ちゃん、いいわ。蘭ちゃんに代わってちょうだい。』
「ゆ、有希子さんっ…」
(有希子さん…、有希子さん助けて…!)
祈る思いで電話に出る蘭。
『蘭ちゃん。話は聞いたわ。英理ちゃんのこと、大変だったわね。』
「っ、有希子さん…」
有希子の優しい声に、蘭は涙が出そうになる。
(やっぱり有希子さんだけは私の味方…!)
だが。
『英理ちゃんの病気を治すには、家族の助けが必要よ。どうか蘭ちゃんも、今は英理ちゃんのことを一番に考えてあげてね。』
「…え?」
――それは蘭がこの地を去ることを意味すると、有希子は分かっているのだろうか?
――何か思い違いをしているのでは?
そう思い、蘭は涙声で訴える。
「でも、うち、田舎に引っ越すって言うんです!このままじゃ、私もここから離れなくちゃならなくて…」
『ええ、寂しくなるわね。でも、蘭ちゃんは明るくて素直だから、向こうに行ってもきっと上手くやれるわ。
きっとモテモテで、すぐに彼氏も出来るわよ。心配ないわ。』
優しげな声で、今度こそ明確に有希子は別れを突き付けてくる。
「有希子さん家に住んじゃダメですか!?」
本来ならこの提案は、有希子から言ってもらうつもりであった。蘭に自覚はなくとも、そう期待していた。
しかし、もう形振り構っていられずに口走る。
『そんなの駄目に決まってるでしょう?』
「えっ…!?」
『信じられない』という気持ちが声に表れていたのだろう。
有希子は動じずに、いっそ冷徹な口調で続ける。
『あのね、蘭ちゃん。私は、蘭ちゃんの親ではないのよ?』
こんな突き放すような言い方をされたのは初めてで、蘭は頭が真っ白になる。
『実のご両親を差し置いて、赤の他人がご家庭のことに口出しは出来ないわ。
もちろん、それは、蘭ちゃんに工藤家(ウチ)の事情に口出しする権利がないのと同じことよ。』
「…赤の他人って、私と新一は、幼なじみで、」
真っ白な頭で、それでも脊髄反射で『幼馴染み』という蘭にとっての最強の理由を口にする。
が、
『幼馴染みも恋人も、赤の他人よ。“家族”ではないわ。』
「っ、?!」
自らの価値観――幼馴染は特別――を真っ向から否定され、ショックで言葉もない蘭。
『はっきり言うわね。
蘭ちゃんはうちの子じゃない、赤の他人なのよ。だから、蘭ちゃんが引っ越しするかしないかは、私も新一も関係ない。
蘭ちゃんと小五郎ちゃんと英理ちゃんで話し合って決めること。
余所の家庭のいざこざを、うちに持ち込まないでちょうだい。』
呆然として言葉も出ない蘭にかまわず、有希子は最後通牒を突き付ける。
『私や新一を当てにされても、はっきり言って迷惑なのよ。』
※
気が付けば蘭は、リビングの床に座り込んでいた。
電話は既に切られていて、蘭はボンヤリと小五郎が有希子に別れの言葉を告げて切ったことを思い出す。
目の前の小五郎を見て、蘭は感情を爆発させ怒鳴る。
「酷いよお父さん!こんな、無理やり別れさせるなんて!お父さんもお母さんも、私の幸せを壊してばかり!大っ嫌い!
私絶対、田舎なんか行かないんだから!!」
いまにも空手を奮いそうに激昂する蘭。
しかし、小五郎は先ほどとは打ってかわって、俯きながら静かに告げた。
「…今日、病院に行ってきた。英理の退院が伸びた。」
「え?」
「お前と話した後で、英理の容態が急激に悪化した。医者が言うには、ストレスが原因だと。」
「…なにそれ、私のせいだっていうの!?ちょっと話しただけで、病気に影響するわけないじゃない!変な嘘言うのやめてよ!
そこまで私のこと、」
そこで、怒鳴り散らしていた蘭の声が止まった。小五郎を凝視する。
「頼むから…ホント、頼むからよお…もうこれ以上、英理を追い詰めないでやってくれ…」
(!?お、お父さんが、泣いてる…!?)
父親の涙を初めて見て、頭が冷える蘭。
そして、先ほどの言葉が真実なのだとようやく思い知る。
――まさか自分のせいで、母親が――
蘭は一気に血の気が引いた。
「お、お母さんは?お母さん、大丈夫だよね?治るんだよね!?」
「…言った通りだ。このまま、心穏やかに治療に専念すれば治る。」
「あの、私、お母さんに会いに行きたい!お願いお父さん、謝るから!もう引っ越しにも文句言わないから!お母さんに会わせて!お願い!謝らせて!」
母親を失うかもしれない恐怖から、蘭は泣いて小五郎にすがり付く。
「…英理の容態が安定したら、な。英理もお前には辛い思いさせてきた、って謝っていたよ。」
覇気はないものの先ほどよりは穏やかな顔付きになった小五郎が静かに告げる。
(もう、諦めるしかないんだ…。
これでいいんだよね、新一…)
かくして、蘭は新一との別れを受け入れた。
だがそれは、「愛し合う二人が無理やり引き離された」という、ある種ロマンチックな悲劇として蘭の心の中に残ることとなる。
それゆえに蘭はこの先、「引き離された恋人たちが運命に導かれ再会し結ばれる。」というドラマチックな幻想を追い続けることとなる。
※
夢見る少女は悲劇のヒロイン?
いえいえ、母親も無事で家族で暮らせるようになった。幼馴染が赤の他人なんて当たり前の事実。
一体どこが悲劇だというの?
夢見る少女は悲劇のヒロイン“ごっこ”がお好き。
***雪月花桜の感想***
英理さんの病気で強制的に田舎移住とは・・・!何か私,毛利夫妻両方とも東都出身な感じがしてたので、この発想なくて。
でも凄いです(゚д゚)(。_。)ウン(゚д゚)(。_。)ウン
そして蘭の発想があり得ない 高校の彼氏彼女で家に住まわせてもらうとか親公認の同棲にしかみえないのを婚約者でもないのに 高校生の段階で許すわけないorz しかも学費も借りるつもり?いや借りパクするつもりかーいΣ(・ω・ノ)ノ!
原作だとそのあり得ないが作者の寵愛で何とかなっちゃうかもだけど(;´Д`) こちらは万里様ワールド そうは問屋が卸さない。
泣く小五郎さんがかなり哀れ(´;ω;`)ウゥゥ 英理さんは気の毒とは思うけど今までが今までのせいか感情移入できない。
有希子さんとの会話がまたスッキリキタ━(゚∀゚)━!
すぐ彼氏出来るわ→新一と別れてたって意味よ の匂いを感じる 既に有希子さん目が覚めた後っぽい(´ー`*)ウンウン
続く言葉もご尤もで蘭ちゃんクリティカルヒットΣ(゚д゚lll)ガーンがお見事。
『私や新一を当てにされても、はっきり言って迷惑なのよ。』の最後通牒が都合の良い方に解釈しがちな蘭ちゃんをもってしても修正不可能なお言葉。
って言うかこの無茶な要求をせず、遠距離恋愛してたら今ネットも携帯もあるんだし、恋人でいられたのにね??
幼い精神が露呈したばっかりに蘭ちゃん自分で別れの引き金を引いたのではと思う雪月花桜
次話【大学時代・切り替えは早いが未練たらたら】も近日中にupしますので、どうぞ皆様お楽しみに💛
2020/2/29追記
このお話の中で中卒の方に対しての差別的表現があるとのご指摘を受け、その部分を削除・手直しさせて頂きました。
気分を害された方にはお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。
珍しく?新哀です。
遅れてきた誕生月プレゼントかバレンタインチョコかと思いました(´∀`*)ウフフ
***注意書き***
ヒロインには優しくありません。厳しめですので、ranちゃん派の方は此処で周り右願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情 不満等は対応致しかねます。
尚、他人様の作品であるという事で無断転載や引用、誹謗中傷は御止め願います。
また同じ理由で予告なく、掲載を取り下げるやもしれない事予め通知致します。
**************
万里様からの注意書き:
このお話は、蘭厳しめの新哀です。
蘭がかなりピエロな役割なので、ご了承の上ご覧下さい。
最後に管理人からの再確認です。
注意書き読まれましたね??厳しめです。ヒロインファン 新蘭派はリターン下さい。
それでもOK 大丈夫という方のみ どうぞw
ではスタート↓
高校の修学旅行で、蘭は晴れて新一と恋人同士となった。
(これであとは新一が帰ってくるのを待つだけだわ♪)
ハッピーエンドは目前、と蘭は浮かれていた。
しかし、順風満帆と思われていた蘭の運命は急転直下した。
「蘭、大変だ!英理が…」
「え…?」
コナンが親元に帰っていき、しばらく経った頃だった。
英理が突然の病に倒れたのだ。
寝耳に水の事態に、毛利一家は騒然。
英理は幸い命は助かったものの、衰弱が激しく療養を余儀なくされた。当然、弁護士の仕事も無期限休業。
妻の病に、小五郎はこれまでの意地も吹き飛び、素直に心配し献身的に看護した。
英理も意地を張るのはやめ、素直に愛情を受け止め、家に戻ることに。
ここまでは、蘭にとって望んだ展開。
問題はその先だった。
「えっ、引っ越し!?」
英理の静養のため、空気の良い田舎に一家で引っ越すことになったのだ。
行き先は蘭の祖父母(英理の両親)が住んでいる、東都からは遥か遠く離れた小さな街。
そこは元々祖父母の故郷で、小五郎と英理が結婚した後、祖父母は東都から帰郷していたのだ。
田舎とはいえそこそこ賑わった街だが、飛行機を使わなければ東都には出てこれない。
(そんな、やっと新一と恋人同士になれたのに、また離ればなれなんて…!)
蘭はこの引っ越しに猛反発したが、小五郎の決意は固かった。
「何で!?私、転校なんて嫌だよ!ここで家族三人で暮らせばいいじゃない!」
「英理の療養のためだ。ここで家族三人暮らしじゃ、英理を看病する人間がいない。
田舎に行けば、お義父さんお義母さんが面倒みてくれる。近くに病院もある。」
「なら、私が一人でここに残る。もう高校生だし、家事は得意だし…」
「医療費と学費に加えて、お前の一人暮らしの費用までとなっちゃ、流石にウチも火の車だ。
帝丹は学費高いんだぞ。このビルも売りに出すんだし。
そもそも、息子ならともかく、高校生の娘の一人暮らしなんて、危なくて認められん。」
「っ、じゃ、じゃあ私、高校辞めてお母さんの面倒看る!だから皆でここに残ろうよ」
「バカ、お前にそんな苦労させられるか。お前はまだ若いんだぞ?
将来どうする気だ?」
「それは、新一が、ゴニョゴニョ」
「…はあ(深いため息)
蘭。お前まさか、『いざってときには新一のお嫁さんになればいいや』なんて考えてねーだろーな?」
「えっ(*´∀`*)ドキッ」
「お前なあ。もうすぐ高三だぞ?いつまでも夢見る少女みたいなこと言ってんなよ。」
「何よそれ!?私達は、その、付き合って、ゴニョゴニョ…」
「お前と新一は、せいぜい彼氏彼女止まりだろ?夫婦どころか婚約者でもない男に、何をどこまで期待するつもりだ?」
「べっ、別に今すぐ結婚しようなんて思ってないもん!
ただ、将来はそうなるなら、とりあえず、今は婚約だけしておいても、って、思って…」
気恥ずかしそうにモゴモゴと話す娘に、小五郎はため息をつく。
(そもそも新一に婚約を断られる、っつう発想はねえのかよ…)
小五郎とて娘は世界一可愛いし、新一にくれてやるのは惜しいと思っている。
しかしそれは、二人が自立した大人になり、新一が蘭との結婚を決意したときの話だ。
まだ遊びたい盛りの未成年のうちから、こちらの勝手な事情で結婚を迫られるなど、同じ男として新一に同情してしまう。
いくら好きな女相手だとしても、こんな寄生する気満々な逆プロポーズでは百年の恋も冷めるだろう。
男にとって結婚は重い覚悟のいる決断なのだ。
「確かに、将来のことなら、考える時間はたっぷりある。
けどな。俺達家族は、今すぐ決断が必要なんだ。
そして、これは俺達家族の問題だ。
幼馴染みとはいえ赤の他人の新一を巻き込んで良いことじゃない。」
「赤の他人なんて…!私と新一は、」
「幼馴染みも恋人も赤の他人だ。
まあ、婚約でもしてれば法的権利もあるし無関係って訳じゃねえが、まだ高校生の新一に、将来結婚するかしないかの決断を今すぐ迫るのは酷だぞ。いくら好きな女相手でも重すぎる。
俺が新一の親ならそんな面倒な事情抱えた恋人と婚約なんざ絶対に許さん。
しかもいきなり遠距離恋愛なんぞ、まだ若いんだから、どっちかの気が変わってもおかしくねえ。
婚約なんて早まった判断、親として賛成できねえよ。」
「だから大丈夫だってば!
有希子さんならきっと賛成してくれる。
何なら、『蘭ちゃんはうちで預かります』って言ってくれるかもしれないじゃない。」
「は?」
絶句する小五郎。思わず、蘭をまじまじと見返すが、蘭は至って無邪気に笑っている。
「うちだって、コナン君を預かってたじゃない。私と新一は恋人なんだから、大丈夫に決まってるわよ!」
娘が本気で言っていると分かり、その幼稚さ浅はかさに小五郎は目眩がした。
(駄目だこいつ…まるで分かってねえ。)
確かに毛利家は赤の他人のコナンの面倒をみていた。
しかし、それはコナンの親が十分すぎるほどの養育費を小五郎に渡していたから出来たことだ。
今の毛利家にそんな余裕は到底ない。
加えて、コナンは男の子だがまだ小学生一年生であった。年頃の娘を同年代の男のいる家に預けるのとはまるで事情が違う。
世間は後者を同棲と噂する。
(こいつ、そこまで考えてんのか…?
…いや、絶対わかってねえな。これまでのママゴトの延長くらいに思ってやがる。
ったく、ここまでくると、同じ男として新一が気の毒だぜ。)
親に恥じらいもなくこんな提案をする時点で、蘭と新一は深い仲ではあり得ない。
蘭の幼稚すぎる恋愛観と世間知らずぶりに眩暈がするが、それを蘭に理解させるのは相当骨が折れるだろう。
取りあえずは説得しやすい理由として、小五郎は金銭面での問題点をあげることにした。
「だから、金はどうすんだって。他人の家に世話になるったって、家賃やら生活費やら、いくらになると思ってんだ。
そうなると、帝丹には通えないし、大学も私立は無理だぞ。
東都で国立大っつったら、お前偏差値足りるのか?」
「え?
だって、新一の家だよ?
私が住めば、家の管理になるし。
有希子さんなら『新一のお世話してくれればそれでいいわ』って言ってくれるんじゃない?
それに学費だって、有希子さんにお願いすれば貸してくれかもしれないよ。
将来私が新一のお嫁さんになれば、返す必要なんてないかもしれないし。」
「…………」
(こいつ、本気で言ってやがる…!)
あまりの言い種に、小五郎は再び絶句する。
蘭の言っていることは、あまりにも恥知らずで非常識だった。
借金で首をくくる寸前でもなく、妻の実家に移住すれば十分生活していけるのだ。
娘の我が儘を通したいがために友人に借金するなどもってのほか、厚顔無恥もいいところである。
(お前は一体、誰の娘のつもりなんだ!?)
小五郎はなんとか気を取り直しそう説得するが、蘭は納得せずに食い下がる。
最終的に、「もういい!お父さんの分からず屋!」
と部屋に引き込もってしまった。
(新一、助けてよ、新一…!)
例え新一がいたとしても、親が決めたこととなれば、まだ高校生の子供にすぎない二人になす術はない。
そんな事も分からずに、蘭は「新一ならなんとかしてくれる」と一方的に期待を募らせていた。
※
翌日の午後、小五郎が英理の見舞いに訪れると、担当の看護師から話があると別室に呼ばれた。
看護師の説明を聞き、小五郎は絶句した。
午前中に、蘭が英理の所へ来たという。
看護師は快く蘭を母の元へ案内した。
そして数十分後、病室を訪れると。
青い顔でぐったりと横たわる英理。側では、娘の蘭が延々と母親を責め立てていた。
英理は素人目で見ても分かるほどに衰弱しており、看護師は慌てて蘭を引き剥がし、主治医を呼んだ。
後で話を聞くと、なんでも、父親が蘭の意思を無視して転校させようとしているため、母親を説得しに来たのだと言う。
「英理さんはこのまま治療を続ければ確実に治ります。しかし、それは心身ともに安静にしていられることが絶対の条件です。
人は想像以上に、精神的ストレスが身体に影響します。
現に、娘さんに責め立てられて、英理さんは安定していたはずの体調が著しく悪化しました。
治療にはご家族の協力が必要不可欠です。
どうか、ご家族でよく話し合って下さい。」
看護師から話を聞いた小五郎は、英理の元へ飛んでいった。
前回来たときよりも身体に繋がれた管を増やし、「蘭…ごめんなさい…」とうわ言のように呟き続ける英理の姿。
小五郎に気がつくと、青い顔をしたまま弱々しく話し出す。
「私が悪かったのよ…。これまで、蘭を貴方に任せきりにして、仕事にかまけていた。バチが当たったの…」
いつもは強気の英理が、涙で言葉を詰まらせている。
「最初は普通に話してたの。
蘭が、新一君を待たなきゃいけない、だから転校はしたくない、って。
蘭の転校はわたしの病気のせいだから、『お母さんのために迷惑かけてごめんなさい』っていったわ。
しばらくそうして蘭を慰めていたんだけど、そしたら蘭が、『じゃあ、お母さんからちゃんとお父さんを説得しておいてね。』って…。」
「私は、家族での移住は決まったことだから、それは無理だって言ったの。
説得しようとしたんだけど、蘭はだんだんヒートアップしてきて…」
『酷いよお母さん!これまでも好き勝手生きてきて、今度はわたしの人生を邪魔する気なの!?』
『お母さんなんてずっと家にいなかったのに!今まで側に居てくれたのは新一なのに!
そんなお母さんのために新一を捨てろっていうの!?』
『なんで病気になんかなったのよ!?どこまで私に迷惑かけるつもりよ!?もういい加減にしてよ!』
『謝るなら引っ越しをやめてよ!それか、有希子さんに私が工藤家で暮らせるように言って!』
『酷いよ…酷いよお母さん…お母さんは、私を不幸にしてばかり…酷い…酷いよ…こんなお母さんいらなかった…有希子さんみたいなお母さんが欲しかったよぉ…』
英理は病に加えて心労ですっかりまいってしまい、うわ言のように娘に謝り続けている。
そんな妻を見ながら、小五郎はある決意を固めていた。
※
蘭は自宅で新一に電話をしていた。
自分の引っ越しを、新一なら止めてくれるはずだと信じて。
だが、新一は『そっちの家庭の事情に俺が口出す権利は…』と煮え切らない態度。
(私たち付き合ってるんでしょ!?何でそんなに他人事なのよ!?)
蘭は感情的に電話に向かって怒鳴り散らす。
「今すぐ婚約して!それか、私が新一の家に住めるように、有希子さんに頼んでよ!
私のこと好きなんでしょ!?だったら――っ、えっ!?」
突然携帯を取り上げられ、蘭は驚く。
見上げると、小五郎がいつの間にか帰って来ていた。
険しい顔で蘭を睨み付ける小五郎に、蘭は驚き竦み上がる。
「新一か。蘭がすまない。」
小五郎はそのまま、新一に電話で話しかける。
「…ああ、…ああ。…いや、大丈夫だ。これはうちの家族の問題なんだ。お前を巻き込むつもりは全くねえよ、安心しな。
だが、父親として、これだけは頼みたい。
後生だから、どうか蘭とは別れてくれ。」
「!?なっ、お父さん!?勝手に何を、」
「お前は黙ってろ!」
「っ、」ビクッ
父親の尋常でない迫力に、流石の蘭も黙りこんだ。
「…聞いての通りだ。蘭はお前に依存しすぎて、このままじゃお前と共倒れだ。
俺たちが蘭をきちんと育てられねえばかりに、お前に迷惑をかけて、本当にすまねえ。」
(やだ…お父さん、何を言ってるの!?新一と別れる?やだよ、そんなの!
新一だって、嫌だって言ってくれるよね…?)
「……うん。……分かった。……ホントに、すまねえな。…ああ。蘭のことは心配すんな。」
(え!?何?なによそれ…?まさか新一、お父さんの言いなりになってるの?まって、待ってよ!)
「……え?……そうか。なら、代わってくれ。
………もしもし、有希ちゃんか?」
(!有希子さん!
有希子さんなら、きっと何とかしてくれる…!)
「……ああ、……ああ。………そうか。そっちも大変なんだな。……いや、こっちは大丈夫だ、何とかして見せるさ。
……分かった、英理には伝えとく。………ああ、そっちも気を付けてな。
………………うん。蘭のことは、もう心配すんな。うちの家族の問題なんだ、こっちでなんとかするさ。本当に、迷惑かけてすまねえ。」
「、?!
お父さん!代わって!」
「おい、蘭!やめろ!」
「もしもし!有希子さんですか!?」
「はなせ!このバカ!!」
携帯を引ったくろうとする蘭と、遠ざけようとする小五郎。
そんな二人に携帯から有希子が呼び掛ける。
『小五郎ちゃん、いいわ。蘭ちゃんに代わってちょうだい。』
「ゆ、有希子さんっ…」
(有希子さん…、有希子さん助けて…!)
祈る思いで電話に出る蘭。
『蘭ちゃん。話は聞いたわ。英理ちゃんのこと、大変だったわね。』
「っ、有希子さん…」
有希子の優しい声に、蘭は涙が出そうになる。
(やっぱり有希子さんだけは私の味方…!)
だが。
『英理ちゃんの病気を治すには、家族の助けが必要よ。どうか蘭ちゃんも、今は英理ちゃんのことを一番に考えてあげてね。』
「…え?」
――それは蘭がこの地を去ることを意味すると、有希子は分かっているのだろうか?
――何か思い違いをしているのでは?
そう思い、蘭は涙声で訴える。
「でも、うち、田舎に引っ越すって言うんです!このままじゃ、私もここから離れなくちゃならなくて…」
『ええ、寂しくなるわね。でも、蘭ちゃんは明るくて素直だから、向こうに行ってもきっと上手くやれるわ。
きっとモテモテで、すぐに彼氏も出来るわよ。心配ないわ。』
優しげな声で、今度こそ明確に有希子は別れを突き付けてくる。
「有希子さん家に住んじゃダメですか!?」
本来ならこの提案は、有希子から言ってもらうつもりであった。蘭に自覚はなくとも、そう期待していた。
しかし、もう形振り構っていられずに口走る。
『そんなの駄目に決まってるでしょう?』
「えっ…!?」
『信じられない』という気持ちが声に表れていたのだろう。
有希子は動じずに、いっそ冷徹な口調で続ける。
『あのね、蘭ちゃん。私は、蘭ちゃんの親ではないのよ?』
こんな突き放すような言い方をされたのは初めてで、蘭は頭が真っ白になる。
『実のご両親を差し置いて、赤の他人がご家庭のことに口出しは出来ないわ。
もちろん、それは、蘭ちゃんに工藤家(ウチ)の事情に口出しする権利がないのと同じことよ。』
「…赤の他人って、私と新一は、幼なじみで、」
真っ白な頭で、それでも脊髄反射で『幼馴染み』という蘭にとっての最強の理由を口にする。
が、
『幼馴染みも恋人も、赤の他人よ。“家族”ではないわ。』
「っ、?!」
自らの価値観――幼馴染は特別――を真っ向から否定され、ショックで言葉もない蘭。
『はっきり言うわね。
蘭ちゃんはうちの子じゃない、赤の他人なのよ。だから、蘭ちゃんが引っ越しするかしないかは、私も新一も関係ない。
蘭ちゃんと小五郎ちゃんと英理ちゃんで話し合って決めること。
余所の家庭のいざこざを、うちに持ち込まないでちょうだい。』
呆然として言葉も出ない蘭にかまわず、有希子は最後通牒を突き付ける。
『私や新一を当てにされても、はっきり言って迷惑なのよ。』
※
気が付けば蘭は、リビングの床に座り込んでいた。
電話は既に切られていて、蘭はボンヤリと小五郎が有希子に別れの言葉を告げて切ったことを思い出す。
目の前の小五郎を見て、蘭は感情を爆発させ怒鳴る。
「酷いよお父さん!こんな、無理やり別れさせるなんて!お父さんもお母さんも、私の幸せを壊してばかり!大っ嫌い!
私絶対、田舎なんか行かないんだから!!」
いまにも空手を奮いそうに激昂する蘭。
しかし、小五郎は先ほどとは打ってかわって、俯きながら静かに告げた。
「…今日、病院に行ってきた。英理の退院が伸びた。」
「え?」
「お前と話した後で、英理の容態が急激に悪化した。医者が言うには、ストレスが原因だと。」
「…なにそれ、私のせいだっていうの!?ちょっと話しただけで、病気に影響するわけないじゃない!変な嘘言うのやめてよ!
そこまで私のこと、」
そこで、怒鳴り散らしていた蘭の声が止まった。小五郎を凝視する。
「頼むから…ホント、頼むからよお…もうこれ以上、英理を追い詰めないでやってくれ…」
(!?お、お父さんが、泣いてる…!?)
父親の涙を初めて見て、頭が冷える蘭。
そして、先ほどの言葉が真実なのだとようやく思い知る。
――まさか自分のせいで、母親が――
蘭は一気に血の気が引いた。
「お、お母さんは?お母さん、大丈夫だよね?治るんだよね!?」
「…言った通りだ。このまま、心穏やかに治療に専念すれば治る。」
「あの、私、お母さんに会いに行きたい!お願いお父さん、謝るから!もう引っ越しにも文句言わないから!お母さんに会わせて!お願い!謝らせて!」
母親を失うかもしれない恐怖から、蘭は泣いて小五郎にすがり付く。
「…英理の容態が安定したら、な。英理もお前には辛い思いさせてきた、って謝っていたよ。」
覇気はないものの先ほどよりは穏やかな顔付きになった小五郎が静かに告げる。
(もう、諦めるしかないんだ…。
これでいいんだよね、新一…)
かくして、蘭は新一との別れを受け入れた。
だがそれは、「愛し合う二人が無理やり引き離された」という、ある種ロマンチックな悲劇として蘭の心の中に残ることとなる。
それゆえに蘭はこの先、「引き離された恋人たちが運命に導かれ再会し結ばれる。」というドラマチックな幻想を追い続けることとなる。
※
夢見る少女は悲劇のヒロイン?
いえいえ、母親も無事で家族で暮らせるようになった。幼馴染が赤の他人なんて当たり前の事実。
一体どこが悲劇だというの?
夢見る少女は悲劇のヒロイン“ごっこ”がお好き。
***雪月花桜の感想***
英理さんの病気で強制的に田舎移住とは・・・!何か私,毛利夫妻両方とも東都出身な感じがしてたので、この発想なくて。
でも凄いです(゚д゚)(。_。)ウン(゚д゚)(。_。)ウン
そして蘭の発想があり得ない 高校の彼氏彼女で家に住まわせてもらうとか親公認の同棲にしかみえないのを婚約者でもないのに 高校生の段階で許すわけないorz しかも学費も借りるつもり?いや借りパクするつもりかーいΣ(・ω・ノ)ノ!
原作だとそのあり得ないが作者の寵愛で何とかなっちゃうかもだけど(;´Д`) こちらは万里様ワールド そうは問屋が卸さない。
泣く小五郎さんがかなり哀れ(´;ω;`)ウゥゥ 英理さんは気の毒とは思うけど今までが今までのせいか感情移入できない。
有希子さんとの会話がまたスッキリキタ━(゚∀゚)━!
すぐ彼氏出来るわ→新一と別れてたって意味よ の匂いを感じる 既に有希子さん目が覚めた後っぽい(´ー`*)ウンウン
続く言葉もご尤もで蘭ちゃんクリティカルヒットΣ(゚д゚lll)ガーンがお見事。
『私や新一を当てにされても、はっきり言って迷惑なのよ。』の最後通牒が都合の良い方に解釈しがちな蘭ちゃんをもってしても修正不可能なお言葉。
って言うかこの無茶な要求をせず、遠距離恋愛してたら今ネットも携帯もあるんだし、恋人でいられたのにね??
幼い精神が露呈したばっかりに蘭ちゃん自分で別れの引き金を引いたのではと思う雪月花桜
次話【大学時代・切り替えは早いが未練たらたら】も近日中にupしますので、どうぞ皆様お楽しみに💛
2020/2/29追記
このお話の中で中卒の方に対しての差別的表現があるとのご指摘を受け、その部分を削除・手直しさせて頂きました。
気分を害された方にはお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。
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