【大学時代・新一サイド ~天使なんか居ない~】~万里様ご提供~
万里様より頂いた作品です。
新哀で 『夢見る少女の長い夢』の新一編です。
先に蘭視点 本編をお読みになった方が分かりやすいかと存じます。
***注意書き***
ヒロインには優しくありません。厳しめですので、ranちゃん派の方は此処で周り右願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情 不満等は対応致しかねます。
尚、他人様の作品であるという事で無断転載や引用、誹謗中傷は御止め願います。
また同じ理由で予告なく、掲載を取り下げるやもしれない事予め通知致します。
**************
万里様からの注意書き:
このお話は、蘭厳しめの新哀です。
蘭がかなりピエロな役割なので、ご了承の上ご覧下さい。
最後に管理人からの再確認です。
注意書き読まれましたね??厳しめです。ヒロインファン 新蘭派はリターン下さい。
それでもOK 大丈夫という方のみ どうぞw
ではスタート↓
「蘭の幸せは心から嬉しいよ。
……これで、俺の人生をかけた初恋は終わったんだ…」
同窓会で幼馴染みと再会した新一は、バルコニーで電話の相手にそう呟いた。
蘭が自分達が大人になってからの再会まで一途に待てるとは、はなから思っていなかった。
(蘭の幸せのためにはその方が良い。)
そう考えつつも、
(しかし、思ったよりもたなかったな…)
そう思い苦笑した。
今日 新一が蘭に会って感じたのは、怒りではなく安堵、未練ではなく失望だった。
(蘭が引っ越すと聞いたとき、俺は、ホッとしていた…。)
蘭が東都を離れた時、既に新一には蘭への情熱は失われていた。
いつの頃からかはよく分からない。
組織に命を狙われながらの潜伏生活で、初めは確かに蘭の存在は「帰りたい」という心の支えだったのに。
いつしか「帰らなくてはならない」という重荷となって、組織のこと以上に新一にとっては心労と成り果てていた。
園子から蘭に恋人が出来たと聞いたときも、怒りはなかった。
新一は心の底から安堵したのだ。
(俺は、自由だ。)
新一は解放感を噛み締めた。
だが、この10年間、新一が蘭に対して身を削るような献身的な愛情を捧げてきたのは事実だ。
(結局、俺の想いは少しも蘭に通じていなかったんだな…)
『必ず帰ってくるから待っていて――』
蘭があの約束を守りきるとは思っていなかったが、これまで蘭を振り回してきた贖罪として、蘭の気の済むまでは付き合ってやるべきと考えていた。
蘭が自分を忘れてしまったとしても、自分だけは、蘭の幸せを見届けるまでは待ち続けよう。
新一は、心ひそかに決意していた。
―――想定より遥かに早く、あの約束は蘭の方から破棄されたのだが。
蘭に彼氏が出来たと聞いた時、新一は確かに安堵したが、それでも少なからず胸が痛んだのだ。
情熱はほぼ風化していたとは言え、自分に何の連絡も無しに彼氏を作った蘭。
これまでの自分の想いが軽く扱われたようで、ただ悲しかった。
そして先ほど再会したとき、蘭は新一に対して罪悪感の欠片もなかった。
後ろめたさを一切感じさせず、へらへらと笑って新一に話しかけた。
その後も新一を気にすることなく、女友達に彼氏の惚気話をしてはしゃいでいた。
――まるで別れの時の約束などなかったかのように。
(俺は蘭にとって、そんなにも軽い存在だったんだな…。)
もはや、悲しみよりも自分への滑稽さが勝る。
かつて自分が命を懸けて愛した女だ。
命を懸けただけの価値のある女性だと思っていた。
言葉に出来ない自分の献身や苦しみを察してくれる、自分のことをちゃんと見てくれる女性だと思っていた。
(―――俺が、そう思いたかっただけだ。)
初めて会った時の無垢な笑顔、それだけを頼りに、新一は蘭を10年間『理想の天使』と想い続けた。
無垢さとは、年月の経過で否応なしに喪われていく刹那の輝きだというのに。
(もう、完全燃焼だ…。こんなにも綺麗さっぱり忘れられちまってたら、蘭に対してなんの感情も残らねえ…。)
天使のような女神のような、蘭がそんな特別な女性だったならば。
想いは叶わなくとも、大切な初恋の思い出として胸の中にしまっておけたのに。
――その幻想も、今日完全に打ち砕かれた。
今日初めて、新一は蘭自身を真正面から見た。
そうして見た蘭に対して、新一は何の魅力も抱けなかった。
(最初から、蘭は天使なんかじゃなかった…俺が勝手に蘭に理想を押し付けていただけ。)
自分が命懸けで恋したのは、自分の頭の中にしか存在しない『理想の天使』だったのだ。
(俺は、居もしない幻に恋していたんだな。)
新一は失恋を受け入れた。
本当に、幼い恋だった。
長年恋し続けた相手への想いが完全に消えてしまうのは寂しい。
しかし、それは前に進むには必要なことだ。
(俺は初恋に幻滅することで、蘭から卒業出来たんだな…。)
新一は、自分の少年時代が終わるのをはっきりと感じた。
それだけでも、今日は来て良かったと思った。
『…今度は貴方が幸せになる番よ。蘭さんも、きっとそう願ってるわ。…私もね。』
電話の向こうから、優しい声が答えてくれる。
最後についでのように付け加えられた言葉こそが彼女の本音であることは、もう自分には理解できる。
「ありがとな。…俺、もうすぐ帰るけど、夜食にお茶漬けとか用意してくれるか?」
『…全く、仕方無いわね。いいわ。私も明日は休みだし、愚痴りたいならとことん付き合ってあげる。』
「やった!楽しみにしてるぜ。」
電話を切った新一が顔を上げると、ふと窓ガラスに写った自分が見えた。
それは思いの外 晴れやかな表情をしていて、とても今しがた長年の恋に破れた男の顔とは思えない。
「俺も単純だな。」
哀が自分の幸せを祈ってくれている。哀が帰りを待っていてくれる。
そう思うだけで、センチメンタルな気分が吹き飛んでしまった。
自分に苦笑しながら、もはや新一の頭には、「早く帰りたい」という思いしかない。
「帰らなくては」ではなく、「帰りたい」と自然に心に浮かぶ想い。
それが何を意味するのか、新一はまだ気付いていない。
(この世には、男が夢見る女神や天使のような女は存在しないのかもしれない。)
(それでも、自分の帰りを待っててくれる生身の女は確かにいる。)
この日、新一は幸せな気分で長い初恋を卒業したのだった。
―――――――
補足:
新一は自宅、哀ちゃんは博士の家に住んでますが、食事はほぼ毎日博士の家でお世話になってます。
***雪月花桜の感想***
蘭視点本編との落差を味わいにもう一度本編を読むのをオススメします。
( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
すっごーい落差。蘭がもう一度新一に惚れて、新一ももしかしたらとか妄想くねくね しているはしから
僅かに残っていた『理想の天使』像を自ら粉々にしていたのでした。
ただ新一も実物大の蘭ではなく、幼い日の少女に恋をしたまま だったのではないかとも思えました。
それに理想も加えてしまってそんな女の子いなかったのだと。
そういう事ってありますよね 最初に好きになったのって、人でも物でも結構思い入れありますし、印象深いですし。
案外初恋って、誰しもそういう幻想フィルター掛けてみているのかもしれませんね。
そして哀ちゃんに対しての『帰りたい』 また一滴の水を彷彿とさせました。
義務と積極的な意思の差。それが意味するものは…!って感じですよね 分かります(((uдu*)ゥンゥン
それでは次話も近い内にUPしますね!お楽しみに(⋈◍>◡<◍)。✧♡
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