貴女の恋は消費期限切れ~夢見る少女異聞 万里様宛返礼小説~
『夢見る少女の長い夢』という万里様からご提供頂いた新哀話の続き ないしは裏話です。
つまり、「夢見る少女シリーズ」の派生話♪
いつも楽しい小説を提供下さる万里様への少し遅れたホワイトデー 返礼として、万里様の設定のまま雪月花桜が書きました。
つまりコラボ小説ですかね( ◠‿◠ )
どうぞ、お楽しみ下さいませ~°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°
***注意書き***
ヒロインには優しくありません。厳しめですので、彼女のファンの方は此処で周り右願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
*************
注意書き読まれましたね?
ヒロインファンはリターン下さい。
新哀話です。
それではどうぞ↓
(私 今何を聞いたんだろう。嘘、だよね…!?)
蘭は偶然入ったカフェで、信じられない気持ちいっぱいで衝立越しのグループの会話を聞いていた。
時は少し遡る。
必死の想いでやり過ごした新一と哀の結婚式から数か月後のある日、高校1年生のクラスだけでの同窓会があった。
新しい結婚相手を…!と蘭は力んで参加したが、良家の子女が多い出身校では男性といえど結婚は早く、イイ男ほど妻子や婚約者がいたりして売約済ばかり。おまけに1クラスだけなので絶対的に男性の人数が少ない。
(あーあ。当てが外れちゃったな。新一ほどの男は難しいかもだけど、それに準ずる相手どっかにいないかなぁ。)
(園子に紹介頼もうかな…。今日出席してたら話せたのに。最近海外出張多いせいか返信も遅いし…。)
がっかりした上に渡米した新一の活躍と幼妻の話題で盛り上がる会場に辟易し、早々に切り上げこのカフェで休憩をしていたときに、聞き覚えのある声が衝立越しにした。
「工藤君の奥さん、綺麗な子。若くても賢くてお似合いだったよ。」
それはかつての同窓会で『蘭ちゃんってまだ工藤君と親交あるんだね。付き合ってるの?』と聞いてくれた元級友。
(園子だけじゃなくて…彼女も!?何でみんな手のひら返しするの!酷い…!酷い…!)
咄嗟に掛けようと思った声が口から出てこず、空気音が漏れるだけ。
「その割には毛利さんに工藤君と付き合っているの?とか聞いてたじゃん。」
「あはは。あんなの社交辞令と言うか…ぶっちゃけ嫌味。
付き合ってもいないのに彼女面wwウケるwwwって意味だったんだけど、通じてないとか末期だよねー。」
(い、嫌味…!?付き合ってもいないのに彼女面って…そんな…。)
良く言えば素直、悪く言えば単純な蘭は、一見誉め言葉のようでいてその実はけなしているというコミュニケーションに免疫がなくショックを受ける。
今の職場では優しいマスター、常連に囲まれ、蘭はそういう目に遭ったことがほとんどない。
要は職場環境に恵まれているがゆえに、逆に社会人としては経験の幅が少ないと言える。
おまけに自身の取らぬ狸の皮算用を見抜かれていたようで居たたまれない。
思わず俯き、息を殺す。
そんな蘭を尻目に彼女たちは盛り上がっていた。
「あ、やっぱり!?
『やだ~、そんなの幼馴染の腐れ縁ってだけだよ~。私も新一も、別に恋人いたし。今はフリーだけどね。
ていうか、よく恋人と勘違いされて、本当に困っちゃうんだよね~。』とか 明らかに口では否定してても、内心そう訊かれるのが嬉しくてたまらないって顔してて、本当に毛利さんて高校の時と変わらないね。」
「今のモノマネそっくり。くねくねっぷりが!朝子って本当真似るのうまいよね。…彼女は昔のままだよね。」
その昔のままに”成長していない”という響きを感じたのは何故だろう。
「役者を舐めないでよね!今度舞台決まったの。見に来て。これチラシね。」
「まあ!おめでとうございます!ぜひ伺いますわ。」「行く 行く!恋愛物なんだ。」
「うん。年の差カップルの恋物語!恋愛と言えばさ、私、鈴木さんに毛利さんが『園子はいいなあ。恋愛に対する悩みなんかなくて、順風満帆だもんね。』って言ってるの聞いちゃった。」
「はぁ??何言ってんの?苦労しないわけないじゃん。鈴木財閥だよ!?
玉の輿でも大変なのに、男女逆の逆玉の輿なんて奥さんの財産狙いとか色んな事言われて大変に決まってるじゃん。」
「鈴木さんが愚痴とか言わなかったからじゃない?」
「言わなかったからって、反対がないとは限りませんわ。言わないイコール”ない”ではないのですから。」
園子と同じ財閥令嬢で跡継ぎの京香が、やんわり言う様は流石に説得力を帯びていた。
「そこはほら。毛利さんだから?」
「なんで疑問形(笑)」
「言わなくても分かる部分を察するってできないのが毛利さんじゃん。」
「彼女、確かにそういう面ございますね。」
「まあね。」
(そ、そんな。だって園子、そんなこと一言も言わなかったもの。)
だが『言わないイコール”ない”ではない。』という言葉が蘭に深く突き刺さる。
新一のことだけでなく、親友のこともきちんと見えていなかったのではないか-。
そんな考えが脳裏にふっと浮かんだ。
「あの調子じゃ、鈴木さんがブーケ渡したのが工藤君の新妻ってことも知らなさそう。」
そして話は冒頭に戻る。
(私 今何を聞いたんだろう。嘘、だよね…!?)
「嘘…。」
思わず力なく呟く。
(なんで・・・??哀ちゃんなんて社交界での付き合いなんてないじゃない。
なのに何で園子の結婚式に参加してるの?しかも親友の私を差し置いてブーケ貰ってたなんて。)
女三人寄れば姦しいをそのまま体現した彼女達は話を続ける。
「灰原哀さんね。いえ今は工藤哀さんね。」
その言葉が蘭に突き刺さる。
本当はそう呼ばれるのは蘭のはずだった。否 蘭自身だけが長い間、そう信じてきた。
新一と結ばれ、工藤蘭と呼ばれ、有希子にも可愛がられる幸せな生活--。
信じる――何と都合の良い言葉だろう。そう信じたかったから自分の見たいことだけ見ていただけだった。
一人落ち込む蘭を余所に彼女たちの会話は盛り上がる。
「鈴木さんの結婚式、凄かったんだってね。招待されたの京香だけなんだから詳しく話して貰うわよ。」
園子は社交界等の関係者を海外挙式に招待し、後日、国内で簡易お披露目パーティーを開いた。
財閥令嬢ですでに子会社を任されている京香だけが仲良し三人組の中で唯一招待されていた。
「概略はお話ししましたが?」
「「もっと詳しく!!」」
「そうそう。次の舞台の参考にするっ!」
「するんかい(笑)もうなんでも演技の糧にするその根性尊敬するわ。」
「スマートフォンに写真ありますわよ。見ます?」
「「見るっ‼」」
「わー素敵なホテル!」
「広いロビー。景色めちゃ綺麗。」
「鈴木さん綺麗💛ウエディングドレス いいな!京極さんもカッコよくてお似合い。」
「料理の写真はないの?」
「それは失礼になりますわ。食事中に撮影など。」
お嬢様育ちの京香はそもそも自分で撮影する習慣自体がないが、親友の為と時代の流れで最近スマホでやれることは挑戦するようになった。
「あ、そっか。」
「もう食いしん坊なんだから、朝子は。」
「だって-気になるじゃない。あ、集合写真!皆の衣装も素敵!」
「舞台の参考になりますかしら?」
「なるなる。へ~この衣装にはこういうメイクが合うんだ!」
「出席者の面子凄いね。」
「うん。これベンチャー企業の社長じゃない!?」
「こっちはあのカリスマって言われてるエステで起業した女社長じゃない?」
「お二人ともよくご存知で。」
セレブの結婚話に場が盛り上がる。
「あ、これがブ―ケ渡した時の写真?」
「ええ。遠慮がちに貰う彼女に寄り添う工藤さんがお似合いねぇと思いましたわ。…お相手が高校生と言う事で言及は避けましたけれど。」
「こうやって改めて見るとベストカップルって感じ!」
(そんな時から、二人は付き合っていたって言うの!?)
何故教えてくれなかったのかと園子に対して、裏切られたと怒りが込み上げる。
(ブーケも私にはくれないで、哀ちゃんにあげちゃうなんて!)
――園子は私の想いを知らない。過度のお節介を心配して教えなかった。だから仕方ない。裏切られたと思うのは筋違いだ。
(・・・・知らない?本当に?)
1年に1回会うか会わないかの隣の席の彼女が『彼女面』と称し気付いたことに、もっと多く会っている園子が本当に気付かなかったのだろうか?
新一の奥さんになることの大変さ、探偵としての妻の心得を守秘義務を筆頭に語った園子。
――それは蘭には無理だと窘めているようではなかったか?
園子が哀と新一のことを評した”ラブの予感”。
――さりげなく二人のことを知らせてくれようとしていたのでないか?
蘭を合コンに何度も誘った園子。
――新一に望みはないと悟った園子が新しい出会いを提供しようとしてくれていたのでないか?
幾つも思い出すそれらの意味するものとは-。
――気付いていたのだ。園子は蘭の勘違いに。
とっくに終わった恋が続いていると信じ、彼に想われていると思い込んだ滑稽な独り相撲な恋に。
自覚した瞬間、顔から火が出るほど恥ずかしい というのを蘭は身をもって知った。
屈辱にコップを持つ手が震える。
それでも沸騰しそうな頭を冷やしたくて、アイス珈琲を一気飲みした。
(なんで!?なんで言ってくれなかったの!?園子ぉ!)
問い詰めたい気持ちが怒りと共に沸き上がる。
だが電話かメールをしようと携帯を眺めている内に気付いてしまった。
(聞けない。)
問い詰めること-その行為自体が痛い妄想の肯定に他ならない-。
そんな恥の上塗りは絶対いやだ。
素知らぬ振りをし、さりげなく新一を諦めさせ、別の男に眼を向けさせようとした-。それが園子の友情だったのだ。
(でももう少し具体的に言ってくれてたら・・・!)
――指摘されたところで、素直に聞いただろうか?
運命に引き裂かれた恋人達が再び結ばれるという甘い夢に浸っていた蘭は、口だけは「やだそんなじゃないよ。」と言いながら、心の中では新一からのアプローチを待ち続けたに違いない。
それを園子は見抜いていたのだ。
そこまで思考が至ると蘭とは本音だけでは話せなくなっていた親友との関係性にも気付いた。気付いてしまった。
愕然とする-。
二人の関係はもうかけがえのない親友ではなくなっていた。
(信じたくない。信じたくない…!新一だけじゃなくて、園子とも親友じゃなくて”ただの友達”になっちゃったの・・・・?)
園子の友情は疑わない。けれどブーケの事と言い、蘭を特別に想ってくれていた親友はいなくなってしまっていた。
むしろ社交界での付き合いもないのに挙式に招待しブーケまで渡した哀の方が園子にとって大切な存在のようではないか。
幼馴染二人が自分から離れていく-。否とっくに離れていたことに今気付いたのだ。
「どうして・・・?」
人は成長して変わっていく-。その過程で自ら動こうとしなかったから置いていかれただけ。
そのことにいつ彼女は気付くのだろうか?
(もしかして新一も・・・?新一も気付いてたの!?)
突如、天啓を得たように思考があらぬ方向に飛ぶ。
そして再び顔を真っ赤にする。恥ずかしさのあまり、消え入りたい気持ちになっていた。
(そんな・・・そんなのあんまりだよ。)
冷静に考えればそんな一方的な思い違いしていると分かっていたら、いくら哀の為とはいえ、新一はポアロに行かないだろう。
珈琲豆だけなら郵送という手段もあるのだから。
更に言うなら自身の結婚式に招待したりしない。
新郎に未練のある”女の友人”など挙式中に何をするか分からないのだから。
招待された-その事実こそが、彼にとって彼女は恋愛対象外だと示していたのだ。
だが思い込んだら一直線で激しい蘭は一度その考えに捕らわれしまって抜け出せなくなった。かつてのように。
(園子が気付いたんだもん。ならあの新一が気付かないはずない・・・・!)
過去の新一の高い推理力を思い返す度、違いないと思えてきてしまう。
あれほどの洞察力を持つ彼ならば、気付いても可笑しくないと。
(招待したのは諦めさせるため・・・?見せつけた?あんまりなやり方だよ。ひどい ひどいよぉ 新一ぃ!)
とんだ濡れ衣であるが遠い異国の地にいる彼には知る由もない。
(次会う時、どんな顔したらいいのよ。)
(ううん。新一だけじゃない園子にだってどういう風に振る舞ったらいいの。)
園子と新一だけではない隣の彼女も級友達も-皆心の中で嗤っていたのではないか-。
そんな暗い思考回路に陥りそうになり、蘭は様々なことを考えてしまい、心の中で苦悶していた。
「でね、娘がホワイトデーに好きな男の子から貰ったお菓子を食べるのが勿体無いとかってずっと取っておいて眺めているの。」
「あら。可愛い。」
「かわいいんだけど・・・消費期限短いお菓子なのよ。そろそろ食べないといけないのにあの子ってば。」
「賞味期限ならともかく、消費期限切れたら駄目よね~。お腹壊すわ。」
「そうなのよね。やっぱり今日帰ったらささっと食べさせよう。」
「それが良いわね。食べないならお母さん食べちゃうよって言ってみたら?」
いつのまにか元級友たち3人はいなくなってしまっており、隣の主婦らしき二人の会話が漏れ聞こえてくる。
よく見れば周囲の客の顔ぶれもほとんど変わっている。
「もう出なくちゃ。」
一体どれだけの時間考え込んでいたのだろう。
「消費期限・・・。」
蘭は自分の恋がとっくに消費期限切れだと言われたように感じた。
言ったのは新一か園子か-否、彼女自身の欠片の理性だった。
幼馴染と結ばれた幼い初恋。
終焉時に潔く振る舞えば美しいままで想い出に出来たのに。
それを壊したのは、消費期限切れになるまで胸に秘めたまま何もしなかった彼女自身-。
**設定と後書**
今回出てきた仲良し3人組
まず本編に出てきたモブ子・・・万里様使わせて頂きました。お名前なんでしょうか?私の中では結構毒舌家のイメージ。
朝子・・・女優ではなく自らを役者と名乗る根っからの演技派。体力を遣う仕事の為、大食漢(でも痩せている)。
京香・・・鈴木財閥と張るとある財閥の一人娘。子会社を任されている為、園子と話が合う。お嬢様育ちで丁寧な口調。
今回 園子編の後書で出た蘭が知らぬが仏一覧があまりにネタの宝庫だった為、書いていいですか?と聞いたところ
万里様に快諾頂けたので、その一覧の中で
・親友が自分を差し置いて恋敵にブーケトスしてた
・「貴女の恋は身の程知らず」という言葉を飲み込んでもらっていた
・「彼ったらぁ、私のことまだ諦めてないみたいでぇ~」という自分の勘違いがバレバレだったのを気付かないふりで通してもらえた。(←私的には、これがバレてることをもし蘭が知ったら一番ダメージ食らうと思う)
3つを調理させて頂きました。
当初3人と直接話すがゆえにソフト(本人に直接きつい事言えないから)バージョンとこちらのハードバージョンとあったのですが
ハードが採用になりました。
なんでだろう?と考えますと、万里様の「付き合ってもいないのに彼女面wwウケるwwwって意味だったんだけど、通じてないとか末期だよねー。」が使いたかった・・・!(鬼)という事とソフトバージョンだと彼女が気づく可能性が低そうだなと思ってしまって(;・∀・)
ですが・・・最後の新一への疑惑は当初書く予定なく、執筆途中で下りてきました。
そこまで!?と言われそうですが・・・この10年間の勘違い妄想っぷりを見ると・・・そして誰にもこのことを話せないとなるとあり得るんじゃないかな??と思ってます。というか書いている内に思えてきました(笑)
お楽しみ頂けたら幸いです。
感想・拍手頂けたらもっと感謝感激でございます(((o(*゚▽゚*)o)))
小話なぞ頂けたら小躍りします(/ω・\)チラ
**万里様へ**
お言葉に甘えて、御礼の意味も込めて書かせて頂きました。これがお礼になるといいのですが(;^ω^)
もしも解釈違い等ございましたらご指摘下さい。なるべくご意向に沿うように訂正させて頂きます。
題名はネタの「貴女の恋は身の程知らず」をちょっとアレンジさせて頂きました(⌒▽⌒)アハハ!
新一への疑惑は正に蘭への死体蹴り(酷)になってしまいました どうしてここまでww(自分でやっておいてからに)
そして最後の消費期限切れは、万里様が使われたココシャネルの言葉と対照的になるように(コメント欄で出た発酵と腐るの違いは?にしようかとも思いましたが、ここはシンプルに消費期限を採用)してみました。
この世界の創造主である万里様に楽しんで頂けましたら、こんなに嬉しい事ございません。
感想お待ちしております。
最後にご挨拶にて頂いたお言葉"今後も雪月様のブログを見守っていきますので、よろしくお願いいたします。"とのお言葉、本当に本当に嬉しいです。感謝申し上げます。
それではまた(*´▽`*)
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