目覚めた両親と目覚めぬ娘~夢見る少女異聞 エルリア様ご提供~
『夢見る少女の長い夢』という万里様からご提供頂いた新哀話の小五郎サイドからの話です。
つまり、「夢見る少女シリーズ」の派生話♪
いつも楽しい小説を提供下さるエルリア様が、万里様の設定のまま書いて下さいました。
つまり万里様とエルリア様のコラボ小説ですかね(*´艸`*)
どうぞ、お楽しみ下さいませ~°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°
***注意書き***
ヒロインには優しくありません。厳しめですので、ranちゃん派の方は此処で周り右願います。
尚、他人様の作品であるという事で無断転載や引用、誹謗中傷は御止め願います。
また同じ理由で予告なく、掲載を取り下げるやもしれない事予め通知致します。
**************
注意書き読まれましたね?
ヒロインファンはリターン下さい。
新哀話です。
それではどうぞ↓
蘭が新一本人から結婚する事を聞かされ、これまでの自分の妄動が打ち砕かれた事にショックを受けていた頃。
小五郎と英理の許に一通の手紙が届いた。
差出人は、引っ越し以来音信が途絶えていた旧友。
勿論、それに関してこちらが文句を言う権利はない。
連絡をしなかったのはこちらも同じだし、引っ越し前の蘭の醜態を思い出せば向こうがもう関わりたくないと思っても仕方がない事だ。
「有希ちゃん…」
手紙の内容は、新一が哀と結婚するという報告だった。
勿論自分達は招待される間柄ではない。
これは一応の義理を果たした、という形なのだろう。
“蘭の奴、大丈夫なのか…?”
娘が20代の半ばも越えた位から、お互いに連絡を取り合った時や蘭が帰省した時に時々そう言った事を話題にするようになった。
これはもう、何処の家庭にもある事だろう。
特に一人っ子の家庭では多いかもしれない。
その話題が出る度に、蘭は笑顔でこう言っていた。
「心配しなくても、その内お父さん達がビックリするような人を紹介するから」と。
それは次の彼を連れてくると言うようなものではなく、誰か決まっているような言い方だった。
何故そんな事が言えるのか解らなかったが、何度か蘭の様子を見に東都に出て行った事があり、ある時気付いてしまった。
何故か蘭は、未だに新一と結婚できると思っているようだという事に。
一体何処をどうしたらそんな考えが生まれるのか解らなかったが、蘭の中では決定事項にすらなっているように感じられた。
尤も、それをストレートに指摘した所で認める事はないに違いない。
新一のことに関しては、天井知らずの天邪鬼っぷりを発揮していたのだから。
蘭が暮らす1Kのアパートには小五郎が泊まるだけのスペースはないから、何時も日帰りだった。
「おめーもそろそろ真剣に結婚を視野に入れねーと、後悔するぞ。何時までも若くはないんだからな」
「もう、お父さんったら、またそれ~?何度も言ってるでしょ?ちゃーんと考えてるって」
それは高校生の時と変わらない、何処か甘ったれた口調だった。
その時に最初に違和感を覚えた。
蘭が新一との仲を誰かに訊かれたりした時にこういう口調になっていたのを、思い出したからだ。
否定しながらも嬉しそうな、新一を見下しながら優越感に浸っているような…そんな声と口調。
「…そういや、新一とは会ってんのか?」
「うん。ちょくちょくポアロに来るわよ。なーんか、しょっちゅう新しい彼女作ってはフラれてるみたい。ホント、あいつってば何時まで経ってもダメなんだから」
それもまた、高校生時分の言い方と同じ。
あの頃は英理に似たのだろう、これが蘭なりの愛情表現なのだと思っていたのだが…よく考えてみたらとんでもない事だ。
自分達は夫婦だから、まだいい。全くの赤の他人よりは許容範囲が広いし、お互いに言い合っているからだ。
だが自分が知る限り、新一が蘭を悪し様に貶していたのは見た事がないし、あの頃二人と親しかった鈴木園子からも「新一君がこんな事言っていた」と言うような事は聞いていない。
それにもし新一がそんな事を言っていたら、蘭は恐らくそれとは比べ物にならない程の罵詈雑言を自分にも聞かせていただろう。
“新一が愛想を尽かしてもおかしかねーよな”
だから彼は、自分の「別れてくれ」と言う言葉を、ああもあっさりと受け入れたのだ。
「お父さん?」
「何でもねぇ。新一が誰と付き合おうが、別れようが、もうおめーにはかんけーねー事だろ?それをそんな風に悪し様に言うもんじゃねーぞ」
「え?だって私と新一だよ?付き合いの短い『彼女』達なんかより、私の方が新一のこと解ってるんだからぁ」
この返答にめまいを覚える。
今の蘭と新一がどの位の付き合いがあると言うのだろう?
だが「思い込んだら命がけ」と言う言葉がぴったり当てはまる娘の性格は、それこそ誰よりも解っている。
そしてこの様子を見る限り、新一が誰かと真剣に交際し、結婚まで行くという事はまるで考えていないようだ。
「新一って、なんか何時までも何処か子どもみたいなんだよね。私みたいに根気強く付き合ってあげられる女の子なんて、そうそういないわよ」
これで気付いてしまった。
蘭は…新一がいずれ自分の元に戻ってくると思っているのだ。
何人の女の子と付き合っても、結局最後は自分を選ぶ。寧ろその経験を経て、蘭こそが自分にとって最高の女と気付く、とでも考えているようだった。
「蘭…。とりあえず体には気をつけろよ」
「うん。お母さんにもそう言っておいて」
部屋を出ると、小五郎は深々と溜息を吐いた。
あの分では、蘭の妄想はちょっとやそっとでは崩れないだろう。
“どうしてそんな事を考えられるのかねぇ?”
最後の電話で、新一を縛り付けるような事を散々喚いておきながら、さっさと新しい恋人を作った時は、目が点になったものだ。
新一と離れたくないと英理を罵倒しまくり、病状を悪化させた事すら忘れたかのように。
英理もまた呆れ果てていたが、それでも蘭がそれで幸せになるのならと特に新一との事は言及しなかった。
小五郎だけが「新一のことはもういいのか?」と一度訊いた。
返ってきたのは「だって連絡取れないんだもん。仕方ないじゃない」と言う、開いた口が塞がらない言葉だった。
そしてそこに新一への後ろめたさは微塵もなかった。
何の事はない。
蘭は常に自分の傍にいて、我儘を聞いて甘やかしてくれる男なら新一でなくてもいいのだ、と気付いてしまった。
心底、新一と別れさせて良かったと思った。
蘭が好きだったのは「工藤新一」と言う一人の人間ではなく、その条件に当てはまり…それ以上に尽くしてくれる相手だから好きだっただけだ。
しかも見た目も良く、両親が有名人でセレブ家庭の生まれ育ち。
あれと親しくなれたら、蘭でなくとも手放したくはないと思うだろう。
“あん時程、有希ちゃんと新一に謝りてぇと思った事はなかったぜ”
尤も、その手段は残されていなかったが。
しかもその後、その彼氏の事を同窓会で新一に惚気たと聞いた時には、卒倒しそうになった。
そして蛇の道は蛇、と言うか…昔取った杵柄と言うか…小五郎は今の新一の立場を何となく察している。
高校生探偵と持て囃されていた頃の新一や、眠りの小五郎と華々しく称えられていた頃の自分のイメージしか蘭の中にはないだろうが、本来「探偵」と言う職業は表に出るものではない。
それに探偵は守秘義務の塊のような仕事でもある。
蘭のように「言えないのは後ろめたい事があるから」と考えたり、相手の事を根掘り葉掘り訊いて知らなければ気が済まないと言う性格では、到底新一の伴侶は務まらない。
まして「探偵・工藤新一」を支えられるような知識も技能もないとなれば、尚の事。
そんな事を考えながらバス停までの道を歩いていると、新一を見かけた。
正直、目を疑った。
有希子に似て、子どもの頃からずば抜けて綺麗な容姿を持っていたが、今はそれに男の色気や実績に裏打ちされた自信を纏い、更にはどうやら何かの武道もやっているのか服越しにでも引き締まった体つきが見て取れた。
それ以上に驚いたのは、隣に居る女性。
幼い頃の面影は確かにあるが、美しく一人の女性に成長した灰原哀。
容姿だけとっても、蘭より遥かにお似合いに見えた。
何よりも二人の表情が、幸せな恋人そのものだった。
“ああ、成程”
新一の女性遍歴を小五郎は詳しく知りようがないが、恐らくそれは哀への想いを自覚していなかったか、或いは自覚はしていたもののその年の差故に否定したかったか…そんな所なのだろう。
だが、どうやら上手く纏まっているようだ。
これは近いうちに蘭は嫌でも、現実を…新一は蘭とよりを戻す気はないのだと知る事になるだろう。
と言うか、これまでの自分の新一への態度を少しでも顧みればそんな幻想など抱きようがないのだが。
これもまた小五郎は知りようがないが、彼が知る以上に蘭は再会後の言動で新一に愛想を尽かされまくっていた。
そこまで思い出して、小五郎はあの時よりも深い溜息を吐いた。
灰原哀の事はそこまで深く知らない。
だが当時預かっていた、子どもとは思えない知識量や落ち着きを持っていた江戸川コナンと同じ位、大人びて頭のいい子どもだった事は覚えている。
あの子がそのまま成長したのなら、それこそ何時まで経っても少女のような夢を見ている蘭より余程も新一に相応しいと思える。
小五郎はあの日見た二人の姿を蘭には伝えていない。
教えた所で、何が変わるとも思えなかったからだ。
もしこの事を知った蘭が泣きついてきたら、どう慰めればいいのやら。
「どうしたの?あなた」
以前よりずっと性格が丸くなり、穏やかな表情をした英理が声をかけてくる。
「新一が結婚するそうだ」
有希子からの手紙を手渡す。
「そう…漸く新一君についていける子が見つかったのね」
英理もまた、あの一連の騒動と、その後の蘭の男遍歴で娘に夢を見過ぎていた事に気付き、冷静に考えられるようになると、本来の聡明さで持って新一を正当に評価できるようになっていた。
「まぁ、あいつなら大丈夫だろうさ」
「そうね。それよりも蘭はどうするのかしら」
「暴走しなきゃいいんだがな」
二人は同じように小さく溜息を吐くと、有希子への返信を考え始めた。
**エルリア様の後書**
最初は新一と小五郎が直接会って話すシーンを考えていたんですが、新一が小五郎に蘭の愚痴を言う姿が不自然過ぎて、没になりました。
厳しめと言う程、辛辣な表現はなかったかな(私基準)
小五郎は園子程蘭のイタイ妄想を具体的には気付いてないんですが、「あ。これはヤバい」と言う風に思ってました。
だけど言っても聞かないのも解っていたので、娘が自分で気付くまで放置。蘭ももう、いい大人ですしね。
一度痛い目に遭えば、妄想癖が治るかもしれませんし。
色々万里様の設定とは違うかもしれませんが、楽しんで頂ければ幸いです。
**雪月花桜より御礼と感想**
エルリア様 素敵小説ありがとうございますヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
更に掲載許可快く了承頂き、感謝です。
万里様も掲載許可感謝でございます
それでは感想に行きますv( ̄Д ̄)v イエイ
非常に楽しく読ませて頂きました。
少ない情報からかなりの部分を悟りながら沈黙を守った小五郎、娘への夢の見過ぎがなくなり(また一緒に住むことによって等身大の娘が見えたであろう)新一を正当に評価するようになった英理と私のツボだらけでした。
流石 エルリア様(((o(*゚▽゚*)o)))
小五郎が沈黙を守った理由…私が書いた園子編と似ているのでは?と思いました。
つまり…指摘されたところで蘭は理解できないし、表面上は否定しながらも心の中では、「そんなはずないもの。皆分からないのね。」「私と新一は特別なんだから。」とか思ってそう。そしてそれを見抜かれているので言っても無駄と指摘してもらえない。
自分で気づくまで…と放置?見守り?されているお話ですね。
園子だけじゃなくて小五郎も知ってました事実…これ蘭が知ったら…また羞恥で死ねるレベルwww
今回私のお気に入りは、コゴエリは夫婦だし、お互い言い合っているから良いが新一と蘭は違うと小五郎が自分で気づけた点
(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪ そして英理が穏やかになり新一を評価している点です。
エルリア様 続き書いて下さいませんか-!(図々しいから ってか自分で書けや)って思ったくらいの作品です。
エルリア様 いつもいつも素敵小説ありがとうございますヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
今回も楽しませて頂きました。心よりの感謝申し上げます。
万里様!とても万里様ワールドと合っていると思うのですが…如何でしょうか(´∀`*)ウフフ
続き ございません?(悪魔の誘い)
エルリア様や万里様のお蔭様で食べログになりがちな(笑)当blogが華やかになり、嬉しい限りです。
こちらのガッチリ感想語りも楽しみにしております。
それではお二人に心からの感謝を捧げさせて頂きます(⋈◍>◡<◍)。✧♡
************************
最後に読んで下さった皆様へ
お楽しみ頂けたら幸いです。
感想・拍手頂けたらもっと感謝感激でございます(((o(*゚▽゚*)o)))
小話なぞ頂けたら小躍りします(/ω・\)チラ
つまり、「夢見る少女シリーズ」の派生話♪
いつも楽しい小説を提供下さるエルリア様が、万里様の設定のまま書いて下さいました。
つまり万里様とエルリア様のコラボ小説ですかね(*´艸`*)
どうぞ、お楽しみ下さいませ~°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°
***注意書き***
ヒロインには優しくありません。厳しめですので、ranちゃん派の方は此処で周り右願います。
尚、他人様の作品であるという事で無断転載や引用、誹謗中傷は御止め願います。
また同じ理由で予告なく、掲載を取り下げるやもしれない事予め通知致します。
**************
注意書き読まれましたね?
ヒロインファンはリターン下さい。
新哀話です。
それではどうぞ↓
蘭が新一本人から結婚する事を聞かされ、これまでの自分の妄動が打ち砕かれた事にショックを受けていた頃。
小五郎と英理の許に一通の手紙が届いた。
差出人は、引っ越し以来音信が途絶えていた旧友。
勿論、それに関してこちらが文句を言う権利はない。
連絡をしなかったのはこちらも同じだし、引っ越し前の蘭の醜態を思い出せば向こうがもう関わりたくないと思っても仕方がない事だ。
「有希ちゃん…」
手紙の内容は、新一が哀と結婚するという報告だった。
勿論自分達は招待される間柄ではない。
これは一応の義理を果たした、という形なのだろう。
“蘭の奴、大丈夫なのか…?”
娘が20代の半ばも越えた位から、お互いに連絡を取り合った時や蘭が帰省した時に時々そう言った事を話題にするようになった。
これはもう、何処の家庭にもある事だろう。
特に一人っ子の家庭では多いかもしれない。
その話題が出る度に、蘭は笑顔でこう言っていた。
「心配しなくても、その内お父さん達がビックリするような人を紹介するから」と。
それは次の彼を連れてくると言うようなものではなく、誰か決まっているような言い方だった。
何故そんな事が言えるのか解らなかったが、何度か蘭の様子を見に東都に出て行った事があり、ある時気付いてしまった。
何故か蘭は、未だに新一と結婚できると思っているようだという事に。
一体何処をどうしたらそんな考えが生まれるのか解らなかったが、蘭の中では決定事項にすらなっているように感じられた。
尤も、それをストレートに指摘した所で認める事はないに違いない。
新一のことに関しては、天井知らずの天邪鬼っぷりを発揮していたのだから。
蘭が暮らす1Kのアパートには小五郎が泊まるだけのスペースはないから、何時も日帰りだった。
「おめーもそろそろ真剣に結婚を視野に入れねーと、後悔するぞ。何時までも若くはないんだからな」
「もう、お父さんったら、またそれ~?何度も言ってるでしょ?ちゃーんと考えてるって」
それは高校生の時と変わらない、何処か甘ったれた口調だった。
その時に最初に違和感を覚えた。
蘭が新一との仲を誰かに訊かれたりした時にこういう口調になっていたのを、思い出したからだ。
否定しながらも嬉しそうな、新一を見下しながら優越感に浸っているような…そんな声と口調。
「…そういや、新一とは会ってんのか?」
「うん。ちょくちょくポアロに来るわよ。なーんか、しょっちゅう新しい彼女作ってはフラれてるみたい。ホント、あいつってば何時まで経ってもダメなんだから」
それもまた、高校生時分の言い方と同じ。
あの頃は英理に似たのだろう、これが蘭なりの愛情表現なのだと思っていたのだが…よく考えてみたらとんでもない事だ。
自分達は夫婦だから、まだいい。全くの赤の他人よりは許容範囲が広いし、お互いに言い合っているからだ。
だが自分が知る限り、新一が蘭を悪し様に貶していたのは見た事がないし、あの頃二人と親しかった鈴木園子からも「新一君がこんな事言っていた」と言うような事は聞いていない。
それにもし新一がそんな事を言っていたら、蘭は恐らくそれとは比べ物にならない程の罵詈雑言を自分にも聞かせていただろう。
“新一が愛想を尽かしてもおかしかねーよな”
だから彼は、自分の「別れてくれ」と言う言葉を、ああもあっさりと受け入れたのだ。
「お父さん?」
「何でもねぇ。新一が誰と付き合おうが、別れようが、もうおめーにはかんけーねー事だろ?それをそんな風に悪し様に言うもんじゃねーぞ」
「え?だって私と新一だよ?付き合いの短い『彼女』達なんかより、私の方が新一のこと解ってるんだからぁ」
この返答にめまいを覚える。
今の蘭と新一がどの位の付き合いがあると言うのだろう?
だが「思い込んだら命がけ」と言う言葉がぴったり当てはまる娘の性格は、それこそ誰よりも解っている。
そしてこの様子を見る限り、新一が誰かと真剣に交際し、結婚まで行くという事はまるで考えていないようだ。
「新一って、なんか何時までも何処か子どもみたいなんだよね。私みたいに根気強く付き合ってあげられる女の子なんて、そうそういないわよ」
これで気付いてしまった。
蘭は…新一がいずれ自分の元に戻ってくると思っているのだ。
何人の女の子と付き合っても、結局最後は自分を選ぶ。寧ろその経験を経て、蘭こそが自分にとって最高の女と気付く、とでも考えているようだった。
「蘭…。とりあえず体には気をつけろよ」
「うん。お母さんにもそう言っておいて」
部屋を出ると、小五郎は深々と溜息を吐いた。
あの分では、蘭の妄想はちょっとやそっとでは崩れないだろう。
“どうしてそんな事を考えられるのかねぇ?”
最後の電話で、新一を縛り付けるような事を散々喚いておきながら、さっさと新しい恋人を作った時は、目が点になったものだ。
新一と離れたくないと英理を罵倒しまくり、病状を悪化させた事すら忘れたかのように。
英理もまた呆れ果てていたが、それでも蘭がそれで幸せになるのならと特に新一との事は言及しなかった。
小五郎だけが「新一のことはもういいのか?」と一度訊いた。
返ってきたのは「だって連絡取れないんだもん。仕方ないじゃない」と言う、開いた口が塞がらない言葉だった。
そしてそこに新一への後ろめたさは微塵もなかった。
何の事はない。
蘭は常に自分の傍にいて、我儘を聞いて甘やかしてくれる男なら新一でなくてもいいのだ、と気付いてしまった。
心底、新一と別れさせて良かったと思った。
蘭が好きだったのは「工藤新一」と言う一人の人間ではなく、その条件に当てはまり…それ以上に尽くしてくれる相手だから好きだっただけだ。
しかも見た目も良く、両親が有名人でセレブ家庭の生まれ育ち。
あれと親しくなれたら、蘭でなくとも手放したくはないと思うだろう。
“あん時程、有希ちゃんと新一に謝りてぇと思った事はなかったぜ”
尤も、その手段は残されていなかったが。
しかもその後、その彼氏の事を同窓会で新一に惚気たと聞いた時には、卒倒しそうになった。
そして蛇の道は蛇、と言うか…昔取った杵柄と言うか…小五郎は今の新一の立場を何となく察している。
高校生探偵と持て囃されていた頃の新一や、眠りの小五郎と華々しく称えられていた頃の自分のイメージしか蘭の中にはないだろうが、本来「探偵」と言う職業は表に出るものではない。
それに探偵は守秘義務の塊のような仕事でもある。
蘭のように「言えないのは後ろめたい事があるから」と考えたり、相手の事を根掘り葉掘り訊いて知らなければ気が済まないと言う性格では、到底新一の伴侶は務まらない。
まして「探偵・工藤新一」を支えられるような知識も技能もないとなれば、尚の事。
そんな事を考えながらバス停までの道を歩いていると、新一を見かけた。
正直、目を疑った。
有希子に似て、子どもの頃からずば抜けて綺麗な容姿を持っていたが、今はそれに男の色気や実績に裏打ちされた自信を纏い、更にはどうやら何かの武道もやっているのか服越しにでも引き締まった体つきが見て取れた。
それ以上に驚いたのは、隣に居る女性。
幼い頃の面影は確かにあるが、美しく一人の女性に成長した灰原哀。
容姿だけとっても、蘭より遥かにお似合いに見えた。
何よりも二人の表情が、幸せな恋人そのものだった。
“ああ、成程”
新一の女性遍歴を小五郎は詳しく知りようがないが、恐らくそれは哀への想いを自覚していなかったか、或いは自覚はしていたもののその年の差故に否定したかったか…そんな所なのだろう。
だが、どうやら上手く纏まっているようだ。
これは近いうちに蘭は嫌でも、現実を…新一は蘭とよりを戻す気はないのだと知る事になるだろう。
と言うか、これまでの自分の新一への態度を少しでも顧みればそんな幻想など抱きようがないのだが。
これもまた小五郎は知りようがないが、彼が知る以上に蘭は再会後の言動で新一に愛想を尽かされまくっていた。
そこまで思い出して、小五郎はあの時よりも深い溜息を吐いた。
灰原哀の事はそこまで深く知らない。
だが当時預かっていた、子どもとは思えない知識量や落ち着きを持っていた江戸川コナンと同じ位、大人びて頭のいい子どもだった事は覚えている。
あの子がそのまま成長したのなら、それこそ何時まで経っても少女のような夢を見ている蘭より余程も新一に相応しいと思える。
小五郎はあの日見た二人の姿を蘭には伝えていない。
教えた所で、何が変わるとも思えなかったからだ。
もしこの事を知った蘭が泣きついてきたら、どう慰めればいいのやら。
「どうしたの?あなた」
以前よりずっと性格が丸くなり、穏やかな表情をした英理が声をかけてくる。
「新一が結婚するそうだ」
有希子からの手紙を手渡す。
「そう…漸く新一君についていける子が見つかったのね」
英理もまた、あの一連の騒動と、その後の蘭の男遍歴で娘に夢を見過ぎていた事に気付き、冷静に考えられるようになると、本来の聡明さで持って新一を正当に評価できるようになっていた。
「まぁ、あいつなら大丈夫だろうさ」
「そうね。それよりも蘭はどうするのかしら」
「暴走しなきゃいいんだがな」
二人は同じように小さく溜息を吐くと、有希子への返信を考え始めた。
**エルリア様の後書**
最初は新一と小五郎が直接会って話すシーンを考えていたんですが、新一が小五郎に蘭の愚痴を言う姿が不自然過ぎて、没になりました。
厳しめと言う程、辛辣な表現はなかったかな(私基準)
小五郎は園子程蘭のイタイ妄想を具体的には気付いてないんですが、「あ。これはヤバい」と言う風に思ってました。
だけど言っても聞かないのも解っていたので、娘が自分で気付くまで放置。蘭ももう、いい大人ですしね。
一度痛い目に遭えば、妄想癖が治るかもしれませんし。
色々万里様の設定とは違うかもしれませんが、楽しんで頂ければ幸いです。
**雪月花桜より御礼と感想**
エルリア様 素敵小説ありがとうございますヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
更に掲載許可快く了承頂き、感謝です。
万里様も掲載許可感謝でございます
それでは感想に行きますv( ̄Д ̄)v イエイ
非常に楽しく読ませて頂きました。
少ない情報からかなりの部分を悟りながら沈黙を守った小五郎、娘への夢の見過ぎがなくなり(また一緒に住むことによって等身大の娘が見えたであろう)新一を正当に評価するようになった英理と私のツボだらけでした。
流石 エルリア様(((o(*゚▽゚*)o)))
小五郎が沈黙を守った理由…私が書いた園子編と似ているのでは?と思いました。
つまり…指摘されたところで蘭は理解できないし、表面上は否定しながらも心の中では、「そんなはずないもの。皆分からないのね。」「私と新一は特別なんだから。」とか思ってそう。そしてそれを見抜かれているので言っても無駄と指摘してもらえない。
自分で気づくまで…と放置?見守り?されているお話ですね。
園子だけじゃなくて小五郎も知ってました事実…これ蘭が知ったら…また羞恥で死ねるレベルwww
今回私のお気に入りは、コゴエリは夫婦だし、お互い言い合っているから良いが新一と蘭は違うと小五郎が自分で気づけた点
(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪ そして英理が穏やかになり新一を評価している点です。
エルリア様 続き書いて下さいませんか-!(図々しいから ってか自分で書けや)って思ったくらいの作品です。
エルリア様 いつもいつも素敵小説ありがとうございますヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
今回も楽しませて頂きました。心よりの感謝申し上げます。
万里様!とても万里様ワールドと合っていると思うのですが…如何でしょうか(´∀`*)ウフフ
続き ございません?(悪魔の誘い)
エルリア様や万里様のお蔭様で食べログになりがちな(笑)当blogが華やかになり、嬉しい限りです。
こちらのガッチリ感想語りも楽しみにしております。
それではお二人に心からの感謝を捧げさせて頂きます(⋈◍>◡<◍)。✧♡
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最後に読んで下さった皆様へ
お楽しみ頂けたら幸いです。
感想・拍手頂けたらもっと感謝感激でございます(((o(*゚▽゚*)o)))
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