出会いなおし 後編~蘭編~
夢の絆シリーズ(コナン小説で逆行物 新志小説)の番外となります。時系列的には、瑪瑙石の輝き のずっと後です。
夢の絆 本編 番外編をすべてお読みになってからの方がより理解が深まると存じます。
下記注意書きをお読みになられてから、ご覧下さい。
***注意書き***
本シリーズ作品はRANちゃんには優しくありませんので、ヒロイン派 新蘭派はご遠慮願います。
後、本作品に出てきませんが、服部君にも優しくありませんのでご注意願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
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注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
「ねえ、蘭。ベルツリータワーの時のこと、どう思ってるの?」
園子にそう問われた時、蘭は来るべきものが来た、と思った。
蘭が謝ることを考えなかったわけではない。
出産前に、入院前にと謝罪文を出した。
けれど結局今までと同じく受取拒絶として封を切られることなく舞い戻ってきていた事実が彼女を臆病にした。
(読んでも貰えない。)
そして突然の再会。
手紙のことには一切触れず、昔のように接してくる園子にこれは不問にしようという彼女の思いやりなのか、もしくは手紙の存在自体知らないのか悩んだ。そして考えて考えて一つの可能性に思い至った。
(もしかして園子のご両親の意向で事件の顛末自体知らない可能性もある。)
蘭のことは遠方に引っ越ししたと言って、受験に専念させ、新しい大学生活、と多忙にさせて気をそらす…鈴木財閥なら可能だ。
(その場合、私が謝ったら園子に全部発覚してしまう。)
自分はいい、謝りたいのだから。
でも隠したいというのだとしたら財閥的に何か事情があるのか、それとも、気絶していたように見えた園子が実は何か目撃していてトラウマとかあったりしたのだろうか?と考えて、思考が迷路になっていた。
結局、蘭はその話題が出たら園子の反応を見て、知っているようならすぐに謝罪をしようと準備をしていた。
お守り代わりに園子と会う可能性がある時は、返送された謝罪文を持っていた。
だから園子から僅かながらも責める気配を感じて(ああ知っているんだ。)と思いすぐさま謝罪した。
「園子。本当にごめんなさい。私の考えなしの行動によって園子の命を危険に晒してしまって本当にごめんなさい。」
深々と頭を下げる。
「蘭…。」
驚いたように目を瞠る園子の顔が信じられないと言っており、信用のなさに泣きたくなるのがこれも自業自得。
この気持ちだけは信じてほしくて、例の謝罪文を差し出す。
「前は受け取り拒否されたけど…読んでくれる?」
自分の性格を知るからこその手紙。
(直接言えるなら言えっていうひともいるだろうけど…私は向いてない。多分感情的になるか、話が違う方向に行ってしまう。)
「え?読むけど…この手紙知らないわ。手紙くれてたんだ。」
「え?ええ?だって私島に来た時からずっと出してたんだよ!!」
最初のころは絶縁が嫌で半泣きと愚痴を、島で落ち着いてからは遊びに来ないかという誘いの言葉を、ホステスとして働いていたころは会いたいと綴った。
「1通も来てないわね。」
「そう、だったんだ。」
ほっとしたような、悔しそうな悲しそうな複雑な眉を下げた蘭の顔。
おそらく拒絶が園子本人でないことの安心と本人以外に伝達を拒否されたという哀しみと悔しさだろう。
(多分パパとママの意を受けた使用人の仕業 否 仕事ね。帰ったら聞かなきゃ。)
「とりあえず読ませてもらうわね。」
「うん。」
そこには丁寧な言葉で綴られた真摯な謝罪文があった。
(消印は8年前、か。)
言われたからではない、自主的に反省し行動をしていたのだ。ただその声が園子本人に届かなかっただけで。
(その事が嬉しい。)
成長、出来る人なのだ、蘭は。
(これなら親友でいられるかもしれない。)
嬉しさに視界がぼやける。
鈴木財閥のことだけを考えるなら蘭と親しくすることにメリットはない。新一のような能力・人脈があるわけではないからだ。
(けれどメリットだけ考える人生というのも虚しいし、何か人間として間違っている気がする。それに新一君の能力だけが目当てで付き合っているんじゃないし。)
ただ自分が鈴木家の当主である以上、損得なしの友人関係を維持する為には、甘い蜜を吸おうとする連中に付け込まれない人物であることが肝要。
「蘭、謝罪を受け取るわ。ありがとう。」
「園子!ううん ううん こちらこそありがとう!!」
「ねえ、蘭。私とこれからも友人でいたいと思う?」
「!?うん。勿論だよ。財閥的に厳しい?」
心配そうにこちらを伺う蘭。
「そうじゃないのよ。蘭はもうあの時みたいな視野の狭い正義感で空手という武器をふるったりしないって信じてるわ。」
手紙に書かれたことをそのまま読み上げる。
「じゃあ…。」
「ただね。鈴木財閥という背景を狙って甘いこと囁いたりする連中がいるのよ。一緒に事業しませんか?資金はお友達に貸して貰えばいいじゃないですか とかね。」
「私、そんなことしないわ!」
なるべく分かりやすい例を挙げる。
(蘭はおそらく言わないと分からないタイプ。ベルツリーの件はおじさんと時間があるから理解出来たのだと思うのよね。)
だが言えば分かるし、あらかじめ教えておけば、おそらく心構えは出来る。
(よっぽど巧妙な詐欺とかだと怖いけどね。あと…)
「一番怖いのが善意の人でね。
恵まれない子供の為に寄付を募るから、その道のプロのゲストでこういう講演会やりたいから、私の口利きで無料で会場貸してくれとかいう人いたわ。ホールってね2年先まで予定が埋まっていることもあるのよ。そこに他の予定入れるって大変よ。
そしてトップだからって何でもできるわけじゃない。
会場提供っていわば無償で貸し出すわけだから、会社のポリシーとその内容が合っているか、社会貢献内容を精査して役員会で可否しなきゃならない。
…それが分かっていなくて私なら簡単に出来るでしょ!?私は良いことしているんだから協力してよ!って感じでほとほと困ったわ。善意もあそこまでいくとね。」
苦笑いする園子。
蘭が一番やってしまいそうな具体例をあげた。
「そう、なんだ。」過去新一にやらかしてしまった善意の押し付けを思い出し青褪める蘭。
「個人的な善意ならともかく会社が絡むとお金そして人材…規模が大きくなるのよね。私は蘭がコネを利用して入社とかそういうのはしないって信じてる。でもね自分が正しいって信じていると人って簡単に暴走しちゃうものなの。そしてお金と会社があるとそれは拍車がかかる。…だからね私は蘭と友達でいたいと思っているけど、同じくらいの強さで私と…”鈴木園子”と関わらない方がいいかとも思う。そして友達でいたいと思ってくれるなら、その”覚悟”が必要なんだ。利用されない強さっていうのかな。」
「利用されない強さ。」賢さとも言い換えられるだろう。
「だから蘭も選んで。病院で会っている以上、そういう連中との遭遇率はとても低いけれどゼロではないから。」
(パーティーにはもう誘わない。きっとそれを蘭も分かってる。あれはギリギリ子供だから見逃されていたこと。)
散々、財閥的に付き合うのに相応しいかジャッジした身でなんだか蘭にも選ぶ権利がある。
危ないことから遠ざかる 平穏な暮らしを守るという選択肢だってあるのだ。
(私たちは対等、よ。)
「わたし…私は園子とし 友人でいたい…!」親友から友人へと言い換えた蘭。現実を顧みたのだろう。
(その成長が嬉しい。その気持ちが嬉しい。…もしまた何かあって切り捨てる時がきたとしても最初から諦めたくはない。)
「蘭、これからもよろしくね。」
「うん。こちらこそ。」
「あの、あのね園子。私がまた何かやってしまっていたら、今みたいに分かりやすく教えてくれてくれる…?」
わたし、多分言われないと分からないからと続けた蘭に園子は満面の笑みで答えた。
「まっかせなさい。園子様が教えてあげる。」
2人で顔を見合わせて笑う。
親友だから悪いことも言うと豪語していた高校時代に戻れた気がした。
ひとしきり笑い合った後、園子は覚悟を決めた。
(今の蘭なら大丈夫。新一君、例の作戦開始するわ。)
「蘭、おじさんのビルの件分かったわ。真実を知る”覚悟”はある?」
「え?嘘。」
園子の”覚悟”という言葉にその顔の真剣さに、それが本当なのだと知る。
咄嗟に嘘と言ってしまったがそれは驚きを示しただけでわかっていた。彼女が真実を明かそうとしていると-。
怖い。なんとなく分かっている。今謝ったベルツリータワーの件、あそこでの考えなしな行動が多分元凶なのだ。
最初、咄嗟に父に裏切られたと思ってしまったが、それは好きな男性が別の女性と一緒にいて脊髄反射で嫉妬してしまったようなものだった。よく考えれば、分かるようになっていた。
ひたとひたと真実が彼女を包みこもうとしていた。
(知りたい。でも同時に知りたくない。怖い。逃げれるなら逃げたい。でも逃げたら園子の友人とはもう名乗れない。)
なんとなくそんな気がしたから、丹田に力を込めて言った。
「うん。」
一週間後の日曜日。
大部屋の他の患者が退院し、小五郎が一人になって三日後に新一がお見舞いに来たのを蘭は園子とカーテン越しに見ていた。彼女らが隠れているのは他の患者用のスペースである。何も知らない人がぱっと見たら大部屋に二人入院患者がいるように見えただろう。
そこで明かされた真実。
ベルツリータワー事件での蘭の逮捕の可能性。
”工藤新一”を組織前に目立たせなくするためにされた、逮捕回避のための公安と小五郎の極秘の取引。
(ぜんぶ ぜんぶ 私のせいだった。お父さん、ごめんなさい。)
音もなく涙が溢れる。隣で手を握ってくれている親友の温もりが、優しさを感じる。
蘭は静かに泣いた。自分がどれだけ父に愛されていたかを知って。
蘭は音も無く嘆いた。自分がどれだけ父に負担をかけていたか 犠牲を払わせていたか知って。
ベットの上とはいえ「娘が済まなかった。父親として不甲斐ない。」と土下座する小五郎に慌てる新一。
昔のことだと言う新一に対し、「謝る機会がなかったから昔じゃあねえんだ。少なくとも俺にはな。」「けじめだ。」と返す小五郎。
(おとうさん おとうさん どうしてお父さんが謝るの。あやまらなきゃいけないのは私なのに。)
すぐに二人の間に飛び出して行きたい。
けれど園子との約束で二人-蘭と園子のことだ-はこの場にいない ことになっている。
何があっても声を上げたり割り込んではいけない。
そして新一が園子から聞いて、「もう毛利も大丈夫だし、おじさんも戻りたいと思って。」と公安のその取引期間残り2年間を交渉してくれたのだという。
(新一 しんいち ありがとう ありがとう。)
「後1月ほどで戻れます。こちらでの島での生活の方を選ばれるなら普通にテナント募集しておくと。」
「恩にきる…。がおめえ、お人好し過ぎるぞ。…どうすっかなぁ、家には帰りてえが、もう島での友人・知り合いのが多いしな。」
「よく考えて下さい。たまに泊まりに行く でもいいと思いますよ。」
「…能力があり過ぎだなぁ。…だからこそ蘭が勘違いしちまったんだろうがな。罪なやつめ。」
「それは…すいません。」
「はっ。おめえが謝ることなんざ、何もねえよ。出来たら一緒に酒飲みたかったなぁ。」
「それは流石におじさん入院中ですから…代わりと言っては何ですが、珈琲飲みません?」
「おっいいねえ。」
そう二人が連れ立って病院内の喫茶室へ行くのを蘭は黙って見送るしかなかった-。
真実が知りたいなら何があっても”いないものとして振舞うこと” それが園子との約束だからだ。
それはこの場を立ち去ったあとも と言われている。
つまり”知った”ことに対するお礼も謝罪も言えない。父にも新一にも。
それが蘭にとっては何より堪えた。
沢山の情報で飽和状態になり、知った内容が内容だっただけに嵐のような気持ちの中、親友の手の温もりだけが慰めだった。
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後書
読んで頂きありがとうございます!
前半が園子と蘭の友情復活 後半が蘭 真相を知る です。
新一と小五郎の会話はもっと長いのですが必要な箇所だけ抜き出した感じです。
いつかこちら側も書いてみたい。
『とある妊婦の独り言』で反応が少なかったので、戦々恐々としながら書いております。蘭の成長に説得力もたせないと…!('◇')ゞ
好きな男性が別の女性と一緒にいて脊髄反射で嫉妬はかの量子さんのことを念頭においてます。
彼女の話もいつか書きたい。
さていよいよ次回の終章で完結致します。どうなるでしょうか(´∀`*)ウフフ
コメントや拍手頂けると作者が狂喜乱舞ゥレシ━.:*゚..:。:.━(Pq'v`◎*)━.:*゚:.。:.━ィィして次なる作品のエネルギーにもなりますので、宜しくお願い致します(((o(*゚▽゚*)o)))