出会いなおし 終章
夢の絆シリーズ(コナン小説で逆行物 新志小説)の番外となります。時系列的には、瑪瑙石の輝き のずっと後です。
夢の絆 本編 番外編をすべてお読みになってからの方がより理解が深まると存じます。
下記注意書きをお読みになられてから、ご覧下さい。
***注意書き***
本シリーズ作品はRANちゃんには優しくありませんので、ヒロイン派 新蘭派はご遠慮願います。
後、本作品に出てきませんが、服部君にも優しくありませんのでご注意願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
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注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
ステラレタノハワタシヨ
自宅のあるビルのことだけではない。先程知ってしまった両親の離婚の真相をも蘭の頭を駆け巡った。
(園子以外誰もいないし、このままベットに倒れてしまいたい。)
蘭の為に愛しているのに別れたんでしょうと水を向けられた父が淡々と語った話。
「蘭がな。幼馴染におめえに、やたらと執着するのは俺たちのせいだ。俺たちは娘もいる夫婦だ。
それにお互いに言い合っている。夫婦だからこそのコミュニケーションなのに…蘭はそれが幼馴染だからこそと思っている。思い込んじまってやがった…!俺らと蘭の新一への対応は似ているようで違う。アレは依存だ。」
「だからですか?」
「ああ、だから別れた…。これ以上、蘭に間違った思い込みを続けさせるわけにはいかねえ。依存から自立させねえと思った。まだ”子供”な蘭を再び見捨てるなら離婚だと英理に叩きつけた。惚れた女に泣かれたのは辛いが、幼馴染でも思い遣りがなければ、壊れることはあると身をもって証明しねえと蘭がずっと新一、おめえに対して傍若無人なままだ。それも無自覚という一番性質の悪いタイプのな。」
「そうですか。でもおじさんおばさんのせいだけじゃないと思いますよ。俺や園子の両親という違うタイプの夫婦の形も観てたのに、自分に都合の良い考えを持ち続けたのは彼女自身です。それに何て言うかあの別居婚が一番お二人には向いてたんじゃないですか。
おっと余所様の家庭に口が過ぎましたね。」
「いんや、おめえにはそれを言う権利がある。一番その割りを喰らってた。俺らを復縁させるデートの下見だのなんだの。デートしたいだけならそう言やいいだけなのに。・・・そうさな、それもきちんと言っておくべきだった。」
苦笑した新一の気配を感じた-。
ステラレタノハワタシヨ
(私のせいだったんだ。お父さんとお母さんが別れたの。)
頭がガンガンする。空気が吸えない。
蘭の為とは蘭のせいとも云えるからだ。
(あの”お母さん”が泣いてたんだ。)
男社会で勝負する為、いつも気丈に前を見ていたあの母が-。
蘭のせいで-。
唐突に蘭は思い出した。島を出る際に母親にまた自分を置いていくのかと縋った自分に母親が囁くような小声で呟いた言葉。
聞かせるつもりはなかったと思う。けれどその時みょうに静かな間があったことと、蘭が風下に居たことで音を拾えてしまった。
ステラレタノハワタシヨ
(捨てられたのは私よ。)
聞いた当初は見知らぬ外国語を聞いたときのように意味が分からず音だけ拾っていた。
そしてたった今、その”音”は意味を持った。
(そういう、ことだったんだ。)
幼馴染婚した両親に新一を重ね、過剰な押し付けをしている娘。
小五郎が家出した後も英理と離婚せずに続いているから 幼馴染は何を言ってもしても許されるのだと一人娘が拡大解釈していた。父は母に、娘の誤解を増長する、それ以上の我儘は許さないと突き付けたのだ。
けれど蘭のせいで島に来る羽目になった母親はまったく順応出来ず、限界に来ており、泣きながら愛する夫と別れたのだ。
蘭のせいで-否-蘭の為に。両方、だろうか-。
「なんで今更こんな話した?まあ聞く権利は十二分にあるがな。」
「いえ、娘さんも結婚する可能性あるでしょう。もう大人なんですし、そういう危惧は直接話した方がいいかと思いまして。その将来の旦那さんに同じことしたら、また元の木阿弥でしょう。」
「子供いて四十半ばの女をか?そんな物好き男いねえよ。」
「またまた。一人娘ですから可愛いでしょう。…俺も可愛いですよ、娘って。おじさんが甘かったの分かる気します。」
「そう言ってくれるのか…。そうさな娘は可愛い。」
「俺も甘やかして妻に怒られているんですけね。でも妻がしっかりしているからこそ、心おきなく親ばかできるわけで感謝してます。俺と比べるとおじさんはおばさんがいなくて大変でしたでしょう。」
「良い嫁さん貰ったなぁ。…そうかな、娘に家事の負担を掛け過ぎて悪かったとは思うが。」
二人がとっくに立ち去った後でも何度も会話を脳内で反芻する蘭。
(確かに…新一の両親も園子の両親も幼馴染じゃない。でも有希子さんたちはラブラブでいつも一緒だった。園子の両親はお互いの存在を尊重しあっているような感じだった。政略結婚って聞いたし、そのせいか歳の差かなりあったけど、仲は悪くなかった。)
本当だ。何故自分は両親の幼馴染婚しか見ていなかったのだろう。
(他にも商店街の八百屋のおじちゃんおばちゃんみたいな夫婦とか名物夫婦だった角の洋裁屋のおばさんの旦那さんとか。)
(私が新一が好きで…そうなって欲しいって強く思って…そうあるべきだって思っちゃったのかな。)
「(娘のせいで夫に)捨てられたのは私よ。」
「惚れた女に泣かれたのは辛いが」
父母の声が何度も何度も脳内で再生される。
何があっても別れない、結局元の鞘に収まると信じていた両親を別れさせたのは他ならぬ蘭だった。
幼馴染を至上のものと信じていた二人の他ならぬ一人娘の自分が愛し合っていた両親を別れさせた。
子は鎹であるが、夫婦間に亀裂を入れるときもある。
それは青天の霹靂で先ほどのビルの話も含めて何もかも自分のせいでと茫然自失になった。
「お母さんごめんなさい。 お父さんごめんなさい。」
耐え切れず崩れ落ちる蘭を支える園子。咄嗟に近くにあったパイプ椅子に座らせてくれた。
”別居婚が一番お二人には向いてたんじゃないですか。”
新一の言葉を否定しなかった父。
(そうだったんだ…。そうだったんだ…!私一人相撲してたんだ。でもでも言ってくれてたら…!)
だが新一は気づいていたのだ。なのに娘の自分が気付かないのか。いやでもそんな大切なことをどうして言ってくれないの。
(でもどっちみち私は一緒に暮らしたかった。)蘭の中の小さな女の子が泣いている。それは否定出来ない。
親子であっても考えが一致するとは限らないのだ。それは今現在進行形で子育てしている蘭自身がよく分かっている。
だからこそ言葉を尽くし行動にし、自分の気持ちを分かってもらえる努力をすべきだった。
(お父さんはどれだけのものを私の為に犠牲にしてくれていたのだろう。)
感謝と申し訳なさが溢れてくる。
(お母さんも私を愛してくれていたんだ。)
それが蘭の望む形とは違っていたけれど。それでも英理は英理なりに娘を愛してくれていた。
だからこそ敏腕弁護士でその気になれば、回避出来たであろう離婚にも泣きながら応じたのだ。
蘭は産まれた時のように無防備に哭いた。自分が両親から注がれていた愛情を感じて-。
半年後、日本の工藤邸にて、江戸川コナンこと工藤新一は久しく開けていなかったファンレターの段ボールと格闘していた。
ここ1月でやっと終わった日本全国を巡るサイン会の為、妻と共に滞在中であった。
「読んでも読んでも減らねえ。いや有り難いんだけど…。そろそろ目が…!目が…!」
「何?バルスとでも言って欲しいの?…はい目薬。」
「まさかのジブリ…!サンキュー、志保。」
最近末っ子の影響で共にジブリ作品を観ている妻はこうやって言葉遊びをしてくる。
「一気に読もうとするからよ。少しずつ読みなさい。少しずつ。」
ファンレターを忙しなく捲る新一の手が止まった。
「どうかしたの?」
差出人が毛利蘭とある。
(本人か?それとも同姓同名の別人かな?)
今まで蘭の郵便物が新一の元に届いたことはない。薄々だが親と公安が手を回しているだろうことは感じていた。
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江戸川コナン先生様
初めまして。
名探偵コナン いつも楽しく拝読しております。
コナン君と愛ちゃんの息の合ったコンビが好きです。
先生と奥様がモデルと伺いました。お二人が理想のご夫婦と言われるのがよく分かります。
私も命掛けで愛ちゃんを守るコナン君のような旦那様が欲しいと思いましたが、愛ちゃんのように何も言わずとも見ただけで察する能力はないので、正直無理とも思います。
親友曰く、父と母のようなお互い言いたいことを言える人が向いているとのこと。
…話が逸れて申し訳ございません。
ただコナン君と愛ちゃんが理想の恋人同士であること、江戸川コナン先生の更なる活躍を期待していると伝えたくて、筆を取らせて頂きました。
かしこ
毛利蘭
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その手紙には両親や公安が危惧する新一への執着はもう感じられない。だから距離を置く毛利呼びは必要ない。
(良かった…蘭。)
「理想の夫婦か。ありがとう、蘭。」
これはファンレターの形を取ったお礼状だ。
きっと今の彼女は逆行前に好きになった太陽のような笑顔をしているだろう。
「何か良い知らせなのね?」
問いかけの形をとりながら確信した顔で聞いてくる妻。
”良い嫁さん貰ったなぁ”
(本当にな…。蘭もおっちゃんに似た良い男と出会えたらな。)
(読んでくれたかな?いや新一の手元に届いたかな?)
園子の例もあり、自分の手紙は彼に届かないようになっている可能性が高い。
彼にお礼が言いたくて仕方なかったが、あの場でのことは”なかったこと”。
そして”毛利蘭”から”工藤新一”への手紙は届かない可能性が高い。
最初サイン会に行こうかと考えたが、例のビルの2年短縮のことも併せて、今無理に会いに行くのは得策ではないと考え直した。
考え抜いた挙句、”江戸川コナン”宛てのファンレターを書いた。
編集者がチェックするならば、内容が問題なければ届くはず。万が一公安に読まれても危険視されるようなことは控えた。
初めましてと挨拶した意味-もう十年来の幼馴染を振りかざしたりしない。
コナンと愛が モデルとなった新一と奥さんが理想だと綴った本心の意味するもの-二人への祝福と憧れ。
他にも散りばめた真実の欠片たち。
(新一なら分かってくれる。)
ああ、また彼の察しの良さに甘えてしまっている。
でも今回ばかりは許して欲しい。
なかったことにされた以上、個人的に手紙が届かないであろう以上、こういう手段しか感謝を伝える術がなかった。
少なくとも蘭には思いつかなかった。
(お父さんまだ治療中だけど、まだどっちに居住するかは決めかねているけど、これからは好きな時に家に戻れるって目に見えて生き生きとしてる。今後の為に家具選んだりとかして楽しそう。新一のお蔭だね。)
おそらく新一もだが小五郎すらも蘭と園子の存在に気付いていたのではないか。
(あの話の内容は新一が私に聞かせるべきと判断したこと…多分私よりもお父さんの為に。)
巡り巡って蘭の為になっているところに変わらぬ彼の懐の深さと優しさを知る。
それならば感謝の言葉は言わずにおれない。
だがそれもこれも読んで貰えてこそ。
(届きますように。)
(何枚もファンレター書いては直していたものな。)
願う娘を横目で見ながら小五郎は思う。
過去を変えることは出来ない。
だが新しく始めることは出来るはずなのだ。
幼馴染という関係でなくとも、「初めまして。」でも「こんにちは。」から少しでも歩み寄る事が出来たらいい。
小説家とそのファンという蜘蛛の糸のような細い関係性で構わない、依存ではない関係性を築けたらいいと一人娘の為に願う。
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後書
読んで頂きありがとうございます。
序章で話した蘭ちゃんにはこれは無理だろうなと言っていた『初めまして』が言えました(手紙だけど)。
これは新たに人間関係を作り直す言葉の意味で使ってます。
作者の想像より蘭が成長してて驚きましたし嬉しかったですΣ(゚Д゚)
さてこれで夢の絆は一旦完結です。大ネタが半年で終わってほっとしてます。
ただ同じ話の別視点とかまだ書いていない小話とかは浮かんだら、ぽつぽつ書く予定です。
今考えているのは逆行後 蘭がまだ現実逃避中で出会ってしまい嫉妬心丸出しの姿をみた量子ちゃんの話。
エルリア様ご要望の平次のその後(正直私はあの後が上手く想像できないのですが…ネタとかありましたら是非書いて下さいませ)、皆様の反応がいい蘭一人がショックを受けるΣ( ̄ロ ̄lll)ガーンな厳しめ小話が候補です。
もしこういうの読みたいという希望がございましたらコメント欄にこそっと書いて下さいませ。
絶対書くとお約束は出来かねますが参考にさせていただきます
コメントや拍手頂けると作者が狂喜乱舞ゥレシ━.:*゚..:。:.━(Pq'v`◎*)━.:*゚:.。:.━ィィして次なる作品のエネルギーにもなりますので、宜しくお願い致します(((o(*゚▽゚*)o)))
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