天国と地獄
原作の告白放置のまま時が過ぎたら・・・という感じです。
単独でもお楽しみ頂けますが、『茨姫は棘だらけの寝台で』『異次元イルミネーション』『自らの蔦と棘で絡め取られて』『呪いが解けたその時には』を読んでからの方がより理解しやすいと存じます。
時系列で言うと『呪いが解けたその時には 』の蘭のバイト終盤からのお話になります。
作品は、カテゴリ欄のコナン二次小説 ”原作 その後”にございます。
この記事の右上の”原作 その後”をクリックしても飛べます。
***注意書き***
本シリーズ作品はRANちゃんには優しくありませんので、ヒロインファンはご遠慮願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
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注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
日本の某北欧風リゾートホテルにて-。
「ちょっと毛利さん。きちんと持たないと危ないぜ。」
「足元も気をつけてね。この家具、高いから。弁償なんてことになったらバイト代吹っ飛んじゃうよ。」
「は、はい!」
(なんで調理補助って聞いてたのに、こんな家具移動なんかしなきゃいけないのよ。こんなの男子の仕事でしょ!)
それは蘭が自己都合でバイト期間を延長したからであり、その際どんな業務でも手伝うことが条件だったのであるが、その事前説明を彼女は綺麗さっぱり忘れて去っていた。
本来の業務外の仕事なので、いつもさりげなくフォローしてくれていた優花もいない。よって心のもって行き場がない。
そうやって内心憤っているからか足元が疎かになって躓いた上、手が滑ってしまい自身の足に家具を落としてしまう。
「ヒェ────lll゚Д゚lll────!!」
(ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアエアアアアアアアアアアアアアイアアアアア)
思わずムンクの叫びのような顔をしてしまう。
痛さのあまり声にも出せず悶絶した。
「ちょっと大丈夫!?」
「だから言ったのに!」(ってすんごい顔しているっ おっかし!( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \)
新一と志保の新婚旅行の最初の行き先は北欧諸国で、夏のベストシーズンに山や港での絶景を楽しんでいた。
自然を堪能した若夫婦が次に訪れたのは都会であるノルウェーの首都オスロ。
知的な美男美女がノルウェー王宮から出てくる様は絵になる。
「まさか国王夫妻”偶然”会うとはね。」赤みがかった茶髪の美女が言う。
「ああ、びっくりだぜ。」黒髪の美青年が彼女を自然にエスコートしながら頷く。
(まあ王宮見学ツアーを口実に組織壊滅功労者の彼に面識持っておきたいって腹でしょうけど。)
「次は・・・ムンク美術館行くか。」
「えっとこっちかしら。」
「ムンクって言ったら有名なのは”叫び”か。」
「私あれあんまり好きじゃないのよね。特に周りの渦・・・。不安定な精神を表現しているって言うか。」
「確かに・・・観ていると不安になってくる感じあるよな。」
「彼の作品なら、肖像画とかの方が好きだわ。」
「美術館にあるといいな。あ、雑貨欲しいって言ってたよな。買い物先にしてくか?」
新婚の二人の仲睦まじい姿は大通りでそこだけスポットライトが当たっているようで、流れゆく人々の視線を集めていた。
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日本の有名なイタリアンチェーンレストランにて-。
「全く…!いくらお客様にお尻触られたからっていきなり空手をお見舞いする人がいますか!」
「だって…!」目を潤ませ私は悪くないと視線で訴える。当てるとこまでいってないし、今までならこれで何とかなった。
周りがなんとかしてくれた。だが-。
「だってじゃありません!お客様にも非がありますけどね。客商売でそんなことしたら、あっというまにお店の評判が悪くなるわ。
潰れたらどう責任取ってくれるの!!おまけにランプが壊れるわ、ピザが飛ぶわ…!最悪!!SNSの餌食だわ。」
相手は蘭に甘い小五郎でも目暮警部でもない。絶対的な味方だった新一も園子ももう傍にいない。
厳しい年配の女性相手では無意識に今までやってきた常套手段の目潤ませ作戦も一蹴された。
「明日から来てくれなくて結構よ。」
「あ、あのバイト代は…。」
「は?そんなのあの壊した備品代と飛ばしたピザ代に消えたわよ。備品新しく発注する手間まで増やしてもう!!さっさと制服返して帰って頂戴!!」
「そ、そんなぁぁぁ(´;ω;`)ウゥゥ」
ピザを飛ばした際についてしまったトマトソースを情けない思いで見下ろす。
(これクリーニング出した方がいいのかな。でも今すぐ返せって言うニュアンスも感じるし・・・それにバイト代出ないなら家で洗濯で勘弁して貰えないかなぁ?)
怒髪天の勢いの店主にそれ以上尋ねられず、だが帰ることも出来ないうろうろおろおろした蘭の姿は自分の非がないアピールにしか見えず、更なる雷が落とされることになった。
組織戦で親しくなったイタリア出身の捜査官らが是非にと誘ってくれたのはミシュランの星を持ってはいるもののカジュアルさも残した入りやすいお店で新一と志保は美味しい料理に舌鼓を打っていた。
店主が元警察官であり、元仲間の現役捜査官から詳しくは話せないもののとある作戦の立役者と紹介された才色兼備の二人をえらく気に入り秘蔵のワインを結婚祝いとして出してくれた。その上、店内にいる他の客にも新婚さんのお祝いだと熱々のピザが振舞われたことで店内は祝福ムード一色。
「buono!(ボーノ)」(美味しい!)
「buono!(ボーノ)」(素晴らしい!)
シェフがピザをぐるぐると空中に回し、拍手喝采。いつになく賑わっていた。
『ピザ回し凄いな。』
『ここの職人は国際大会で優勝したこともあるからね。』
『まあそうなのね。』
二人がイタリア語で話しているのも好感を勝ち得た理由だろう。
『さあ俺の奢りさ。じゃんじゃん食べな!』
『『ありがとうございます。』』
『次はどこ行くんだい?』
『ええと北欧と英国は行ったので、フランスとアメリカですかね。父からはもっと色々見ておいでって言われているんですけど。』
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日本の某アメリカハンバーガーチェーン店にて-。
「はい。不採用。裏口からお帰り下さい。」
「え?」( ゚д゚)ポカーンとしてしまう蘭だが「聞こえなかった?不採用だから帰って下さい。」と冷たく言われてしまう。
その多忙さゆえに体力と笑顔さえあれば受かるという評判の店での面接まで不合格。
(そんな…どうして?)
打ちのめされた蘭はのろのろと裏口に行こうとして迷ってしまった。
気づいたら休憩室の側にいて、さっきの面接官とバイトリーダーらしき人の会話を聞いてしまった。
「いくら忙しくたってあんなトラブルメーカー雇うわけないよ。」
「確かに。一発空手やられたらおしまいですよね。」
「バカッターとかいるから採用も気を遣う。」
「お疲れ様~あ、これ食べます?」
「サンキュ!食べる食べる。またやってるぜ。さっき面接したばっかりの毛利蘭の報道。」
報道に名前は出ていないが、一人娘・空手の経歴等のキーワードを元に蘭のことでは と既に自宅近くのエリアでは噂になっていた。
「親も探偵と弁護士のくせに無責任だよな。」
「むやみやたらに空手使うなって教えなかったのかね。」
(そんな・・・やり直そうとしているのに・・・悪いと思っているのに・・・そんなに責めなくたって。)
これで心が折れた蘭は客としてですら、この手のチェーン店には行けなくなった。
やがて何を言われているのか確認する為に手を出したSNSで悪意の塊に晒され、何処に行っても何をしても責められる、見張られていると思い、怖くなって引きこもりという名の地獄が始まった-。
「坊や、よく来たな。歓迎するぞ。」
「クールキッド!・・・いいえ クールガイ!ようこそ FBIへ。」
両手を広げ、満面の笑みを浮かべた赤井・ジョディを筆頭にFBIでは熱烈な歓迎を受け、もみくちゃにされた。
そしてやれ自由の女神だ、クルーズ船で川下りだ、一流レストランのステーキだと思いつく限りの観光コースを満喫したのであった。ちなみに運転手は言わずと知れたキャメルである。
赤井がアメリカ人の如くオーバーリアクション、全身で歓迎を示すので二人は目を剥いた。
(ジョディ先生はともかくはっちゃけた赤井さんって新鮮だ・・・・!!組織潰して何か吹っ切れたのかな?)
「ねえ?あの彼、誰?本物?ベルモットが化けてない?」
最後に会ったのが明美の墓参りで沈痛な面持ちであった為、ギャップが凄い。
「志保、気持ち分からないでもないけどよ。」こそこそ話す二人。
そろそろ帰国しようかと言う時に「鈴木財閥のお嬢ちゃんから是非ともハワイの別荘に招待したいとわざわざFBI本部経由で連絡きたぞ。ホノルル行きのチケットまで預かっている。」
「あ、携帯新しくしてから教えてなかった。」「新一、貴方また・・・。」
「それでか。」と肩を竦める彼は相変わらず大人の色気に溢れていて羨ましいと思う新一であった。
「じゃあハワイ行くか。」
「そうね。お義父様やお義母様ももっとゆっくりしておいでって連絡入ってるし。」
空港に若夫婦を送って行き飛行機が飛び立ったのを見送って「これでよし。彼らが日本の報道を見る事はまずない。・・・降谷君頼んだぞ。」と呟いたことを二人は知らなかった-。
オワフ島のホノルル空港から車で約1時間半。観光客でにぎわうワイキキのショッピングエリアから少し離れた場所にあるエメラルドグリーンに輝く美しいラニカイビーチに鈴木財閥の別荘はあった。
「いらっしゃい。新一君、志保さん。」
「おう、園子。招待 Thank you!海、流石 ラニカイビーチなだけあって綺麗だな~。」
「お招きありがとう、園子さん。素敵な別荘に綺麗なビーチね。」
「いえいえ。ごめんね 新一君。私、蘭の味方ばっかりしちゃって。・・・これはそのお詫びもかねて。」
「それはもういいって言ったろ?」
「そうよ。園子さん。既に謝ったじゃない!?」
「うん。でも私の気が済まないというか・・・お祝いね。ここの棟、全部貸すから思う存分いちゃついて頂戴(´∀`*)ウフフ」
「「ちょ、ちょっと園子(さん)(〃´∪`〃)ゞ」」顔を見合わせて赤くなる二人。
「1週間くらいはいられるんでしょう?」
「ああ なんかどんどん帰国予定延びているけどな。」「ええ」
「じゃあ私、隣の棟にいるから。何かあったら声掛けてね。」
隣の棟に園子が移動した途端、彼女は明るく新婚を冷やかす雰囲気を捨て去った。
真面目な横顔になり「良しっと。これで新一君は蘭の報道を眼にしないわ。」と呟いた。
(別荘のあの棟のテレビは地元のしか放映されない。)
蘭の味方ばかりして同じ幼馴染のはずの新一をないがしろにしてしまった自覚がある。
新一が社会の闇というべき存在と闘っていたことも知った。余計に罪悪感が募った。
その後悔を知っている園子の父親が新一の父である優作経由で”毛利一家の報道に新一と志保さんを巻き込みたくない。本当に悪いと思っているなら協力してくれないか?”という話を娘に持って行き、園子はそれを快諾したのだ。
”本当なら、探偵を目指すなら、障害となるべきものを自分で切り捨てる冷徹さも持たないといけないのだけれど・・・あの子を早く一人暮らしさせ過ぎた私達にも責任あるし、周囲がそんなに煽り立てるのも計算外だったし、それゆえにあのお嬢さんの思い込みがあそこまで激しくなるのも常識外だったしね…。あの子の優しさや忍耐が裏目に出るとはね。ただ短所をあげつらねて長所を潰してしまう方が怖い。結婚祝いだと思って二人には知らせない内に処理しようと思ってね。”
そんなに煽り立てた周囲の筆頭が自分だ、と苦い思いを噛み締める。
(確かに新一君なら、心を痛めるでしょうし、下手すると蘭を助けようとするかも。)
でもそれは蘭の為にもならない。新一と蘭の道は別れた。もう彼の助けなしで蘭は人生を歩んでいかねばならないと思うのだ-。
新婚の二人はビーチで空港で咄嗟に買ったハンバーガーを齧っていた。
「ほっとする・・・。」
「そうね。皆が歓迎してくれたのは嬉しいんだけど、外でばっかりだとちょっと ねえ。」
有名レストランを食べ歩いていたような気がするのは気のせいではない。気づいたら誰かしらに連れられていた。
日本にも店舗展開している何気ないハンバーガーがこんなに美味しく感じられることもそうない。
「景色もいいしな。」
「ええ、ずっと見ていても飽きなさそう。」
ハワイ語で「ラニ(天国)」、「カイ(海)」という意味をもつラニカイビーチは、「全米で一番美しいビーチ」と称されている。
その名の通り天国のような美しい海に白い浜辺、気兼ねなく食べられる軽いランチ、そして隣には最愛の人。
「新婚旅行の最後の場所には最高ね-。」
「そうだな。」
静かにゆったりと流れる時間の中で自分達を癒す空間に二人は身を委ねたのだった-。
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後書 22万hit企画で先月書いた『お伽話のその裏で』というお話でエルリア様が感想コメントで”新志の二人がラブラブ新婚旅行&新婚生活を送っている間に、蘭、というか毛利家が地獄を見ているかと思うと、思い出し笑いが(鬼畜)”と書いておられたのに触発され、対比小説を書いてみました。エルリア様 アイディアありがとうございました(≧▽≦)
毛利一家と言うより蘭ですが(^^ゞ こういう対比小説大好きなんです(´∀`*)ウフフ
乙嫁物語で双子の結婚で父親同士(というか男性陣)が結納金でバトルってるのに、母親筆頭の女性陣が楽しそうにお茶しているお菓子食べている わちゃわちゃしている とか大好きで・・・><(って読んでない方には分からないネタすみません。)
時系列で言うと『呪いが解けたその時には』の蘭のバイト終盤からのお話になります。
天国と地獄お楽しみ下さい。
読むと分かりますが出て来る象徴的なモノ(北欧/ムンクの叫び・イタリア/ピザ・アメリカ/ハンバーガー)は一緒だけれど真逆な境遇 そして最後にはばっきりと別れます。その落差をお楽しみください( ̄ー ̄)ニヤリ
新志の新婚旅行 書いてない英国編、フランス編 どなたか書いて下さいませんか~(笑) 大募集中でございます!><
コメントや拍手頂けると作者が狂喜乱舞ゥレシ━.:*゚..:。:.━(Pq'v`◎*)━.:*゚:.。:.━ィィして次なる作品のエネルギーにもなりますので、宜しくお願い致します(((o(*゚▽゚*)o)))
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