忘れ雪 ~ 夢見る少女29歳 焦りの婚活の果てに ~夢見る少女異聞~
『夢見る少女の長い夢』という万里様からご提供頂いた新哀話の続き ないしは裏話です。
つまり、「夢見る少女シリーズ」の派生話♪
万里様の設定のまま雪月花桜が書きました。
つまりコラボ小説ですかね( ◠‿◠ )
どうぞ、お楽しみ下さいませ~°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°
***注意書き***
ヒロインには優しくありません。厳しめですので、彼女のファンの方は此処で周り右願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
*************
注意書き読まれましたね?
ヒロインファンはリターン下さい。
新哀話です。
それではどうぞ↓
結婚したら、幸せになれると思っていた。
結婚出来たら、幸せになれると信じていたの。
なのにどうしてこんなにさみしいのかな?
心に大きい穴が開いているのかな?
子供がいたら違ったのかな。
子供が出来たら幸せになれるのかな?
足早に歩きながら目指すのは、田舎では珍しく名の知れた一流ホテル。
高校卒業して以来、何度目かの同窓会。
帰省中の人達の為に家族と過ごすであろう1月1日、早い仕事始めの人を考慮した1月4日を除く1月2日か1月3日にやるのがいつの間にか恒例になっていた。
今年はカレンダー上で1月3日までの休みとなっている為、1月2日開催となった。
無論その母校は、東都の帝丹高校ではない。
蘭の祖父母である英理の両親と今は毛利夫妻も住んでいる、東都からは遥か遠く離れた小さな街の公立高校である。
このために帰省前に美容院にも行ってきたし、身に纏うのは上等な布地のお洒落なドレスにオーダーメイドの靴。
蘭はホテルの磨きこまれた透明な窓ガラスに映る自分の姿に、満足げに頷いた。
扉を開けると紅く重厚なカーペット、大きく豪華な花瓶にセンスよく活けられた花、丁寧に頭を下げてくるホテルのスタッフたち。
非日常の華やかな空間に身綺麗にしているだけでない高揚感が身を包む。
「みんな、久しぶり~。」
「蘭、久しぶり!」
高校3年生時の級友に声を掛け、話が弾む。
「蘭の旦那さん。お医者さんで稼ぎがいいんでしょ?いいなぁ。うちなんか安月給で。」
「そうそう。今日のドレスもフサエブランドのだよね。素敵。」
「そんなことないよ~。」
照れ隠しで思わず否定してしまうが内心は得意満面だったし、賞賛の言葉を渇望さえしていた。
そうでなければ癒されないほど蘭は追い込まれていた。
残り少ない20代最後に焦って、精一杯おしとやかに振る舞い、何とか纏めたお見合い話。
次男で大病院に勤める医師。年上で寛容でもあり、これで蘭は幸せになれると信じて疑わなかった。
父親は医者の”患者を優先”という姿勢が、常に構ってほしい娘には合わないのではないかと思って一言述べたが、本人が乗り気で止められなかった。
相手が年上で包容力がある男性だったこともあり、結局嫁に出すことになった。
(まあこれも人生経験だ。案外上手くいくかもしれねえしなぁ。)
それは甘い憶測と言うべきか、娘の幸せを願う父親の祈りだったろう-。
最初は優しくてリッチな彼と結婚出来て、幸せ絶頂だった。
結婚式は園子と新一が来てくれなかったのだけは残念だがお祝いの電報はくれたし、豪華絢爛の式で美しい花嫁になれた幸せに酔っていた。
だが新婚時期が過ぎると、そこにあるのは当たり前の日常生活。
専業主婦であるし、夫が忙しいので新しい人間関係を築こうとして、夫の仕事関係の奥さんたちの集まりに参加するも皆同じ医者の妻。医者の妻であることは自慢にならないし、むしろ妻自身が同じ医者だったり看護婦が多くて、話題についていけない。
帝丹の同級生相手だとそれなりに敬意を払われるが、元々良家の子女子息が多い学校なので、園子のような実業家、医者、弁護士などもともと経済的地位の高い人らが多いので、それほど特別視されない。園子とはそもそも疎遠になっていたのも孤独を深めた。
蘭が医者の妻であるステイタスを感じられるのは、ご近所の奥様相手か帝丹ではない同級生相手くらいになっていった。
お正月やお盆などの親戚の集まり、結婚記念日のデートでも急患が出るとすっ飛んでいく。
仕方ないと堪えて笑って見送るものの、徐々に不満が溜まっていった。
母や幼馴染を見送った時との悲しさや寂しさを思い起させた-。
(幸せ なはずなのに-。)
そして子供。健康だった蘭はすぐに身籠れると何の根拠もなく思っていたが、結婚3年目に入っても妊娠の兆しはなかった。
金銭的には豊かだけれど、退屈な日々。夫との時間も少ない。
時間があればあるほど子供さえいれば、と自分で自分を追い詰めていく蘭。
夫は子供は無理に作らなくていい。出来れば嬉しいが出来なくとも一緒に過ごそうと声を掛けたが、それは届かなかった。
不妊治療にのめり込む蘭は、協力を渋る夫を詰り始め、二人は上手くいかなくなっていた。
そんな小さな不満・不平が降り積もっていった或る日、決定的なことが起きた。
夫が嬉しそうに赤ちゃんグッズを見ながら、同僚とネットで楽しそうに話していたのである。
画面上でも盛り上がる研究者仲間らしき人達。
「我らがプリンセス 哀嬢がめでたく懐妊!何贈ろうか?」
「ベビーカーとかどうだろうか?」
「いや第二子だから…。第一子の子がそろそろ4歳だろう?そのまま使うんじゃないか?」
「あーあの工藤優作氏が贈ったっていう丈夫そうなベビーカー!」
「そうか。だったら違う物がいいかな。おむつケーキとか?」
「消耗品もいいがやっぱり形に残るものもいいな。」
哀、工藤優作 その単語だけで蘭には分かった。
新一と結婚し渡米した哀が妊娠したのだ。しかも二人目。
(私は一人もいないのに。)
しかもどうして夫たちが彼女を祝うのか。不妊治療している妻(わたし)に対してあまりにもデリカシーがない。
どず黒い想いを抱え込みながら、ネット通信を終えると同時に夫に聞いてみる。
「ああ、母校と共同研究している工藤哀嬢はこの写真の彼女だよ。愛妻家で有名な旦那もちだから心配いらないよ。薬学で一躍置かれているんだ。成果に時間が掛かる薬学においても結果が目覚ましくて、未来のノーベル賞候補なんだよ!例えば――」
パソコン画面で最近のスナップ写真であろう、新一と哀と小さな娘の写真を見せられて、夫の声が、途中からうまく聞こえなくなった。
どうして新一に愛されて美しくなってそんなに幸せそうに笑っているのか。
どうして子供に恵まれて、その上仕事まで成功し夫を始めとする医者達からも敬愛を一身に受けているのか。
(哀ちゃんなんて、ちょっと可愛いだけのちょっと賢いだけが取り柄の子なのに。)
出会った頃のままの感覚のまま、心中で呟く。
新一を奪われた屈辱の結婚式が脳裏をよぎる。
実際はそうではなかったが、蘭にしてみれば、哀が新一も子供も夫もなにもかも取っていくような感覚に捕らわれてしまっていた。
(どうして哀ちゃんが何もかも、もっていっちゃうの?)
だが理性ではそれは言い掛かりと分かる為、吐き出せない。更に暗澹たる気持ちを抱えることになった。
「わぁ~雪降ってきたよ。」
「本当だ。冷えると思ったら。」
暖かいホテルの部屋からは見えるのは降り始めた雪。
これまでの事が蘭の脳裏に過る。時系列はばらばらに-。
『寂しい』「今忙しい」
『必ず掛けるって言ったじゃない!私待ってたのに!』 「急患が入って…。仕方ないだろ。」
(私のこと、仕方ないんだ…。)
雪景色が涙で滲む。わたし以外みんな幸せみたい。
(嫌なことはみんな雪に消えてしまえばいい)
なかったことにする 考えない それは母親が出ていった時から身につけた自己防衛手段。
蘭は同窓会で幸せな裕福な医者の妻を演じることで自分を保っていた。
そうあれる場がもうこの同窓会しか思いつかない辺りで限界が近づいてきているのを蘭自身がまざまざと感じ取っていた。
(せめてこの場だけでは幸せな若妻でいたい。)
「自分は医者です。患者さんを優先させるので、奥さんには淋しい思いをさせてしまうかもしれません。ですので家庭的で包容力のある女性を求めています。その代わり衣食住には絶対不自由させません。」お見合い時に真っ直ぐに真実を告げた夫。
『大丈夫ですっ!私待つの慣れてますから!』
「医者ってのは患者がいたらすっ飛んで行くぞ。探偵が事件があったらすっ飛んで行くようにな。…本当に待っていられるのか?」
心配そうに聞いてきた父。
『平気よ!新一と違って家には帰ってくるんだもん!』
「結婚ってのはね、他人が一緒に長く暮らすものなの。蘭にはもう少し一緒にいられる職業の人の方がいいんじゃないかとお母さん思うのよ。」事務員でなく医者だと聞かされ、娘には合わないと断ろうとした母。それを会うだけと押し切ったのは蘭だった。
『お母さんがみたいに病気するまで家出してた人に言われたくないよ!私そもそも家出なんてしないし。』
「蘭は思い込みが激しいよな。」看護婦との仲を疑った自分に呆れたように言う夫。
「子供作るだけが幸せじゃねえぞ。」宥めるように言った小五郎。
「何か仕事をしてみたらどうかしら?」時間があるのだから余計なことを考えてしまうと提案してくれた英理。
…もう、分かっていた。
結婚さえすれば幸せになれると信じて 否 20代の内にと焦り、自身の性格に合わない職業の男性を選んだのは過去の私。
そして両親の忠告も受け容れず、夫の言葉の意味も深く考えず、突き進んでしまったのも私。
(どうしてあんなに焦っちゃったのかな。)
”自然な出会い”に拘っていた蘭がなりふり構わず、お見合いしまくったのはあの時だけ。
20代の内にという希望も婚活市場での女性の価値という計算もあっただろう。だがそれだけではない譲れない何か。
蘭は気付いていないがそれは-。
哀を選んでしまった新一に幸せな自分の姿を見せつけたい-、遠くに行ってしまった園子にまた近づきたい-。
それには二人と同じくらいの”幸せ”と”ステイタス”が必要だ という無意識下での思い込みとそれ故の行動。
勘違いに気付いた。反省もした。だから、もう一度だけでもあの頃のように3人で無邪気に笑いあいたい。
それくらいはいいでしょう。もう一度だけ機会が欲しい-。
静かで切実な願いが奥底に渦巻いていたことを本人も知る由もない-。
結婚したら、子供が出来たら、幸せになれるのでない。
幸せはきっと二人で築いていくもの。
ふと新一の為に渡米を止めようとした哀とその彼女の心境を見抜いて一緒についていった新一を思い出した。
譲り合い、お互いを尊重し合う。多分それが出来ていなかった。
それでもどうしても考えてしまう。子供さえいたら、自分の愛情の注ぐ先もあって夫婦間でも、もっと会話があったのではないか-。
(やり直せるだろうか。)
不妊に悩んでいる妻の傍らで哀への贈り物を楽しそうに選ぶ夫に心が砕けてしまっていた。
夫にはそんな気持ちはないだろう。元々、人は人 他人は他人が信条の人だ。きっと深く考えてはいないけれど-。
(それでも許せないことはある。)
でも離婚しても更に失くしてしまうだけな気がして動けない。
もっと降ってほしい。何もかも雪で真っ白になるほどに深く-。
「うわっ!吹雪いてきたよ。」
「寒そう~。二次会はやめておこうかな。」
幸せな若奥様を演じながら「もっと積もればいいのに。」誰にも聞こえないように小声でひっそりと呟く。
全部、ぜんぶ 白い雪で覆いつくしてほしい-。
**後書**
新年明けましておめでとうございます。 2022年初めての小説で舞台となった1月2日にアップでございます♪
題名の忘れ雪は 深々と降り積もる雪を見て、思い出を忘れようとする悲しい心情です。
なんかえらく悲しい話になってしまいました あれ?(自分でやっておいてからに)
ただ30歳前に婚活に焦る、条件で選んでしまい感情がついていかず とか意外にあるあるだと思います。
で空手も出ないし、そういう意味では蘭ちゃんフツーの女性の巻ですね。
以前からどれかのシリーズで、書きたいと目論んでいた”薬学でノーベル賞候補ネタ”と”同窓会ネタ”が使えて嬉しいです。
実は夢の絆で夫婦Wノーベル賞受賞とかちょっと考えていたんですよね。(新一伝説が新たに築かれる(笑))
前話 夢見る29歳少女の気づきで下記アンケートをしたところ、医者ネタに票が集まりまして、創造主である万里様に許可を求めたところ、”是非とも書いて下さいませ、お願いいたしますm(__)m”と快諾頂けましたので、本作品が出来ました。感謝です。
万里様 ありがとうございました。また素敵な長文感想(笑)をお待ちしております。
**********アンケート時のネタ一覧****************
30歳になる前にどうしても結婚したい蘭のお話。
・お見合いでエリート男性と話は纏まるものの、夫に側にいてほしい蘭に合わない男性(医者・研究者などハイスペックだけど自宅にあまりいない)をつかまえてしまい上手くいかず離婚。
しかも医者ネタの場合、薬学の権威となった若き天才 哀ちゃんを絡ませることが出来るという( ̄ー ̄)ニヤリ
・焦り過ぎて、ダメンズに引っかかり(一滴の水の歴代彼氏かいっ!)、結婚。
尽くす女性である自身に酔うも、長く続けられるはずもなく見兼ねた毛利夫妻(主に弁護士である英理かな)によって離婚。
・婚活中に色々あって(一度断った相手に助けてもらい惚れるとか)、運良く合う男性と結婚し、地に足のついた生活を送る。所謂お約束のハッピーエンド。
**************************
アンケート時に医者ネタとご回答頂きました 秋乃様 エルリア様 明日美様(回答順)もありがとうございました。
題名の婚活ネタというより、その後の結婚生活から離婚寸前ネタがメインになってしまっておりますね💦
明日美様 万里様にコメントを展開してもよろしいかご回答頂けたら幸いです。
感想・拍手頂けたら、感謝感激でございます(((o(*゚▽゚*)o)))
このお話の続きとか小話なぞ頂けたら小躍りします(/ω・\)チラ
それではまた(*´▽`*)
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