初恋の魔法が解けても
夢の絆シリーズ(コナン小説で逆行物 新志小説)の番外となります。
時系列的には、夢の絆①~幼い恋の終焉~の直後から2ヵ月先の話です。
夢の絆 本編 番外編をすべてお読みになってからの方がより理解が深まると存じます。
下記注意書きをお読みになられてから、ご覧下さい。
***注意書き***
本シリーズ作品はRANちゃんには優しくありませんので、ヒロイン派 新蘭派はご遠慮願います。
後、本作品に出てきませんが、服部君にも優しくありませんのでご注意願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
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注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
小さい頃から一緒にいた幼馴染との恋。彼も自分と同じ気持ちだと信じてた-。
(なのに…。なんで…?なんでなのぉ、新一ぃ。)
最初の変化は迎えに行ったときの冷たい態度。
「もう!新一がぐずぐずしてるから私まで遅刻しちゃうじゃない!!」
「わざわざ迎えに来てあげたのに!」と怒りのあまり足音をわざとドスドスと立てながら、先へと歩いていく。
(こうしたらすぐこっち向いてくれるもの。)
「じゃあもう迎えに来なくていいよ。」冷静さを通り越して冷たいとすら感じられる新一の声が遠くに聞こえた。
「え?・・そんな・・こんな事で、本気で怒らなくても。」
いつものじゃれ合いのつもりだった蘭は、毎度のやりとりが出来なかった事に、愕然としながらも一緒に登下校したいが故に言い募る。
「別に怒ってない。迎えに来るのが面倒なんだろ?じゃあ、いらねえよって話なだけだ。頼んでねえし。今までサンキュ!」
その時の機嫌が悪かっただけと、自身を誤魔化した蘭だったが、新一の距離を取った態度は変わらない。
次は蘭につれない新一を見兼ねた園子が新一に食ってかかってくれた時。
それに対応した彼の言葉は、態度は今までと全く違っていた。
”「何で俺が蘭を構わなきゃいけない前提で話をするんだ?」”
”「俺は誰とも結婚した覚えねえ。蘭に告白した事も告白された事もない。」”
”「あのなあ、園子。幼馴染ってだけで世の中結婚するやつばっかじゃないんだぜ?」”
”「それに幼馴染ってだけで恋の対象になるんなら、男と女の数合ってない時はどうすんだよ。園子だって幼馴染だろ?」”
必死の形相で言い募る園子に対し何処までも冷静な新一-。
(いつもの新一じゃない…!どうして?どうしてなの?)
「・・お互いに恋人出来た時に誤解されたら困るな。当分、別行動しようぜ、”毛利さん”。」
「し、しんいち。」
涙まじりに彼を呼ぶも振り返りもせずに去っていってしまった。
心配した園子は、「蘭から告白しちゃいなよ!」とけしかけてくる。
(あんな冷たい新一に言えるわけないじゃん!!それに男子から言うべきじゃない!)
新一にぴしりと言われて園子もクラスメイト達も、夫婦等揶揄う事はなくなった。
否、彼の静かで大人びた雰囲気に出来なくなっていた。
二人の仲を応援してきた園子さえ、囃し立てくれない。
(そういう雰囲気になってくれたら私だって素直になれるのに。)
「やだ。私と新一はそんなじゃないったら!」
「あんな推理オタクなんて何とも思ってないってば!」
咄嗟に口から出るのは憎まれ口ばかり。
けれど、蘭と恋人同士ではないと噂された彼には告白ラッシュが続き、蘭は傍目から丸わかりなほど、落ち込んだり、般若の顔になっていた。
時には、無理やり割って入る様なことすらあった。
「毛利さん、工藤君の彼女じゃないんでしょ!?邪魔しないでよ。」
「そんなじゃない」「幼馴染だから」と言い訳しつつも新一に近づく女の子達には過剰に反応してしまう。
気づいたら涙目で彼をじっと見ていた。
(新一、私はここだよ-。ねえ、こっちを見てよ-。構ってよ-!私を見なさいよ-!)
今までだったら察して駆け寄ってきた彼は見えない透明な壁が出来たかのように一顧だにしてくれない。
「最近、園子あんまり新一との事言ってくれないよね。まあいいんだけどね、あんな奴。」
「でもやっぱり推理オタクのアイツには私がついてあげなきゃ。」
「蘭、新一君が好きなら素直にならないと、誰かに取られちゃうよ!?」
「そんなんじゃない。別に好きじゃないもん。あんな大馬鹿推理の介。」
「…好きな人を貶すのってよくないと思う、蘭。…それが照れからくる憎まれ口でも度重なると失礼だよ。」
(新一君がいつまで許してくれるか分からないよ、蘭。)
「どうしてそんな事言うの?私達親友でしょ。園子!」
(新一なら分かってくれるもの!園子もどうして!?今まで同意してたじゃない.!!)
癇癪を起すかのように、泣き出す蘭。
「園子は京極さんと上手くいってるからって。」
「もういいわ。でもそうやっている限り、事態は変わらないと思うよ。」
呆れたように溜息つき、先に帰ってしまった親友。
新一もおらず、一人きりの帰り道。
(どうして…?園子まで??いつもだったら園子、新一に言ってくれてたじゃない。事件より蘭を優先させなよって。)
遠くなってしまった距離を何とか縮めたくて、蘭は工藤邸にかつてのように家事をしに行くことを思いついた。
新一の好きなおかずを作ろうと材料を買い、ちょっと重いビニール袋片手にいつものようにインターホンを押す。
「はい。」
「新一、私よ。どうせろくなもの食べてないんでしょ!作りにきてあげたわ。」
敢えて笑顔を作り明るく話す。その勢いで新一の家に入れるように。
「…頼んでない。」
小声の言葉は聞こえなかった。
「は?何よ?いいからさっさと入れてよ。重いんだから!」
「だから毛利さんにそんなこと頼んでない。気持ちだけ貰っておく。要らない。それと勝手に俺がろくなもの食べてないとか決めつけないでくれないか。…もうすぐ客が来るので、そこに居られると困ります。帰って下さい。」
決して声を荒げたわけではないし、内容は常識的。優しささえ感じられる声なのに、その声音の静かさが氷柱となって蘭を貫いた-。
(もうりさん、なんて。なんでそんな他人みたいな呼び方なの?いつもみたいに蘭って呼んでよ。)
(こまります? かえってください??)
蘭が工藤邸で我が物顔で振舞えたのはそれを許容していた新一の存在あってこそ-。
それがなくなり、どうしていいか分からず途方にくれた蘭は一人、開かない工藤邸の門の前に棒立ちになった。
(前回みたいに玄関先で空手やられたらかなわねえ。スルーするしかないな。)
察してオーラは出すくせに、こちらの意図は察しようとしない。いや、察しないどころか口で言った距離を置こうにも、家に来ないでくれも都合よく耳から耳へ抜けているようだ、と新一は小さな溜息をついた。
「おっちゃんに電話するか。」
(早く迎えに来てもらおう。)
蘭のやらかしで小五郎と妙に仲が良くなったのは嬉しい誤算だったりする。
(コナンじゃねえから、もう接点ねえと思ってたけどな。…毛利がいねえ空手試合の日にまたポアロで一緒に飯でも食いに行くか。)
(なんで…?なんで家に入れてくれないのぉ、新一ぃ。)
小さい頃から一緒にいた幼馴染との恋。彼も自分と同じ気持ちだと信じて疑ったことがなかったのに-。
その初恋がまるで魔法が解けたようになくなっていくのを蘭は感じていた。
(どうして…?私何も変わってないのに。何もしてないのに…。なんで新一は変わっちゃったの…?つめたくなっちゃった、の?)
自分が変わらずとも、相手が変わってしまったならば今までは通用しない。対応を、自身を変える必要がある-。
だが認められない。今までの強固な絆が夢のように儚いなど、魔法のように解けてしまうなど認められるはずがない。
きっと前のように笑いかけてくれる、蘭はそう信じていた。そう思い込んでいた、そう思い込みたかったのだ。
だが事態は一向に好転しない。途方に暮れた彼女は昔の彼のみを追い求め、今までと同じ言動を繰り返すのみ。
憎まれ口を叩き、涙目で彼をじっと見て、押しかけて面倒をみる-。
繰り返せば繰り返すほど、彼の心が離れていくとも知らずに-。
この時気づけば、まだ新一とは 幼馴染 ではいられた。恋人にはなれなくとも。
園子とも 友人 でいられた。親友ではいられなくても。
初恋の魔法が解けてもなお、それに縋る彼女は、沖矢夫妻が同居してもアポなしで工藤邸に突撃するという間違いを犯し続けた。
そうしてベルツリータワー事件で決定的なことをしてしまい、初恋の彼と親友の彼女との長い長い別れとなる-。
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後書
映画を見てコナン熱が再燃したものの、今回コ哀要素が少ないため、その熱が自作小説執筆へ向かいました。
受け身恋愛体質の蘭ちゃん 片思いになった途端、全敗話です(おい
彼女の恋愛駆け引きって両想いの時は有効だけど、片思いの場合はまったく相手にされないかウザがられるかで恋愛下手だなぁといつぞやのコメント欄でやりとりしたのがネタ元です。とは言え元々こういう設定でした。
夢の絆第1話の裏側 と言ったところでしょうか。
本作品では逆行という超常現象がもとで新一が蘭に愛想を付かしているので、逆行後の彼女はちょっと可哀そうな面もあります。
新一もそれを自覚しておりますので、なるべく穏やかにフェードアウトしようとしているのですが、2か月くらい経っても同じことをしてしまうのが本作品。
5カ月経っても改善せず(むしろ悪化?)、ベルツリータワー事件で決定打となってしまいます。
ここら辺は園子編 醒めた夢の先に を読んで頂けると分かりやすいです。どうぞ。
コメントや拍手頂けると作者が狂喜乱舞ゥレシ━.:*゚..:。:.━(Pq'v`◎*)━.:*゚:.。:.━ィィして作品のエネルギーにもなりますので、宜しくお願い致します(((o(*゚▽゚*)o)))
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