エンジェルのままではいられない
原作の告白放置のまま時が過ぎたら・・・という感じです。
『茨姫は棘だらけの寝台で』『異次元イルミネーション』の直後 蘭が有希子に泣きつく話です。ハロウィンネタが少しあります。
作品は、カテゴリ欄のコナン二次小説 ”原作 その後”にございます。
この記事の右上の”原作 その後”をクリックしても飛べます。
***注意書き***
本シリーズ作品はRANちゃんには優しくありませんので、ヒロインファンはご遠慮願います。
この注意書きを無視して読んでからの苦情や誹謗中傷のコメントは受け付けておりません。
このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。
私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。
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注意書き読まれましたね?
ではどうぞW
親友がかつてエンジェルと称した少女が目の前で泣いている。
その姿に有希子は過去の光景を思い出した。
幼い二人を迎えに行った公園でみた光景-。
壊れた水道管を何とかしようとしている息子と側で「新一がサッカーボールぶつけるから!」と泣きながら責めている蘭ちゃん。
(状況説明どうもありがとう、また新ちゃんがやんちゃしちゃったのね。蘭ちゃん、ごめんなさいね。)
さて水道局に電話しなきゃ、と思ったら制服姿の将来有望そうな男子学生たちの一人が電話してくれているようだ。
金網が邪魔で遠回りして駆けつけた時にはもう彼らはいなかった-。
あの時は別に何とも思わなかった光景だ。
7歳の蘭は事実を言っただけだし、新一が原因なのは確かだ。
ただ-。
「わ、わたし待ってたのに。新一が待ってろって言ってたから待ってたのに。」-蘭ちゃん、貴女自身の意思はないの?
「新一がロンドンで好きって言ったのに、心変わりするなんて。」-返事なかったら失恋したとみなして次の恋にいくわよ。
「何も言わなくても名探偵な新一なら私の気持ち分かってたはずなのに。」-だから返事しないでいい免罪符にはならないわよ。
有希子に言い募る理由も透けてみえる。
母親である自分に新一に言ってほしいのだ。叱ってほしいのだ。自分の元に戻るよう説得してほしいのだ。
(自分が返事しなかったことを棚に上げてよくも新ちゃんをこんなに悪役に出来るわね。)
一つ一つは事実だ。その点で蘭は嘘を言っていない。ただその背景に言ってないことがあるだけで。
無意識の故意、計算-というのが脳裏に浮かぶ。
好きな人や友人によく思われたくて誰しもやることだ。いつもよりお洒落したり、感じよく振舞ったりする。
ただ無意識にしていることと意識的にやっていることの領分がある。彼女のやっている事は意識的にやっているように見えるのに。
(蘭ちゃんは自覚的にやっていることすら、無意識だと思い込んでいる…?)
(シャロン貴女、彼女をエンジェルと呼んだわね。)
私は単純にいい子と捉えたけれど。
もう一度、有希子の脳裏に壊れた水道管を何とかしようとしている息子と側で「新一がサッカーボールぶつけるから!」と泣きながら責めている蘭が浮かぶ-。
(あれも考えようになっては泣いて新一を責めることで、私は悪くないです、ってアピールしているともとれるわ。)
何だかあの頃とやっていることが変わらない。
(精神的成長してない…?いやまさかね。)
穿ちすぎるかもしれない。考え過ぎかもしれない。
だが本当にどうしてかいいか分からないなら、オロオロするか、ただ泣くだけだろう。
何とかしたいなら保護者-あの時、1番近くにいた自分-に言いに来るか新一と一緒に水道管を押さえるだろう。
泣きながらでも事情説明しつつ、責めていることに幼女ながら女の計算を感じるのは同性だからか。
それとも彼女の本性が見えたからか。
身近な誰か相手に泣く、責めるで自分に不利なことは無意識に排除する。
それは-。
(それはエンジェルでいられるわ。)
自身の愚かさ、醜さから目を背けて他人に押し付けてしまえば、表面上は無垢な天使の出来上がり。
大女優二人がまんまと術中に嵌ったのは、彼女自身が全くの無意識だからだろう。
(少しでも自覚があるなら、演技が入っているならシャロンが、私が気づかないはずがない。)
おそらく蘭自身さえ気づいていないだろう。
(何かいい子でなきゃいけない イノセントでなきゃいけないって強い想いか思い込みがあるのかしら…?)
それは彼女自身でも気づかないほどの強迫観念のように思えてしまう。
まあそれを考えるのは有希子の仕事ではない。彼女の親である小五郎と英理の役目だ。
(心配しないわけではないけど、ここで私が心配したら、私が味方という勘違いがいつまでも修正されないものね。)
そう、今の有希子の仕事は蘭の希望を断ち切ること。
「そう。それで?」ひとしきり彼女の話を聞いた上で、放った声は思ったより低かった。
「ゆ、有希子さん。それで?って…。」そんなという悲劇的な顔をして悲しげに俯く。
英理や小五郎が側にいたら、取りなしたかもしれないがいない。工藤邸の居間で二人きり。こういうところに無意識の片鱗を感じる。
意識的にやっているなら、自分に有利な舞台を整えるのが定石だからだ。
(新ちゃんと志保ちゃんが、初詣から帰って来る前に決着をつけなくちゃ。)
周りに人がいないなら、返事をしなかったことや待っている間の態度がアレなことを指摘する時間も惜しい。
(どっちみち、小五郎ちゃんや園子ちゃんにも言われてるのに全然受け入れないって聞いているし。)
「新年の挨拶は終わったし、そろそろ帰って貰えるかしら?」
「し、新一は?」
「さっきも言ったわよね?出掛けていて帰宅いつになるか分からないって。」
帰るまで待たせてほしいと顔に書いてあるが、敢えて気付かない振りをする。
「蘭ちゃんも新年は家族水入らずで過ごしたらいいんじゃないかしら!あ、それとうちの鍵は返して頂戴。」
「え?でも。」
「新ちゃん、ちゃんと言ったわよね?夕飯作りに来るのも掃除しに来るのもいらないって。
なのにそれを理由に合鍵返して貰えないって嘆いていたから。」
笑顔に圧を加えて断れないように仕向ける。
渋々返した鍵を受け取りにっこりと微笑み、最後の通達をする-。
「蘭ちゃん、今までありがとう。幼馴染ってだけなのに新ちゃんの面倒をみてくれて。でもこれからは婚約者の志保ちゃんがしてくれるから、ただの幼馴染な蘭ちゃんがやる必要はないわ。」
華やかな笑顔で、縋る視線を諦めさせるよう誘導していく-。
(随分ひどい仕打ちをしていると思うかしらね?でも巡り廻っては蘭ちゃんの為なのよ。だって新ちゃんの心はもう志保ちゃんから動かないんだから、諦めさせるのも思いやり。)
絶望に染まった彼女の顔をみながらそう思う。
プロポーズ受けて貰えたとクリスマスイブに電話してきて今まで一等嬉しそうな息子の声が脳裏を過った。
同時に夫の優作がそろそろ堪忍袋の緒が切れかかっている様もひしひしと感じる。
待たせてしまった負い目がある息子の心情を重んじて待っていてくれているが、それもどこまでもつか-。
彼女が変わらなければ、社会的に潰しかねない。蘭が未成年である以上、毛利家もろとも対象になる可能性が高い。
だからこれは有希子から蘭への最後の情であると同時に最終警告だった。
(失恋を受け入れて、新ちゃんとの未来はないと分かってほしい。自分の中の嫉妬・醜さと向き合ってほしい。)
(多分それをしないでここまできちゃっているのね。)
そこを乗り越えて輝く力が蘭にあると信じているからこそ。
いずれにしても、無知なエンジェルのままではいられない-。
悄然とした彼女の背を見送り、そうして有希子は静かに扉を閉めた-。
玄関先で、最後に心から小さな声で呟く。
「蘭ちゃんにも素敵な恋人が出来ますように。」
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後書 エルリア様のハロウィン ショート話に触発されて書いてみました(*´σー`)エヘヘ
け、結構厳しめに(今更感💦)エルリア様のおかげ様で本作品が出来ました。感謝申し上げます。
せっかくの有希子の通告ですが、蘭は受け入れられず、『自らの蔦と棘で絡め取られて』で新志結婚式直撃、被害はなかったものの遂に優作氏を激怒させ、『呪いが解けたその時には~後編~』のシーンへと相成ります。
此処までお読みに頂き、ありがとうございました。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
感想コメントや拍手頂けたらもっと嬉しいですヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
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