夜の水族館 ~リクエスト小説~
彼が来ない。
今日は藤本さんとの初デートの日。
昨日から、うきうきわくわくして仕方なくて、何度も服を選んだ。
頑張ってお洒落もした。
よく遅刻する自覚もある小鳩だが、デートにしては少し遅い14時待ち合わせというのもあって、時間通りに来たのだ。
なのに肝心の彼が来ない。
約束の時間から30分過ぎた頃、小鳩はさすがに不安になってきていた。
「どうしたんでしょう・・?」
うっかりの小鳩自身ならともかく真面目で几帳面な彼が事前に連絡もなしに遅刻など考えられない。
「急ぎのお仕事、でしょうか・・?」
いや緊急な案件であっても彼は連絡をくれる人だ。
電話しても留守電サービスに繋がるばかり。
メールして連絡を待つことにした。
待ち合わせの公園のベンチに腰掛けて項垂れる。
(…藤本さんに何かあったとかじゃないですよね?)
(事故とか…。)
(小鳩、とても楽しみにしてきたんですけどね…。)
彼への心配と楽しみにしてきた事が無しになりそうな落胆感が混ぜ合わせになって、ひどく
泣きたくなる。
2時間経っても連絡がつかず、でも彼が来るかもしれないという思いから
帰ることもできず、夕方の公園で遂に、小鳩の眼からぽろぽろと涙が溢れ出た。
(どうしましょう…。)
その時携帯電話が鳴った。
表示された着信は藤本清和。思わず反射的に電話に出ていた。
「…は、はい!もしもし、小鳩です!!」
「お前何やってるんだ!?」
「え、約束通り公園にいます。藤本さんこそ・・」
どうして約束通り来てくれないのか、問いかけようとしたのだが、彼の声に遮られる。
「明日だろう!?」
「え?」
「出掛けるのは明日の22日だろうが!」
「だって来週の日曜日って・・!」
慌ててスケジュール帳を捲りながら答えると、22日は確かに日曜日。
しかし手元のスケジュール帳には21日の欄にデートの記載。
・・・どうやら書き間違えたらしい。そしてその曜日間違いにも気付かなかった。
「今日が土曜日だろう?ったく」呆れた様な藤本の声が響く。
「そ、そのようです・・。とほほ」
「で、お前まだ公園にいるのか?」
「は、はい。すいません。」
「よく待ってたな。」ほんの少し藤本の声が優しくなった、様な気がした。
「はい。もしかして藤本さんが遅れてくるかも、って思って。」
「お前じゃあるまいし。」
「うっ。」御尤もな突っ込みに唸るしかない。
「…それで涙声なのか」
その小さな小さな呟きは、彼女の耳には届かなかった。
「え?」
「いや、何でもない。…じゃあドジなお前の為に、これから遊びに行くか。」
「あの、でもお仕事は…!?」
「今終わった。明日行くはずだった水族館前に17時までに来られるな?」
今16時過ぎ。水族館はここから電車で30分のところにある。
駅までの歩きの時間を考えても小鳩は行ける。
「は、はい!行けます!!」
「あの、でも水族館もう閉まってしまうんじゃ・・!」
約束している水族館に小鳩は小学校の遠足で行ったことがあった。
閉館時間は17時だったはず。
「ああ、大丈夫だ。今あそこの水族館、夜間営業してるから」
「え?そうなんですか?藤本さんよくご存知ですね。」
「まあな。じゃあ、俺もこれから向かうから。」
明るくなった彼女の声に安堵しながら、電話を切る。
再会してからこっち色んなドジを見続けてきたが、今回「日にち間違い」という項目が新たに加わった。
(しかし、外出前に聞いた話が意外なところで役に立ったな。)
昼休みにアシスタント事務の女性数人が話していた、最近流行の夜間営業。
会社帰りの社会人やカップルなど大人をターゲットにした、美術館や水族館でのナイト営業。
通常の入場料より少し安めな料金設定があったり、夜ならではの催しをしたりして客を取り込もうという
施設側の集客アイディアらしい。
その話の中に明日行く予定だった水族館の名前もあったので、記憶に残っていた。
(確か夜ならではの生態を見るという名目で懐中電灯片手に回るとか言ってたな・・。)
「ナイト☆アクアリウムへようこそ!!」
結局17時過ぎに無事合流した二人。
その際にお約束の二人のやり取りがあったのは言うまでもなかったりする。
ナイト☆アクアリウムという名前で、催されているのは
水槽照明はもちろん、魚名板から観覧通路の明かりまで消えて、文字どおり真っ暗な水族館。
その中を観客は入口で1人に1本ずつ渡されるLED懐中電灯を片手に、自分自身で水槽を探しながら観覧する
という方法だ。
夜の魚の生態も見られるし、昼と違う雰囲気も新鮮だ。
スリルを味わえるという点でもなかなか良い。
がそこは、小鳩。
「藤本さん藤本さん!あそこのお魚さん光ってます~♪ っきゃあ!?」
「おい、大丈夫か!?」
「ひゃ、はい。ありがとうございます~。」
そう明るい昼間でさえ、何もない所で躓く彼女がそんな暗さの中、ドジしないわけなかったのである。
「・・・何度やるんだ?」
かれこれ10回以上は転びそうになる彼女をすんでのところで助け起こしてる気がする。
「今度は気をつけます!!」
「その台詞も何度目だ?」
「うう・・藤本さんはいじわるです~!」
「きりがないな。」
そう言うなり藤本は小鳩の肩を寄せた。
あまり人前で手を繋いだり接触するのを苦手としている彼の珍しい行動に、彼女は眼を丸くする。
「・・・・今日は特別だからな。」
わざとぶっきらぼうに言う藤本の横顔が少し赤いのは気のせいだろうか。
彼らしい言い草と優しさに、小鳩は嬉しくてたまらなくなってしまった。
頬が緩むのを抑えられない。
「はい!!」
そう言いながら小鳩は自分から藤本に寄り添っていった。
(小鳩、幸せです!)
******************************************************************************************************
2周年企画リクエスト小説
ツンデレラ様の「藤こばで初デートor初デートの約束に至るまで」です。
ツンデレラ様へ
本当にお待たせいたしました~。><
どうぞ、楽しんで下さいませw
お気に召したら、お持ち帰りして頂いてOKです*^^*
何でしたら、この続き書いて頂いても・・・!!(←図々しいから)
今日は藤本さんとの初デートの日。
昨日から、うきうきわくわくして仕方なくて、何度も服を選んだ。
頑張ってお洒落もした。
よく遅刻する自覚もある小鳩だが、デートにしては少し遅い14時待ち合わせというのもあって、時間通りに来たのだ。
なのに肝心の彼が来ない。
約束の時間から30分過ぎた頃、小鳩はさすがに不安になってきていた。
「どうしたんでしょう・・?」
うっかりの小鳩自身ならともかく真面目で几帳面な彼が事前に連絡もなしに遅刻など考えられない。
「急ぎのお仕事、でしょうか・・?」
いや緊急な案件であっても彼は連絡をくれる人だ。
電話しても留守電サービスに繋がるばかり。
メールして連絡を待つことにした。
待ち合わせの公園のベンチに腰掛けて項垂れる。
(…藤本さんに何かあったとかじゃないですよね?)
(事故とか…。)
(小鳩、とても楽しみにしてきたんですけどね…。)
彼への心配と楽しみにしてきた事が無しになりそうな落胆感が混ぜ合わせになって、ひどく
泣きたくなる。
2時間経っても連絡がつかず、でも彼が来るかもしれないという思いから
帰ることもできず、夕方の公園で遂に、小鳩の眼からぽろぽろと涙が溢れ出た。
(どうしましょう…。)
その時携帯電話が鳴った。
表示された着信は藤本清和。思わず反射的に電話に出ていた。
「…は、はい!もしもし、小鳩です!!」
「お前何やってるんだ!?」
「え、約束通り公園にいます。藤本さんこそ・・」
どうして約束通り来てくれないのか、問いかけようとしたのだが、彼の声に遮られる。
「明日だろう!?」
「え?」
「出掛けるのは明日の22日だろうが!」
「だって来週の日曜日って・・!」
慌ててスケジュール帳を捲りながら答えると、22日は確かに日曜日。
しかし手元のスケジュール帳には21日の欄にデートの記載。
・・・どうやら書き間違えたらしい。そしてその曜日間違いにも気付かなかった。
「今日が土曜日だろう?ったく」呆れた様な藤本の声が響く。
「そ、そのようです・・。とほほ」
「で、お前まだ公園にいるのか?」
「は、はい。すいません。」
「よく待ってたな。」ほんの少し藤本の声が優しくなった、様な気がした。
「はい。もしかして藤本さんが遅れてくるかも、って思って。」
「お前じゃあるまいし。」
「うっ。」御尤もな突っ込みに唸るしかない。
「…それで涙声なのか」
その小さな小さな呟きは、彼女の耳には届かなかった。
「え?」
「いや、何でもない。…じゃあドジなお前の為に、これから遊びに行くか。」
「あの、でもお仕事は…!?」
「今終わった。明日行くはずだった水族館前に17時までに来られるな?」
今16時過ぎ。水族館はここから電車で30分のところにある。
駅までの歩きの時間を考えても小鳩は行ける。
「は、はい!行けます!!」
「あの、でも水族館もう閉まってしまうんじゃ・・!」
約束している水族館に小鳩は小学校の遠足で行ったことがあった。
閉館時間は17時だったはず。
「ああ、大丈夫だ。今あそこの水族館、夜間営業してるから」
「え?そうなんですか?藤本さんよくご存知ですね。」
「まあな。じゃあ、俺もこれから向かうから。」
明るくなった彼女の声に安堵しながら、電話を切る。
再会してからこっち色んなドジを見続けてきたが、今回「日にち間違い」という項目が新たに加わった。
(しかし、外出前に聞いた話が意外なところで役に立ったな。)
昼休みにアシスタント事務の女性数人が話していた、最近流行の夜間営業。
会社帰りの社会人やカップルなど大人をターゲットにした、美術館や水族館でのナイト営業。
通常の入場料より少し安めな料金設定があったり、夜ならではの催しをしたりして客を取り込もうという
施設側の集客アイディアらしい。
その話の中に明日行く予定だった水族館の名前もあったので、記憶に残っていた。
(確か夜ならではの生態を見るという名目で懐中電灯片手に回るとか言ってたな・・。)
「ナイト☆アクアリウムへようこそ!!」
結局17時過ぎに無事合流した二人。
その際にお約束の二人のやり取りがあったのは言うまでもなかったりする。
ナイト☆アクアリウムという名前で、催されているのは
水槽照明はもちろん、魚名板から観覧通路の明かりまで消えて、文字どおり真っ暗な水族館。
その中を観客は入口で1人に1本ずつ渡されるLED懐中電灯を片手に、自分自身で水槽を探しながら観覧する
という方法だ。
夜の魚の生態も見られるし、昼と違う雰囲気も新鮮だ。
スリルを味わえるという点でもなかなか良い。
がそこは、小鳩。
「藤本さん藤本さん!あそこのお魚さん光ってます~♪ っきゃあ!?」
「おい、大丈夫か!?」
「ひゃ、はい。ありがとうございます~。」
そう明るい昼間でさえ、何もない所で躓く彼女がそんな暗さの中、ドジしないわけなかったのである。
「・・・何度やるんだ?」
かれこれ10回以上は転びそうになる彼女をすんでのところで助け起こしてる気がする。
「今度は気をつけます!!」
「その台詞も何度目だ?」
「うう・・藤本さんはいじわるです~!」
「きりがないな。」
そう言うなり藤本は小鳩の肩を寄せた。
あまり人前で手を繋いだり接触するのを苦手としている彼の珍しい行動に、彼女は眼を丸くする。
「・・・・今日は特別だからな。」
わざとぶっきらぼうに言う藤本の横顔が少し赤いのは気のせいだろうか。
彼らしい言い草と優しさに、小鳩は嬉しくてたまらなくなってしまった。
頬が緩むのを抑えられない。
「はい!!」
そう言いながら小鳩は自分から藤本に寄り添っていった。
(小鳩、幸せです!)
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2周年企画リクエスト小説
ツンデレラ様の「藤こばで初デートor初デートの約束に至るまで」です。
ツンデレラ様へ
本当にお待たせいたしました~。><
どうぞ、楽しんで下さいませw
お気に召したら、お持ち帰りして頂いてOKです*^^*
何でしたら、この続き書いて頂いても・・・!!(←図々しいから)