逃がした魚は龍になっていた
「蘭-!新一-!もう帰るぞ!」
「はーい。お父さん」「はーい。おじさん。」
「こら走るな!車来るぞ!」
素直で可愛い娘の蘭と好奇心の強過ぎるサッカー少年の新一。
ブランコや滑り台で遊ぶ二人に声を掛け、帰った日の夕日が何故か忘れられない-。
(あの時は二人ともちょいちょい飛び跳ねる小魚みたいだっていうのに。)
小五郎と蘭が島に移住して、半年と少し経ったころ、新一の報道が派手になった。
それに意識が持っていかれている娘を心配しながら、小五郎は不思議だった。
(組織戦を前にして、こんなことやるか??それに今の探偵坊主の性格にも合わねえ変だな??…逆か。既に対決は終わっていてカモフラージュか!?)
同時に大物政治家や製薬会社の何名かがひっそりと逮捕された事実を繋ぎ合わせて、推理する。
伊達に小五郎だって警察官だったわけではない。
その後、新一はアメリカへ留学したと風の便りで聞いた。
2年後、第二次工藤新一ブームが起き、小五郎は自身の推理が正しかったことを知った-。
(大きくなっちまったなあ、新一。)
それからも長い年月が過ぎた。
(蘭が家出して9年…いやもうすぐ10年、か?)
歳をくったせいか年月の経過が早いのか、あやふやになっている気がしていたころ、突如懐かしい人からの電話が来る-。
「おじさん。お久しぶりです。」
「おおっ!新一か!?久しぶりだな。今、日本来てんのか!」
思わず声に喜びが混じる。
(蘭のやらかしたことを謝らなきゃならねえが、表向き新一はあのベルツリータワーと関係ねえしな。)
新一の忠告を聞かなかったことは痛恨事だが、直接の被害者は彼ではない。過剰防衛で空手をくらった犯人と巻き込まれて気絶した園子だ。
(どっちかって言うとその前のストーカーのが頭下げる案件だが、言い出しにくいし面と向かって言いてえなぁ。)
それに懐かしい彼と、もう少し普通に語り合いたい。
「はい。東都帰ってきてます。」
「活躍見てるぞ…!ははっ!もう探偵坊主なんて呼べなくなっちまったな。」
「恐縮です。おじさんなら探偵坊主でいいですよ。」
そんな台詞からまざまざと彼が大人になったのを感じ取っていた。
話はホストに嵌った蘭に移っていった。
「それで心配して電話してくれたのか?」
「そっちも心配なんですが、目下蘭の健康状態と恐らく借金しているのではと。」
「は?どういうこった?」
「さっき多分大丈夫って言いました。大分窶れてて、最初見た時は薬のせいかと焦りました。
けれど半袖の服を着てまして特に注射の跡もない…。
調べて行くうちに、蘭の店での立場から推察できる収入に比べてDANDYで遣ってる金額-店でさりげに聞き出しました-の方が明らかに多いんです。
これはホストに嵌って食費を削り、更に借金している可能性が高いと思います。」
「はーっ!…それで心配して知らせてくれたってか。」
「はい。余計なお世話かと思いましたが、このままでいくとその新種の薬の売人にでもされかねません。」
「ああいう世界はそういう人間をターゲットにするもんな。いんや、ありがとよ。新一。」
(いい男になったな、新一。本当に逃した魚は大きいと言うが大き過ぎて涙が出てくらあ。)
蘭と一緒になってくれたら、どれだけ心強く嬉しかったことか。だが大き過ぎるが故に娘では釣り合わない事ももう分かっている。
「いえ、お役に立てたなら良かったです。蘭は良くも悪くも純粋ですからああいう世界向いていないかと。」
「…後は俺が何とかする。これでも父親だ。」
(一度でいいから酒を酌み交わしてみたかったよ、新一。)
組織壊滅で名を馳せた世界で活躍する名探偵。
更に日本のみならず世界でも有名になりつつある名探偵コナンを執筆した小説家。
(おまけに才色兼備な嫁さん貰って、子供もいるっていうしな。)
それでいて迷惑を掛けられた幼馴染さえ気にかけてこうして電話をくれる懐の大きさがある。
彼は気づけば見上げなければいけないほど、大きくなっていた。
逃した魚は大きかった どころではない。
逃した魚は龍になっていた
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後書 ”逃がした魚”新シリーズ 第一弾です。蘭⇒新志ですが、まさかの小五郎視点ですΣ(゚Д゚)
最後の会話の時間軸は 夢の絆 蘭番外編 泡沫の恋~完結編~と同じく 夢の絆 新一編 初恋の君の幸せを心より祈る です。
当初この話は婚活を焦っている純白の幻夢より数年前くらいの蘭視点で書く予定でした。
徐々に結婚を意識し、お店の客でもプロ野球選手など大物を狙うも上手くいかず。けれどまだ二十代半ばなので自分の若さとそれゆえの美貌に胡坐をかきつつも焦ってはいないお年頃。けれどどうしても新一と比べてしまう みたいな感じで…。
ただそれをするととんでもない長さになりそうで、あとエンドレスになりそうなんですよね。彼女の思考回路って。
でふとこれを他者視点で見たらどうだろう?と思って考えてみたら、小五郎視点がふと浮かびあがってきた次第です。
どなたか蘭視点編を書いて頂けませんか~(」’ω’)」オォオォオ!!!ウウゥゥアアォオ!!!!!!(他力本願過ぎる)
楽しんで頂けたら、感想か拍手をポチっとして下さると嬉しいです( ^)o(^ )
PS 皆様 気になる??夢の絆 メモ情報は下記の通り(⋈◍>◡<◍)。✧♡
第一次工藤新一ブーム 組織戦を表沙汰にしない為の隠していた探偵活動を報道。その後速やかに留学したので沈静化する。
第二次工藤新一ブーム 組織壊滅情報が出始め、記子が本にする。新一は英雄視され、平次が挫折を味わう。
第三次工藤新一ブーム 情報は規制されつつも、志保との結婚で羨望の的。園子が城が式場のウエディングプランを考案。
第四次工藤新一ブーム デビュー12周年記念、映画10作目を記念して、長年作者の正体が分からなかった江戸川コナン先生 のお披露目とイベントが行われる。
夢の絆 番外編には実はこれらのエピソードがあったり、なかったりww(おい)お楽しみ頂けたら幸いです(^^♪
コメントや拍手頂けると作者が狂喜乱舞ゥレシ━.:*゚..:。:.━(Pq'v`◎*)━.:*゚:.。:.━ィィして次なる作品のエネルギーにもなりますので、宜しくお願い致します(((o(*゚▽゚*)o)))
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