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逃がした魚は大きかったが釣り上げた魚も大きかった


「へ~平次が道頓堀に事務所開いたんや。」
和葉はリビングで一人お茶しながらテレビを見て呟く。
脳裏に鮮やかに蘇る初恋の幼馴染との断片的な記憶-。

人魚のお墓を見つけた平次と和葉。
墓石が転がり平次が崖に落ちそうになり、和葉が平次を引き寄せたが、今度は逆に和葉の方が崖から落ちそうになった。
和葉は”アカン…枝が折れてまう…ごめんな平次。あたしの分まで長生きして…”と思いながら持ってる矢で平次の手の甲を刺した。
平次は手から血を流しながらも、和葉の手を決して離さなかった。
「動くな和葉…動いたら殺すぞ…」
(あの時の平次、かっこよかったで。)

激怒した平次は、鼻ピアス男に掴みかかった。
その時言った「オレの和葉に何さらしとんじゃァ!」という言葉がどれほど嬉しかったことか。
和葉は顔を赤らめながら、平次にこう尋ねた。
「いつからあたしがアンタのもんになったん?」
(あの時、あたし期待いっぱいやったのに。)
「いっぺんしか言わへんから、よう聞いとけよ」
「オレにとって一番大事なんは証拠や!証拠もないのに気色悪い事ぬかすな、ドアホ!」
(『そんな事言った証拠はない』としらばっくれおってからに。)

「きっと俺はおまえのこと…」
「子分やと思ってんねん」
(告白を期待した…やのに、子分ってなんやねん!子分って!)

待っていても拉致があかないと思った。
「せやから言うわけやないんやけど…実はあたしも前からアンタの事が…、め…めっちゃ好っきゃねん!!」
叫んで告白をしたけれど、そこに平次の姿はなく、いたのは高木刑事というオチ。
(恥ずかしいなぁ。…せっかく勇気だしたのに。)

過去の出来事とそれに対する現在の和葉の気持ちが目まぐるしく交差する-。
恋愛に関しては鈍感だった彼に何度呆れたことか。
それでも好きだった。
輝いていた青春の日々だった。
成功した平次を見ると、過去の冒険が思い出されて、今の平凡な暮らしが途端に色褪せて、つまらなく感じる。
今朝、ささいなことで夫と喧嘩してしまったり、朝から娘がぐずって幼稚園へ連れて行くのに一苦労したのもそれに拍車を掛けていた。
人は手に入らなかったものほど、良く見えるもの-。

ピンポーン!!

物思いに耽る彼女を目覚めさせるように、インターホンの音が鳴る。
「はっ!はーい。」
「お届けモノでーす!サインお願いします。」
「はい。」
配達員がいなくなって荷物をしげしげと見つめると、宛名は夫で住所も間違いないが発送元が宝石店。
「なんや、これ?」
(普段、宝石なんか買うたりしないのに。)
(まさか…浮気、とか?)
良からぬ想像をしてしまい、衝動的に段ボールを開けたくなるが瞬時のところで堪える。
(あかん。)
けれど想像は消えてくれなくて、彼女は段ボールの周りをウロウロしていた。
すると玄関でガチャガチャと音がし、扉が開く音が聞こえた。
(え?あたし、鍵閉め忘れた?)
無断で自宅に入ろうとする不法侵入者への警戒を強め、咄嗟に合気道の構えをする。
「ただいま~。」
入ってきたのは自分の夫で拍子抜けである。
(なんや、あたしが鍵閉め忘れたんやなかった。)
「あれ?もしかして和葉が受け取っちゃった?時間指定しといたのに。」
側の段ボール箱を見て慌てる夫。
宅配便の送り状の時間指定欄には14~16時となっていたが、現在は13時30分過ぎ。
普段、彼女は14時~16時なら幼稚園のお迎えに行って、スーパーで買い物している。
同時刻、夫は会社だったり在宅ワークだったりする。
(そういや今日はお昼食べたら帰る言うてたっけ。午前だけ会社で会議て…。)
つまり夫はこの荷物を内緒で一人で受け取るつもりだったということだ。
咄嗟にやはり女かと思い、般若の顔になる和葉。
対して夫は「見つかっちゃったら仕方ないかぁ。しまらないなぁ。」と呟きながらも段ボールからジュエリーケースを取り出す。
「本当は今夜、四葉が寝た後に渡したかったんだけど…。和葉、誕生日おめでとう!これからもよろしく。」
「へ?」
(あたしの誕生日…。そういや今日やわ。)
「あ、ありがとう(〃▽〃)ポッ」
先程まで感じていた過去を惜しむ気持ちは消え失せていた。むしろ罪悪感さえ感じる。
もっとも大きい感情は、結婚してからも愛情表現を忘れない夫への感謝と照れ。

(平次、あんたもええ男や。けどな ウチの照明も負けずにええ男や。)
脳裏に蘇る-先ほどテレビに映った顔ではない 和葉の良く知る20代の彼-若き日の平次に声に出さず”さいなら”を贈る。

逃がした魚は大きかったが釣り上げた魚も大きかった

**********************************
後書 新年明けましての作品です。”逃がした魚”新シリーズ 第三弾となります。
青い鳥シリーズと同じで3部作ですので、最終章となります。まさかの和葉編ですΣ(゚Д゚)
時間軸は夢の絆 服部番外編 駿河の富士と一里塚の和葉側のお話。
ほぼ何もリンクしてないですが、同じ時間軸ということで💦
しかし書きながら思ったのですが、逃した魚(=平次)、大きかったかな??(作者が疑問を呈してどうするのか( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \)ま、まあ初恋フィルターと思い出美化フィルターが掛かっていると思って下さいwww
和葉ちゃんの旦那さんは66巻で登場した和葉の隣が実家の大学生:国末照明さん。
お守作りを依頼してきた彼です。平次が和葉を遠ざけた際に、猛プッシュしたのが彼だったという設定です。

これ書きながら思い出していたのはこんな漫画。
夫と喧嘩した美しい人妻が昔自分に求婚した男性三人も尋ねるも、夢や野心に溢れていた彼らは三者三様の落ちぶれかたをしていて、ヒロインはがっかりしてしまう。そんなところに夫が反省して迎えにきて、夫の良さを再確認して一緒に帰宅するという…。
作者も題名も覚えていないのですが、画風はザ昭和って感じでした。

コメントや拍手頂けると作者が狂喜乱舞ゥレシ━.:*゚..:。:.━(Pq'v`◎*)━.:*゚:.。:.━ィィして次なる作品のエネルギーにもなりますので、宜しくお願い致します(((o(*゚▽゚*)o)))

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雪月花桜

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