一滴の水 蘭編①

2014.12.22 16:10|一滴の水 本編
誰もが皆、心の中に杯を持っている。
中には、喜び・悲しみ・怒り・楽しみなどの感情が揺れている。
普段は理性、自制心という名でその他者を思いやり、感情のままには振舞わないが、その杯が一滴で溢れてしまう事がある。
それはまるで、ダムの水が崩壊するように。

~「悪い。その日は無理だ。」~

新一にロンドンで告白をされて、数か月経った頃、返事をしなければ、と蘭は焦りを感じ始めていた。
というのもタイミングを計り損ねたせいで、ずっと宙に浮いたままで、その内に新一からの電話やメールがめっきり少なくなってきたからである。
(新一、怒ってるのかな・・。でもずっと帰ってこない新一も悪いんだから!!)
不安になりながらも言い訳を心の中で呟く蘭。
そんな蘭の様子を案じた園子がある2枚のチケットを差し出しながら、こう言った。
「ねえ、蘭。これあげるからさ、新一君と行きなよ!」
「何これ?」
「マジックショーよ。ベガスでも有名なマジシャンがもうすぐ来日するの。クリスマスイブに恋人らしく行っといで!!」
「わ、私と新一はまだそんな仲じゃ・・」
「まだそんな事言ってるの?さっさと告白の返事しておいで。新一君もてるんだから。誰かに取られても知らないよ。」
「う、うん。ありがと。でも新一が来られるかどうか・・」
「なーに言ってるの。イブよ?好きな女の子の誘いならのらないワケないじゃない!」
「そ、そうかな。」
「そうよ。ちなみに私はその頃アメリカの真さんに内緒で突撃☆でドッキリデートするの!!二人してラブラブ大作戦~!!」
「もう、園子ったら」
「よし、そうと決まったら、勝負服買いに行くわよ!」
肌寒い、12月中旬の会話だった。

来てくれるものと信じ、その後すぐに新一に誘いのメールをした。
だがなかなか返事のメールが返ってこない。
ショーの前日、さすがに焦れた蘭は、告白以来しづらくなっていた電話をした。
「もしもし。新一、私よ。」
「蘭か。どうした?」
いつもと変わらない新一の声にほっとする。
「あのね、メールで誘ったマジックショーの事なんだけどね。」
「メール?何の事だ?」
「園子からもらった24日のマジックショーの事よ。メール届いてないの!?」
「届いてないぞ。知らねえな。」
どうやらメールの送受信が上手くいってなかったようだ。
無視されたのではない事にほっとしつつ蘭は言葉を続けた。
「えええ~そっか。それで返事ないんだ。とにかく明日ね、 マジックショー行こう!!米花駅前に夜6時待ち合わせね!」
「・・・悪い、その日は無理だ。」
笑顔で話していた蘭の顔がこわばった。
「どうして!?どうして無理なの?」
「・・悪い。手が離せないんだ。」苦しげな新一の声がするが、構っていられなかった。
「また事件なの?事件・事件ばっかり・・!ひどい、ひどいよ・・新一!!」
(新一、私の事好きって言ったじゃない!?せっかく告白の返事しようと思ってたのに!!)
この日の為に、園子に冷やかされながらも、甘いデートを夢見て
新一の好きな赤のワンピース、可愛い色つきリップ、ファー付のブーツを買っていた蘭は新一を責めずにはいられなかった。
「せっかく園子にチケットもらったんだよ!?クリスマスイブなんだよ!?イブくらい帰ってきてよ!!」
”好きな女の子のイブの誘いなら断るわけない”園子の言葉が頭の中をリフレインする。
(私の事好きなら、これくらい、うんって言ってよ!)
だが新一は是と言ってくれない。同じ事を繰り返すのみである。
「新一の馬鹿!!もう、知らない。」落胆の余り、大きな瞳に涙を溜めながら叫ぶ。
いつもならここで終わりだが、これで晴れて恋人同士になれると信じていた蘭の悲しみは深かった。
この一言でずっとずっと我慢していた淋しさ・悔しさが怒涛のように溢れていく。
「もう、もう待たない!!私いつまでも待つ都合の良い女じゃないんだよ!?他に誘ってくれる男性(ひと)だっているんだから!!」
慌てる新一の声がしたが、聞かずに電話を遮断した。
「私ばっかり浮かれて・・馬鹿みたい」項垂れて呟いた。

はっきり断られたにも係わらず、次の日の夜6時に米花駅前に蘭は立っていた。
父・小五郎は町内会のクリスマス会で飲みに行き、弟のように可愛がっていたコナンは1月前に母親の文代に連れられてアメリカに帰り
母・英理は仕事で出張、園子は宣言通り渡米中。つまり、親しい人は皆予定があり、他に行く場所がなかったからである。
空手部のクリスマス会に入れてもらうという手段もあったが、一度断り「デートですか?」と冷やかされた手前、どうしても言えなかったのである。
(一人きりのイブなんて嫌だよ)
(それに電話でああ言ったけど、新一来てくれるかもしれないし)
今までの経験から彼は一度断っても、蘭が泣いてたり待ってると願いを叶えてくれる事が多かったから、蘭はそれに慣れていたのである。
傲慢な願いであるとは気付かないままに、それに賭けていた。
留守電とメールに「待ってるから」と連絡入れて待ち続ける蘭だが、時間が過ぎても彼は来ない。
皆が予定があって一人きりのクリスマスという状況が初めての蘭はその孤独さから押しつぶされそうになる。
周りがカラフルでキラキラしていて、自分だけがモノクロなひどく惨めな気分だ。
(せっかくおニューの可愛い赤いワンピース着てきたのに。まあどうせ気付いてくれないだろうけど。
このリップだってつやつやでキスしたくなるってフレーズの高いのなのに。)
(来てよ・・!新一ぃ)チケットを握りしめ、泣きそうになった。
「・・・毛利さん?」
「え?」
待ち合わせの人混みの中、自分の名前を呼ばれ振り向くとそこにはクラスメイトの瀬川勇次が立っていた。
彼は帝舟高校にしては珍しく2月前に編入してきた生徒だった。
なかなかのイケメンで女生徒の間では騒がれている。
そして、新一の存在を噂でしか知らない為、「二人は公認」の雰囲気に呑まれず実は蘭に結構モーションを掛けていた男性でもあった。
天然な蘭は、気付いていない為、「良い人」認定していた。
「何してるの?って待ち合わせだよね。・・あれ?そのチケットってもうすぐ開演だろ?急いだ方がいいよ。」
チケットを指差しながら話す瀬川。
確かに18時開場、19時開演とチケットには印刷されている。慌てて腕時計見ると確かに後5分で19時。
「あ、ど・どうしよう」
「待ち合わせの人遅れてるの?」
「う、うん。っていうか忙しくて無理みたいってさっき連絡が」
本当は最初から行けないと言われていたのだが、そんな事言えないので、咄嗟に誤魔化した。
「残念だね。このショー。人気あるからチケット取るの大変だったでしょ!?俺も見たかったんだけど、売り出して5分で完売しちゃってさ」
「え?これそんなに人気のチケットなの?」
「そうだよ。知らなかったの?」
「う、うん。貰いものだから。」
「へ~。って本当に急いだ方がいいよ!もう時間ないし!」
「あ、ねえ瀬川君これから予定ある!?」一人でショーを見たくない蘭は、思わず瀬川にそう声を掛けていた。
「え?塾の帰りだから、別にないけど?」
「よ、良かったら一緒に行かない?代金はいいから!ほら、無駄になるの勿体ないし。」必死で言う蘭。
「本当?ラッキー!ありがとう!じゃあお礼に晩飯奢るよ!急いで行こうぜ!!」
瀬川は嬉しそうに笑い、蘭の手を取り、駅前のショーの会場であるホールの方向へ誘導していた。

「すっごく面白かったね~、ショー。」
「ああ、特に最後のマジック、仕掛けがさっぱり分からなかったよね。すごい。誘ってくれてありがとう、毛利さん。」
さすがにイブでレストランは混んでいたが、ここは瀬川の親が経営しているらしく、いわゆる顔パスで二人は食事しながら、楽しく会話をしていた。
殺人事件で中断される事もなく、本にあったロマンチックなデートプラン通り。ただ相手は新一ではない。
「美味しかった~。御馳走様でした。」帰り道、行儀よく頭を下げる蘭。
「送ってくよ。家どこ?」
「え?悪いよ。大丈夫、大丈夫」
「ダメだって。もう11時近くだし。」
「嘘、そんな時間!?」
ショーが10時前に終わり、それから食事した為、あっという間に時計の針は11を指していた。
そして毛利探偵事務所が目の前になった頃、瀬川が思い切ったように言った。
「あのさ、俺、転校してきた時からずっと毛利さんの事好きなんだ。付き合ってくれない?」
「えっ?」思いも寄らない告白に真っ赤になる蘭。
「クリスマスイブにさ、突発的にとは言え、誘ってくれたって事は、ちょっとは脈あるって思っていいかなって」頭を掻き、照れながら言う瀬川。
その姿を見て、真相を言えなくなる蘭。確かに期待を持たせる出来事ではあった。
困った様子を見かねたのか、それとも強引に押し切るつもりなのか、瀬川は続けた。
「じゃ、じゃあさ、一月!一月お試しで付き合ってよ。」
「あ、う、うん。」その迫力と付き合ってもらった感謝、押しに弱い性格から強く出れず、蘭は思わず反射的に頷いてしまっていた。
「じゃ、そういう事で!おやすみ!!」
ものすごく嬉しそうな笑顔で瀬川は立ち去った。
(ど、どうしよう。私には新一が居るのに・・。でも、あの推理馬鹿が事件ばっかで、今夜来てくれないからだよ!!
それにどうせ事件・事件で帰ってこないし。一月だけだし)
捨て台詞で言った「私にも誘ってくれる男性(ひと)いるんだから」がまさかの現実となり
一人自身の心の中で言い訳するが、蘭の心は晴れない。

そしてこの出来事を、決断を、蘭は後でものすごく後悔する事となる。
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後書 最近コナンにはまり(また今更)最初、コ哀、その次に新志に浸かっております。
蘭も嫌いじゃなかったんですが、作者が持ちあげすぎる(天使とか)割に、新一君を空手で脅したり、幼馴染だと主張する割に「新一の彼女」編でやってる事が彼女通り越して、浮気見つけた嫉妬深い正妻キャラ。母親の不倫相手(誤解で実は獣医さん)、無料券使えないからって店員に空手で攻撃しようとしたりするという矛盾に「?」となり色んなサイト巡っているうちに、新志話を書きたくなりました。
同じ話で続編 新一編、志保編、再び蘭編に続きます(^◇^)

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30代OLが歴史・節約・日頃・二次小説のことを書き綴っています。 コメント大歓迎★ ですが、宣伝や本文に何も関係ないもの もしくは激しく不愉快、コピペ等、そういった類は、私の判断により 誠に勝手ながら削除の方向です。楽しく語りたいです♪ 二次創作小説もありますが、このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません。私なりの解釈を加えた二次小説もございますので自己責任でご覧になって下さい。

雪月花桜

Author:雪月花桜
タイトル通り歴史大好きな女がブログしてます。
歴史を元にした小説なんかも大好きでそれらについても語ったり、短編なんか書いてみたいです。
現在それ以外でも二次小説をupしておりますし、OLなりの節約・日々の徒然を語っています。

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