太陽の女神 月の巫女姫②‏

久々の父と叔母との会話は、最初はお決まりの時候の挨拶から始まった。
最初は慣れない事に緊張していた彼女も、そこはやはり身内の親しさからか、一刻程するとなごやかに会話できるようになっていた。
「大伯もすっかり大きくなって・・。母に似てきたのう。」
「そうでしょうか?」
「本当に姉上のお若い頃のよう。」
そして会話が一段落した頃を見計らって、伊勢の斎宮の話が出た。
「この数十年、皇位継承争いで伊勢の斎宮が荒れておる。」
「まあ。そうなのですか。」
果たして予感は当たったー。
そう思いつつも、何とか無難な答えを返す。
「そうなのですよ。それに酢香手皇女が退下して以来、天皇家縁の姫が行っておらぬのです。」
酢香手皇女とは、後世に用明天皇と呼ばれる天皇の息女で、父王の死後も斎宮で任を全うした事で知られる。
斎宮を務めた期間は37年間。
その数年後に時の女帝が死亡し、皇位継承権をほぼ同等に持つ二人の皇子の内、どちらにも後継者と指名せぬまま亡くなった事がここ数十年の皇位継承争いの発端とも云える。
「私は、斎宮を制度化、法律化しようと思っておる。その初代として美しく聡いそなたが相応しい」

「皇室の氏神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)に斎王としてお仕えしてくれぬか?」父の優しいけれど深みのある声が響く。
「天皇に代わって、神にお仕えする大事なお役目。どうか頼みます。」叔母がそれに追随するように落ち着いた声で、確かな存在感を持って言葉を紡ぐ。

依頼の形を取っているけれど、これは命令だ。
否と言っても、おそらくかなりの確率で行かされる。
ならば自ら行くと言った方が良い。
けれどそれでも口の中がからからになった。声が出てこない。
一人で遠くの伊勢の地へ赴くー。
見知らぬ土地へ行かされる恐怖が身を包む。
けれどこれは決定事項なのだ。今自分がやるべきことは速やかに返事をすること。
皇族として生まれ育ち培ってきた、その場に相応しい立ち振る舞い、咄嗟の判断力が彼女を動かした。
瞬間で立ち直ると、二人をまっすぐに見つめた。
「私でよければ参ります。」と言い優雅に礼をした。

この瞬間、制度化された初代斎王として、大伯皇女の名が歴史に刻まれることになる。
そして、この制度は660年間続き、その間記録には60人余りの斎王の名が残される事になる-


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雪月花桜

Author:雪月花桜
タイトル通り歴史大好きな女がブログしてます。
歴史を元にした小説なんかも大好きでそれらについても語ったり、短編なんか書いてみたいです。
現在それ以外でも二次小説をupしておりますし、OLなりの節約・日々の徒然を語っています。

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