一滴の水 最終章③
恋人の祭典であるクリスマスイブに蘭は、待ち合わせの為、米花駅前に立っていた。
(この間のコンサート以来だから、3週間ぶりのデートかな。)
優花に捨て置き作戦をアドバイスされたものの、無理に別れなくても良いとも言われていた為
前からの約束であったコンサートは一緒に行った。
それ以来のデートである。
相変わらず彼は遅れている。前のデート時、遅刻しなかったので、正直、油断していた。
今回連絡もないので、彼女は困っていた。
捨て置き作戦以来、今まで如何に彼中心の生活を送ってきたか、まざまざと感じていた。
(今まで自覚がなかっただけなんだ。私って本当馬鹿だな。)
思わず嘆息する。いつまで待とうかな、と賭けをしている心持ちになる。
(それでもやっぱり、イブは恋人と過ごしたいって思ちゃったんだよね。)
周りを彩る緑と赤、延々と響くクリスマスソング、ツリーの煌めき。
大勢の人々が賑やかに行き来する、大通り。
人々の喧騒の中、それを眺めながら待っている内に、不意に過去の出来事が蘇った。
(園子のくれたマジックショーチケット、同じここで待ってた11年前の自分)
笑顔で気遣う親友の顔。苦しげに断る新一の声。泣きそうに待ってた自分。
新一が自分の願いを叶えてくれる事に慣れていた無邪気な、それでいて傲慢だった子供の自分。
今ならどうしたらいいか分かる、分かるのに。
「やり直せるなら・・やり直したいよ。」
時が戻ればいいのに、と蘭はセンチメンタルな気分になった。
そんな事は叶わないと知った上で、喧騒の中、蘭はぽつりと呟いた。
「時よ、戻れ☆・・なーんてね。」
先日、時間を操れる少女の映画を見たばかりだった影響もあるかもしれない。
クリスマスという如何にも奇跡が起きそうな時期だったせいもあるかもしれないが、思わず口から零れた言葉だった。
そんな時、人混みで視界が効かないせいで、蘭は駆けてきた小さい子供とぶつかってしまった。
「きゃっ!」「わっ!」
「ぼ、坊や、大丈夫っ?」蘭は少しよろけた程度だが相手は、尻もちをついている。
「はい。だいじょうぶです。」
慌てて抱き起した蘭は相手の顔を見て驚愕した。
「コ、コナン君っ!!??」
そう、その子はかつて彼女の家に居候していた弟のように思っていたコナンそっくりの顔立ちだったのである。
否、顔立ちだけではない。髪、瞳の色までそっくりである。違うところと言えば眼鏡を掛けていない点だろうか。
「「コナン?誰それ?」」
いつの間にか男の子の側に来ていた女の子まで疑問を向けられていた。
だが蘭は再び驚愕する事になる。
その女の子の顔は・・・。
「哀ちゃん!!??」
男の子の側で、埃を払っていた女の子は、これまたコナンと仲が良かった灰原哀そっくりだったのである。
こちらも赤茶色の髪に翡翠の瞳とそっくりである。
違うところと言えば、年齢の割にずいぶん大人びた哀より、表情が子供らしいという点だろうか。
「「哀?誰それ??」」
(いやいや、私、落ち着くのよ!!コナン君と哀ちゃんのわけないわ!)
(あれから10年以上経ってるんだから、二人とも今頃もっと大きくて・・・そう、高校生のはず!!)
(まさか、本当に時間が戻ったとかないわよね!?)
直前まで、時間が戻ればなんて考えを持っていたせいで、まさかと思いつつも蘭は自身の姿を、側の店のガラスで確かめる。
化粧した昔より大人びた顔、社員割引で購入したとは言え、そこそこの値段のブランドバック、ハイヒール、全てが大人の女である。
あの当時の女子高生ではない。
(当たり前だけど、タイムスリップとか若返りとかしてない!よし!!)
「あ、ごめんなさいね。知り合いにとても似てたものだから。坊やたちお名前は?」
「くどうそら 8さい。」
「くどうみほ 7さいっ!」
女の子の方が元気が良いらしく、勢い良く返事をしてくる。
「そうなの。って くどう?工藤??」
「「うん。どうしたの?おねえさん。」」
二人揃って仲良く首を傾げている。
(この顔で工藤ってまさかこの子たち。)
特に男の子の方がコナンそっくり、新一の小さい頃そっくりである。
蘭の脳裏にある噂と考えが浮かぶ。
その時に慌てたような、聞き覚えのある懐かしい声が人混みから聞こえた。
「蒼、美保っ、先に行くんじゃない!」
「「お父さん!!」」
きゃっと声をあげて、その男性にしがみつく子供達。
かつて良く見送った背中。でも以前よりずっと大きくなっている気がする。
「あのね、お父さん。そらがね、おねえさんにぶつかっちゃったの。」
「でも、なかなかったよ、ぼくエライでしょ。」
「だから人混みで手を離すなと。あ、すいません、うちの子供達がぶつかってしまったようで。」
そう言いながら蘭の方に振り向く男性。
「お怪我ありませんか?って蘭っ!?」
「新一!!!」
その男性は蘭の初恋の人だったのである。
十年振りの新一との再会であった。
”精神世界は繋がっていますから、毛利さんが心から願えば叶いますよ”
二ヶ月前の優花の言葉と笑顔が、蘭の脳裏に浮かんだ。
***************************************************
後書 遂に十年振りの再会です。
そして皆様お待ちかねの、二人の子供登場です♪イエイ☆
工藤蒼(8歳)君&工藤美保(7歳)ちゃんとの出会いで10年前にタイムスリップ
したかのような心境になる蘭とよりかっこいい男性となった新一(28歳)との再会。
このシーンを書きたいばっかりに、10年経過させました。
さて、二人の再会後はどうなるでしょう?(笑)
(この間のコンサート以来だから、3週間ぶりのデートかな。)
優花に捨て置き作戦をアドバイスされたものの、無理に別れなくても良いとも言われていた為
前からの約束であったコンサートは一緒に行った。
それ以来のデートである。
相変わらず彼は遅れている。前のデート時、遅刻しなかったので、正直、油断していた。
今回連絡もないので、彼女は困っていた。
捨て置き作戦以来、今まで如何に彼中心の生活を送ってきたか、まざまざと感じていた。
(今まで自覚がなかっただけなんだ。私って本当馬鹿だな。)
思わず嘆息する。いつまで待とうかな、と賭けをしている心持ちになる。
(それでもやっぱり、イブは恋人と過ごしたいって思ちゃったんだよね。)
周りを彩る緑と赤、延々と響くクリスマスソング、ツリーの煌めき。
大勢の人々が賑やかに行き来する、大通り。
人々の喧騒の中、それを眺めながら待っている内に、不意に過去の出来事が蘇った。
(園子のくれたマジックショーチケット、同じここで待ってた11年前の自分)
笑顔で気遣う親友の顔。苦しげに断る新一の声。泣きそうに待ってた自分。
新一が自分の願いを叶えてくれる事に慣れていた無邪気な、それでいて傲慢だった子供の自分。
今ならどうしたらいいか分かる、分かるのに。
「やり直せるなら・・やり直したいよ。」
時が戻ればいいのに、と蘭はセンチメンタルな気分になった。
そんな事は叶わないと知った上で、喧騒の中、蘭はぽつりと呟いた。
「時よ、戻れ☆・・なーんてね。」
先日、時間を操れる少女の映画を見たばかりだった影響もあるかもしれない。
クリスマスという如何にも奇跡が起きそうな時期だったせいもあるかもしれないが、思わず口から零れた言葉だった。
そんな時、人混みで視界が効かないせいで、蘭は駆けてきた小さい子供とぶつかってしまった。
「きゃっ!」「わっ!」
「ぼ、坊や、大丈夫っ?」蘭は少しよろけた程度だが相手は、尻もちをついている。
「はい。だいじょうぶです。」
慌てて抱き起した蘭は相手の顔を見て驚愕した。
「コ、コナン君っ!!??」
そう、その子はかつて彼女の家に居候していた弟のように思っていたコナンそっくりの顔立ちだったのである。
否、顔立ちだけではない。髪、瞳の色までそっくりである。違うところと言えば眼鏡を掛けていない点だろうか。
「「コナン?誰それ?」」
いつの間にか男の子の側に来ていた女の子まで疑問を向けられていた。
だが蘭は再び驚愕する事になる。
その女の子の顔は・・・。
「哀ちゃん!!??」
男の子の側で、埃を払っていた女の子は、これまたコナンと仲が良かった灰原哀そっくりだったのである。
こちらも赤茶色の髪に翡翠の瞳とそっくりである。
違うところと言えば、年齢の割にずいぶん大人びた哀より、表情が子供らしいという点だろうか。
「「哀?誰それ??」」
(いやいや、私、落ち着くのよ!!コナン君と哀ちゃんのわけないわ!)
(あれから10年以上経ってるんだから、二人とも今頃もっと大きくて・・・そう、高校生のはず!!)
(まさか、本当に時間が戻ったとかないわよね!?)
直前まで、時間が戻ればなんて考えを持っていたせいで、まさかと思いつつも蘭は自身の姿を、側の店のガラスで確かめる。
化粧した昔より大人びた顔、社員割引で購入したとは言え、そこそこの値段のブランドバック、ハイヒール、全てが大人の女である。
あの当時の女子高生ではない。
(当たり前だけど、タイムスリップとか若返りとかしてない!よし!!)
「あ、ごめんなさいね。知り合いにとても似てたものだから。坊やたちお名前は?」
「くどうそら 8さい。」
「くどうみほ 7さいっ!」
女の子の方が元気が良いらしく、勢い良く返事をしてくる。
「そうなの。って くどう?工藤??」
「「うん。どうしたの?おねえさん。」」
二人揃って仲良く首を傾げている。
(この顔で工藤ってまさかこの子たち。)
特に男の子の方がコナンそっくり、新一の小さい頃そっくりである。
蘭の脳裏にある噂と考えが浮かぶ。
その時に慌てたような、聞き覚えのある懐かしい声が人混みから聞こえた。
「蒼、美保っ、先に行くんじゃない!」
「「お父さん!!」」
きゃっと声をあげて、その男性にしがみつく子供達。
かつて良く見送った背中。でも以前よりずっと大きくなっている気がする。
「あのね、お父さん。そらがね、おねえさんにぶつかっちゃったの。」
「でも、なかなかったよ、ぼくエライでしょ。」
「だから人混みで手を離すなと。あ、すいません、うちの子供達がぶつかってしまったようで。」
そう言いながら蘭の方に振り向く男性。
「お怪我ありませんか?って蘭っ!?」
「新一!!!」
その男性は蘭の初恋の人だったのである。
十年振りの新一との再会であった。
”精神世界は繋がっていますから、毛利さんが心から願えば叶いますよ”
二ヶ月前の優花の言葉と笑顔が、蘭の脳裏に浮かんだ。
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後書 遂に十年振りの再会です。
そして皆様お待ちかねの、二人の子供登場です♪イエイ☆
工藤蒼(8歳)君&工藤美保(7歳)ちゃんとの出会いで10年前にタイムスリップ
したかのような心境になる蘭とよりかっこいい男性となった新一(28歳)との再会。
このシーンを書きたいばっかりに、10年経過させました。
さて、二人の再会後はどうなるでしょう?(笑)